絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ
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『想いよひとつになれ』ってメッチャ良い曲ですよね。

アニメではサビの部分で善子ちゃんがウインクしてて、ハートをズッキュンされました。


支えてくれる人の存在は大きい。

 「・・・ハァ」

 

 俺は溜め息をつきながら、廊下を歩いていた。頭の中で、先ほどの小原理事長との会話が繰り返し流れている。

 

 「あの女・・・!」

 

 思い出す度に怒りがこみ上げてくる。

 

 なりふり構わず俺を脅し、千歌さん達のマネージャーを務めることを強要してくるなんて・・・流石は富豪の令嬢、権力を持っている者の脅しは一味違うようだ。

 

 だが・・・

 

 「・・・悲しそうだったな」

 

 あの悲しげな笑みが頭から離れない。恐らく、俺を脅してでもマネージャーにしたい理由があるのだろう。

 

 それでも、今回のことを許すことは出来ないが。

 

 「・・・もう訳が分かんない」

 

 頭の中がグチャグチャで、全く整理できない。とにかく今は帰って寝よう。

 

 そう思い、鞄を取りに教室へと戻ると・・・

 

 「あれ?天くん?」

 

 「ずら丸?」

 

 ずら丸が一人で席に座り、本を読んでいた。

 

 「帰ってなかったの?」

 

 「今日は図書委員会の仕事だったずら」

 

 「あぁ、図書室の受付か」

 

 図書委員会の生徒は当番制で、週に何度か図書室の受付をやっている。ずら丸もクラス代表として図書委員会に所属しており、今日がその当番の日だったらしい。

 

 「で、何で教室で本読んでんの?」

 

 「天くんと一緒に帰ろうと思って」

 

 微笑むずら丸。

 

 「当番が終わって教室に戻ってきたら、天くんの鞄が置いてあったから。天くんが戻ってくるのを、読書しながら待ってたずら」

 

 「マジか・・・結構待たせた?」

 

 「今来たところずら」

 

 「何そのデートの待ち合わせで男が言いそうなセリフ」

 

 「マルは女ずら」

 

 「知ってるわ」

 

 笑いながらツッコミを入れる。と、ずら丸が怪訝な表情で俺を見た。

 

 「・・・何かあったずら?」

 

 「え、何で?」

 

 「・・・酷い顔してるずら」

 

 「うわ、顔をディスられた。傷付くわぁ」

 

 「天くん」

 

 いつになく強い口調で、俺の名前を呼ぶずら丸。

 

 「無理して茶化すのは止めるずら。辛いのは天くんの方ずら」

 

 「・・・そうでもしなきゃやってられないよ」

 

 力なく席に座る俺。

 

 「頭の中がゴチャゴチャで、何も考えたくない・・・何かもう疲れたよ・・・」

 

 どうして小原理事長があんなことをしたのか・・・どうして俺がマネージャーをやらなければいけないのか・・・

 

 「何で・・・どうして・・・」

 

 「ダメずら」

 

 後ろからずら丸の声が聞こえたかと思うと、頭が柔らかいものに覆われる。

 

 俺はそこで初めてずら丸が俺の後ろに移動していたこと、そして後ろからずら丸に抱き締められていることに気付いた。

 

 「今は何も考えちゃダメずら。こういう時に深く考えちゃうと、どんどん良くない方に考えがいっちゃうずら」

 

 「ずら丸・・・」

 

 「今はただ、頭を空っぽにすること・・・マルに身を任せていれば良いずら」

 

 優しく抱き締めてくれるずら丸。ずら丸の温もりを感じ、心が安らいでいく。

 

 「・・・女の子なんだから、あんまり男にこういうことしない方が良いよ」

 

 「マルの男友達は天くんだけだから、他にこういうことする男の子なんていないずら。天くんだけの特権ずら」

 

 「・・・そっか。ありがたく受け取っとくよ」

 

 大人しくずら丸に身を任せる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「そんなことがあったずらね・・・」

 

 神妙な表情のずら丸。

 

 俺は帰りのバスの中で、ずら丸に事情を説明していた。あそこまでしてもらった以上、ずら丸に何も話さないのは良くないと思ったのだ。

 

 「理事長さんも酷いことするずら・・・」

 

 「・・・正直、かなりショックだったよ」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「久しぶりに会えて嬉しかったし、向こうも純粋に喜んでくれてるんだと思ってた。でも実際は、俺を利用する為に浦の星に入学するように仕組んでたなんて・・・」

 

 「マネージャーを断れば、浦の星からの追放・・・それは断れないずらね」

 

 「いや、それだけで済むなら断ってたよ」

 

 「ずら!?」

 

 驚愕しているずら丸。

 

 「ど、どういうことずら!?」

 

 「別の学校に行くっていう選択肢があったってこと。ツテが無いわけじゃないから、受け入れてくれる学校なら見つけられると思うし」

 

 「じゃ、じゃあ何で・・・」

 

 「・・・スクールアイドル部の為、かな」

 

 もし俺が断れば、小原理事長はスクールアイドル部を認めないと言っていた。それでは千歌さんの夢が叶わないし、せっかく前向きになれた梨子さんの決意が無駄になってしまう。

 

 何より自分達のマネージャーを断ったせいで、俺が浦の星から追放されてしまったら・・・恐らくあの三人は、責任を感じてスクールアイドルを断念してしまうだろう。

 

 「せっかく見つけた目標を、こんなことで諦めてほしくないから。あの三人には、これからも真っ直ぐ突き進んでほしいし」

 

 「でも天くんが無理矢理マネージャーをやらされることに、先輩方が責任を感じてないとは思えないずら」

 

 「そこは先輩方とも話をするよ。さっきはちょっと冷静じゃなかったけど、ずら丸のおかげでずいぶん落ち着いたから」

 

 俺は笑いながら、隣に座るずら丸の頭を撫でた。

 

 「ありがとう。おかげで助かったよ」

 

 「マ、マルは当然のことをしただけずら・・・」

 

 ずら丸が顔を赤くしている。可愛い奴め。

 

 「・・・でも、天くんが浦の星に残ってくれて良かったずら」

 

 「え?」

 

 ずら丸の言葉に首を傾げる俺。ずら丸が優しく微笑む。

 

 「・・・せっかく仲良くなれたのに、離れちゃうのは寂しいずら」

 

 「っ・・・」

 

 思わずドキッとしてしまう。ニヤけるずら丸。

 

 「あれ、天くん顔が赤いずら。どうしたずら?」

 

 「ゆ、夕陽のせいだって!」

 

 「ふーん・・・まぁ、そういうことにしておいてあげるずら♪」

 

 くっ、コイツ・・・完全に気付いてるな・・・

 

 「フフッ、天くんの弱点発見ずら♪」

 

 「・・・ここにずら丸の愛読書があります」

 

 「ずら!?マルが鞄に入れてた本!?いつの間に!?」

 

 「そしてここにマッチがあります・・・春とはいえ、日が暮れると冷えるよね」

 

 「ごめんなさいずらあああああっ!?堪忍ずらあああああっ!?」

 

 フッ、勝った・・・俺をからかおうなんて百年早いわ。

 

 「うぅ・・・天くんは鬼ずら・・・」

 

 「失礼な。悪魔と呼んでもらおうか」

 

 「余計に酷くなったずら!?」

 

 そんなやり取りをしていると、俺が降りるバス停に到着した。自分の鞄を持ち、席を立ってずら丸の方を見る。

 

 「じゃあまた明日」

 

 「また明日ずら」

 

 手を振ってくれるずら丸。

 

 俺はバスを降りようとしたが・・・一度立ち止まり、もう一度ずら丸の方を見る。

 

 「今日は本当にありがとう・・・花丸と友達で良かった」

 

 初めて名前を呼んだ。

 

 俺の言葉に、花丸は目をぱちくりさせると・・・頬を赤く染め、照れ臭そうに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「んー・・・とりあえず明日、千歌さん達と話さないとなぁ・・・」

 

 帰り道を歩きながら、どう話を切り出すかを考える。

 

 あの人達、絶対気にしてるだろうしなぁ・・・

 

 「わんっ!」

 

 考えながら歩いていると、犬の鳴き声が聞こえた。思わず顔を上げると、こちらへ向かって大きな犬が駆け寄ってくるところだった。

 

 「おぉ、しいたけ。ただいま」

 

 「わんっ!」

 

 嬉しそうに身体を摺り寄せてくる犬・・・しいたけの頭を優しく撫でる。

 

 と、しいたけの後から一人の女性が駆け寄ってきた。

 

 「ちょっとしいたけ、急にどうした・・・って天じゃん!今帰り?」

 

 「えぇ。こんばんは、美渡さん」

 

 明るいブラウン系の短い髪の女性に挨拶する。

 

 彼女は高海美渡さんといって、しいたけが飼われている旅館『十千万』の娘さんだ。『十千万』は学校の行き帰りで必ず通る為、毎日しいたけを構っていたら美渡さんとも挨拶する仲になったのだ。

 

 「学校の方はどうよ?彼女できた?」

 

 「欲しいのは山々なんですけど、全然フラグが建たないんですよね」

 

 「えー、だって男子は天だけなんでしょ?他は全員女子なんだから、選びたい放題じゃん。選り取りみどりじゃん」

 

 「女子達にも選ぶ権利があるでしょう。こんな冴えない男を選ぶぐらいなら、他校のイケメンを狙いに行くんじゃないですか?」

 

 「そうかなぁ?天は割りとイケてると思うよ?」

 

 「美渡~?」

 

 美渡さんと話していると、美渡さんの後ろから違う女性が現れた。黒髪ロングのおっとりとした雰囲気の女性が、しいたけとじゃれている俺に気付く。

 

 「そろそろ夕飯・・・って、天くんじゃない!お帰りなさい」

 

 「こんばんは、志満さん」

 

 彼女は高海志満さん、美渡さんのお姉さんだ。美渡さんと同じく挨拶する仲で、よくおすそ分けをいただいたりする。マジ女神。

 

 「志満さんは今日もお綺麗ですね」

 

 「フフッ、天くんったら上手なんだから」

 

 「本心ですって。俺が大人だったら放っておかなかったでしょうね」

 

 「あら、じゃあ天くんは私を放っておくのかしら?」

 

 「志満さんがその気なら、喜んでアタックさせていただきます」

 

 「ちょっと天、私の前で志満姉を口説かないでくれる?」

 

 「まだ口説いてませんよ。MK5(マジで口説く5秒前)です」

 

 「言葉が古くない!?アンタ高校生よねぇ!?」

 

 美渡さんのツッコミ。面白い人だなぁ・・・

 

 「美渡さんって、俺の先輩に似てますね。ツッコミが上手なんでボケやすいです」

 

 「いや、そこで判断されても・・・その先輩も大変ね・・・」

 

 同情的な表情の美渡さん。

 

 失礼な、これでも千歌さんのことは敬っているというのに。

 

 「そうだ天くん、良かったら夕飯食べていかない?」

 

 「いえ、そこまで甘えてしまうわけには・・・」

 

 「今日のメニューは肉じゃがなんだけど、ちょっと作りすぎちゃって」

 

 「ご相伴に預からせていただきます」

 

 「急に態度が変わったわね・・・」

 

 呆れている美渡さん。だって前におすそ分けでいただいた肉じゃが、メッチャ美味しかったんだもん。

 

 「フフッ、じゃあどうぞ」

 

 「お邪魔します」

 

 志満さんに案内され、『十千万』の中へと足を踏み入れる。

 

 「千歌ちゃ~ん、ご飯よ~」

 

 志満さんが二階に向かって呼びかける・・・え?

 

 「・・・は~い」

 

 やがて元気の無い様子で階段を下りてきたのは・・・紛れも無く千歌さんだった。

 

 「ごめん志満姉、私あんまり食欲無くて・・・って天くん!?何でここに!?」

 

 「・・・チェンジで」

 

 「何が!?」

 

 千歌さんのツッコミが響くのだった。




どうも~、ムッティです。

前回の話に、多くの感想をいただきました!

本当にありがとうございます!

意外にも『こういう展開好きです』という感想が多くて驚きました。

鞠莉ちゃん推しの方々から呪われるんじゃないかと思い、ちょっとビクビクしてたのはここだけの話…

前回の話はちょっとシリアスでしたが、今回からはまた思いっきりボケていきたいと思います(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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