主なきノラネコたちの家   作:もちごめさん

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十二話

 どさり、と人が倒れ込む音に、ボクはそっちを振り向いた。

 

 ハンゾーだ。びっしょりと汗まみれで、必死の呼吸を繰り返しながら仰向けに転がっている。『纏』すらか細くなるほどの、もう何度も目にした限界値の疲労は、ボクの視線に気付くと力なく顔をしかめた。

 

 見てんじゃねえよ、とでも頭の中で言っているのだろう。なにせ両手足を大の字に放り出したこの状況、今日だけですでに十回目だ。難癖をつけるまでもなく無様。その原因の一端となっているゼノヴィアとの剣戟に於いても、剣士という適性と悪魔の膂力によってやはり防戦一方で、今までいいところが一つもない。腕の仕込み刀も、折れてはいないが、聖剣との打ち合いであちこち酷く刃こぼれしていた。

 

 そんな有様だが、とはいえゼノヴィアが好調というわけではない。ぐらぁん、と、今度は重い金属の塊が地面に身を落とす音。前傾した聖剣デュランダルの青い刀身、その重量と勢いを支えられず、堕ちた切っ先が地面を叩くと同時に、担い手の彼女が巴投げされるみたいに一回転して投げ飛ばされた。

 長く残る金属音の中でその身体が落下して、「ぐげ」と肺の中の空気が押し出される。ハンゾーと同じくほとんど『絶』に近いほど『気』を空にして、干からびた呼吸音を吐きながら、ぐったりと身体が地面に沈んだ。

 

 やらせた剣戟の勝ち負けはともかくとして、疲労の度合いはどっちもどっちで最高潮だ。立つだけの元気も出し尽くし、少なくともすぐには回復すまい。

 彼らが決めた罰ゲームをハンゾーに促すことも、啖呵切ったのに休むのかと煽ることも、恐らく意味がないほどに疲れ切っている。故にボクは疲労で全く動けない彼らに休息を与えてやるべく、取り出した端末の時計を確認し、にっこり感心しているふうな笑みを浮かべてやった。

 

「んー、今回は十一分くらい維持できたかにゃ、『練』バージョンの『周』。……二週間前、『周』を始めたばっかりの頃から三分も伸びてる。纏わせられる『気』もちゃんとしてるし、うん、順調なようで何よりにゃ」

 

 楽をするための企みとはいえ、紛れもない労いの言葉であるつもりだった。のだが、向けた先のハンゾーはそう捉えてくれず、億劫そうに回した首でボクをジトっと睨みつけてきた。明らかな不審が滲むその視線で、彼は荒い息の狭間から声を発する。

 

「……これが……ハァ……順調な、もんかよ……ふう……こんな……ぶっ倒れてんのに……」

 

「うん?そんなことないよ。大丈夫大丈夫。……倒れたら、また立ち上がればいいんだよ」

 

 暇つぶしに読んだ三文小説の台詞を引用してやるも、やはり眼差しの色は変わらない。よっこらせ、とオッサン臭く上体を起こしたハンゾーは、ちょっと咳き込んでから不審の続きを言った。

 

「……立ち上がって、また倒れるってのを、ずっと繰り返してるだけな気が……するんだが……。……なあ、フェル……この実戦形式、ほんとに、『練』での『周』を習得する修行になってる、んだよな……?」

 

「そうそう。ボクもこれやって苦労して覚えたからさ、折り紙付きにゃ」

 

「……なんか、やっぱ適当っぽく聞こえるのは……気のせいか……?」

 

「気のせい気のせい」

 

 人当たり良くした笑みと共に言ってやって、さらにはまた嘘を重ねるが、それでもハンゾーが納得に転じる気配はなかった。むしろ疑心が深くなってしまったようで、腕を組んでボクを睨みつける眼には、不審のみならず小さな憤りまでもが見て取れる。

 

 視線を通して深くを暴かれそうで、ボクは曖昧に微笑んでハンゾーから眼をどけた。その行き先はゼノヴィア。漏洩を心配する必要がない彼女の、その意識も定かでないほど疲れ切った様子を見物し、身体ごとそっちへ向けた。

 

「気のせいだろうけど……でも疲れすぎて集中力が落ちてるのかもね。休憩、あげよっか?」

 

「……休憩……」

 

 息だけが出入りしていた口元に、小さく言葉が通り抜けた。呟いたゼノヴィアは眼だけで隣に転がるデュランダルを見て、そして瞬きと共に木の葉の天井に視線を戻すと、投げ出された両の手をグッと握り締めた。

 

「……私は……このままで、本当に『結』を会得できるんだろうか……」

 

 ゼノヴィアが初めて漏らした泣き言だった。クロカに修行バカと称されるほど鍛錬に熱心である故に、ボクも聞くことはないだろうと思っていたその弱音。

 反応した動揺が愉悦に変わらないよう気を付けながら、ボクはまた誤魔化しを試みた。

 

「大丈夫だってば。何がそんなに不安なの?」

 

「だって……ほとんど進歩していない……。『周』をしたまま戦うどころか、私なんて、もはや発動することすら覚束ないんだぞ……?もう二週間も修行しているのに……!」

 

 そう、会得できるはずがない『練』での『周』を薦めて実戦闘の修行を言い渡してから、すでに経過した二週間。ボクの思惑など知らず、習得できるものと信じて耐えてきた彼女には相当に長い時間だっただろう。

 

 なにせ今までに学んだ技は、どれも一週間ほどで会得できていた。『なんとか使いものにはなるレベル』が合格ラインであり、そもそも『練』の維持、『堅』がそれらとは比べ物にならないほど難しいためであるが、しかしそうであるという意識が薄いであろう彼女には、目に見える上達を感じられない二週間という倍の期間はかなりの精神の摩耗があったに違いない。

 

「……今休憩なんてしたら……心が折れそうだ……。修行で疲れたからうまく行かないなんて……それこそ、今まで頑張った意味がなかったと、言っているようなものじゃないか……」

 

 それほどの間、進歩のなさに苦しんで、今とうとう溢れてしまったのだ。となれば今更の『休憩』は、彼女にとってはボクシングで投げられる白タオル。気性と合わせて憐憫と捉えられるのみだろう。彼女に『周』の才能がないと告げるようなものだ。

 

 『周』の先、『結』に今までで一番のやる気を出していた彼女が、その言葉に耐えられるはずもない。

 

 だからボクは、そこをさらにえぐってやろうと笑みを深めた。

 

「まあでも、そもそも応用技っていうのは体力を消耗しやすい技だし、『纏』や『練』よりも疲れるのは当然だよ。だから長く続けてたら失敗しやすくなるのも当たり前」

 

 ゼノヴィアはびくりと背を跳ねさせ、その疲労の具合からすれば驚くほどの機敏さで身体を起こし、必死の形相をボクに向けた。

 

「でも、『凝』ができなかったことはない……!だから『周』は……何か、アドバイスとか……い、至らない点くらい、あるだろう……?私が気付けていないだけで、そういうのを潰していけば、きっとちゃんと習得が……」

 

「そういうの、特にはないかにゃあ。だから、うん、やっぱりちょっと休憩してみれば?そりゃあもちろん劇的には変わらないだろうけど、一日くらい休めばちょっとはうまくできるようになるかも。ゆっくり地道に続けていけば、その内ものにできると思うよ」

 

「でも……でも……うう……やっぱり、才能の問題なのか……?」

 

「早熟か晩熟かって話じゃない?ネテロも、強くなったのはだいぶ年になってからだって話だし。……まあ、さすがに『周』にこれだけ手間取ることはなかっただろうけどね」

 

「慰めるのか追い打ちをかけるのか、どっちかにしてくれ!」

 

 涙の感情をごちゃまぜにされたゼノヴィアが、血色の良くなった顔で叫んだ。

 

 そのいかにもな動揺ぶりのツッコミは、必死と混ざってボクの口角を上げる。二週間前であったら追い打ち一辺倒であったところだが、しかし今となってはそこにさほどの執念はない。正直に言って、元気付いて無為な修行を再開しようが、心を折られて諦めようが、もはやどちらでも構わないのだ。

 

 そうであるが故の、攻撃ではない揶揄い。それで混乱して喚く姿は愉快だった。

 

 だから、少し気が緩んでしまっていた。

 

 恐らくボクの台詞を疑いを以って聞いていたハンゾーが、横から疑心ばかりの口調で、それを言う。

 

「待て、『ゆっくり地道に続けていけば』、つったか?」

 

 身体から、一息に興奮が流れ出た。無理矢理冷静に戻された頭がハンゾーの言わんとすることを瞬時に悟り、小さく笑いを零していた喉がきゅっと閉まる。

 

 迂闊だった。確かにそれは、指導する気が一かけらもない(・・・・・・・・・・・・・)と取られても不思議ではない。

 

「……?どうした、ハンゾー?フェルさんも……継続は力なり、という話だろう?……才能がなくても、続けていればいつかは、という……」

 

 自分で才能を認めてしまって勝手に再度落ち込むゼノヴィアは、やはり気付いてはいないようだ。身体の疲労と修行への悩みにかかりきりの頭では、先のことを考えていられないらしい。

 

 だが平時でも多少頭が回るハンゾーは、そもそも『ゆっくり(・・・・)している暇がない(・・・・・・・・)ことに気付いている。だから恐らく、疑心から辿ってボクの台詞の適当に気付き、確信へと固めてしまったのだ。

 

「……ゼノヴィア、やっぱお前、頭から飛んじまってんな?」

 

「は……?何の話だ……?」

 

 首を捻るゼノヴィアを、ハンゾーは呆れに鼻を鳴らしてジト目を向けた。

 

「日本の高等学校における夏休みってのは、通常約六週間だ。つまり、オレとフェルとウタが冥界にいられる期間、修行の期間も大体そうなる。そのうち最初の一週間は冥界に行くための準備やらなんやらで潰れて、次の一週間は『凝』、さらにその次の二週間は『周』で潰れた。……合計四週間。残るは約二週間なわけだ」

 

「馬鹿にしているのか?そんなことはわかっている!だから二週間かけてゆっくりと――」

 

「だからよぉ!その二週間は悪魔の用事で埋まってるって、リアスから話があったろ!」

 

 その用事の最初の一つである、ハンター協会と『V5』の人間を撒き込んだパーティーが、ちょうど明日の夜に行われる。つまり、そういうことだ。

 

「要は『ゆっくり』も何も、お前たちは実質、今日が修行の最終日なんだよ!」

 

 だからゼノヴィアが元気付いて無為な修行を再開しようが、心を折られて諦めようが、どちらでも構わない。面倒なだけの苦役となった悪魔への奉仕は、もはや今日で終わりであるのだ。

 

 合間合間に空けられる時間はあるだろうが、細切れでは、特に『周』なんかの持続が肝心な修行が全く意味をなさない。そうでなくても、倒れるまで『周』のまま試合を続けるといった本気の修行はとてもできないだろう。

 だから人間であり、パーティーに出なければいけない立場でもないハンゾーはともかくとして、ゼノヴィアにとっては今日が実質的な最終日(・・・・・・・・・・)なのだ。

 

 冥界に向かう列車を前にしたその当時、申し訳なさそうに説明していた赤髪の言葉が、どうやら本格的な『念』修行への期待と興奮で忘却の彼方に消え去ってしまっていたようだった。

 

「……へ……?今日が……最終日……?つまり……私の『周』は……『結』は……?」

 

 ショック過ぎて思考が止まり、放心のゼノヴィアは何も見えていない眼でハンゾーを凝視している。感情まで彼方に消え去ってしまった彼女から、ハンゾーは憐れみを以てして視線を外し、次いでそれを批判に変えてボクへ向けた。

 

「んで、フェル。お前はそれを知っていながら黙ってたわけだ。またいつもの……いやいつものってか、ここのところ加減を知らなくなった悪魔嫌いが出たんだろうが……」

 

「まあ……うん、そう。わざと黙ってた。シロネもいなくなっちゃったし、ゼノヴィアしかいじめられるの、いないんだよね」

 

「いじめ……はは……本当なのか、それ……」

 

「しかもそれだけじゃないだろ、性悪師匠」

 

 肯定してゼノヴィアにお待ちかねの追い打ちをかけてやると、愉悦で一息つく間もなく続く詰問。姉弟子の仇討ちだけでは終わらないだろうと思ってはいたが、とはいえボクの思惑のすべてを見破ったと宣言されて、いい気分になるわけもない。

 

 しかしこうなった以上、無暗に否定しても意味はなく、故にボクはせめてもの抵抗に、不敵を笑みに組み込んだ。

 

「ヘンタイ弟子のクセに、酷いこと言うにゃあ。なに?言ってみなよ、『それだけじゃない』って?」

 

 間違っても『見破られて悔しがっている』なんてことを悟られないよう、蔑みを込めて鼻を鳴らす。『ヘンタイ』に毎度の如くいきり立ったハンゾーが、なんとかそれを押し留め、言った。

 

「……『練』での『周』の修行法、あれ、どこまでか知らんが嘘っぱちだろ」

 

 残念、大正解だ。

 

「う……そ……?」

 

「だってそうだろ。二週間で進歩ゼロだぜ?『凝』やってる時はだんだん上達してく実感だってあったのに、それすらねーんだ。オレら二人とも『周』の才能が欠けてるんだとしても、さすがに限度があるわ。順調とか適当言いやがるし」

 

 ショックの過剰摂取でゼノヴィアは今にも失神してしまいそうだが、ハンゾーは続けてボクに向き直り、詰る。

 

「……『纏』も『練』も『凝』も、今まではなんやかんやでちゃんと指導してくれてたし、オレもマジかって思ったけど……思えば一誠も大分やられてんだ。それに筋トレと違って『念』なんて、何が正しいのかオレたちには判断つかん。だから調子に乗ってこんな大嘘言えたんだろうよ」

 

「じ……実戦形式が……嘘だったという……?」

 

「何がかはわかんねーよ。オレらはまだまだ『念』素人だし、知識は全部フェルとウタ産だし。……まあたぶん、『纏』の『周』から『練』での『周』にレベルアップってのがまずかったんじゃねーの?ぶっ倒れるのは大体『練』を保てなくなった時だから……いや、そうだよ、そうじゃねーか……。はあ、なんだってこんな簡単なことに気付けなかったんだか……」

 

 改めて呆れと批難のため息を吐いて、うんざり肩を落としたハンゾーは再度地面に大の字になった。

 

 面倒くさかったという理由にはたどり着かなかったが、しかし凡そハンゾーの想像通り。二人の『周』がボロボロになっている原因は、勧めたレベルアップの『堅』が、段階飛ばしで難しいからだ。

 

 それに今まで気付かなかったのは、ハンゾーが言ったように、今まではなんやかんやで正しく効率よく教えてやっていたから。『堅』を『纏』と同じように捉えて、できないはずがないと思ってしまったから。そういった信頼と固定観念が発想の邪魔をしたのだろう。ゼノヴィアはともかくハンゾーも案外盲目的だ。

 

 ほぼ堕ちかけの信頼で、本当かとボクを見つめてくるゼノヴィアに、ボクは半分嗤いながら口を開いた。

 

「うん、確かに、『練』を維持したまま戦うっていうのはひよっこがやることじゃないね」

 

 信頼が底を叩いた音がしたが、ひとまず無視して続ける。

 

「『練』を『纏』のように維持するっていうことが、そもそも『堅』っていう応用技なわけだから。それに『周』も、キミたちは簡単だって言ってたけど……それは発動が『纏』の延長だから容易いっていうだけで、長時間制御するのはちゃんと難しいんだよ。そんな技二つを併用してたんだから、そりゃあキミたちに扱えるはずがない。どっちもまずは単体で会得して、それからっていうのが適当な順序だと思うよ。……まあボクは、普通の『周』を会得した次に『絶』をやる気でいたけど。ハンゾーはハンターなんだから、気配消しの技は必須にゃ」

 

 自白されたボクの悪事に意気が失墜し、さらにはついでのように修行終了の宣言を突き付けられたゼノヴィア。既にハンゾーのための修行が計画されていることに、彼女は己がこなしてきた二週間を遡って夢想した。

 

 段々萎んで涙を堪えるみたいにとがった唇は、底に零れた最後の一滴の信頼を、恨めしさに混ぜてボクに垂らす。

 

「つ、つまり……私のこの二週間は、最初から無駄なものだったと……?」

 

 その表情に頭をよぎった彼女のチョロさで一瞬迷い、そして結局、頷いて終わらせるより、首を横に振って長く楽しむことを選んだ。

 

「んー、まるっきり無駄だったってことはないよ。碌にできてなかったとはいえ『周』と『堅』の二つに触れられた訳だから、もしキミが夏休みの後も『結』の会得を目指すなら、結構なアドバンテージだと思うにゃ。どっちも足がかりにはなったでしょ?」

 

 ゼノヴィアもハンゾーも、疲労さえなければ『周』と『堅』使うこと自体は可能だ。維持はできないが、それはつまり、維持さえできるようになれば使い物にはなるということ。そして持続のための修行は『凝』と違って指導者がいなくても可能であるし、もし相手が必要だとしても、仲間の悪魔たちに頼めばいい。

 

「ついでに言えば、物事って口で教えられるより自分で気付いたほうが身になりやすいからさ。ほら、百聞は一見に如かず――のアレだよ。だから要は、そういう理由もあって、あえて黙ってたわけなんだよね」

 

「ッ!な、なるほど!そんなに深い考えがあったのか……!すまない、危うくフェルさんのことを悪い奴だと誤解してしまうところだった……。私は……未熟だな……。どちらにも気付くことができなかったなんて……」

 

 適当にくっつけた言い訳が、少しも引っ掛かることなくゼノヴィアの納得を引っ張り出した。見える安堵は今まで勝手に溜まり続けた信頼の賜物か、それを元に戻せたということは、つまりこれからもこれを崩して遊ぶことができるのだ。

 

 今日で修行をつけるのは終わりだが、しかし細切れの空き時間を修行に充てる意味がないことを知らなかった赤髪によって、あと二週間は冥界に滞在する契約になっている。おちょくれる機会はいくらでもあるだろう。願わくばその時は今回のように、『凝』の時の羞恥ではなく、絶望漂う苦しみの表情を見せてほしいものだ。

 あるいはそこに、近いうちにと予約済みのヴァーリとの試合をねじ込めれば、より楽しくなるかもしれない。

 

 「まーた誤魔化されてら」と興味を無くして首を逸らしたハンゾーと対照的に先への楽しみを見出すボクは、ピコピコ勝手に動く己の尻尾を長丈ズボンの上から押さえつけた。

 

 そんなボクたち二人の内心など露知らず、一気に元気を回復させたゼノヴィアは、溌溂としたそれで勢いよく立ち上がった。

 

「よし!そうとわかればうじうじしている場合じゃない!ハンゾー!修行を再開するぞ!」

 

 一方のハンゾーは、背もたれにしていた幹から梯子を外されたみたいにずるっと滑り落ち、数舜呆けてから我に返ると、こちらも勢いよく立ち上がって喚き出した。

 

「アホか!いったいどーなってんだてめーの頭はよ!修行法がでたらめな上に、今さっきもう時間がねーって教えてやったばっかだろ!?今度はどこに飛んでいきやがったその記憶!」

 

「む……忘れるわけがないだろう?今日が最終日であることくらいわかっている!それに、最終日といっても今日はまだ続く。それまでに……そう、フェルさんの言う通り、アドバンテージをもっと稼ぐんだ!目指すは『周』と、それに『堅』の完全習得!そら、始めるぞハンゾー!」

 

「だからその自信はどっから来てんだよ!騙されたばっかだろ!?ちょっとは疑うこと覚えろお前!大体、『堅』の完全習得だぁ!?本気で言ってんのか!?」

 

「もちろんだ!是が非でも習得してみせる!それくらいの気概がなくてどうするというんだ!」

 

「気概だなんだ以前に、修行にしてももうちょっと自分で考えてからにしろって話だろうが!またお前騙されるぞ!?そうでなくても、一日足らずで応用技を二つも覚えるとか、無茶にもほどが――」

 

「何が無茶だ!イッセーを見てみろ!彼は私たち以上の困難にずっと立ち向かい続けているんだぞ!?」

 

 と、二者間で応酬されていた言葉の矛先が、その名と共に突然明後日の方向に向いた。ゼノヴィアの指が示した大樹の、捻じれた枝葉の奥がびくりと固まり、次いで唾を飛ばしまくっていたハンゾーの口が、そっちを向いて勢いを弱めた。

 

「……ありゃあ、無茶じゃなく無謀って言うんだよ」

 

「いやお前ら!なに居場所ばらしてくれてんだよ!?」

 

 あやふやになった言い争いに割り入って、信じられないとばかりに叫ぶ三人目の声。気付いていないふりをやめてボクも見上げてやると、その太い枝木の上にはもう見慣れてしまった茶髪の転生悪魔、赤龍帝が、身を縮めてしゃがみ込んでいた。

 

 ボクが視認するとほぼ同時に赤龍帝も見られていることに気付き、反射的に周囲の枝を引いて、茂った葉っぱで視線を切る。その勢いでバランスを崩したのか、次の瞬間には慌てて手を離し均衡を取り、そしてどうにか落ち着いて息を吐いた後、ようやく再びムッとした声を投げ落とした。

 

「……ほら見ろ、せっかく苦労して登ったのに、気付かれちまったじゃねえか!ゼノヴィア、ハンゾー、お前らのせいだぞ!」

 

 その台詞にはさすがの二人も言い争う余地なく肩をすくめ、呆れの息を吐き出した。

 

「多分……てか間違いなく、フェルは最初から気付いてたぞ」

 

「ああ、木に登る音も普通に聞こえていたしな」

 

「ええ!?マジ!?」

 

 その通り。むしろ気付けない奴は戦う者として論外だ。

 

 それは逆も然りなのだが、しかしそんな言葉の裏を悟ることなく、ぎょっとして目を見張った赤龍帝は頭を振ってそれを掻き消した。次いで改めてボクに視線を向け、握った左手に本体である【赤龍帝の小手(ブーステッド・ギア)】を顕現させる。

 

「く、くそぉ。奇襲しようと思ってたのに……。しかしせっかくここまで来た以上、やることは一つ!」

 

 やけに力強く独り言を言って、ワキワキ蠢く両手が前に出る。眼下のボクへ覆いかぶさるみたいに身体が傾き、まっすぐボクを見たその表情が、あの厭らしく歪んだ獣欲で染まった。

 

 高らかと、盛ったサルのように、

 

「いざ……お触り自由の極楽浄土が、俺を呼んでいるんだああぁぁぁ!!」

 

 ボクめがけて真っ逆さまに降ってきた。

 

 『ボクに触れることができたら筋トレはナシ』というあのゲームは、今日までずっと続いていた。ひたすら遊んでやったというのにものともせず、全く諦める様子がないそのしつこさは途中まで感心すらできたのだが、しかしその動機。

 

 今日になるまで確信を抱きたくはなかったが、それは筋トレの免除ではなく、ボクの身体であるようだった。

 

 より正確に言えば、胸か。いっぱいいっぱいに伸びた気色悪い手が狙うのは毎回そこで、なんなら頭上からの奇襲を掛けんと潜伏していた時でも、視線はしっかりこの双丘に向いていた。そんな不純が、数多のマフィアすら比にならないほどありあり感じられるのだ。

 

 だからこの赤龍帝は、女日照りのマフィアすら凌駕するほどの女好きということなのだろう。一応でも弟子である奴がそうであると認めたくはなかったが、しかし今日、ゼノヴィアと同様に修行の最終日を迎え、そのことを木の上で聞いていたであろう奴が、ゲームの勝利の無価値を知っても尚ボクに触れる欲望を剥き出しにしてくるのだから、もうどうしようもなかった。

 

 禁手化(バランス・ブレイク)の経緯も含めて、赤龍帝はちょっとイカれてるレベルで性欲の塊だ。

 

「いっただきまああぁぁぁっす!!」

 

 受け入れなければいけない事実と『フェル』に設定された印象にため息を吐いて、ボクはボクに抱き着こうと広がった赤龍帝の腕を、身を引いて躱した。

 

 ゲームを始めた最初の一週間だったら、このまま地面に激突していただろう。だが、もはや数えるのも億劫なほど襲撃を繰り返し、その度あしらわれてきた奴は、それらを学習してしまっている。故にばさりと、背から悪魔の羽を生やした。

 頭からの落下が支えられ反転し、靴の底が地面を向く。羽で飛ぶことすらできない奴が一週間でどうにか会得した、空中で体勢を立て直す方法。とはいえやっぱり飛ぶことはできないので、そのまま地面に着地した。

 

「ぬふふふ……そう、ここまでは織り込み済み……!だからこそ俺はここでぇ……脚力を倍加ッ!!」

 

 鼻の下が伸び切ったドヤ顔がニタァと笑い、左腕の小手から『Boost!!』と、すぐに続いて『Explosion!!』の声が響いた。倍増した力は言葉の通り、両脚に集まる。

 少ない時間で高められた力は二倍ぽっちとはいえ、ボクと赤龍帝との距離はあまりに近すぎる。奴が動いてからでは回避が間に合わず、故にボクは奴の脚の力が発揮される前に動いた。今度は横軸で突っ込んでくるその軌道を、横に避ける。

 

 それとほぼ同時に、赤龍帝はボクが動くであろう分、足で蹴る地面の角度を調整していた。

 

 ぴったり、ボクの動きの兆しに合わせてきた。

 

「もらったアアァァァッ!!」

 

 だがさすがに、フェイントにまで気は回っていなかった。

 

「避けることくらいわかって――ってあれ――んぶッ!!」

 

 ずん、と。背の高い草の群生とボクの背後に隠れていた木が揺れる。己の欲に夢中であったために周りが見えていなかった赤龍帝は、強化したダッシュ力のまま、太いその幹に正面から激突してしまったのだった。

 

 断末魔のうめき声が事切れ、樹皮にめり込んだ顔が剥がれる。仰向けにひっくり返った赤龍帝は衝突の衝撃で鼻血を噴いて白目を剥き、ぴくぴく痙攣だけを繰り返していた。どうやら、気絶してしまったようだ。

 攻撃しないと明言したが、しかし怪我をさせないとは言っていない。勝手に自滅(・・・・・)した赤龍帝へ、ボクは発見してしまった嫌悪と共にため息を吐いた。

 

「な?無謀だったろ?」

 

「……さすがに、この部分を見習えとは言っていない……つもりだ」

 

 ハンゾーとゼノヴィアも呆れは同様で、伸びた赤龍帝を見下ろし言う。仲間だろうが友だろうが、あの獣欲には近づきたくないらしい。

 

 しかしそのまま放っておくわけにもいかず、やがて諦めたゼノヴィアがハンゾーを小突いて回収に行かせた。しょうがなしと引っ張り上げた赤龍帝の身体を背負うハンゾーの働きを眺めながら、ゼノヴィアは躊躇いがちにボクへ寄ってきた。

 

「今までゆっくり見たことはなかったが……イッセーはフェルさんに対してもいつもこうなのか……?つまり、その……そう、セクハラというやつだ」

 

「らしいね。思えば初めて見た時から胸がどうこう言ってたし……まあ、あれはウタへ言ってたみたいだけど。……惹かれるのはわからないでもないし、男がそういうものだってことは知ってるつもりなんだけど……どうしてあそこまで夢中になれるのかにゃあ?ねえ、ハンゾーはどう思う?」

 

「おい馬鹿やめろ!!オレを巻き込むなよこういうことに!」

 

 声を潜めたゼノヴィアの配慮を踏みにじって、ハンゾーを吠えさせる。赤龍帝を荷物の傍に下ろしながら、そんないつかの羞恥で大仰に反応する彼。それに何を思ったのか一瞬自分の胸元に眼を落としたゼノヴィアの注意は若干茫洋としてしまっているが、しかし終われば修行バカが蘇るだろう。終了まで、つまり夜まではもう数時間だろうが、しかしあの熱量を相手にするのはやはりちょっと面倒くさい。

 

 だからボクは、赤龍帝唯一の功績である今の呆れで止まった空気感を引き延ばすべく、クロカと曹操に倣って再び揶揄いの言葉を口にした。

 

 その最初の一音が出る寸前だった。

 

「――ッ!!」

 

 ボクの第六感が突然騒ぎ、言われるがままその方向、幅広の葉で埋まった空を見上げる。もちろん警戒すべきものなど何も見えないが、しかし反してどんどん警戒心の度合いが高まっていった。

 

 ただならぬその様子に、まずハンゾーが気付いてやかましく動く口を塞いだ。冥界という未知の異界に対する警戒はきちんと残していたようで、わざとらしい表情を消し、一転した真面目で尋ねる。

 

「フェル……敵か?」

 

「……さあね」

 

 呟き返す間に、ボクの本能の部分がそのざわめきの正体を看破していた。

 

 野生の魔獣なんかの、サバイバル的な危険ではない。感じる最も大きな気配は、そんなものよりもずっと強大だ。

 

 恐らく、ドラゴンが近付いてきている。それもただのドラゴンではなく、強い上に、悪魔混じり。

 

「な、なんだ、二人ともどうしたんだ……?」

 

 仲間外れで危機感のないゼノヴィアが不安そうに首を傾けると同時、上空から吹き付ける風圧によって、ボクの予想が凡そ正解であることを確信した。

 

 ハリケーンもかくやといった暴風に立ち割られた木の葉の天井から露になったのは、間違いなく、翼をはためかせる巨体だった。

 

「――ど、ドラゴン!?モノホンのドラゴンだぁ!!?」

 

「なぜこんなところに!?」

 

 人間の世では空想上の生物とされているそれを眼にして、興奮に警戒心を吹き飛ばされたハンゾーとゼノヴィアだったが、しかしもちろんボクは我を失いはしない。

 

 できるはずがない。現れたそのドラゴンに感じる強者の気配、恐らく転生悪魔であろうことへの忌避、それらもあるが、それ以上にボクの内心を覆ったのは、憎悪。視認したドラゴンの背に、屋敷以来の純血悪魔の存在を感じたからだった。

 

 羽ばたくドラゴンが降りてくるにつれ、嫌が応に気分がささくれ立っていく。溢れる『気』で二人の興奮が冷えていくのを感じながら、拓いた広場の端に着地したドラゴンの、その背から滑り降りた偉丈夫の男悪魔へ眼を注いでいた。

 

 引き締められた表情筋に一筋汗を滴らせてから、ソイツはボクを直視して、口を開いた。

 

「失礼する……!ハンターのフェル殿とお見受けするが」

 

「……そうだけど、何の用?ドラゴンまで引き連れて」

 

 眼を、ボクの何十倍もある図体で佇むドラゴンのほうにも持ち上げる。すると少し焦ったようにして、純血悪魔が前のめりにドラゴンを庇った。

 

 しかし何か言う前に当のドラゴンがそれを制し、純血悪魔よりは幾らか落ち着いたふうに目礼をした。

 

「自己紹介が先だな。俺は、タンニーンだ。……元龍王の一角、『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』……と言えば、用事(・・)もわかってもらえるだろうか」

 

「わからないね。その龍王とやらが悪魔になってることも含めて」

 

 言葉と声に敵意が溢れる。巨体が息を詰めるが、すぐに取り戻し、腕を組んで軽く頷いた。

 

「それは……もっともだ。転生に関してはやむを得ない事情があってな。……しかし、用事のほうには関係ない」

 

 はぐらかすと、次にその眼がびくりと背を伸ばしたハンゾーの、まさにその背中に背負われた赤龍帝に向き、白目鼻血で失神するその姿を見てしかめられる。

 

「ドライグを宿す者が鍛えていると聞いて、様子を見に来たのだ。……が、ふむ、随分熱心にやっているようだ」

 

『どちらかと言えば、これは相棒が暴走した結果だ、タンニーン。だがまあ、身体能力という意味では、大分成長したな』

 

「……なるほど、ならば俺が手を貸す必要もなさそうだ。よかったな、ドライグ」

 

 赤龍帝に代わって中の本人が答えた。小手の宝玉の明滅に、実体が在るほうのドラゴン、タンニーンが、ドラゴン故にわかりにくい笑みを零す。

 

 封印された知り合いに対する懸念のためか、とりあえずはそれで納得し、次にボクは本命へ意識をやって促した。視線をやらずとも純血悪魔は肩を震えさせ、間に用意したらしい自己紹介で、強張る身体に鞭を入れた。

 

「俺は、サイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ。俺も赤龍帝には興味がないわけではないが、しかし、ここに来た目的は違う。……フェル殿、俺は貴殿に会いに来た」

 

「……で?」

 

 よくいる尊大な物言いではないが、しかしそれでも増した不快感で睨みつける。奴は恐れに湧いた生唾を呑み、それでもまた一歩前へ出た。

 

「……リアスが通う学園での活躍を、聞いた。『念』の拳でコカビエルを打倒したと。……ハンターの中でも指折りの念能力者であり、武闘家なのだろう?俺と同じ、拳一つのパワータイプだ」

 

 まっすぐボクの眼を捉えたまま、『フェル』の評価を言う。ボク本来は『武闘家』でも『拳一つのパワータイプ』でもないつもりだが、ボクの肉体を人間に当てはめればそう評されるのも無理はない。戦闘用の能力、【黒子舞想(テレプシコーラ)】は、『フェル』では使えないのだ。他の能力も、結局今のところ人前――否、悪魔前では使っていない。

 

 だから目をつけられたのかと、奴のその視線を憎悪を以って睨み続ける。すると純血悪魔はまた挑発されているとでも感じたのか、一つ大きく息を吸いこんだ。溜めの間が開き、冷や汗でない汗が滲む。

 

 そして次の瞬間、奴の『気』が爆発的に増大した。

 

 『練』だ。

 

 はち切れんばかりに膨れ上がった筋肉達磨に、ボクの隣のゼノヴィアとハンゾーが驚きの声を上げる。その『気』の圧と、そもそも『念』が使えたことがその理由だろうが前者はともかく後者に動揺するのは失点。最初から『凝』で見てさえいれば、常態の奴の『気』が非能力者のように垂れ流されておらず整っていたことくらい、二人の未熟な技量でもわかっていただろう。気圧されるだけで済んだはずだ。

 

 怪しいと感じたら何を措いても『凝』。この鉄則はさすがに教えておこうと意識の端に留めるボクに、筋肉達磨は険しさを増した顔で言う。

 

「見ての通り、俺も、一応は念能力者だ。が、ほとんど独学な上、冥界にはもう俺に教えをもたらせるほどの念使いがいなくてな、ここ数年は、正直伸び悩んでいる。……応用技とやらも碌に知らない故に、『練』の『オーラ』で殴る蹴るが関の山だ」

 

 などと言うが、しかしその『オーラ』――『気』に裏打ちされた『練』は、凡庸なハンターを軽く凌ぐほどのものだ。それだけで大抵の敵は押し潰せるだろう。もちろんボクをどうこうできるほどではないが、しかし警戒心は引き上げざるを得ない。少なくとも、敵にはなり得るのだから。

 

 そんな思いを憎悪の上に塗りたくって無言で睨むばかりのボクに、筋肉達磨はゆっくりと拳を握った。

 

「……念能力者として、俺は未熟だ。だからといって、『念』を諦めることはできない。『念』しかないんだ、強くなる方法が。……フェル殿が今、リアスの眷属に『念』の修行をつけているのは知っている。それに混ぜてくれとは言わない。ただ……手合わせを願いたい」

 

「それを知ってるなら、ボクが悪魔嫌いなことも知ってるよね?……殺してほしいの?」

 

「……できることなら、殺しはよしてほしい。俺にはまだやるべきことが山ほど残っているからな。だが、その手前までなら覚悟はできている。本気でやってもらって結構、そうでなければ戦う意味がない。だから……どうだろうか」

 

 つまり武者修行をしているつもりなのだ、コイツは。戦いを通してボクの技を盗んでやろうという魂胆。そしてそれは、ボクにとっても利のある話だ。

 いつものはぐれ悪魔なんかではない、正真正銘純血の貴族悪魔。赤髪と同列の存在を好きにいたぶれる機会など、これを逃せばもう訪れはしないだろう。ヴァーリとの戦いと並ぶ、いや、それ以上の喜びだ。

 

 が、しかしだ。

 

「やだね。断る」

 

 頷くはずがない。

 

 筋肉達磨はボクの返答に一瞬目を見張り、低く唸るように尋ねてきた。

 

「……それは、なぜだ?その三人、いや、二人に念能力者同士の戦いを見せるという意味でも、そちらにメリットのない話というわけでもないはずだ。もし俺が後で何か言うかもしれないと思うなら、誓約書を書いてもいい。どれだけ手ひどくやられても、文句は言わない」

 

「死んだら誓いも何もないでしょ」

 

「――ッ!!」

 

 吐き出した殺意に、筋肉達磨が言葉を呑み込む音がした。

 

 そう、殺す手前までなんて言うが、もしそこまで行ったとしたらだ。

 

「勢い余って殺しちゃうし、絶対」

 

 今だって、目の前の仇を殺したくてたまらないのだ。我慢なんてできるはずがない。

 そしてバアル家、七十二柱の一つである名家の次期当主を殺してしまえば、そんなものを悪魔共が見逃すわけもない。『フェル』と『ウタ』までもがお尋ね者の仲間入りしてしまう。それは駄目だ。

 

「わかったら、ほら、さっさとどっか行ってくれる?ボクが我慢できるうちに」

 

「……だ、だが……」

 

 殺意を受けて『練』が随分萎んだが、しかしあっという間に一刀両断されて感情が追い付かないらしく、未練の言葉が口を突く。それにまたかさを増した苛立ちを、瞬時にボクはぶちまけようとした。

 

 それを、聞き知った声が諫めて止めた。

 

「そう言うな、フェル。若手最強との呼び声高いサイラオーグ殿からの、せっかくのお誘いだぞ?」

 

「ッ!……曹操……」

 

 いつものにやけ面が、いつの間にかタンニーンの隣に立っていた。

 

 悪魔共に気を取られるあまり、気付かなかった。失態だ。というかなぜコイツはわざわざ気配を消して現れるのだろうか。

 もしかしたら上手さを自慢しているのかもしれないが、ともあれおかげで忌々しさの熱量がさらに上がった。が、しかし同時にその台詞を言ったあからさまな批難の口調から、ボクは曹操の意図を悟って爆発しかけた頭を冷やす。

 

 膨張を止めたその憎悪に恐らく内心で安堵のため息を吐いてから、曹操は手の槍を突いて筋肉達磨の一歩前に進み出た。

 

「本当なら、お前が意見できるような方じゃないんだ。命令することもできるのに、頭を下げてくださっているんだぞ?それを――」

 

「知らないよ、そんなの。命令だろうが何だろうが、聞いてやる義理なんてないね。ホントに殺すよ?」

 

「おいおい、大王家の御子息になんてことを言うんだ。……本気か?」

 

 言う理由を理解していてもイラつくその悪魔贔屓が呟かれると、瞬間ボクは溢れる『気』を一つに握り、地を蹴った。

 

 ほんの一瞬が空き、突き出した拳が固い感触にぶち当たる。迫力に思わず身を引いた筋肉達磨の前でボクの攻撃を受け止めたのは、もちろん曹操。両手に構え『周』が為された、槍の柄だ。

 

 束ねた『気』の凡そ八割を乗せたボクの殴打とギシギシせめぎ合いながら、曹操がちょっと本気の焦りを滲ませ言う。

 

「……まさかここまでするとは、想像の埒外だな。本気を出すなよ」

 

「ふん……オマエが調子に乗るからだよ。それに、ちゃんと寸止めするつもりだった。……とにかく、本気だっていうのはわかってくれた?」

 

「はぁ……ああ、わかったさ。どうやらやはり、お前には貴人に対する態度というものを教える必要がありそうだ。その度が過ぎた悪魔嫌いの抑え方も」

 

「無理だね、こればっかりは……。やれるものならやってみなよ、曹操」

 

 槍にかける力をじわじわ強め、演出する(・・・・)一触即発の空気感。幸いなことに違和感はないようで、曹操の奥のタンニーンもが動揺で身を固くする。

 背後のハンゾーとゼノヴィアもボクたちの『気』に充てられて、凍り付いていた。それを認識すると、関連して思考の中にまで、今まさに曹操が『周』を使っている事実が転がり込む。それが芋づる式にこの前のお遊び的な戦いを思い出し、そういえばコイツ『結』もできるじゃん、という気付きを弾き出した。

 

 今後の自主修行でゼノヴィアに泣き付かれた時のぶん投げ先を発見したボクは、その例も兼ねて『調子に乗ったこと』を水に流してやることに決め、最後のダメ押しに、空いた左手のほうに残り二割の『気』を集めて見せた。

 

 そこでようやく、筋肉達磨が必死の声を上げた。

 

「やめてくれ!曹操殿も……争ってまで俺の願いを聞いてほしいとは思わない。地位にものを言わせるのもな……。……わかった、フェル殿。手合わせは、諦めよう」

 

 赤髪と似た甘さを利用して自ら取り下げさせるという曹操の作戦が、見事に成功した瞬間だった。

 

 それを悟って息を吐き、ボクと同時に半ば本気の戦闘態勢を解いた曹操がこの場に来たのは、そもそも筋肉達磨を止めるため、穏便に事を治めるためだ。実際、下手をすればタンニーンと合わせてまずい事態になりかねなかった。そこは、感謝をすべきだろう。

 

 だからついでに、筋肉達磨のボクへの注意が消えないこともどうにかしてくれと、それを浴びながらボクは曹操に無言の抗議を送っていた。

 

「だから諦める代わりに……せめて見学をさせてはくれないか。リアスの眷属と……もう一人のスキンヘッドの彼は、人間の弟子か?とにかく、その様子を見せてくれるだけでいい。他はもう何も望まない」

 

「あー、それは……それくらいなら、いいんじゃないか?なあ、フェル」

 

「……いいわけないよ」

 

 職務放棄した奴を一つ睨んでやって、ボクは息を吐く。その内訳は悪魔への憎悪と、そして上手い断り方が見つからない腹立たしさだ。

 

 何しろあの眼。甘くはあるが、しかしゼノヴィア似ている。我が強く熱意は高く、つまるところ、『念』にすべてを賭けている故に、奴には諦めて去るという選択肢が端から存在しないのだ。

 

 その尋常ならざる硬い意志の理由は知ったことではないが、とにかく奴は何としてでも『念』の技術を掴むつもりなのだろう。『争ってまで』だとか『地位にものを言わせて』だとか言っているが、いよいよとなればその甘さすら熱意の炉にくべるかもしれない。そうなった場合、ボクはとてつもない拷問を受ける羽目になる。

 曹操の計略で最初の致命的はうやむやにできたが、それも永遠に続けられはしない。だから今のうちに妥協すべきなのだ。見学するだけというならボクの衝動も暴れはしないだろうし、我慢の苦痛も最低限で済む。

 

 ただそれでも素直に受け入れることが心情的にできない故に、ボクは苦労して拒否の理屈を捻り出した。

 

「……ここに留まりたいなら、シロネに話を通してくれる?あのチビッ子の土地なんだから」

 

 言ってからシロネが拒否できるはずがないことに気付き、閉口する。案の定、筋肉達磨は緊張と恐怖の表情を少し不思議そう歪めた。

 

 そして何かしらの言葉が、その忌々しき純血悪魔の口から吐き出される――その直前に、今までの耳障りをすべて洗い流し、内心に蓄積した『負』までもを吹き飛ばしてしまうくらいの『大切』が、ボクの聴覚を優しく揺らした。

 

 二週間ぶりのクロカの存在に、安らぎが全身を覆った。

 

「生憎、話は無理ね。だからさっさと消えることをお勧めするわ、タンニーンに、サイラオーグ・バアル」

 

 振り向いてその姿を眼にすれば、視覚的にも欠けていたものが満たされるのを感じる。それは黒歌も同じなようで、眼が合うと微かに表情をほころばせた。

 

 その背中にはなぜか気絶しているらしいシロネが背負われているが、しかしクロカはまるで気にしていないふうに乱暴に彼女を下ろすと、改めて招かれざる悪魔二匹を険峻な眼で見やって、言う。

 

「ていうか、これはそもそもどういう状況なわけ?すごい気配がしたと思って慌てて来てみれば睨みあってるだけだし、それに曹操までいるし」

 

「俺のことは気にしないでくれ。要はサイラオーグ殿が修行の見学を申し出て、フェルがそれにごねてるだけだ」

 

「別にごねてるわけじゃない。……曹操、キミどうして毎回腹が立つことばっかりするわけ?」

 

「……いや、別に毎回ということはないだろう?それに、今回ばかりは正当性もある。槍の仇だ」

 

 ちょっと言い辛そうにして鼻を鳴らし、次いで曹操は手にする槍をくるりと回転してみせる。と思えばボクの打撃を受け止めた柄からぽっきり折れてしまい、「結構いい値がする業物だったんだぞ」と、半笑いの中に確かに見える恨めしげを認めてしまって、思わず顔を背けた。

 

「……オマエがでしゃばったせいだからね。ボクは知らない」

 

 だがまあ、二割くらいは謝ってやろう。内心でおざなりに詫びてやった。

 

 だというのにまだまだ言い足りない様子の曹操を排するため、ボクは土の上に倒れ伏してピクリとも動かないシロネに注意を向けた。

 

「それで、ウタ。そっちは何があったの?……見たところ、骨まで折れてるみたいだけど」

 

「……な、なに!?骨!?ウタさんは白音に何をしたんだ!?」

 

 ようやく我に返り、横入りするゼノヴィアの心配。駆け寄ってシロネを抱き上げた彼女に、クロカは面倒くさそうに答えた。

 

「何でもないわよ。修行中のちょっとした事故と、オーバーワークでぶっ倒れただけ。ほっといてもいずれ目を覚ますわ。まあ、骨折は治るまで時間が掛かるだろうけど」

 

「……疲労はまだしも、骨折は良くないぞ、フェルさん。まさか知らないのか?私たちはもうすぐ悪魔の催し物に出席しなければならないんだ。怪我をしたままというのは困る。……だろう?ハンゾー」

 

「……まあ、そうだな」

 

 歯切れ悪くした同意には、お前もさっきまで忘れてただろ、という呆れが表れていたが、しかし巻き込まれたくないハンゾーは賢しくも沈黙を選んだようだ。

 

 ボクも大いに不満であるところだが、僅かに眉を上げたクロカは実際そのことを忘れていたようで、喉を鳴らした彼女の前に挟む言葉を、ボクはハンゾーと同様沈黙に変えて見守った。

 

「そういえば、そんなことも言ってたかしらね。じゃあまあ、治す手伝いはしてあげる。で、その『出席しなければならない催し物』っていうのは、いつにあるわけ?」

 

「……え、ええっと……それは……」

 

 苛立ち混じりのクロカの問い。しかし知るはずもないゼノヴィアは、もごもご口を噤む。せっかくのハンゾーの行為も無為に、結局いびられるかと思ったが、しかしそれは引き継がれて持ち上げられた。

 

 筋肉達磨が、恐れを顔色に露にしながらも堂々と答えた。

 

「明日だ。明日の夜に、俺たち若手悪魔の交流会と、ハンター協会や『V5』の面々のレセプションを兼ねたパーティーがある。……確かに、怪我を残したまま参加というのは、主の恥となりかねん。あまり褒められたものではないな」

 

「……そう、なら、アーシアとか言ったっけ?ゼノヴィア、あいつ、回復系の神器(セイクリッド・ギア)持ってるんでしょ?やらせればいいわ。修行にもなるし」

「それは、まあ……そうかもしれないが……」

 

 いかにも腑に落ちないふうに、首を捻りながらゼノヴィアは頷く。器用なことをやったその原因は修行の言葉でも隠し切れない対処の他人任せだろうが、しかし反論するまでには至らなかったようだ。

 

 とにかく、面倒な話はこれで終わりだろう。というか終わってくれなければ困ると、再びの純血悪魔の声に噴き出す憎悪を抑え込んでいたボクだったが、しかしその意識と視線を両方ビタリと一手に引き付けていた筋肉達磨の言葉は止まず、忌々しい方向へ逆戻りした。

 

「その件もあって、ここに来る前にリアスと話してな。フェル殿、その時にリアスから、この土地に一日滞在する許可は得ている。これに関しては問題ない。だから――」

 

 お前の許しをくれと、言われるまでもなく拒否の理屈が意味をなさなかったこと理解し、苛立ちからまた憎悪が膨れた。

 

 大多数の怯えと曹操の諦め、おまけにクロカの憤りとが入り混じるが、全員の注意がボクに向く。だが怯えようが諦めようが、それこそボクがこれ以上の苛立ちを露にしようが、もう筋肉達磨の見学を阻止することはできないのだ。

 

 拒否すればそれ以上の面倒が襲ってくるから。またこちらが折れねばならない屈辱感に震えそうになる身体を腕組みして押さえ、ボクはもう一度、不承不承に頷いて受け入れの言葉を吐き捨てようとした。

 

 それが了承とわかるギリギリまで崩した台詞を舌に乗せた。言葉に変える、その直前だった。

 

 不意にぐいっと身体が引っ張られ、言葉が喉の奥に滑り落ちた。思わず呑み込み、瞬間的にその正体と理由に気付いて顔を向けた。

 

 上着の裾を握った赤龍帝が、若干頭を揺らしたまま、焦点の定まらない眼でボクを見上げていた。

 

「……ぬふ、ぬふふふ……!とうとう、やってやったぞ……!」

 

 自慢するのはまあ確かに、ボクが筋肉達磨のあれこれに気を取られていたことを加味しても、称えていい所業だろう。

 

 いつの間に目覚めたのか、そしていつの間に接近していたのか、正直全く気付かなかった。それは恐らく――狙ったことではなかろうが――ボクの激情の合間合間に事を為したからだ。

 ボクの憎悪に自身の欲望を紛れ込ませたということ。だとしても気付けなかったのは間抜けな話だが、しかしただのゲームとてルールはルールだ。認めるしかあるまい。それに、とうに飽きたし、もう報酬に意味はない。

 

「……フェル、その赤龍帝、何してるの……?邪魔なら追っ払うけど」

 

「ああ、うん。これはね――」

 

 ちょっと顔をしかめたクロカの疑問に答えつつ、ちょっと触るだけでいいというのに未だ裾を握ったままの邪魔な手を払い除けた。

 

 ゲームも何も終わったのだからと、何の気もなしに引っ張られる服を引っ張り返して剥がしたのだ。

 

 翻った裾が見せるのは裏地のみで、だからボクはそれ(・・)に気付くのが遅れた。

 

「――ッ!フェル!!」

 

 先んじて発見し、あっという間に血の気が引いたクロカの手が届く前に、

 

「お楽しみのぉ――【洋服崩壊(ドレス・ブレイク)】ウウゥゥゥッッ!!」

 

 赤龍帝の獣欲塗れが響き渡った。

 

 瞬間、裾に刻まれた魔法陣が赤く輝き、防ぐ間も声を上げる間もなく、発動した。

 

 ボクの纏う衣服、羽織っただぼだぼの上着もその下のジャケットも長丈ズボンも、ボクの身体の秘密を隠すそれらが一斉に裂け、四散しようとしている。

 

 さらにはそれらのさらに下。小さな名刺、パリストンの能力《ボクが『フェル』であるための証》が縫い付けてある、下着までも。

 

 ボクは生まれてから今までで一番の、とてつもない戦慄に襲われた。

 

 その、次の瞬間。

 

 帽子と手袋を含めて衣服のすべてが弾け飛ぶとぴったり同時、一瞬にしてボクの周囲を黒い炎が覆い隠した。

 奇跡的に無傷であった名刺だけは捕まえ、握り締めた。バクバクなる心臓に十秒近くも頭を真っ白にされてから、ようやく返ってきた理性でボクは周囲を見やる。

 

 ……誰も見えない。辺りは黒い炎、曹操の神器(セイクリッド・ギア)による邪炎の壁だけがある。円柱状に伸びたそれで、どうやらボクを隠してくれたらしい。苦労して十秒前の光景を思い出し、そのタイミングに、もしかしたらボクの裸身は目撃されなかったんじゃないかと、微かな希望が芽生える。

 

 なんとも幸運なことに、それを肯定する落胆の声が、我に返ってすぐさま邪炎の壁の外から聞こえてきた。

 

「あ……ああーっ!!曹操てめえ、なにしてくれてんだよお!!邪魔ばっかしやがって……俺が苦労に苦労を重ねて、やっとの思いでやり遂げたってのに!!見れなかったじゃねえか、フェルさんのおっぱ――い゛ん゛!!」

 

 言い終わる前に、炸裂したクロカの『念』と重い打撃音。以降しんと静まり返って数秒後、手に布束を抱えたクロカが、壁を潜ってボクの前に現れた。

 全裸のボクを前にして、しかし彼女は無言のまま、瞬きの上に眼を擦り、確かめるようにボクの身体と周囲の地面を見回した。なんだと思ってすぐ気付き、手の名刺を見せてやると、詰めていた息がようやく安堵と共に吐き出される。

 

「……よかった……。とりあえず、それはどこか……内ポケットにでもしまって、早くこれ着て。曹操の気分次第って恐ろしすぎるわ」

 

「……確かに」

 

 今更曹操が変な気を起こすとは思えないが、しかしこれはボクたちの最重要の秘密。たとえアイツでも任せれはしない。

 手早く袖を通し、だぼだぼ上着の代わりに、すっぽり全身を覆う予備のマントのような貫頭衣をかぶる。空になったクロカの右手に返り血らしい赤色を見ながら耳を帽子に隠し手袋をはめ、念のためにクロカのチェックを受けてから、ボクたちは邪炎の覆いから出た。

 

 風景が重苦しい冥界の森に戻り、正面に曹操のほっとしたような表情を見る。能力を解除した奴に、折った槍のことも含めて今回ばかりはきちんと礼をしようと善行を誓い、次いでゆっくり、視界を回した。

 

 最初に眼に入った乱入者どもは、揃ってあらぬ方向を向いていた。曹操の邪炎のカーテンがあっても見ないようにしていたらしい。「もう、いいか……?」などと聞いてくるので、無視してさらに視線を横に動かした。

 

「……言っとくが、見なかったからな。見えなかったとかそれ以前に、俺は見なかった。本当だからな?なあ、ゼノヴィア?」

 

「……うむ、見ていなかった。今回ばかりは保証する。……それにしても、イッセー……まさかその破廉恥な技を、よりにもよってフェルさんに使うとはな。こうなると予想できなかったのか……」

 

 ハンゾーと、ゼノヴィア。反応やらも鑑みるに、どうやら誰もボクの身体や気配に気付かなかったらしい。望外の僥倖だ。全く必要のない危機ではあったが。

 

 ボクは最後にゼノヴィアの視線の先、地面に半分頭をめり込ませ、拳の跡が付いた顔の側面全体から血を流す赤龍帝を見やる。クロカも同時に、出会ってから一番のとてつもない殺気を向けながら、絞り出すように憤激の声を押し出した。

 

「……こいつは、今のうちに殺しとくべきだと思うの」

 

「やっちゃったらボクたちお尋ね者だよ。我慢して」

 

 自分に言い聞かせるようにしてボクは応える。クロカも無理矢理首を動かして頷き、固く握り締められ震える右手は、下げられたまま止まった。

 

(……確かに曹操の言う通り、ダークホースだったにゃ)

 

 もちろん悪い意味で、本当に予想外のことをしてくれる。バカらしいことを考えながら、ボクは眼下で気を失う真正の変態から眼を逸らした。




さすが一誠!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
そこにシビれる!あこがれるゥ!
その後泣く間もなく一発ノックアウトされたけど。
感想ください。
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