絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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μ'sの新曲『A song for You! You? You!!』のMVヤバくないですか!?

感動して鳥肌が立ってしまった(T-T)

やっぱりμ'sは凄いわ・・・


姉は弟を想い、弟は姉を想う。

 「全く・・・何であの子は自分だけ外食しに行っちゃうのかしら・・・」

 

 「亜里姉は自由奔放だからねぇ」

 

 絵里姉の愚痴に苦笑する俺。

 

 そろそろ夕飯の支度をしようというところで、亜里姉は梨子を連れて外食しに行ってしまったのだ。

 

 本人曰く、雪穂ちゃんから誘われたとのことだったが・・・

 

 「・・・嘘だろうな」

 

 絵里姉に聞こえないよう、独り言を呟く。

 

 俺と絵里姉を二人きりにする為に、わざわざ梨子を連れて外に出てくれたんだろう。

 

 普段はべったり甘えてくるくせに、こういう時は気を利かせてくれるんだよなぁ・・・

 

 「ホント・・・我ながら良い姉をもったよ」

 

 「天?何か言った?」

 

 「何でもないよ」

 

 笑って誤魔化しつつ、テーブルの上に料理を並べていく。

 

 「はい、夕飯出来たよ」

 

 「ハラショー!ボルシチじゃない!」

 

 顔をパァッと輝かせる絵里姉。

 

 絵里姉はボルシチが大好物なのである。

 

 「久しぶりに作ったから、上手く出来てるか分かんないけど・・・」

 

 「んー、美味しい!」

 

 「食べるの早いなオイ」

 

 呆れてしまう俺。

 

 まぁ、美味しいなら良いけどさ・・・

 

 「・・・何だか懐かしいわね」

 

 しみじみと呟く絵里姉。

 

 「天が内浦へ行って、まだ四ヶ月なのに・・・ずいぶん久しぶりな感じがするわ」

 

 「絵里姉・・・」

 

 「明日内浦に帰るんでしょう?わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。もう大丈夫だから、私のことは心配しないで」

 

 そう言って笑う絵里姉の姿が、俺には強がっているように見えた。

 

 やれやれ・・・

 

 「・・・心配しないわけないでしょ」

 

 ポツリと呟く俺。

 

 「内浦に行ってからも、絵里姉のことを忘れた日なんて無かったよ。あんな風に喧嘩した手前、会いに行けなかったし連絡も出来なかったけど・・・それでも、絵里姉のことが凄く心配だった」

 

 「天・・・」

 

 「ねぇ、絵里姉・・・」

 

 俺は絵里姉に問いかけた。

 

 「今の仕事・・・楽しい?」

 

 「っ・・・」

 

 「・・・だよね」

 

 息を呑む絵里姉に、苦笑する俺。

 

 何も言葉を発さなくても、今の反応でよく分かる。

 

 「そりゃ楽しいわけないよね・・・本当にやりたい仕事じゃないんだから」

 

 「ど、どうしてそれを・・・」

 

 「側にいて気付かないわけないでしょ。俺と亜里姉を舐めないでほしいな」

 

 絵里姉には、興味を持っていた仕事がいくつかあったのだ。

 

 でも絵里姉はそれらを全て諦め、公務員の道を選んだ。

 

 理由は簡単・・・俺と亜里姉がいたからだ。

 

 「家から通えるから、俺と亜里姉を置いていかずに済む・・・収入も安定してるし、両親からの仕送りが無くても俺達を養える・・・だから公務員になったんでしょ?万が一にも家から通えない所に配属されたり、収入が不安定な状況になることを避ける為に」

 

 本当にやりたい仕事に就けなかった人など、この世の中にはたくさんいる。

 

 しかし、絵里姉は『就けなかった』のではない。『就かなかった』のだ。

 

 「他の企業からも内定を貰ってたのに、全部辞退したことも知ってる。全ては俺と亜里姉の為・・・これからも三人で暮らしていく為、でしょ?」

 

 「・・・どうして?」

 

 わなわなと震えている絵里姉。

 

 「どうしてそれが分かってて、天はこの家を出て行ったのよ・・・私は必死で、今の三人での生活を守ろうとしたのに・・・どうして・・・」

 

 「・・・だからこそ、だよ」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「だからこそ、俺はこの家を出て行くべきだと思った・・・絵里姉の足枷になるのは、死んでもゴメンだから」

 

 「っ・・・」

 

 「絵里姉の気持ちを犠牲にした上での生活なんて、喜べるわけないでしょ。絵里姉が俺の幸せを願ってくれてるように・・・俺だって絵里姉の幸せを願ってるんだよ」

 

 当然だ。絵里姉は大切な家族なのだから。

 

 「五年前もそう・・・絵里姉は自分を犠牲にして、音ノ木坂を守ろうとしてた。あの時も言ったはずだよ。『そんな絵里姉は見たくない。もっと自分を大事にしてくれ』って」

 

 「天・・・」

 

 「だから俺は、この家を出て行こうと思った。俺がいなくなれば、絵里姉は自由になれると思ったから。浦の星のテスト生の話が来た時は、何かの運命かと思ったよ」

 

 だからこそ俺は、南理事長の話に乗った。

 

 南理事長の力になりたいという気持ちは嘘じゃないし、音ノ木坂のように廃校の危機に陥った学校の力になれたらという思いもあったが・・・

 

 家を出て行くことを考えていた俺にとって、浦の星のテスト生の話は渡りに船だったのだ。

 

 「私の為・・・だったの・・・?」

 

 口元を手で押さえ、信じられないという表情を浮かべる絵里姉。

 

 「それで・・・内浦行きを決めたっていうの・・・?」

 

 「そうだよ」

 

 頷く俺。

 

 「それで絵里姉が、自分の好きなように生きられるっていうのなら・・・俺はそれで良いと思った。だから引き受けたんだよ」

 

 「そんな・・・どうして私の為にそこまで・・・」

 

 「そんなの決まってるでしょ」

 

 絵里姉の綺麗な碧眼を、しっかりと見据える。

 

 「絵里姉のことが・・・大好きだからだよ」

 

 「っ・・・」

 

 「絵里姉のことが大切だから・・・幸せになってほしいから・・・だから・・・」

 

 俺の胸に、絵里姉が勢いよく飛び込んでくる。

 

 力いっぱい俺を抱き締める絵里姉。

 

 「バカ・・・バカバカバカッ!天のバカッ!」

 

 叫ぶ絵里姉。目から止めどなく涙が溢れている。

 

 「大バカよッ!不器用なのはどっちよッ!?人のこと言えないじゃないッ!」

 

 「・・・ゴメン」

 

 「ホントに・・・バカっ・・・!」

 

 俺を抱き締め、号泣する絵里姉。

 

 「でも・・・私もバカだったわ」

 

 「絵里姉・・・」

 

 「天や亜里沙に、そんな思いをさせてたなんて・・・全然気付かなかったどころか、天を否定するようなことまで言って・・・姉として最低ね、私」

 

 俺の胸に顔を埋める絵里姉。

 

 「ゴメンなさい・・・本当に・・・ゴメンなさい・・・!」

 

 「っ・・・」

 

 目から涙が零れ落ちる。

 

 泣くつもりじゃなかったんだけどなぁ・・・

 

 「私、置いて行かれたくなくて・・・お父さんとお母さんだけじゃなくて、天まで私から離れていくのが怖くて・・・それであの時、天を引っ叩いて・・・!」

 

 「・・・もういいから」

 

 絵里姉をギュっと抱き締める。

 

 絵里姉の身体が、前よりも小さく感じられた。

 

 「俺がちゃんと、絵里姉に自分の気持ちを伝えてたら・・・『好きなように生きてほしい』って、ちゃんと言えてたら・・・そしたら・・・」

 

 言葉が続かなかった。

 

 涙が止まらず、上手く言葉を話せない。

 

 「ぐすっ・・・ホント、私達って不器用よね」

 

 泣きながら微笑む絵里姉。

 

 「本当に似た者同士・・・似た者姉弟ね」

 

 「・・・うん」

 

 「でも・・・だからこそ、私は貴方が愛おしいわ」

 

 お互いの額が触れ合う。

 

 「足枷なわけないじゃない・・・天と亜里沙を守る為なら、私は何でも出来る。それほど大切な存在がいて・・・私は本当に幸せよ」

 

 「っ・・・」

 

 「大好きよ、天・・・心の底から愛してるわ」

 

 我慢の限界だった。

 

 俺は絵里姉の胸で、声を上げて号泣するのだった。

 

 あの日・・・μ'sの解散が決まった時のように。




どうも〜、ムッティです。

久しぶりの投稿ですみません(>_<)



今回遂に、天と絵里ちゃんが仲直りを果たしました!

喧嘩したことが明らかになって以来、仲直りするまでにだいぶ時間を要しましたが・・・

これからは、元の仲良し姉弟に戻ることでしょう。

あ、それともう1つ・・・

作者に公務員を否定する意思は一切ありません!

作者に!公務員を!否定する意思は!一切!ありません!

声を大にして言いたい(´・ω・`)

公務員に否定的な印象を受ける話になってしまった感じがあるかと思いますが、本当にそんなつもりは無いんです。

絵里ちゃんは自分の望んだ仕事に就かなかった、という流れの話を書きたかっただけでして・・・

全国の公務員の皆様、大変申し訳ありません。

作者は公務員の皆様を大変尊敬しております。

毎日のお仕事、お疲れ様です(`・ω・´)ゞ



さてさて、天と絵里ちゃんが仲直りしたところで・・・

そろそろAqoursの皆を登場させたい(´・ω・`)

梨子ちゃん以外のメンバーが最後に登場したのが、ずいぶん前のような気がする・・・

何ならμ'sのメンバーの方が出番が多い気がする・・・

・・・が、頑張ります(震え声)

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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