主なきノラネコたちの家   作:もちごめさん

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前回までの三行あらすじ

ピトーと黒歌が一誠一行と戦って
白音と黒歌が姉妹の絆を取り戻し
ピトーと黒歌の正体バレも免れた

タイトル変えて心機一転、四部開始です。二房の猫じゃらし改め、主なきノラネコたちの家、おしまいまでこれからもどうぞよろしくお願いします。
とはいえしかし章分けの副題も含めてポエミーなのは変わっていませんね。
こうやって黒歴史は紡がれてゆくのです。
そして今回の更新は計五話。

さらには誤字報告をありがとうございます。
いつかはやるだろうなと思っていた間違いをとうとうやらかしてしまった…。


第四部 黒白のくびわと一つの心
一話


 “ピトー”と“黒歌”をもう一度殺すべく戦ったあの企みは、凡そ成功した。ごく一部を除いて、ボクらは今まで通り“フェル”と“ウタ”のまま。おかげで幻影旅団はとうとうその名が冥界にまで知れ渡り、二度も妹とその眷属を狙われた魔王サーゼクスがその首に直接懸賞金を掛けるまでになったが、ピトーも黒歌もフェルもウタも、その名がそこに書かれることはなかった。

 ボクたちは、全くもって以前と変わらない立場、ハンターであり人間の“フェル”と“ウタ”を取り戻すことが叶ったのだった。

 

 そんなことがあってから、すでに一月が経過していた。つまり今は九月の終わり。シロネたちの夏休みはとっくに終わり、もちろん当初に赤髪から依頼された修行の契約期間もきっぱり終了している、そんな時期。

 

 だというのに、ボクたちは未だ冥界にいる。腰を落ち着けているのは赤髪の家のあの離れ、日本旅館風の平屋だ。絶えず漂う悪魔の気配を意識から締め出しつつ、ボクは座布団の上でお茶を飲みながらテレビが映す映像をぼーっと眺めていると、画面の悪魔がマイクを片手にくだらない感想をほざき、それも終わって“おっぱいドラゴンの歌”なるさらにくだらない音楽が流れ始めたところで電源を切った。

 

 リモコンを畳の上に放り投げ、飲み干した湯飲みをちゃぶ台もどきに置く。そしてボクは、クロカの方を見ないままため息を吐いた。

 

「順当な結果だったにゃ、赤髪のレーティングゲーム」

 

「……まあ、それに尽きるわね」

 

 クロカは同じく息を吐き、ちゃぶ台の上で組んだ手に顎を乗せた。

 

「ソーナ・シトリーっていったかしら、対戦相手のあの悪魔。本人も眷属もそろって決定力は皆無。ちょっと神器(セイクリッド・ギア)が使えるのが二人いるだけで、あとは全員普通に魔力で戦うだけ。あんな有様じゃあね、人数がいてもどうしようもないわ。……それに何より、リアスのほうには白音もいるし」

 

「……そうだね」

 

 自慢げに頬をニヤつかせるクロカがボクを見る。横目にそれを認めて、どうにか短く返した。

 

 クロカのその様子を見ると、やはりどうしても込み上げてしまうのだ。それを慮ったわけではないのだろうが、隙間にタイミングよく、男の声が割り入った。

 

「確かに、白音ちゃんすっげー活躍だったもんな」

 

 ちゃぶ台を挟んで向かい合わせに座るボクとクロカ。その後ろ、部屋の奥で寝釈迦の恰好をする、ハンゾーだった。

 部屋にある座布団のほとんどを独占して寝そべりながら、一緒にレーティングゲームの生放送とその後の解説を見ていた彼はあくびして続ける。

 

「【練】と【絶】切り替えて暗殺しまくって、結局一人で半数は倒しちまったんじゃねーか?フィールドを破壊しないっつールールも関係なかったな」

 

 だらしなくそう言う彼もまた、本来であればボクたちと同様に冥界でのんびりくつろいでいるはずのない人間だ。なにせここはもちろん彼の家でもないし、当初修行のために得た滞在期間もボクたちと同時に過ぎた。さらに言うなら冥界を訪れるために必要な手続きの数々。少なくとも、旅行感覚で揃えられるものではない。

 だというのに、それらの面倒を乗り越えてまで、ボクたちは冥界への再訪を果した。その理由はやはり赤髪たちのレーティングゲーム、悪魔どもが自身の力をひけらかすショーを見届けるためだ。

 

 ボクたちの場合、目的は主にシロネ。大事な妹の晴れ舞台を応援したいクロカのために、ここに滞在している。

 ハンゾーも似たような理由だろう。応援の対象はもっと広いのだろうが、観戦したかったからこそ、事件によって奴らの夏休みの終わりから今日にずれ込んだこの行事のために、面倒を乗り越えわざわざ冥界に足を運んだのだ。

 結果的にはその甲斐もあったかわからないくらいの危なげない無双であったわけだが、人間界でレーティングゲームを放送するチャンネルなんてない。観戦できただけでもクロカは満足な様子であるし、ハンゾーだってそうだろう。苦労の甲斐はあったはずだ。

 

 あるいはそれは、ハンター協会からの命令であったかもしれないが。

 

 ボクたちの秘密を知ってしまったハンゾー。その存在が協会に与えるであろう不安、しかしそのハンゾー自身がまだ生きている事実を頭の中で転がしつつ、半分冗談の警戒を向けてやった。

 

「他の奴らは力押ししかできないからね、ボクたちを倒した時も結局はそうだったし。ハンゾー、一月もあったのに教えてあげなかったのかにゃ?」

 

「……そりゃもしかして、お前らの正体のこと言ってんのか……?」

 

 きちんと伝わったようで、ハンゾーはぴくりと肩を跳ねさせ、実に嫌そうな顔をした。

 こんなにもぼかされた台詞でボクの意図を理解できたのは、やはり彼もそのことを意識しているからだ。

 

 妹であるシロネはいずれにせよ知ることになっただろう事実だが、ハンゾーに関しては違う。その気もないのに知ってしまい、完全なとばっちりで背負わされてしまった特大の爆弾。秘密の漏洩を憂うボクとそしてハンター協会にとってハンゾーは、正直殺しておいた方が安全な人間だった。

 

 そのことを、ハンゾーはきちんと理解している。となればその状況で生き残るための最善は、やはり今の通りだ。

 

「しゃべるわけねーだろ。オレはまだまだ死にたくねー」

 

 苦々しげな顔をボクに向け、ハンゾーははっきりとそう言い切った。

 そうしてボクの表情を見やり、半分を占める揶揄いの度合いに気付いたのだろう。途端、しらけたふうに喉を鳴らす。それを眺めていたクロカが不思議そうに言った。

 

「まあそうだろうけど……それがわかってても私たちへの態度が変わらなかったの、未だにちょっと意外だわ。てっきり怖がるか媚び売るかしてくるものだと思ってたんだけど」

 

「あんなんでビビってたら忍者もハンターも務まらねーよ。それに……曹操から聞いたからな、あんたらのあれこれを色々と」

 

 そう言う眼は、再びボクに向く。クロカはその意味を計りかねて小首を傾げたが、すぐに合点がいったようでハッとなり、困ったふうに眉を下げた。

 

「あー……そう、ピトーのを、ね……」

 

「……んまあ、それもあるが――ん?なんだよフェル」

 

 クロカに続けてなにやら言いかけたハンゾーだったが、しかしその途中でボクが止めた。胡乱げな顔をするも、クロカ共々すぐに気付く。

 

 二つ、外を走る悪魔の気配。この離れを目指しているのだ。

 そしてその正体の片方には今の話題が適さない。故にボクは帽子をかぶり直し、クロカも外していた眼鏡を掛けなおした。

 

 その直後、ちょうどのタイミングで襖が勢いよくスライドした。

 

「ウタさまフェルさま、私たちの試合、見ていてくれましたか!?」

 

 シロネは部屋に入ってくるなり、喜色満面でそう叫んだ。

 叫んで、同時に入り口傍のクロカの懐へ飛び込む。クロカも抱きとめ、見せるのは負けないくらいの嬉しそうな笑顔。ボクは疎外感でいたたまれなくなって、思わず二人から眼を逸らした。

 

 するとちょうど目が合ったのは、シロネの後ろに続いてきたゼノヴィアだった。シロネとは打って変わって気まずそうな彼女の様子でひとまず重たくなった心のことは忘れ、ボクは唇の端を揶揄いで歪めてみせた。

 

「随分来るのが早いにゃ、さっきまでテレビの中でインタビュー受けてたのに」

 

「まあ……私も白音も、皆と違って無傷だったからな。治療を眺めていてもしょうがないから、その足でこっちに、と……」

 

 おずおずと、ゼノヴィアは答える。早かった理由はその通りだ。シロネもゼノヴィアも、一つの傷も負わずにその戦いを終えた。

 

 そして続く、今度は目的。ボクの傍まで来て膝を折り、正座して恐る恐るに尋ねた。

 

「それで……どうだった?師匠。レーティングゲームでの私は」

 

 やはり評価を気にしていた。私の方はそもそも彼女を弟子だなんて思っていないが、師匠うんぬん言うあたり、弟子としての立場が心配になっているのだろう。

 

 それもそのはず、今回の試合の彼女は評価とかそういう以前の有様だった。

 そのことを、ボクの代わりに呆れかえったハンゾーが口にした。

 

「どうもこうも、お前開始早々反則リタイアしたじゃねーか」

 

「うぐっ……」

 

 ゼノヴィアは、戦わずに脱落していたのだ。

 

 だから無傷。大活躍のシロネと違って不名誉の無事。反論も一切できずに言葉を詰まらせたゼノヴィアに、ハンゾーは容赦なく追撃を放った。

 

「フィールドの破壊はご法度っつールールだったってのに、ドでかいのぶっ放して周囲一帯吹っ飛ばしたろ。リアスさんは教えてくれなかったのか?」

 

「教えてくれたし、理解もしていたとも!ただ……せっかく能力として形になったから使ってみたくて……」

 

「いやアホか!!前々からアホだとは思ってたけどほんとにアホか!!んな下らねー理由で自爆したのかよお前!?」

 

「あ、アホとはなんだ!!下らないというのも聞き捨てならんぞハンゾー!!結果的に失格になってはしまったが、威力はすごかっただろう!?私のデュランダル斬をバカにするな!!」

 

「【硬】の【周】だろ、ただの。そりゃ確かに必殺技名乗れるくらいすげー破壊力してたけど……デュランダル斬?名前まで付けちまったのかよ。しかもそんな安直な」

 

「なんだ悪いか!かっこいいだろう!【デュランダル斬】!」

 

 バカにされてムッとするゼノヴィア。技の名前はともかくとして、じゃれ合いの中で己の口から出た失格の理由はバカと言われて当然のものだと思うが、ボクは情けで口を噤んだ。

 

 代わりにクロカが、その膝の上にシロネを抱きながらクスクス笑った。

 

「普通にダサいわよ、名前も内容もね。コントロールできてなきゃ、ほんとにただの自爆だもの」

 

「ええっと……そうですね。実際にあれで倒せた敵はいませんでしたし、どちらかといえば部長たちにばっかり被害が行っていましたし……」

 

「……そ、そうなのか?」

 

 そうなのである。

 

 苦笑いのシロネの言う通り、ゼノヴィアの【デュランダル斬】でリタイアに陥った敵は一匹もいない。崩れた瓦礫でに双方が巻き込まれたのみであり、なんなら仲間の女装吸血鬼は段ボールに引きこもっていたために避けられず、瓦礫が直撃して戦闘不能にされてしまったくらいだ。

 

 驚愕のその反応を見る限り、ゼノヴィアはそのことを知らされなかったのだろう。赤髪の配慮か、しかし知ってしまったゼノヴィアはショックに項垂れ、正座していた身体を一層いたたまれなさそうに縮めた。

 

「……全く気付かなかった。白音も皆も、もっと早く教えてくれたらよかったのに……。後で謝りに行かないと……」

 

「で、でも!ゼノヴィアさんが起こしてくれた混乱のおかげで私はうまく動けましたし、何人も倒せたのはあれがあったからこそです!名前も……私は格好いいと、思いますよ……?」

 

 励ましの言葉と、最後に明らかに無理矢理な笑みが付け加えられる。さすがに騙せず益々落ち込むゼノヴィアに、シロネは失敗を悟って視線を彷徨わせた。

 その果てに、シロネは気まずく止まった口の矛先としてボクに目を付けたようだった。一度閉じて唾を呑み、それからぎこちなさを勢いで誤魔化して声を張った。

 

「そ、そうだ!フェルさま、私はどうでしたか?【絶】、ウタさまから教えてもらったばかりですけど、うまくできていましたか……?」

 

「……うん、まあ……よかったと思うよ」

 

 緊張がありながらもまっすぐボクに向いた目から、ボクは目を逸らしてそう答えた。

 

「【練】は完璧に近かったし、【絶】も、修行を始めて一月も経ってないってことを考えれば中々だよ。切り替えの手際だってお見事だったにゃ」

 

「そう、ですか……!」

 

「ただ――」

 

 喜ぶシロネに、しかしボクは続けて首を振る。記憶の中の映像を引っ張り出しながら、胸の奥の黒いものと戦いつつ批評を捻り出した。

 

「全体的に見れば完ぺきとは言えない。何度も奇襲が成功したのは運と、後は相手が戦闘慣れしてなかったって所もあるよね。【念】も知らないただの転生悪魔だったから。……そうでない、例えば神器(セイクリッド・ギア)持ち、女王(クイーン)兵士(ポーン)の二匹とは出くわさなかったしにゃ」

 

「……つまり調子に乗らないように、ってこと?まあ、大方私も同意見。これからも頑張って修行しないとね、白音?」

 

「はい、ウタさま!」

 

 総括するクロカに、シロネは笑顔で返事をした。クロカの表情にもやはり笑みがあり、首を反って見上げてくるシロネを愛しむその様子は実に幸福そうだ。

 

 ボクは再び反射的に目を逸らしてしまう。するとそこにいるのはまたしてもゼノヴィアで、意気消沈に落ちた肩を絶望のそれに変え、囁くようにか細く呟いた。

 

「しゅ、修行……?これからも……?いや、確かその前も、少し前から教えてもらったと……」

 

「……え?なに?ゼノヴィア、あんた何か言った?」

 

 ちゃぶ台を挟んで対面のクロカも、辛うじて耳に捕らえたらしい。が、どうやらきちんと明瞭に聞いたのはボクだけのようだ。故に一人、めんどくさい思いを先取りしてしまう。

 

 ボクたちと別れられない事情とハンターの立場を持つハンゾーと、クロカとの“家族”を取り戻したシロネには、指導をしてやる理由がある。しかしゼノヴィアにはそれがないのだ。

 特に自身と同じくハンターでない転生悪魔であるシロネ。事実を知れば、ボクから学びたいと鼻息を荒くしているゼノヴィアが反応するのは、まあむべなるかなといったところであった。

 

「ず、ずるいぞ白音だけなんて!私もフェルさんに修行をつけてもらいたいのに!」

 

 四方八方に向けられる非難の目の終着点にいるボクは、大きなため息を吐き出した。

 

「私なんてハンゾーからの伝え聞きでしか学べないというのにぃ……!まさか白音、ここの所妙にウタさんと仲がいいと思ったのはそのためか!?仲良くなって師事しやすくするという……でも、いったいどうやったんだ!?方法があるなら教えてくれ!そうしたら私もフェルさんに――」

 

「あー、そういうんじゃなくてね、その……逆よ、逆」

 

 シロネに対する今までのぞんざいな扱いを見ていれば、当然湧く疑問だろう。微妙に痛いところを突っ込まれ、事態に気付いたクロカが弁明のために頭を捻る。

 ゼノヴィアの期待の眼差しを努めて無視するボクを庇い、どうにか理由をまとめて続けた。

 

「白音ってば、一人で、その……黒歌を倒しちゃったわけじゃない?それで私、白音のこと見直してね、それくらいの才能があるなら私が伸ばしてあげたいなーって、思っちゃったわけなのよ。……うん」

 

 少々苦しい言い訳。自覚するクロカは僅かに眉を下げたが、ゼノヴィアは全く怪しむ様子もなく、ともすれば増大した期待を以てして、無理矢理ボクの視界に割り込んだ。

 

「ならなら!フェルさん!私の【デュランダル斬】だ!あの威力はこう……将来に期待できるほどのものだっただろう!?未完成だった頃だが、私も黒歌にダメージを与えたんだぞ!?」

 

 それについては残念ながらマイナスポイントだ。

 とはいえなんにせよ面倒くさい。自然と眉間に寄る皺で下がっていく瞼をまばたきで持ち上げて、ボクは込み上げるため息を呑み込み言った。

 

「うん、すごいね。立派な必殺技、【発】だよ。だからずるいってことはないんじゃないかにゃ。シロネより先に進めてるってことなんだから」

 

「『先に進めてる』?そんなわけあるか!フェルさんは知らないのかもしれないが、私は知っているぞ、白音!君も【発】を習得しているんだろう!?」

 

 思いがけない事実が、ムっと頬を膨らませるゼノヴィアの口から吐き出された。

 

 指導したにしては嫌に段階が早い。何故と思ってクロカを見やるが彼女が教えたわけではないようで、ボクと同様驚愕に息を呑んでいた。一方、未だ歯抜けになっていた基礎鍛錬しかさせていないハンゾーは、その驚愕に加えて悔しげな表情。彼は知らぬ間に一人だけ置いてきぼりにされていたのだ。

 

 普段はおちゃらけている分、はっきりとハンゾーの機嫌が悪くなった。悟ったシロネが慌てて首を振り、半端な弁明を口にした。

 

「しゅ、習得しているっていうか、しかけているっていうか……とにかく、ゼノヴィアさんみたいに完成しているわけじゃないんです。……黒歌姉さまたちとの戦いでイメージが固まり始めた、っていうだけで……」

 

「う……ん、そ、そうだったのか……?」

 

「でも結局、形はできてんだろ?変わんねーじゃねーか。あーずるいずるい」

 

 『黒歌姉さまたちとの戦い』というところで勢いを止めてしまったゼノヴィアと、その必要などないことを知っているために不貞腐れてしまうハンゾー。それで早くも打つ手がなくなってしまったらしく、シロネは居心地悪そうに身体をすくめた。

 

 その様子を捉えたクロカが、懐のシロネを胸と膝で押し潰すみたいにもたれかかった。

 

「ふぅん、それならそうと言ってくれれば、相談でもなんでも乗ってあげたのに。ねえ、どんな能力なの?」

 

「ぐえ……それはちょっと……恥ずかしいので、秘密です……」

 

 折られた身体に肺の空気を押し出されたシロネは、しかしそのことは何でもないふうに受け流し、恥ずかしそうに頬を染める。その眼がちらりとボクを見て、ボクはそこからまた逃げた。

 

 すると空気を読む気ももはやないハンゾーが、寝釈迦の体勢から身を起こしてちゃぶ台に手を突いた。

 

「どのみちずるい!二人がやってんなら、なあフェル、オレだって【発】の修行してもいいだろ?どんな能力にしようかってイメージくらいはオレにもあんだ!」

 

「……まあ、いいんじゃにゃい?次は【(リュウ)】をやろうと思ってたんだけど……うん、イメージがあるのなら【発】でもいいかもね」

 

「なに?【流】ってのは……新しい応用技か?……ちょっと待て、そういうことならまた話が違ってくるかも……」

 

「ぐうぅ……やっぱり……やっぱりお前もずるいぞ!!ハンゾー!!」

 

 ハンゾーが頭を捻って静かになったと思ったのもつかの間、ゼノヴィアの不満が復活して爆発した。ハンゾーのそれが解消された今、不公平しがらみを背負うのは彼女のみ。【流】の説明をしてやろうと思っていたボクをも遮り、ハンゾーを追い越しちゃぶ台に身を乗り出してまでボクに不満を主張した。

 

「フェルさん!やっぱり私も我慢できない!私にもまた修行をつけてくれ!」

 

 まあそう言うだろうなと、思ってはいたことだ。至近距離で叫ばれて帽子の中の耳がキンキンするも押さえるのは我慢して、ボクは代わりに胡坐の脚を組み替えつつ、面倒臭いのをあからさまなため息に変えて吐き出した。

 

「……シロネのレーティングゲームも終わったし、ボクたちすぐ人間界に帰りたいんだけど」

 

「べ、別に冥界での修行に拘りはない!夏休みの前みたいに私を修行に加えてくれればそれで――」

 

「ハンターの仕事もするから、ボクたち駒王町には留まれないにゃ。ゼノヴィア、キミは赤髪と一緒にいなきゃならないんでしょ?」

 

「う……それは……でも、なら白音はどうするんだ?彼女の修行も今日で終わりなのか……?」

 

「あ、いえ、ウタさまには私を召喚していただくことになってます。そこで修行をって……ほら、悪魔の仕事で使うチラシです」

 

 言いながら、一向に解かれる気配のないクロカの拘束の中で、苦労して取り出した小さな紙きれを示すシロネ。描かれた召喚用の魔法陣を利用するのだ。既にクロカは山ほどそれを渡されている。

 

 「もちろん部長には許可を取りましたよ」と付け加えられ、ならばと希望を見出したゼノヴィアの不安は見るからに明るくなった。

 

「それだ!フェルさんに私の召喚魔法陣を持ってもらえさえすれば、問題は解決じゃないか!ちょっと待っててくれ!今すぐ取りに行って――」

 

「だとしても、ボクがキミに修行をつけるかどうかは、全くの別問題なんだけどにゃ」

 

 正座から立ち上がりかけたゼノヴィアが途端に固まり、遅れてやってきた足の痺れが彼女の身体を横倒しにした。痺れと台詞とで悶絶する彼女を眺めながら、ボクは続けて希望と面倒を断ち切る。

 

「召喚だのをしてまでウタがシロネを教えるのは、気に入っているから。ハンゾーに関しては、ボクに後進のハンターを教える義務があるから。で、ゼノヴィア、キミにはそのどっちもないんだよ。キミはハンターじゃないし、ボクはキミが……というか悪魔が、嫌いだし」

 

「そ……そんなぁ……」

 

 刺激が来ないよう足を上げたままのおかしな体勢で、ゼノヴィアは弱々しく失意に落ちる。視線をその滑稽に固定させるボクへ、それでも諦めきれないゼノヴィアの口がゆるゆると動いた。

 

「じゃあ……こちらからまた修行の依頼を出したりすれば……」

 

「値上げするけど、赤髪にお金出してもらう?アレ、最近忙しいらしいけど」

 

「ぐ、うう……でも……でもでも……!頼むからどうにかしてくれフェルさん!私はまだまだフェルさんの下で学びたいんだ!」

 

 いよいよ悲壮感すらも纏って、ゼノヴィアはボクに懇願する。しかしボクの答えは変わらず、首を横に振った。

 

 嫌なものは嫌だとはっきり断じてやろうとした、その時。不意に再び正面の襖が滑って、開いた。

 

「それはよかった。なにせ数日は四六時中一緒にいることになるわけだからね」

 

 現れたのは曹操だった。最近お詫びとして買ってやった槍をこれ見よがしに肩に

担ぎ、いつも通りのにやけ面でニヤニヤ笑っている。

 

 クロカも気付いて振り向いて、うへぇといやそうな顔をした。

 

「うわ出た。曹操、あんたなんで毎度毎度【絶】して近寄ってくるわけ?キモいんだけど」

 

「心外だな。というか、ふむ、あの程度の【絶】にもお前は気付けなかったのか?それは仙術使いとして大丈夫なのかな、ウタ」

 

 すげなく返す曹操に、黒歌の眉が寄る。直った姿勢で首だけ振り返ったまま、不愉快そうに鼻を鳴らした。

 

「……っていうか、あんたって魔王からもらった土地、治外法権のなんとかってとこいるんじゃなかったの?大使館的なもの作るんだとか言ってたような気がするんだけど、なんでこんなとこにいるのよ」

 

「それはもちろん、お前たちに会いに来たんだ。直接報告しなきゃならないからな」

 

 何のことやらだ。クロカの表情にも訝しげが加わったが、曹操はまた笑むだけで、クロカに二枚の紙切れを差し出した。受け取ると、一つ咳ばらいをしてから演技臭い真面目な声色でボクとクロカを見下ろした。

 

「えー……プロハンター、フェル、及びウタ。堕天使コカビエル討伐の功績を称え、貴殿らを一ツ星(シングル)ハンターに認定する」

 

「……なに?シングル?」

 

「今後とも益々の活躍を期待する――という話なんだが……その反応、もしかして()を知らないのか……?」

 

 言いながら、己のハンターライセンスを取り出し見せる曹操。そこにはボクたちのそれにはない星が一つ刻まれている。

 

 曹操も星持ちハンターだったのか、と少しだけ驚くボクと、ついでにハンゾーだったが……やはりここにいるハンターの中で唯一一人、知らないのだろう。首を傾げて答えたクロカに、曹操の肩が力が抜けた。

 

「……星というのは、つまり称号さ。特定の分野で活躍したハンターに送られる証。名誉なことなんだぞ?」

 

 つまり、特に意味のないものだ。しかし大抵のハンターであれば目指す目標の一つであり、曹操の言う通りの名誉だろう。

 

 ハンターであれば誰もが知っているだろう星の制度。ボクたちにとっては特にありがたいものではないが、それを抜きにしてもクロカは未だピンと来ていない様子だった。そのことと、わざわざ報告までして伝えてきたくだらなさで気が抜けたボクに肩をすくめてみせてから、曹操はクロカへ続けた。

 

「お前の大好きなゲーム風に言えば、ランクが一つ上がったんだ。お前たちが有能だという証明書さ。よりいい依頼、より重要な仕事を任されるようにもなったんだ。名指しの依頼だって増えるだろう。半分協会専属ハンターであるお前たちにはいい知らせだと思うんだがね」

 

「それってつまり……パリストンに仕事の仲介料とか取られずに済むってこと?最高じゃない!……それに曹操、知らなかったけど、もう力でも権力でも私を見下せなくなっちゃったわねぇ……!」

 

 ようやく理解したクロカは一転して喜びの声を上げた。膝の上で喜びを共有するシロネにさらに気をよくしたのか、煽りまでして得意げな笑みを浮かべる。

 

 だがまあ仲介料や指名依頼と同じく、そううまくはいかないようだった。

 

「力は俺の方が上だし、権力に関しても今まで通りさ。なにせ俺も昇格した。お前たちと同時に、俺は二ツ星(ダブル)ハンターなるわけだからな」

 

「……星とかクソだわ」

 

 鮮やかにカウンターをもらってしまい、不貞腐れた顔へ戻ってしまうクロカ。ボクとしては慰めか、笑って流してあげるべきなのだろうが、しかしこの時ボクの頭には一つの条項が浮かんでいた。それを、曹操に告げる。

 

「そういえば……二ツ星(ダブル)ハンターに認定されるための条件に、弟子が(・・・)一ツ星(シングル)ハンターに認定されること、っていうのがあったよね。もしかして……」

 

「想像の通りさ。だからお礼を言っておこう、フェル、ウタ。優秀な弟子を持って俺は幸せだよ」

 

 なんとも白々しい物言いで、曹操はボクとクロカを己の弟子だと言い切った。

 

 もちろんそんなわけがあるはずがない。だがしかし、そんなボクたちの認識が他人と共通したものであるわけでもないのだ。

 

「え!?二人って曹操の弟子だったのか!?ってことはオレらは孫弟子……?」

 

 ハンゾーが目を丸くして、ゼノヴィアとシロネも言葉はないが驚いた表情。知らない人間には嘘も真実で、つまりこうなる。

 

 思い至って踏み止まったボクとは対照的に憤慨を露にしたクロカが、わなわな震えながら肩を膨らませた。

 

「だっ、誰がこんなやつの弟子なんて!逆ならともかく、気持ち悪いこと言わないでくれる!?」

 

「だが色々と教えてやっただろう?【念】も拳法もハンターとしての心得も。なんなら何度も修行相手だってしてやったじゃないか」

 

「だから逆だってば!私たちがあんたを鍛えてやってたんでしょ!それに拳法とかだって全部押し売りだし、ほんとにあんたに弟子入りしたつもりなんてこれっぽっちもないんだけど!?」

 

 だが他所から見れば、先輩ハンターである曹操と後輩ハンターであるボクたちのその関係。師弟の間柄であることに不自然はなく、とすれば師は先輩のほうと思えるだろう。

 

 少なくとも、そう取ることは可能だ。今まで何かとつけて妙に絡んできたのは、そう言い張るためでもあったのかもしれない。

 曹操の昇進のために体よく使われてしまったわけだ。クロカのようにムカッとしないわけではないが、だが正直、どうでもいいという無気力な思いが大きかった。

 

 ゼノヴィア然り、やはり何もかも気が重い。ボクは何度目かもわからないため息を吐いた。するとクロカの苛立ちを得意げな顔でからかっていた曹操が、ハンゾーが寝そべっていた座布団の山から一枚を引き抜き、その上に腰を下ろして意識を移した。

 

「ま、認めないでも構わないさ。そうなるだろうことはわかってた。その代わりと言っては何だが、フェル、ウタ、いい仕事を持ってきたぞ」

 

「それは……最初に言ってた『四六時中一緒にいることになる』って話?」

 

 曹操は頷いた。孫弟子のまま話題に置いて行かれているゼノヴィアを横目にして、手の槍を隣に寝かせた。

 

「彼女らが、もうすぐ修学旅行の季節だろう?行き先が京都だ」

 

 それだけで、ボクは何となくその“いい仕事”とやらを悟った。恐らく悪魔への嫌悪感が薄れておらず、むしろ激化しているだろう京都を治める妖怪たち。だというのにゼノヴィアたち、赤龍帝や聖魔剣がそこを訪れるとなれば、それが必要だろう。

 

「期間の間、駒王学園二年生の悪魔たちを監視、警護する。言ってしまえば、それだけの仕事なんだが」

 

 重要だ。少なくとも京都の妖怪たちの長、八坂にとってはそうであるだろう。故に“いい仕事”と曹操が称したことにも納得がいったが、しかしゼノヴィアにとってはそうも言い難い内容であったらしい。一拍あってから、ようやく足の痺れから脱して身体を起こした。

 

「確かに、そういえばそんな行事もあったように思うが……警護はわかるとして、監視というのはどういう意味だ曹操!」

 

「……興味のない学園行事を思い出したのは素晴らしいが、もう少しだけ考えてみるべきだな、ゼノヴィア」

 

「む……なんだと?まさか曹操、お前も私をバカにしているのか……?」

 

 と顔をしかめるゼノヴィアに、曹操はシロネを眼で示した。気まずそうにしているその様子でゼノヴィアも京都でシロネが浚われた事件を思い出したらしく、途端に威勢のよさもなりを潜めた。

 

 それに加えて引き起こされた悪魔への不審。曹操は全く悪びれもせず頷いて、胡坐の膝に手を置いた。

 

「悪魔が京都を訪れる際、事件を防ぐために必ず第三者の監視を付けること。あの事件の後、妖怪たちの不満を抑えるために八坂殿が魔王との間で定めた法だ。その受注先が俺たちハンター協会、というわけさ。俺たちはどちらの勢力にも寄らず中立……つい最近そうとも言えなくなったわけだが、今までそれが慣例的に続いているわけなんだ。恐らく近いうちに見直されるだろうが、不安定な最後の一度を当事に解決まで導いたフェルとウタに、とね」

 

 二人なら妖怪たちの反感も少ないだろう。何より八坂の娘の九重が懐いているし。そんな思惑が透けているが、やはり反感はわかなかった。

 

 それに、考えてみれば今のボクには都合がいいかもしれない。

 

 その間にクロカも弟子呼ばわりの苛立ちを沈め、ぶすっと表情を曇らせながらも、曹操が提示した仕事へ肯定的なふうに鼻を鳴らした。

 

「前の話が無きゃケチもつかなかったんだけど、でも確かにいいんじゃない?気分転換にもなるし。あ、でもゼノヴィアの修行は別よ?」

 

「……だろうとは思ってたけど、言うのは聞くまで待って欲しかったぞ……」

 

 さりげなくワクワクしていたゼノヴィアの希望を踏み潰し、しかし欠片も慮ることなくクロカは続けて訊く。

 

「で、その修学旅行ってのは何時にあるの?二年生ってことは白音は行けないわけだから、その間までだけど一緒――」

 

 だがボクが、クロカの言葉を遮った。その先を止めて、思わず天井を見上げながら、言った。

 

「ボク一人でやるよ、その仕事」

 

「――え?」

 

 クロカが呆けたような声を出した。息をついて視線を戻せば他の全員もあっけにとられたような顔をしている。

 

 それらはすべて無視して、ボクはゼノヴィアに続けて言った。

 

「修行も、いいよ。ハンゾーのついでに面倒見てあげる。そもそも念能力はボクの担当だったわけだしさ、シロネが関係ないのならウタまで巻き込むこともにゃい。別にいいでしょ、曹操?」

 

「……まあ、構いはしないが……」

 

 さらに曹操へ振ってやると、彼は歯切れ悪く了承を返す。とはいえ、と向けた視線の先のクロカは、ボクの意思に言葉を定められずにいた。

 

 その内に、クロカよりもはるかに単純な成果を得たゼノヴィアが、一気に喜びを爆発させた。

 

「ほ、本当かフェルさん!聞き間違いじゃないよな!?今、私にも修行をつけてくれると……!」

 

「うん、本当だよ。修学旅行の間だけだけどにゃ」

 

「それだけでもありがたい!……そうか、また学べるんだな!そうと決まれば俄然修学旅行が楽しみになってきた!ハンゾー!さっそくいつ出発なのかを部長に聞きに行くぞ!」

 

「は?オレも?……ってお前、問答無用で引っ張んじゃねー!オレはその修学旅行には直接関係――ってやっぱり力つよ――じゃなくてゼノヴィア話聞けよ!せめて引きずるんじゃなくて一旦立たせて歩かせてぇー!」

 

 と、歓喜のあまりにじっとしていられなかったゼノヴィアは、お共にハンゾーを引きずりながら、瞬く間に部屋から出て行った。どたどたうるさい足音とハンゾーの断末魔が、みるみる遠ざかっていく。

 

 ボクが唆したわけではあるが、落ち込んだり喜んだり、びっくりするほど忙しない奴だ。呆れ半分で見送るボク。しかし曹操はその間ずっと伺うようにボクの眼を凝視していて、そして足音と断末魔がとうとう聞こえなくなった頃、静かにまばたきをして腰を上げた。

 

「俺も、もう行こう。仕事の件はこちらで手続きをしておく」

 

 短く言って、開けっ放しになっていた襖を潜り、閉じた。音もなく消える気配。部屋はボクとクロカとシロネだけになる。

 

 クロカと、たぶんシロネにとっての“家族”のみになって、ようやくクロカは発するべき言葉を決めた。

 

「私……ピトーが悪魔に抱いている憎悪のこと、わかってるつもりよ……?」

 

 シロネも、顔色を悪くしながらも頷いた。恐る恐るの空気感はクロカをも包み込みながら、不安に歪んでいく表情から告げられるのはその否定。

 

「その憎悪が、簡単に消せるものじゃないことも。でも何があっても、もしピトーがそれを消すことができなくても、私たちはずっと、ピトーのか――」

 

 ボクはまたしても、それを制した。

 

「わかってる。大丈夫だよ、そんなに心配にならなくても」

 

「ピトーさま……」

 

 苦しげに眉を歪めたシロネにあるのは負い目のようなものだろう。あの時、宮殿の地下でクロカと何を話したのかは聞かなかったが、それはどうやらボクが見据えた未来には繋がらなかった。

 彼女はボクからクロカを奪い返すのではなく、ボクに自身を認めさせようとした。ボクまでもを救いたいと、そう考えてしまったようなのだ。

 

 ボクの“キメラアント”を弑し、これ以上もう誰にも“家族”を捨てさせないために。

 

 示して、そして今のボク。クロカを拒絶するかのような言葉。それを引き出し、直面させてしまったことへの負い目が、彼女を俯かせている。実際、心の内には否定のしようがないほど明らかに、クロカの下にいるシロネへの抵抗が存在していた。

 

 だが、それを受け入れてしまうわけにはいかない。だから続ける。

 

 ボクが欲しいのは“家族”という名の、クロカが望む形の繋がり。それ以外を欲してはいけないのだから、ボクはシロネへの気持ちと一緒に深く息を吐き出した。

 

「……そのうち慣れるよ。しばらくはまた悪魔に囲まれることになりそうだし、克服の環境にはぴったりだにゃ。それより、せっかくの機会なんだから、二人は二人で遊んで来れば?ほら、この前のあのゲーム、グリードアイランド」

 

 念能力者専用のゲームらしいから、きっと修行にもなるだろう。その意図も含めて努めて自然に言ったつもりだったが、内心の闇はクロカどころかシロネにまで悟られたようだった。揃って暗い表情。空気が重くなる。

 

 だがやがて、憂いを含んだ微笑みでクロカが了解を口にした。

 

「……わかった。そうするわ。ピトーが私たちを好きになれるまで……待ってる。悪魔なんだから、何万年だって」

 

 そうだ。きっといつかは、時間の流れが遠ざかってしまったクロカを取り戻してくれる。シロネへの嫌悪も悪魔への憎悪も洗い流し、そしてやがて、

 

 “王”のことも、忘れさせてくれるだろう。

 

 ――それでいいのか。

 

(それでいいんだ)

 

 口を閉ざして、喉の奥の淀みを呑み込んだ。




次話より京都再訪編(二秒で命名)です。
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