主なきノラネコたちの家   作:もちごめさん

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ハンターキャラ一人追加。それと、筆の赴くまま書いてたらゼノヴィアのキャラが壊れました。全国八千万のゼノヴィアファンの皆様へごめんなさい。

誤字報告ありがとうございます。

20/9/08 本文を修正しました。


四話

 真昼間の公園。お昼時だからなのか人気はなく、遠くの喧騒と、時折吹く生暖かい風だけが周囲に漂っている。

 

 ボクはそんな中で一人、安っぽい時計台の上に座りながら、七月の眩い太陽を見上げていた。

 

「やっぱり、暑いにゃあ……」

 

 初夏だというのにうだるような暑さだ。顔に突き刺さる熱線に目を眇め、我知らずの内に口が呟く。

 

 別にボクが特別暑がりというわけではなく、身に着けている長丈の装束のせい。返り血で新調したその中に、浴びる陽光の熱が延々蓄え続けられているのだ。

 

 正体を隠すためのそれを脱ぐわけにはいかないし、今から日陰に移動するのも少々不都合がある。それらは普通の精神状態であれば気にも留めない程度の不快感でしかなかったが、今ばかりは心の内に留めておくことが難しく、文句として口からこぼれ出た。

 

 今のボクの内心が、普通とは言い難く荒んでいるからだ。

 

 慣れない環境やら気候やら、あるいはミルたんを介して出てきた魔王の名前、そして……コカビエル。等々、要因は山ほどあれど、最大のそれは赤髪悪魔によるものだろう。

 

 あの夜、滞在を認める代わりにお前も働け、という偉ぶった話に無理矢理同意させられ、引き受けてしまった『念』の指導。ただでさえため息が止まらない憎き悪魔を律する行為を強いられて、にもかかわらず今日までの一週間、一度としてその修行が行われていないのだ。

 

 ほとんど恫喝でボクを契約に縛り付け、そのままずっとほったらかしにしているということだ。

 

 悪魔などに行動まで拘束されるという、耐えがたい屈辱。その間したことといえば、当面の住処を探したり、ミルたんに観光案内と称してあちこち連れまわされたり、その先で彼の同志だという、『魔法少女ハンター』を自称する異様に屈強な漢どもと面通しをさせられたり、あるいはちょっとした頼み事をされたりといった些事ばかりだ。……いや自称魔法少女ハンターどもの妙な迫力は些事とは言い難いかもしれないが、ともかく仕事とは無関係のことばかりだ。

 

 確かにそもそも、赤髪が依頼に指定した期間は『夏休みの間』だ。それより早くにやってきたのはボクたちの都合なのだから、その時まで修業を始めないというのは道理なのかもしれない。

 

 だがしかし、始めないその理由が『学校があるから』なんていう、あの時の啖呵は何だったのかと思わずにはいられないようなものであったのだから、お前は何様だと愚痴を吐くくらいは許されるはずだ。ついこの間は『プール掃除があるから』、そして今日は『授業参観日だから』なんて言われて、それでも口を閉ざしたまま頷いた自分をほめてやりたい。

 

 こちらの事情も内心も省みずに振り回され、怒らずにいられる方が不自然だ。だからただの日差しすら忌々しい。

 

 けれどいくら腹立たしくとも、その要因からは逃げられないのだ。悪魔共の横暴然り、炎天下で待たねばならないこの状況然り。

 

 なぜならそれが、クロカの望みに直結しているからだ。

 

 赤髪との契約、眷属を訓練する仕事を反故にすれば、次いつシロネと会えるかわからない。

 シロネに会いたがっているだろうクロカの想いを満たすため、ボクは全身全霊振り絞らねばならない。ボクでは塞げない『妹』の穴を――ぽっかり空いた空白を、ボクは受け入れなくてはならない。

 

 彼女のあるがままを守ると、もう五年も前に定めた要石の前では、ボク自身の心象など意味のないものだ。だからそれを、ボクは見届けなければならない。

 

 そのために、赤髪から見放されないよう、ボクは赤龍帝に続いてそいつの修行をも認めたのだ。

 

「フェル、さん……?なぜそんなところに座っているんだ?」

 

 視線を声のほうに向けてやる。すると、やっと姿を見せた待ち人、いや、待ち()だったそいつ。聖剣使いの青髪ことゼノヴィアが、怪訝そうな眼でボクを見上げ、首を傾げていた。

 

「いや、待ってくれ……確か一誠が参考にと見せてくれたジャパニーズコミックに、似たような修行法が……つまり私もそこに座ればいいんだな!」

 

 などと見当違いのことを読み取り目を輝かせる彼女を見つめ、盛大にため息を吐いてやってから、ボクは時計台を飛び降りる。空気を孕んで翻る長丈コートでついでに放熱し、ゼノヴィアの真正面に降り立つと、たじろぐ彼女の眼をのぞき込んだ。

 

「遅れた挙句開口一番謝罪もなしって、面の皮が厚いってこのことだね、ゼノヴィア?」

 

 途端にぶわっと噴き出す冷や汗。ゼノヴィアの背が跳ねる。どうやら自身の内心は思っていたより大きな苛立ちを抱えていたらしく、自覚すれば声帯の奥が明らかな忌々しさを帯びた。

 

 用意していた言葉のことごとくが脳内から吹き飛び、さらにはその最大の嫌悪にも見ないふりはできず、続くボクの台詞は遠慮なしに彼女の能天気を貫いた。

 

「しかも教会を破門されて……悪魔に転生したんでしょ?その上でボクに『念』を教えてくれだなんて、よく平気な顔してそんなことが言えるよね。それとも……わかってないの?ボクが悪魔を嫌ってること」

 

 ほんの数日前まで人間だった青髪、ゼノヴィアは、奴らと同じ制服を身に纏い、悪魔になってしまっていた。

 

 聖剣使い、悪魔の天敵である教会の戦士であった彼女が悪魔に転生したと聞いた時、最初は耳を疑った。全く相容れない二者。あるいはよく聞くように、赤髪が無理矢理に転生させたのかと思った。

 

 その通りであればハンターとして大義名分を得られたのだが、しかし残念ながら異なる。対面した彼女の平然も然り、それ以前に強引な主従関係であれば、ゼノヴィアは赤髪悪魔経由で、ボクに修行をつけてくれなどと言ってはこないだろう。

 

 ボクが灼熱の日差しに茹でられていた理由の半分がこれだ。ボクはこの聖剣使いの悪魔に『念』を教えるため、ここで訪れを待っていた。赤龍帝と同様望んだのは当人だが、学業にかまけてボクの親切を蔑ろにする赤龍帝と対照的に、所属する学園を抜け出してでも指導を受けると彼女は言ったのだ。

 多少は感心したのだが、一方が酷すぎた故の良い印象は、しかし遅刻で帳消しとなった。残ったのは悪魔への憎悪ばかりで、だから口から出る追及が、ややそっちに寄った嫌味ばかりになってしまっているわけなのである。

 

「それで?ホントにどうして悪魔なんかになっちゃったの?ボクに喧嘩売ってるとかなら、望み通りにしてあげるけど」

 

「そ、そんなわけがないだろう!?教えを請うた相手に喧嘩など……そ、それにだ!そんなふうに言うのなら私だって聞きたいぞ!いや聞くなとは言われたが……何故そうまで悪魔を目の敵にしているんだ?一誠もリアス部長もアーシアも、皆いい人ばかりだ」

 

 ボクの威圧にかぶりを振り、ゼノヴィアはしっかり苛立ちの引き金を見つけ出し、威勢よく主張する。たった数日でもう懐柔されてしまった単純さに呆れつつ、ボクは鼻を鳴らして彼女が離れた一歩分、またずいっと顔を寄せた。

 

「キミの主観はどうでもよくてさ、むしろこっちが聞きたいんだよね。悪魔が嫌いなのはキミたち教会も一緒でしょ?なのに破門されるなりすぐ裏切るなんて、わけがわからにゃい」

 

「うぐ……確かに破れかぶれで転生したのは、今考えれば正直どうかと思うが……けれど、仕方がないだろう?異端の私はもう神に祈ることさえ許されないのだから」

 

「……破れかぶれって、なにそれ」

 

 誤魔化すしかない疑問から話を逸らせば、出てきたのは雲みたいに軽い理由。呆れててものも言えないボクに、ゼノヴィアはばつが悪そうに「破れかぶれは、破れかぶれだ」と眼を逸らす。

 

 それでも止まないボクの白い眼に唇を尖らせ、満足するまで不貞腐れた後、彼女は一つ唸ってから再びボクを見つめて言った。

 

「それに、やはり私はそうする他なかったんだ。リアス部長の力がなければ、私は、フェルさん、あなたに師事することなどできなかったんだから」

 

「うん?別に、直接ボクに言えばよかったんじゃない?というか、そのほうがボクも教えてあげようって気になるよ。……悪魔に転生されるよりもよっぽど」

 

「しかしそれは金を払えればの話だろう?あなたにタダで指導してもらえるなど、さすがに私も思っていない」

 

 そんなふうに思われていたのか、と赤髪からあれこれ理由をつけてせしめた口座の数字を思い出し、ちょっとだけ後悔する。

 

 ゼノヴィアは自信満々に胸を張った。

 

「神の信徒は皆、清貧でなければならないからな、かつての任務でも褒賞はあったが、全部シスターに収めていたんだ。私ほど教えを忠実に守っている者もいなかっただろう。……まあ、神の不在を知った今となっては、それに何の意味があったのかと思わなくもないが、しかしとにかく、破門された私は全くの無一文だったんだ」

 

「へえ」

 

 おざなりな相槌は、そうやって徴収した金で豪遊する司祭や司教を知っているがためのものであったが、ゼノヴィアはそっちには気付くことなく熱弁を続けた。

 

「だからリアス部長に、リアス・グレモリーに願ったんだ。あなたの眷属になる代わりに、私も兵藤一誠のようにフェルさんの指導を受けられるようとりなしてくれ、とな。『騎士(ナイト)』として、快く迎えてくれた。打算的な望みを、受け入れてくれたんだ。

 ……もちろん今まで敵対してきた悪魔の軍門に下ることに思うところがないわけではないが、けれどだとしても、あなたとリアス部長たちが嫌いあっていることが、私には悲しい。なぜなら二人とも私の恩人で、あなたは私の理想の師匠だからだ」

 

「ボク、聖剣どころか光の剣も普通の刀剣も、碌に触ったことないんだけどにゃあ」

 

「ん?そうなのか?ハンターは人外に対して、その種の弱点となるものを使い分けるのだと聞いたが……そういえばコカビエルとの戦いでも、特にそれらしいものは使っていなかったな。しかしそれはつまり、そんなもの使う必要がないほどあなたは強いということだろう?聖剣や、あるいは神器(セイクリッド・ギア)に頼らずとも、あたなはそれほど圧倒的な強さを得ているんだ。すごいことじゃないか」

 

 だからその力を学べれば聖剣と、そして悪魔の力の分、私はもっと強くなれる。などと彼女は考えているのだろう。

 

 実際ボクの強さ、身体の頑丈さや力の強さなんかの基礎的な部分は、ボクがキメラアントであるが故のものだ。そっちのことはもちろん口に出せないが、そうでなくても彼女のその考えは、あまりに『念』に対して、武術に対して無知なものだ。

 

 少々調べた彼女の異名。『斬り姫』やら『破壊魔』などと揶揄されているところを鑑みるに、恐らく今までは聖剣の力に頼った力任せの蹂躙しかしてこなかったに違いない。

 

 『力』は足し算ではない。通じなかった冷やかしに肩を落としつつ、ボクは呆れのため息を吐き出した。

 

「……キミも赤龍帝も赤髪も、『念』を安く見過ぎだよ」

 

「安く……?」

 

 ゼノヴィアが、存外なことを言われたみたいにぱちくり瞬きをする。やはり『念』を便利な道具か何かだと、自身の補強のように捉えている様子の彼女。ボクは口を噤んでこれ見よがしに目の前を横切ると、近くの木製ベンチに腰を下ろして胡坐をかいた。

 

 たっぷり間を開け、生み出した真剣の空気の中で神妙に頷いてやって、続けた。

 

「うん、そう。二ヵ月もないんだよ、ボクがキミたちを教える期間。それっぽっちの時間じゃ、たとえキミが一千万人に一人のすごい才能を持っていたとしても、『四大行』、基本を覚えるのが関の山だにゃ。そんなんじゃ殺し合いの場で役に立たない。むしろ足を引っ張ることになる」

 

「……しかし、無駄にはならないだろう?基本だけでも、私にとっては価値のあるものなんだ。それに一応、あなたたちほどではないにせよ、白音も『念』が使える。修行法さえ知っていれば彼女と一緒に――っ……」

 

 もう一度の深いため息で彼女の胡乱を断ち切り、ボクは真顔で視線を射抜く。

 

「それが安く見てるってこと。『あなたたちほどではない』、なんて言うけど、そんな程度じゃない。シロネ、あの子の『念』だってだいぶガタガタだよ。辛うじて基本の体を為しているって、そんな感じ。たぶん我流なんだろうね。聞いてみるといい、いつから『念』を覚え始めたのか」

 

「いやまあ確かに、彼女には『教えるほどではない』と言われたが……」

 

「へえ、賢明だにゃ。とにかくそういうこと。自力で『念』を覚えるとなれば時間がかかるし、覚えたとしても精度が低くて使いものにならない。研鑽するにはそれこそ『念』の歴史をたどるくらい、途方もない時間が必要になる。その時間を別に当てたほうがずっと有意義だよ。例えばキミなら、魔力とかをね」

 

「しかし――」

 

 またも掣肘し、割り込む。

 

「それでも『念』がいいって言うなら、キミは『念』じゃなくて、『()と剣を使った戦い方(・・・・・・・・・)を学んだ方がいい。無手のボクじゃできないような指導、剣を振るための『念』を知ってるやつに教えを仰ぐべきだね。そうでなくても長く付き合ってくれるような奴を見つければ、まともな技も習得できるかもしれないよ」

 

 しかしやはり、彼女が望むような強さを手に入れることは難しいだろう。数ヶ月どころか何年学んでも底が見えないくらい、『念』というものは奥が深いのだ。

 

 故に、ボクはゼノヴィアの理想の師匠足りえない。『念』をものにするまで付き合う気がさらさらない。強くなりたいのなら、もっと別の人間に師事すべきだ。

 

 という意味合いを彼女が悟ってくれれば、もしかすれば赤髪の反感を買うことなくこの指導の仕事をキャンセルできるかもしれない。自身の師に相応しくないと、ゼノヴィアからそういうふうに思ってもらえればいい。そうすれば今後、ちょっとだけ楽ができる。

 

 うっすらとそんなことを考えながら、しかしいくら圧してもまっすぐなまま、結局一度も曲がることがなかった彼女の眼にそうはならないだろうという予感を抱きつつ、ボクは諦め、解いた神妙であくびと伸びをした。

 

 すると思った通り、ゼノヴィアはぐっと噛みしめた口元を震わせ、一瞬何か言い淀んでから口を開いた。

 

「それでも……私はあなたから学びたい。コカビエルを制した『力』も、確かに憧れではあるんだ。だが、それ以上に私は、あなたのその……なんというんだろうか……覚悟、かもしれない。『力』に秘められた強い意志に魅せられたから、だからフェルさんでないとだめなんだ」

 

「……『覚悟』?」

 

 予想とは少し外れて抽象的だった固執の理由は、正直勘違いが否めない。クロカとシロネを助けたボクの意思など、到底清いものではないだろう。利己と義務感をこね合わせただけのはりぼてだ。

 

 わざわざ告げることではなく、知らずに見誤って信じてしまったゼノヴィアは、ボクを見降ろし右手を軽く握り締めた。

 

「……破門された時、同じようなことを言われた。『念』を学ぶにせよ、師事の先は同じく剣士であるべきだと。……武闘家のそれと剣士のそれは違うのだと、ヴァスコ・ストラーダ猊下直々に賜ったお言葉だ」

 

 その名前に少々記憶を刺激される。ヴァスコ・ストラーダ、ネテロの強さを語る時、よく引き合いに出される人間の一人だ。ちなみにミルたんもその輪に入る。

 

 ハンターではなく、確か教会の枢機卿だっただろうか。ゼノヴィアが持つ聖剣、デュランダルの前所有者であるかなりの大物が、小娘一人のために出てきたなんて話にほんのり怪しげな背後を察知しつつ、ボクは続くゼノヴィアの、何にも気付いていなさそうな真面目腐った顔を見つめ返した。

 

「人も紹介されたよ。あなたが言う、剣を振るための『念』を知っているハンターだった。……けれどその人が持つ強さは、私が惹かれたそれとは違った。信仰を見失って初めてできた『ああなりたい』と思える目標は、やはりフェルさんだけなんだ!適性がと言われても、私の師匠はあなたしかいない。あなたでなければ意味がない!一誠がそう決めたように、私は教会の戦士でなくなっても、己の正義を貫く覚悟のために強くなりたいんだ!」

 

 つまり、頑固なこだわりだ。

 

「んー……精神論、あんまり好きじゃないんだけどにゃあ」

 

 ちょっとだけ罪悪感が湧いた。

 

 彼女が惹かれたボクの強さ、『覚悟』とやらはただの勘違いだ。そんな大層なものをボクは持っていない。ならばそれを指針にした彼女の『ああなりたい』は全くの思い違いであり、ボクに師事する一月と少しを棒に振ることになる。加えてそんな印象を抱かせてしまったことによって、恐らく聖剣デュランダルが悪魔共に巻き込まれることを阻止せんとした枢機卿の目論見を、ボクはお釈迦にしてしまったのだ。

 

 この仕事と同じ、悪魔を利する行為故の不快感。赤龍帝に続いてゼノヴィアにも真逆の効果を及ぼしたクロカの適当なご高説が、フェルの覚悟を学べば念能力者の剣士に師事するよりも強くなれる、というトンデモな思い込みをより強固なものにしてしまっていた。だから指の先ほどだが、彼女らに申し訳ないと思う。

 

 だがしかしその思い込み。真実を言えないとはいえ、どうすればボクの強さの源が、『覚悟』なんていう訳のわからない勘違いであるなどと信じることができるのだろうか。

 

「精神論ではない!私はあなたのように強くなりたいから、だからあなたから学びたいと願っているんじゃないか!」

 

 想い、それが力の一助となることは認めるが、それにしたって大仰。ファンタジーが過ぎる。よしんばボクの『覚悟』とやらが本物だとしても、それはただ『心意気』の話だ。

 

 心の持ちようで習熟度の多寡が変わるほど、『念』は簡単なものではない。散々説明してやっただろう。なんだって意味のない修行を頑なに望むのか。

 

 節穴の眼に加えて理解不能な思考回路の持ち主であると知れた彼女に、呆れるボクは努めて平淡に言葉を口にした。

 

「ボクが想いの力だけで……コカビエルを倒したとでも思ってるの?精神を鍛えたいのか力をつけたいのか、キミが何を目指して修行修行言ってるのか、ボクさっぱりわからないにゃ」

 

「もちろん両方に決まっている!知っているぞ?『念』には強靭な精神力が必要不可欠なのだろう?」

 

「そういう意味じゃなくって――」

 

 と、続けて皮肉を言い放とうとした。その瞬間だった。

 

 ボクはゆらりと漂ったその気配に気付いた。

 

「うぐっ……!ふぇ、フェルさん?なんなんだ、突然……」

 

 逆立つ背からたちまちに噴き出すボクの『気』。内の憎悪が漏れ出して、濃い殺気にゼノヴィアが本能的な怯えを見せる。ベンチから数歩も後退った彼女だが、しかしボクには気にする余裕がなく、緩慢な動きで斜め後ろ、公園の入り口へ振り向いた。

 

 爆発しそうな感情を抑えてどうにか憎悪の範疇に留めたボクの眼を、現れた悪魔の長、魔王サーゼクス・ルシファーは、虫唾の走る微笑を浮かべて眺めていた。

 

「剛毅果断、というのかな、彼女は。並外れて意志が強いということは、もうわかってもらえただろう?」

 

 ボクの視線とその声とで、ようやくゼノヴィアもその存在に気付く。何故ここに、と僅かに焦りを滲ませ呟く彼女にも同じような顔を向け、悪魔の長は続き、汚らしく鳴いた。

 

「私もリアスもその意志の強さに惹かれてね、だから今回のことにも許可を出したんだ。正直なところ、妹の眷属としての忠誠心が薄いことは気にかかったが」

 

「それはしかし、恩義は感じている。だがその……何度も言ったが、私はそのことを忘れるような恩知らずではないぞ」

 

「わかっているよ、君の性根は間違いなく善だ。それに忠誠はなくとも、絆は育める。悪魔の生は長いんだ、これからゆっくりと紡いでゆけばいい。そうやって良き主従になってくれれば、君の目指す正義は、きっとリアスの助けになる。期待しているよ、ゼノヴィア君。でなければ私は学園の理事として、公開授業を抜け出した君を見逃した今日のことを後悔せねばならなくなるからね」

 

「それは感謝している。しかし……そ、そもそもなぜ私は学園に編入させられたんだ?私は勉学に興味がないというのに」

 

「リアスが学園に通っているからさ。眷属たちもね、主人の傍に居たほうがお互いに都合がいいだろう?」

 

「確かに……そうなのか?」

 

 チラチラとボクを怯えで気にしながら会話を続けるゼノヴィアの声が清涼剤になるくらい、ボクには奴のその鳴き声が耐え難いものだった。

 

 奴は、『王』を殺した悪魔の長だ。『王』を差し置いて王を名乗る不届き者なのだ。奴に比べれば、つい最近人間から悪魔となったゼノヴィアなどなんでもない。散ってしまう憎悪がもったいないほど、今、生きとし生ける者の中で最も憎く、そして恨めしい存在。

 

 こんなところに顔を出すなどと思っていなかった。対面する心構えなんて欠片もできておらず、できていても涼しい顔でやり過ごすことなどできなかっただろうが、一番の仇を目の前にして、ボクの全身には殺しの衝動が荒れ狂っていた。

 

「そうさ。それに親睦を深めるためにも、人付き合いを覚えるためにも、学園という場は適している。だからね……フェル殿、一誠君たちは修行を蔑ろにしているわけではないんだよ。学び舎に通うということは、いわば人として生きるための修行だ。大切なんだ、どちらも。ゼノヴィア君の場合はその天秤が『憧れ』に傾いたに過ぎないということを、どうかわかってほしい」

 

 しかしその浴びせかけた『気』、殺意にも涼しい顔をして話しかけられ、しかも『王』を殺したその口で人としての名を呼ばれる。そんな屈辱を受け、それでもなんとか口を閉ざしていれたのは、傍にクロカが居なかったからだ。

 

 一人で大丈夫と行かせたのに、ここで憎悪を叫んで問題を起こせばボクの立場がない。抱える感情を抑え込むにしては小さすぎる頼りだが、それでも辛うじて踏みとどまることができていた。

 

「しかし貴女の気持ちも尤もなものだ。故に、私からささやかではあるが、心づけの金額を振り込ませてもらった。言葉の誠意よりもこちらの方が貴女好みだろう?これでどうか、今後の指導もよろしくお願いするよ」

 

 半ば機械的に、ボクはポケットの端末を取り出す。それを一瞥して確認すると、すぐに立ち上がり、ベンチから降りて奴に背を向けた。

 

 喉の奥から、どうにか赤色でない声を押し出した。

 

「行くよ、ゼノヴィア」

 

「えっ!?あ、ああ!」

 

 返事を聞く前に歩き出した。奴の反対側の出入り口。ゼノヴィアが慌てて後を追ってくる。

 

 呑気に手を振ってくる奴の気配を意識して無視しながら、ボクは足を速めて公園を去った。

 

 

 

 

 

 有り体に言って逃げ出したボクの足は、すぐに駆け足になって公衆の場へと向いた。

 

 さっきまでの穏やかな公園と異なり、ごった返すとはいかないまでも、人と喧騒の絶えない通り。一般人にとっての全速力ほどの速度をぴったり保ち、駆け抜けた。

 抜き去った人々に『何事だ』という反応を浴びせられながら数十分かけて町を走り回ったボクは、後ろのゼノヴィアの息が隠しようもなく乱れ始めた頃になって、ようやく目的地の麓、緑ばかりの小山にたどり着く。

 

 車道に線引きされた山の境目だ。山中へ向かう道も探せばどこかにはあるのだろうが、しかし辺りにはない。幾重にも重なる木々の壁だけがある山の斜面は、普通、人が踏み入る場所ではないだろう。

 

 だがボクは一切足を緩めぬまま、行く手を塞ぐ枝と幹の間に身体を滑りこませた。

 

 植生は全く違っていても、慣れ親しんだ自然の環境。冥界の森で生まれたボクであるのだから、町中を行くよりずっと走りやすいのも当たり前のことだ。

 

 となればつい最近まで人間だったゼノヴィアは、もちろん『慣れ』が真逆だった。

 案の定、そこに突入するや否や、後ろから鈍い音とうめき声が鳴った。

 

 さすがに置いて行くわけにもいかず、立ち止まって振り返る。根っこに足を引っかけたらしく、涙目で地面に這いつくばるゼノヴィアに、ボクは見下ろしたまま首を傾けた。

 

「何やってるの」

 

 簡潔な嘲りに、ゼノヴィアは汗まみれの顔を上げる。

 

「脚が……ハァ、縺れたんだ……!疲れたんだよ……っ!……むしろあなたが……フゥ……人を避けながら、あれだけ走ったのに……なぜ息の一つも……切れていないんだ……」

 

「鍛え方の差。後はキミ、走り方に無駄が多いんだにゃ。……悪魔の駒(イーヴィル・ピース)、『騎士(ナイト)』の特性は速度だったよね?こんなのでバテる程度なら、上り幅も大したことないみたい」

 

「無駄……無駄か……」

 

 せわしなく肩を上下させ、呼吸音の狭間に繰り返す。背を丸めて項垂れるみたいに俯いた彼女は、頭を垂らした両膝の間から、疲労の滲み出た声色で呟くように言った。

 

「ここに、たどり着くまで……無駄に時間がかかった気がしたが……なるほど、そのせいか……」

 

「ううん、気のせいじゃなくて、無駄にあちこち走ったよ。公園からここまで、直線距離で大体五キロくらいかにゃ。たぶんその五倍は回り道したかも」

 

「……私だって、心が傷つくことは、あるんだぞ……」

 

 中心街からは外れていても、人の少なくない通りを全力疾走して、迷惑にならないわけがない。実際、目を剥く人間は多かった。

 

 けれどそれから生じる文句は、何者かもわからないボクではなく、学生服なんていう実にわかりやすい所属証明を身に纏うゼノヴィア、つまりは学園へ向くのだ。余計に走れば走るほど、理事であるあの魔王への嫌がらせとなる。

 

 けち臭い意趣返しであることは理解している。が、町中を走り回った目的に付属するおまけ効果なのだから、わざわざ避ける理由がない。

 それだけのことなのだが、どうやらゼノヴィアの善性に擦り傷を作ってしまったようだった。

 

 まあたいしたことではないし、機嫌が直るのなら謝ってやろうかと、ボクは青臭い緑の芳香を吸い込んだ。しかしそれが声になる前、汗を飛ばして勢いよく顔を上げたゼノヴィアが、やけに明るい声色で、なぜだか息を吹き返した。

 

「しかしつまり、これこそが修行というわけなのだな……っ!心を乱さず、困難な道を走り抜けるという、中々精神的な――」

 

「ただの嫌がらせだよ。森を突っ切ろうとしてるのも含めて」

 

 そして同時に別の目的、ミルたんからの頼まれ事のためでもある。移動に詰め込んだ動機のそっちはやはり口にせず、ボクはゼノヴィアの無事をその唖然とした間抜け面に認めると、頭を触る邪魔な小枝を手折って彼女に向けた。

 

「腹が立つなら帰ってもらっていい、って言いたいところだけど、キミはやる気なんでしょ?心配しなくても、『念』はちゃんと教えてあげるよ。ほら、さっさと行くよ」

 

 枝を投げ捨て、返事を待たずに走り出す。たちまち重なった枝葉の奥に消えるボク。慌てて起き上がったゼノヴィアの脚は、本人の申告通り震えてなかなか前に進まなかったが、その内元気を取り戻すだろうと無視して進んだ。自身の『気』を、『念』を使えずとも感じられるくらいに溢れさせている現状、せめてその気配を感じ取って追って来れる程度の感覚がなくては教え甲斐もない。

 

 しかし憂慮、あるいは期待は生憎叶わず、汗で朽ちかけの枯葉をしこたま貼り付けたゼノヴィアは、歯を食い締めて震えを止めると、迷うことなく駆けだした。自然の障害に気を取られてその速度はだいぶ遅いが、左右に進路を揺らしてやってもしっかりと付いてくる。

 いよいよなくなった、指導をすっぽかす選択肢に別れを告げ、せめてもの抵抗に本気で地面の腐葉土を蹴り飛ばし、彼我の距離を一気に離した。

 

 

 

 数分で、ボクは目的地に到着した。山麓の森の中、ひっそり隠れるように建つ建造物。微かに聖なる力を発するそれは、とうの昔に廃れたのだろう教会だった。

 

 正面扉が倒れて開け放たれた内部には、半ばから折れた十字架と破壊された祭壇が転がり、左右の長椅子、壁に天井にステンドグラスまでがすべからく薄汚れている。人が通れるほどの大穴すら開いていた。

 

 冗談みたいに薄い聖なる力でわかってはいたことだが、やはりこの教会、廃れて長いのだろう。そも悪魔の縄張りに聖書に属する教会が存在すること自体が奇妙なのだ。勢力争いがこじれて両者とも手が出せないのか、知りようも知る気もないが、しかしとにかく、めったなことでは人が来ない場所であることは確実だ。

 

 敷地も広く、ここで『念』に目覚めさせても予期せぬ客人の訪れはないだろう。『気』をものにするまでどれくらいかかるかわからないが、ここでならのんびり待てそうだ。天気の乱れを心配する必要もない。

 

「なんでか知らないけど、地下まであるし」

 

 元々祭壇があったのだろう身廊の先にぽっかり空いた下り階段を覗き込み、案外広そうなその空間へ、興味のまま降りてゆこうとした。

 

 しかしその一歩目で、暇つぶしの必要は無くなった。

 教会の外から、強い光と気配がボクの元まで届いたからだ。

 

 何事かと一瞬身構え、それがあの時見た聖剣、ゼノヴィアのデュランダルであることを思い出し、ボクは心の底からため息をつく。そして次の瞬間、振り下ろされた光が、一直線に木々を押し潰した。

 

 もしかしたらふもとの人間に気付かれたかもしれない。それくらいの轟音と振動。教会内をも照らした光にピリピリ肌を焼かれながら、やむなくボクは携帯を取り出した。足を引き上げ入り口に戻りつつ、予定変更の短文を送信する。

 操作が終わって再びポケットにしまう頃、森を派手に切り開いた犯人が、残った切り株の間から、剣を杖によろよろと姿を現した。

 

「まさか、こんな手に出るとは想像してなかったにゃあ」

 

 体力が底をついているのか、ゼノヴィアは聖剣を取り落としてへたり込み、掠れた声で言った。

 

「……こ――」

 

「……こ?」

 

 ばたんと、仰向けに倒れ込んだ。

 

「この手に、限る……」

 

「アホなこと言えるなら、まだまだ元気そうだにゃ。もう一周してみる?」

 

「い、いや、すまな……すみま、せん……本当に……もう限界……」

 

「そう?残念」

 

 オーバーワークで潰してやろうかと、割と本気で思っていた。

 しかし制服が透けるくらいに全身汗だくな彼女の言葉に嘘はないだろう。平面で散々イジメてやったその脚に山行は、自然の障害も相俟ってちろん相当な辛さだっただろうが、だからといってなぜ聖剣で一帯のそれらを排除するなんて発想に至るのか。

 

 人の迷惑がどうこうと言う割に自然環境への関心が薄いのは、混ざった悪魔の性質か、それともゼノヴィア本人の性格か。興味はあるが、それを責め立てると土地の権利がどうこうと面倒な予感がしたので呑み込んでしゃがみ、いい加減擦れた喘ぎ声がうるさいゼノヴィアの顔に、ペットボトルに詰めた水道水をぶっかけてやった。

 

 飲用に用意したものではなかったが、五百ミリが空っぽになればゼノヴィアは息を吹き返した。今度は真水でびしょぬれになった彼女は、数回荒い深呼吸をすると震える腕を突っ張って上体を起こし、その眼に正面の廃れた教会を映した。

 

「……しかし、皮肉か、フェルさん。悪魔の修行場所に、普通、教会を選ぶか?」

 

「別に問題ないでしょ?もう潰れてるんだから。それに聖剣もまだ使えてるみたいだし、教会の威光の残りカスくらいなんてことないはずだにゃ」

 

「そういう意味ではなく……破門された身で、私がここに居ることが、何かを汚しているような、そんな気がしてな。……まあ今更、どうでもいいことだが」

 

 聞きながら投げ捨てた空のペットボトルに、ゼノヴィアが眉をひそめて不機嫌を示す。やはり基準がよくわからない。

 何か言いたそうにボクを見た彼女だが、さすがに話を逸らしてまでの憤りではないらしく、大きく息を吐くと、疲労でぎこちなく周囲を見回した。

 

「しかし……ここにもウタさんはいないのか。フェルさんが珍しく一人だったから、私はてっきり、何か修行の準備でもしてくれているのかと思っていたが……。なあフェルさん、実際のところ、どうなんだ?魔王のように、白音の公開授業にでも行っているのだろうか」

 

「違うよ。……うん」

 

 つい反射的に否定の返答を送ってしまって、悔いる間もなく危惧通りにゼノヴィアが食らいつく。

 

「それはそうか、厳密にはまだ師弟ですらないものな、あの二人は。……しかしとなれば、私には他にあり得そうな可能性が想像できない。あの人は、今どこにいるんだ?」

 

「……ボクには、キミがそこまでしてウタの所在を知りたがる理由が想像できないよ」

 

 恐らく、またあの訳のわからないこだわりなのだろう。しらを切ってやっても良かったが、ピカピカ派手な森林伐採を許してしまった以上、何をさせようが目的の成否は変わらない。

 

 なら別にいいかと、ボクはゼノヴィアの、答えを聞くまで引きませんと言わんばかりに一直線な眼がまた何か喚く前に、黙らせるべく餌を差し出してやった。

 

「厳密にどこ(・・)っていうのはとにかくとして、この近くにはいるよ」

 

「……近く?」

 

 純粋な眼差しが、そのままぱちぱち瞬きをする。意味を処理する最中であるらしいそこに、続けて呆れたふうを作って言った。

 

「心当たりもない?それは残念だにゃ。こっそり追いかけてくれてたんだけど」

 

 出る直前の言葉と一緒に息を呑み、目が見開いた。

 

「まあ確かに、『念』なしでボクの『気』の中から見つけるのは、ちょっとキミの才能を高望みしすぎたかにゃ。体力も思ったよりなかったし、しょうがないね」

 

「な、なるほど……!ウタさんのこともまた、修行の一環というわけか……!『気』とやらを感じる術を磨けと、そういうわけだな、フェルさん!」

 

「うん、そういうこと」

 

 それっぽく微笑みながら、ボクはでたらめを肯定した。

 

 実際は修行の意図どころか、そもそもゼノヴィアとの関連性すらない。場所をこの、身を隠しやすい小山に建つ教会に決めたのも同様、ミルたんからの頼み事、その対象を誘うために他ならない。

 適当に撒いた『気』で、興味を釣られて自ら姿を現してくれるのが望ましかったが、ゼノヴィアのおかげで警戒心を焚きつけてしまった今となっては叶わぬ理想。

 

 だからボクは、真に受けたゼノヴィアが必死の形相で周囲を見回しても、それを止めることをしなかった。

 

「大丈夫だフェルさん!私は勘には自信がある!それにだいぶ体力も回復してきたしな、期待外れでないことを証明してみせるさ!」

 

 滑稽だなと、ちょっとだけ笑いはしたが。

 

 しかし微かに漏れたその嘲笑は、直後ほんの少しだけ持ち上がり、感心に変わった。

 

 睨むように周囲の木々を見やっていたゼノヴィアが、不意にぴたりと動きを止め、その一点に向いたまま固まった。風に揺らぐ葉をじっと見つめ、そしておもむろに立ち上がると、目を閉じる。

 

 十数秒後、弾かれたように目を開けて、そこを指さし興奮気味に叫んだ。

 

「あっちだフェルさん!さっそく見つけたぞ!人の気配がする――気がする!どうだ!?もしやこれが『念』なのか!?」

 

 期待に輝く眼をボクに向ける彼女の指の先には、確かに隠された『気』があった。

 

 見つけられた理由は『念』とは言い難く、ほとんど彼女自慢の勘によるもの。しかし、差し向けられた指はぴたりとその気配へ向いていた。

 

 資質は、明らかにあった。

 だが、

 

「残念。それ、呼んでない方だにゃ」

 

「……なに?」

 

 呼んでない方(・・・・・・)。向けた言葉に、二人が揃って動揺を見せる。ボクは続けて立ち上がり、その半端な『絶』の使い手に向けて、戦意を表情と声色から押し出し口角を上げた。

 

「他は知らないけど、『念』はヘタクソだね、ヴァーリ」

 

「……そうらしいな。お前だけでなく、まさかデュランダル使いにも気付かれるとは……やはり曹操の猿真似では無理があるか」

 

 ジャラジャラ鎖のついたビジュアル系の恰好で、白龍皇ヴァーリはきまり悪そうに苦笑しながら森の中から現れた。

 

「白龍皇ッ!?また貴様か!!」

 

 顔が見えるや否や、ゼノヴィアは地面に転がったデュランダルに飛びつき拾い上げ、ヴァーリに切っ先を向ける。

 

 彼女の主たる赤髪、ひいては悪魔にとって敵といって差し支えない、『神の子を見張る者(グリゴリ)』の構成員。赤龍帝の存在と相俟って警戒せざるを得ないのだろう。

 だがその震える腕と脚、おまけに全身ずぶぬれのあられもない姿に威圧感など生じるはずもなく、ヴァーリは自分へ向けられた聖剣の『力』を意識すらせずに前を素通りし、僅かな困惑と共にポケットから出した片手を差し出した。

 

「案外と早い再会だったな、フェル。気配がしたから来てみたが、思った通りだ。とはいえ、残念ながら勝負のお誘いではなかったらしいが」

 

 ようやく一瞬、ちらりとゼノヴィアに眼をやって、握手に応じないボクを見限り腕組みをする。疑問で、首がちょっと傾いた。

 

「どうやらこいつは悪魔のようだが……俺は殺すのを邪魔したわけではないだろう?やたらと気配を振りまいて、いったい何をしていたんだ?」

 

 秘密にすることでもない。無視されてご立腹な様子のゼノヴィアを眼で黙らせ、答えた。

 

「『念』を教えるんだよ。元々この町に来たのもそんな理由でさ、要は……うん、ハンターのお仕事にゃ」

 

 己の目的、野望のために何かを狩る、ある意味で『何でも屋』と言い換えることもできるハンターという職業。お金欲しさにこんなことをやっていると、彼は思ってくれただろう。

 

 ついでにやむなき事情の存在を共感してくれるよう片手間に祈りつつ、ボクはゆっくり首を振る。ヴァ―リは、意外そうに目を丸くした。そして続き、期待を覗かせる。

 

「驚きだ。君たちは育てるよりも殺す方が好きだろうに……いや待て、ということはもしや、赤龍帝も鍛えるのか?だとしたら、多少は戦えるようになるんだろうか」

 

「そういう話にはなっちゃってるけど、キミと対等までもっていくのはちょっと無理かにゃあ」

 

「……そうか。そううまくはいかないか」

 

 そう手っ取り早くキミらの差が埋まるわけがないだろうと、呆れる手前で立ち止まる。思っていたよりも肩を落として気落ちしていたからだった。

 

 宿敵としていずれ戦う定めであるらしい、赤龍帝と白龍皇の因縁。ボクに想像できるはずもないが、本来ならば生涯最大の敵であるはずのその相手が、自分に及びもつかないほど格下であるということは、それなりにショックが大きいようだ。

 

 少なくとも、別の敵で慰められるものではないのだろう。途端、微かにあったボクへの戦意もすっかりなくしたヴァ―リは、その端正な顔立ちで絵になるため息を吐く。そして億劫そうに周囲を見回し、気付いて腑に落ちたと顔を上げた。

 

「そういえば、ウタの姿が見えないな。彼女が赤龍帝の担当か。君のそのお誘いは、つまり彼女らへの目印だと」

 

「……今となってはそうかもね」

 

 含んだ言い回しは、ヴァーリの眉間に薄く皺を寄せる。

 仔細を言わずとも、その内疑問は解けていただろう。だがボクは、彼のその眼差しに答えた。

 

「キミも聞いたでしょ?ゼノヴィアが聖剣を使ったおっきな音。あれでもう、おびき寄せることはできなくなっちゃったからさ」

 

「聞いたが……おびき寄せる?赤龍帝をか?」

 

 緊張と気まずさが合わさってそわそわと落ち着きないゼノヴィアを横目に、「違うよ」と否定する。

 

「アレは今、学園。夏休みに入るまで運動したくないんだって」

 

「……なるほど」

 

「そうそう。で、待ってるのはウタと、別の人間。『念』教室するならついでにって、ミルたんに頼まれちゃってさ、一緒に教えることになったんだにゃ」

 

 なんとも言えない表情を作るヴァーリが、ミルたんの名前に反応して眉を上げた。彼の同類、魔法少女ハンターを自称する集団を思い浮かべてしまったのか、それを否定するようにかぶりを振る。

 

 その拍子に気配にも気付いたようで、切り開かれた一帯の反対に顔が向くと、変わり映えのしない森林を透かして見つめてため息のように言った。

 

「……人間か。君の指導を受けられるとは、彼も幸運だな」

 

 クロカはともかく、彼女が連れてくる人間はまだ念能力者ではないのだ。多少なり『念』を修めているヴァーリにここまで悟らせなかっただけでも十分、ゼノヴィアに負けず劣らずの才だろう。

 

 当の彼女は気配どころではないらしく、気付いている様子はない。ましてや『裏ハンター試験』のことなど知るはずもない知識から、ヴァーリの納得と同様の結果を導き出すのは不可能だ。

 

「そ、それはつまり、私と一誠以外に人間の弟子が加わるということか……?だから聖剣が、超常の力の存在が……」

 

 知られるのはまずかったと、そんな自責のようだが、残念ながら的外れ。

 

「むしろ三大勢力とかそっちのことは、キミから教えてやって。言葉よりも実物を見たほうが理解も早い」

 

「しかし……聖剣も悪魔も、一般的には秘匿されるべきで……」

 

「うん、だから、一般じゃないんだよ」

 

 接近した気配が、とうとう音が聞こえるまでに近付いた。風音に混じる気の揺れる音はやはりゼノヴィアには聞き分けられず、きょとんとした表情。

 

「ならば……何なんだ?」

 

「ハンター」

 

 同時、ヴァーリが目する木々の間から、音を立てて人影が飛び出した。

 

 ボクの簡潔すぎる答えと、その人影が担いだ簀巻きに動揺を混乱させるゼノヴィア。言葉を忘れて呆然と見つめる彼女に、ぐるぐる巻きに縛られ猿轡をかまされた禿げ頭を乱暴に下ろした人影は、額を拭って付け加える。

 

「――の、卵ね。半年前にタネが付いたばっかりの」

 

 クロカは満足げにそう言った。

 

「お疲れ様、ウタ。結構時間かかったね。ソイツ、できそう?」

 

 ゼノヴィアに見たように、禿げ頭の評価を訊く。尺取虫みたいに這いずり逃げ出そうとするその背を今度は踏みつけて押さえ、鳴るくぐもった悲鳴を完全無視して、クロカは鼻の眼鏡を押し上げ答えた。

 

「まあ、平均以上であることは間違いないわ。捕まえるの手間取っちゃったし。さすが忍者ってとこね」

 

「ほう、ニンジャ……ジャパニーズシノビか。本物を見たのは初めてだ」

 

「私だってそうよ。そもそも忍者って正体隠すものだし、なのにこいつやたらと自己主張激しいし……ていうか、なんでここに白龍皇がいるわけ?コレより、まずそっちが知りたいんだけど」

 

「ただの通りすがりだ、そう心配せずとも何もしないさ。人の仕事の邪魔をするほど常識がないわけじゃない。……少なくとも今は。

 それよりも、ニンジャはニンポウなる摩訶不思議な術を使うと聞いたぞ。カゲブンシンにゴウカキュウに……どうだった?彼は使えるのか?」

 

「さあ?手間取ったっていっても追いかけっこしただけだし……あ、でも私、影分身の術みたいなことはできるわよ。『念』でだけど。ていうか、忍法自体がそもそも『念』なんじゃない?」

 

「……そうなのか。残念だ」

 

「んぐ――ぷはッ!いやあんたら、マンガの『ニンジャ』毒されすぎだろ!モノホンの忍法はもっとこう……ちゃんとした仕掛けがあんだよ!てか『ネン』ってなんだ!」

 

 皆の視線が一斉に下へ向く。禿げ頭の男が吠えていた。

 自力で猿轡を外したらしく、踏まれながら歯を剥いている。クロカとヴァ―リに珍しい生き物扱いをされることに耐えかねたようで、二人を睨んだ眼は鋭いまま、縛られた身をくねらせボクらをも威嚇し、怨みたらしく鼻を鳴らした。

 

「へんっ!随分とまあ姦しいことで。てめえら全員、このデカチチ暴力女のなか――べぶんっ!!」

 

 侮辱の言葉につい手が出た。べき、と骨の音が混じった乾いた破裂音にクロカが『やっちゃった』と天を仰ぐが、これでも理性は留め、しゃがんでからの平手打ち一発で我慢したのだ。加減もした。むしろ褒めて惜しい。

 

 しかし気絶はしないまでも、一撃はしっかり禿げ頭のヒエラルキーに届いていた。張り飛ばされた顔をゆっくり戻した禿げ頭は、えもいわれぬ真顔にて、真っ赤に腫れあがった片頬と唇を動かした。

 

「……皆様全員、こちらのナイスバディな眼鏡のお姉さんのお仲間なのでしょうか」

 

「うんまあ、今はそう思ってもらっていいよ。説明するの面倒だし。それじゃさっそく、まずは『念』を使えるようになろうか。ねえ、ハンゾー?」

 

「――ッ!?」

 

 禿げ頭の男は呼ばれた己の名に真顔を取りやめ、なぜオレの名を、と声ならぬ声で目を丸くする。

 

 口をあんぐり開けて硬直する主張の強いリアクションはクロカの言う通り、ボクの知識にある忍者ともかけ離れたものだ。本当にミルたんが言った『ハンゾー』はコイツであっているのかと不安になるが、開き直って立ち上がる。どうせ報酬もないハンターの義務活動だ。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!ニンジャ?ハンター?頭が混乱してきたぞ。彼が『念』の修行を受けるのか?」

 

 それまでの目まぐるしさにあっけに取られていたゼノヴィアが、進む話に辛うじて割り込んだ。しかしもちろん、惑乱はそのまま。彼女にとって『念』は願い出て教わるもので、間違っても拘束までして教え込まれるものではないのだ。人生を担保にしただけに、無理矢理連れてこられたハンゾーが弟弟子(おとうとでし)であることが理解できないのだろう。

 

 一方のハンゾーも、同じく理解できていない。ただしこちらはそもそも『念』が何かすらわかっておらず、修行云々以前の問題だ。上下関係を植え付けられようが、彼がボクたちを見る眼は異常者に対する忌避でしかなかった。

 

 そしてそんな集団に捕らえられ、転がされている文句と対話の希望は、四人の内、強さも理解も最も下位に位置するゼノヴィアに集まり、向けられた。

 

「『ネン』だろうが『ナン』だろうが知らねえが、そんな訳のわからないもんを教わる気なんてねえよ。それにそんなに嫌ならよ、他の三人も説得しちゃあくれねえか?押し売りレッスンなんてしなくても、解放してくれるならちゃんと礼もするからさ。なあ、頼むよ青髪痴女ちゃんよ」

 

「あ、青髪痴女!?それはまさか、私に言っているのか?!」

 

「じゃなけりゃそんな堂々見せびらかさねえだろ。水かぶってバッチリ透けさせてよ」

 

 ゼノヴィアがバッと弾かれるように自身の胸元に眼を落とし、羞恥で顔を染めて両腕で隠す。

 

 ああ気付いていなかったのかと、場の全員が呆れて苦笑いした。

 

「だっ、黙れ!やめろ!私には羞恥心だってあるんだ!フェルさんもウタさんも……それに白龍皇、特にお前だ!なぜ今まで反応の一つもしてくれなかった!?この私の美乳が露になっていれば、男なら視線の一つも向くだろう!?」

 

「生憎、俺は赤龍帝のような色狂いではないんでな。そういう催しはそっちでやってくれ」

 

「フェルさん!ウタさん!」

 

「見られて困るようなものとは思わなかったからにゃ」

 

「同じく。そういうタイプの娘かと思ってたわ」

 

「……凌辱された気分だ。肌を見られて騒ぐのはアーシアの役目であるはずなのに……けど、やっぱりちょっとは乙女心というのを気遣ってほしい……」

 

 いじけて地面にしゃがみこんでしまうゼノヴィア。高さの合った視線で、ハンゾーが気遣わしげな顔をする。

 

「その……なんだ。オレは里での修行で、変装のための表情コントロールとか……そーいうの身に着けてるから顔に出なかっただけでな……。うん、制御してなかったら、鼻血の一つも出ていたぞ。いい身体してる」

 

「……キモいが、ありがとう」

 

「あと今、パンツ見えてるぞ」

 

「死ね変態!」

 

 腫れた顔面も相成って性事情に疎いボクでも背が泡立つキモい笑みから、破裂したゼノヴィアの赤面が聖剣でハンゾーをかち上げる。剣の腹で殴打された身体が宙を舞って一回転し、頭上を抜ける寸前でボクが襟首を捕まえた。

 

 止められた勢いが喉元近くの荒縄に集中し、蛙が潰されたような音。しかしそれでもノックアウトには至らなかったようで、下ろして首元の縄を緩めてやるなりぜーぜーやかましく深呼吸したハンゾーは、息を整えると、どこか投げやりな調子で笑って言った。

 

「そんでよォ、実際のところ、あんたらみたいなバケモノ集団がオレに何の用なんだ。オレのハンターライセンスでもご入用かい?」

 

「あら、やっと話を聞いてくれる気になったの?」

 

 最終的に全身拘束せざるを得ないほどの追いかけっこを経験したクロカが、ハンゾーの顔を覗き込んで所労を吐き出す。ハンゾーは、今までの強気にも下手にも当たらない乾いた諦めを、口の端に乗せる。

 

「そりゃあな。一番弱そうな青髪すらもあのバカ力だ。正味もうどうにかできる気がしねえ。目的は見当もつかねえが、煮るなり焼くなり好きにしろよ」

 

「……バカだと!?まだ言うか変態ハゲめ!私を愚弄するのもいい加減にしろ!」

 

「そういう意味のバカじゃねえし!それに変態はともかくオレはハゲじゃねえ!!これは剃ってんだ!!」

 

 そこは譲れないポイントらしい。過去に何かあったのだろうか。

 弱みのにおいがするが、しかし今は置いておく。今後のことを思うなら、反抗的なままで放置するより協力的な関係を築いたほうがずっといい。なにせボクは、少なくともゼノヴィアが勝ち取った二ヵ月弱の間、このハンゾーにも『念』を教えなければならないのだ。

 

「スキンヘッドもハゲも、結局は一緒だろう!バカはお前だ変態!」

 

「一緒じゃないですー!一緒くたに捉える方がバカなんですー!大体お前、オレがハンター試験のためにどれだけ勉強したと思ってんだ!その人離れしたバカ力で真剣振って、しかし学生服着てるってことは、つまりそういうことなんだろ!羨ましいなら羨ましいって言え!青髪バカ痴女!」

 

「ま、また言ったな貴様!私は別に、そういう意図で学園に通っているわけではない!ただ仕方なく……うう……なぜ私がこんな役回りを……」

 

 不真面目な生徒は一人で十分。ついでに自身のキャラクターに疑問を抱きつつあるゼノヴィアも放っておいて、ボクはハンゾーを縛る縄を再び持ち上げ言った。

 

「そう、そのハンター試験なんだよ、ハンゾー」

 

「げぅ!……な、何がだ……!」

 

 二度目はなく、首が閉まる寸前で顎に引っ掛け、事なきを得たハンゾーの後頭部に、ボクは続ける。

 

「キミが合格したそれ、実は……言うなれば表のハンター試験でさ、もう一つ、裏の試験があるんだよ」

 

「は。……それが、『ネン』だとかいうモンだってのか」

 

「そうそう、話が早くて助かるにゃ」

 

 息と同時に飛び出した驚愕の気配をすぐにしまい込み、核心を見つけ出す頭の回転の速さ。まあ悪くない。

 

「肉体の生命エネルギーを操って、それで身体を強化したりする技術のこと。これが扱えるくらい強くないと、例えば同じ念能力者とか、あるいは神器(セイクリッド・ギア)使いとか悪魔に魔物だとかの人外に対抗できない。だから『裏ハンター試験』として、表の試験に合格したハンターの受精卵たちに教えることになってるんだよね。……たまたまボクが居合わせたから、だからボクがキミの担当になっちゃったってわけ」

 

 だが長々説明してやったそれらの現実離れした内容には、さしもの彼も感情を隠せなかった。

 

「悪魔に……なんだって?いよいよ話がぶっ飛んできたな。ハンター協会は中二病煩ってる集団だったのか?」

 

「ちょっと待ってくれフェルさん。もしかして、ハンターになったら『念』は教えてもらえるものなのか……?お金がなくとも……?」

 

 決断の意義に気付きかけているゼノヴィアはやはり相手にせず、ボクはハンゾーを引きずってクロカに差し出す。受け渡し、正面を向いた彼の上目遣いを見下ろして、にっこり微笑んでみせた。

 

「世の中、キミが思ってるほどマトモじゃないんだよ。すぐわかるにゃ」

 

 言って、顎を引く彼の不信に疑念が宿るのを見届けると、ゼノヴィアにも手招きをする。気付きへの思考を邪魔されたらしく、ふらふらとやってくる彼女。こちらもクロカに引き渡し、三歩離れてボクは切り飛ばされた丸太の上に胡坐をかいた。

 

「さ、とにかくまずは『精孔』を開かないとお話にならない。成功するかはキミたち次第だから、まあ自然体でがんばってにゃ。ウタ、よろしく」

 

「あれ?私がやるの?」

 

「だって、ボクがやったらまずくにゃい?」

 

「ああ……にゃるほど、ね」

 

 ボクの『気』の性質を思い出し、納得してくれたクロカ。しかし当然、彼女に掴まれた二人には何のことやらだろう。案の定、ハンゾーがじたばたと暴れる。

 

「ちょ、ちょっと待て!好きにしろとは言ったが、せめてもうちょっとまともな説明をくれよ!『ショウコウ』とか、また訳のわからん……なあそこの銀髪の兄ちゃん!なんとか言ってくれ!」

 

「……ハンター試験、合格できればお金なしで指導が……?……あれ?私が悪魔に転生したのって……」

 

「なに、失敗しても死にはしないさ。……まあ恐らくだが。何分俺は『念』に詳しいわけではなくてね。まあ何かの縁だ、見物させてもらうから、頑張ってくれ」

 

 ヴァーリの応援は、残念ながら希望になり得なかったらしい。虚勢も薄れて顔を青くするハンゾー――と全く別の理由で同じく顔面蒼白なゼノヴィア――だったが、生憎クロカは二人の背に触れており、その様子には気付かなかった。

 

 気付いていても、恐らく手を止めることはなかっただろうが。

 

「せ、せめて里の兄弟に遺言を――」

 

「じゃ、いくわよ」

 

 教会の敷地に溢れかえった二人の『気』は、才のおかげか数分で治まった。




ハンター原作を基準に当てはめるとこの時期にハンゾーが念を習得していないのはおかしいとか、色々あるとは思いますが、どうにか時空を捻じ曲げているのでご容赦ください感想ください。
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