誕生日が終わる前に間に合って良かったぁ・・・
それではいってみよー!
「たこ焼きが食べたい」
「はい?」
鞠莉の呟きが耳に入り、思わず聞き返してしまう俺。
俺と鞠莉は今、俺の家でのんびり過ごしていた。
Aqoursの放課後レッスンを終えて帰宅したところ、いきなり鞠莉が俺の家に押しかけてきたのだ。
「たこ焼きが食べたい」
「いきなりだな・・・」
呆れる俺。
思い返してみると、今日の鞠莉はどこか変だった。
上の空というか、心ここにあらずというか・・・
俺の家に押しかけてきてからも、ずっと俺の太ももに頭を乗せて寝転がってるし・・・
「じゃあ・・・食べに行く?」
「っ!」
鞠莉の頭を撫でながらそう答えると、鞠莉がガバッと飛び起きた。
「いいの!?」
「うん。俺も食べたいし」
確か花丸が、美味しいたこ焼き屋さんを知ってるって言ってたな・・・
早速電話して聞いてみるか。
「決まりね!それじゃ行きましょう!大阪に!」
「オッケー・・・ん?」
ちょっと待って?この子今何て言った?
「こうしちゃいられないわ!早速準備しなくちゃ!」
「ねぇ鞠莉、今大阪って・・・」
「出発は明日の朝よ!天も準備しておいてね!」
「いや、大阪って・・・」
「また明日ね、天!Good night!」
「人の話を聞けえええええっ!?」
俺のツッコミも虚しく、勢いよく家を飛び出して行く鞠莉。
「・・・何なのあの子」
ポツンと取り残される俺なのだった。
*****
翌日・・・
「小原鞠莉が~?大阪に~?キタアアアアアアアアアアッ!」
「ネタが古いな・・・」
やたらテンションの高い鞠莉を、呆れながら眺めている俺。
まさか本当に大阪に来ることになるとは・・・
いきなりヘリに乗せられるこっちの身にもなってほしい。
「そもそも、今日って平日だよね?普通に学校あるよね?」
「理事長権限で公欠扱いにするから大丈夫よ」
「職権濫用じゃん!?」
さっきスマホを見たら、ダイヤさんからえらい数の着信が入ってたんだけど・・・
ラインでも『無事ですか天さん!?』『鞠莉さんの暴走に巻き込まれていませんか!?』ってきてるんだけど・・・
すみませんダイヤさん、ガッツリ巻き込まれてます。
「まぁまぁ、良いじゃない。今日はマリーのBirthdayなんだから♪」
「誕生日だからって何でも許されるわけじゃないからね?」
そう、今日は鞠莉の誕生日なのだ。
せっかくの誕生日だっていうのに、俺と二人で大阪にいて良いんだろうか・・・
「せっかく学校をサボったんだもの!今日はとことん楽しむわよ!」
「『サボった』って言っちゃったよ・・・」
「ほら天、早く行きましょう!」
俺の手を握り、元気よく歩き出す鞠莉。
やれやれ・・・
「・・・まぁ、たまにはこういうのも良いかな」
「おっ、ようやく乗り気になったのかしら?」
「まぁね」
鞠莉の手を握り返す俺。
「せっかくのデートだし、楽しまなきゃ損でしょ。可愛い女の子が相手なら尚更ね」
「デ、デート・・・しかも可愛いって・・・」
何故か顔を赤くしている鞠莉。
「鞠莉?どうかした?」
「な、何でもないっ!早く行きましょうっ!」
慌てて歩き出す鞠莉に、首を傾げる俺なのだった。
*****
「Wow!Delicious!」
美味しそうにたこ焼きを頬張る鞠莉。
道頓堀へとやって来た俺達は、たこ焼きの食べ歩きをしていた。
「はい天、あ~ん♪」
「あ~ん・・・ん、美味しい!」
「でしょ?さっきのお店のたこ焼きとは、少し違うわよね」
「確かに・・・お店によって違うものなんだねぇ」
この辺り一帯のたこ焼き屋さんを片っ端から巡っているが、お店によって少し違うたこ焼きが出てくるので全然飽きなかった。
流石はたこ焼きの本場、恐るべし・・・
「ふぅ・・・そろそろお腹いっぱいになってきたわ」
「満足した?」
「Yes!大満足デース!」
「そりゃ良かった」
苦笑する俺。
「それじゃ、そろそろ内浦に帰ろっか」
「えっ?今日は帰らないわよ?」
「えっ?」
「えっ?」
首を傾げている鞠莉。
いやいやいや・・・
「あれ、聞き間違いかな・・・今日は帰らないって聞こえたんだけど・・・」
「えぇ、だって今日は大阪に泊まる予定だし」
「初耳なんだけど!?」
「今初めて言ったもの」
悪びれずに答える鞠莉。
「さぁ、今日はとことん大阪を楽しむわよ!まずはスリー天閣へ行きましょう!」
「通天閣ね。ツーって数字の2っていう意味じゃないから」
「フフッ、ナイスツッコミ!」
楽しそうに笑いながら、俺の手を引いて歩き出す鞠莉。
まぁ、鞠莉が楽しいならそれで良いか・・・
そう思ってしまうほどには、鞠莉に対して甘い俺なのだった。
*****
「あー、疲れた・・・」
ホテルのベッドに横たわる俺。
宣言通り、鞠莉は一日中大阪を楽しんでいた。
通天閣だけではなく、大阪城やアベノハルカスにも行ったし・・・
完全に観光旅行だよね、これ。
「それにしても・・・このホテル、もの凄く豪華だな・・・」
「フフッ、当然よ」
ちょうどバスルームから出てきた鞠莉が、俺の呟きを聞いてクスクス笑う。
「だってここ、ウチの系列のホテルだもの」
「マジか・・・これだから成金一族は・・・」
「だから料金はタダよ」
「成金万歳!」
「清々しいほどの掌返しね・・・」
呆れている鞠莉。
いやぁ、持つべきものは金持ちの幼馴染だね!
「・・・フフッ、まぁ天らしいけど」
鞠莉はそう言って笑みを零すと、俺の隣に腰掛けた。
バスローブ一枚だけという姿に加え、お風呂上りの濡れた髪を下ろしている鞠莉・・・
大人の色気を醸し出した、一人の女性がそこにはいた。
「ん?どうしたの天?」
「・・・綺麗になったよね、鞠莉」
「っ・・・」
頬を赤らめる鞠莉。
「ど、どうしたの急に・・・?」
「いや、改めて思っただけだよ。俺の幼馴染は本当に美人だなって」
「・・・うぅ」
顔を真っ赤にして俯く鞠莉。
こういうところは変わってないなぁ・・・
「じ、じゃあ・・・」
鞠莉は意を決したように顔を上げると、そのまま俺を押し倒してきた。
「うわっ!?ちょ、鞠莉!?」
仰向けに倒れた俺の上に、鞠莉が馬乗りになっている。
鞠莉は俺の肩に両手を置くと、衝撃的な言葉を口にした。
「マ、マリーのこと・・・抱いてくれる・・・?」
「・・・はい?」
え、ちょ・・・この子今何て言った?
まさかとは思うが、『抱く』って・・・
「ハグっていう意味じゃないわよ。セッk・・・」
「ストップうううううっ!?それ以上はストップうううううっ!?」
危ねぇ!?もう少しでNGワード出るところだったよ!?
「落ち着いて鞠莉!?自分が何を言ってるか分かってんの!?」
「マリーの身体じゃ不満かしら・・・?」
「むしろ不満が無いから困ってるんだけど!?」
こんなスタイル抜群の身体に、不満なんてあるわけないでしょうがあああああっ!
さっきから大きな双丘の谷間がガッツリ見えてるし、こっちは理性を保つのに必死なんだよおおおおおっ!
「それなら良いじゃない・・・マリーの身体、天の好きにして良いのよ・・・?」
甘い声で囁く鞠莉。
あぁ、俺の理性が削られていく・・・
「・・・ハァ」
俺は溜め息を一つ零すと、鞠莉の頬に手を添えた。
「ねぇ、鞠莉・・・何をそんなに焦ってるの?」
「っ・・・べ、別に焦ってなんて・・・!」
「嘘」
鞠莉の頬を抓る俺。
「いつもの余裕な態度じゃないし、何より・・・身体が震えてるよ」
「っ・・・」
俺と鞠莉の身体は密着している為、鞠莉の身体の震えはすぐに分かった。
多分鞠莉は、心の準備が出来ていなかったのだ。
「・・・離れたくないの」
「え・・・?」
「もう二度と・・・天と離れたくないの」
鞠莉の目に、みるみる涙が浮かんでいく。
「離れるって・・・俺は鞠莉から離れたりしないよ?」
「・・・そんなの嘘」
首を横に振る鞠莉。
「天の周りには、可愛くて魅力的な女の子がたくさんいる。Aqoursの皆もそうだし、μ'sの皆もそう・・・特にμ'sの皆は、マリーが知らない天をたくさん知ってる。天と心が通じ合ってる。マリーはそれが・・・たまらなく悔しい」
俺の顔に、鞠莉の涙が次々と零れ落ちてくる。
「もしあの時、引っ越してなかったら・・・天と離れ離れになってなかったら・・・天の隣に立っていたのは、マリーだったのに・・・そんな考え方をしてしまう自分が、本当に嫌になる・・・!」
「鞠莉・・・」
「ごめんなさい、天・・・こんな心の醜い女で、本当にごめんなさい・・・!」
泣きじゃくる鞠莉。
もしかしたらこの旅行も、空いた時間を埋めようとして・・・
「・・・鞠莉」
俺は身体を起こすと、鞠莉を優しく抱き締めた。
「さっきも言ったでしょ?鞠莉は綺麗だよ。外見も・・・内面もね」
ゆっくりと頭を撫でる。
「鞠莉の心の優しさは、よく分かってるつもりだよ。自分が悪役になってまで、絵里姉の願いを叶えようとしてくれるような人だもん。そんな人の心が、醜いわけないでしょ」
「天・・・」
「ありがたいことに、確かに俺の周りには可愛くて魅力的な女の子がたくさんいるよ。でも鞠莉だって、その中の一人なんだよ?」
笑みを浮かべる俺。
「μ'sの皆と過ごした時間は、確かに鞠莉の知らないことだろうけど・・・逆に俺と鞠莉が過ごした時間は、μ'sの皆も知らないことだしさ。俺の小さい頃のことなんて、鞠莉しか知らないことじゃん」
「マリーしか・・・知らないこと・・・」
「それに・・・もし鞠莉が引っ越してなかったら、鞠莉は果南やダイヤさんに出会えなかったんじゃないかな?」
「っ・・・」
鞠莉にとって、かけがえのない親友である二人・・・
あの時引っ越していなかったら、きっと出会うことは無かっただろう。
三人がスクールアイドルをやることも無かったし、俺が浦の星へ来ることも無かった・・・
全ての行動には、絶対に意味があるのだ。
「こうやって鞠莉と再会出来て、繋がることが出来た・・・俺はそれが凄く嬉しい」
鞠莉を抱く腕に力を込める。
「また出会ってくれてありがとう、鞠莉・・・大好きだよ」
「っ・・・天っ・・・!」
泣きじゃくる鞠莉。
背中をポンポン叩いてあやしていると、しばらくして鞠莉が俺の身体を離した。
「落ち着いた?」
「えぇ・・・ごめんなさい、みっともないところ見せちゃって」
「幼馴染でしょ。水臭いこと言わないの」
「フフッ・・・ありがと」
小さく笑う鞠莉。
やっぱり鞠莉には、笑顔がよく似合う。
「それより天・・・マリーを抱かなくて良かったの?童貞卒業のチャンスだったのに」
「それなぁ・・・惜しいことをしたかもしれないなぁ・・・」
「あーあ、マリーの初めてをあげようと思ったのになぁ」
「・・・ちょっとタイムマシン探してくるわ」
「真面目な顔して何言ってるの!?」
鞠莉のツッコミ。
あぁ、勿体無いことをしてしまった・・・
「全くもう・・・そんなにマリーの初めてが欲しかったの?」
「当たり前やん」
「何で関西弁なのよ・・・仕方ないわね」
鞠莉はそう言うと、俺の頬に両手を添えた。
「初めてじゃないけど・・・これで我慢してちょうだい」
「いや、何言って・・・っ!?」
「んっ・・・」
鞠莉の唇が俺の唇を塞ぎ、それ以上言葉を紡げなくなってしまう。
こ、これって・・・
「フフッ、ご馳走様♡」
唇を離し、ペロッと舐める鞠莉。
突然の出来事に頭が追いつかず、意識が遠のいていく。
「ちょ、天!?大丈夫!?」
慌てて受け止めてくれる鞠莉。
豊満な胸の谷間に顔を埋め、柔らかい幸せな感触を感じながら意識を失う俺なのだった。
*****
《鞠莉視点》
「すぅ・・・すぅ・・・」
「フフッ、気持ち良さそうに寝ちゃって・・・」
天の頭を撫でる私。
いきなり気絶した時はビックリしたけど・・・
「・・・マリーのこと、意識してくれてるってことかしら」
先ほどまで天の唇と重なっていた自分の唇に触れる。
さっき私・・・天とキス、したのよね・・・?
「っ・・・」
今になって恥ずかしくなってきた。
顔が熱くなっていくのを感じる。
「・・・初めてじゃないのに」
そう、私にとってはこれがセカンドキスだった。
私のファーストキスは、かれこれ十年ほど前に遡る。
「天、覚えてるかしら・・・?」
当時のことを思い出す。
『ほら鞠莉ちゃん、そんなに泣かないで』
『うぅ・・・天と離れたくない・・・』
引っ越す直前、私は寂しくて天に抱きついて泣いていた。
もう天に会えないのかと思うと、辛くて辛くてたまらなかった。
『また会えるって。ねっ?』
『・・・じゃあ誓って』
『え・・・?』
『また絶対会えるって、天とマリーはずっと仲良しだって・・・今ここで誓って』
『えっと・・・どうすれば良いの?』
困惑している天。
私の答えは決まっていた。
『チューして』
『は・・・?』
『結婚式ではチューをして、永遠の愛を誓うんだって。天もマリーにチューして』
ここで私と天がチューしたら、私達は永遠の愛を誓うことになる・・・
つまり離れていても、二人の絆が変わらない何よりの証になる。
『いや、それは違うんじゃ・・・』
『いいから。それとも、天はマリーとチューしたくないの・・・?』
涙目で天を見つめる私。
天は迷っていたが、私の無言の視線に折れたようだ。
『分かったよ・・・んっ』
『んっ・・・』
二人の唇が重なる。
『・・・また会おうね、鞠莉ちゃん』
『・・・うん、約束』
少し恥ずかしくて、お互い照れたように笑う。
寂しさでいっぱいだった私の心が、天の温かさでいっぱいになった瞬間だった。
「・・・懐かしいわね」
引っ越す直前、天と交わしたやり取りを思い出す。
あれが私のファーストキスだったなぁ・・・
「・・・フフッ、天は罪な男デース」
思わず笑みが零れる。
この誰よりも心の優しい男の子に、私は生まれて初めて恋をしたのだ。
そしてその恋心は、十年経っても変わることは無かった。
昔も今も・・・私は天のことが大好きなのである。
「こんなに惚れさせて、ファーストキスとセカンドキスまであげたんだもの・・・責任は取ってもらわなくちゃね♡」
少し焦ってしまい、天の前で情けない姿を見せてしまったけれど・・・
天は全てを受け止め、そして受け入れてくれた。
改めて思う・・・この人を好きになって良かった、と。
「全く・・・どれだけ惚れさせたら気が済むんだか・・・」
天の隣に寝そべり、同じ布団にくるまる。
ダイヤに見られたら、『破廉恥ですわ!』って怒られそうだけど・・・
「今日は私の誕生日だもの・・・これぐらいは許されるわよね」
天の頭を抱き寄せ、胸元に掻き抱く。
天はおっぱい大好きだし、目が覚めたら喜んでくれるかしら・・・
「お休みなさい、天・・・」
目を閉じ、呟く私。
「心から、愛してるわ・・・」
大好きな人の温もりを感じ、幸せを感じながら意識を手放す私なのだった。
チャオ♪ムッティです。
鞠莉ちゃん、お誕生日おめでとう!
いやぁ、ギリギリ間に合って良かったぁ・・・
ちなみに今回の大阪旅行の内容は、昨年自分が行った大阪旅行の内容が基になっています(笑)
たこ焼き美味しかったなぁ・・・
また是非とも行きたいですね!
さてさて、次の誕生日回は7月13日の善子ちゃんですね。
その次が7月22日のにこちゃんとなっております。
その間に、アニメ一期の内容が終わると良いんだけど・・・
残るは第13話だけですもんね。
頑張って進めなければ・・・
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャイニー☆