今回はにこちゃんの誕生日回です。
それではいくにこ!←
「にこ~、朝だよ~」
「ん~・・・」
気持ち良さそうに眠るにこの身体を、優しく揺する。
にこの瞼がゆっくりと開き、にこの顔を覗き込んでいる俺と目が合った。
「天ぁ・・・?」
「おはよう、にこ。起きる時間だよ」
「・・・あと五分」
「“檸檬●弾”」
「ギャアアアアアッ!?目がッ!?目があああああッ!?」
にこの瞼を手で無理矢理開け、レモンを思いっきり握り潰す。
大量のレモン汁が目に入ったにこが、悲鳴を上げながらのた打ち回っていた。
「おはよう、にこ。誕生日おめでとう」
「祝福するならもっと優しく起こしなさいよ!?メッチャ目が痛いんだけど!?」
「ドンマイ」
「誰のせいだと思ってんの!?」
「にこが起きないせいでしょ」
「うぐっ・・・」
言葉に詰まるにこ。
やれやれ・・・
「あと、そろそろ身体を隠したら?」
「身体?何の話・・・っ!?」
そこでにこもようやく気付いたらしい。
自分が全裸だということに。
「キャアッ!?」
「いや、そんなに恥ずかしがる?もう何度も見てるんだし、昨日の夜だって・・・」
「そういう問題じゃないわよ!?」
慌てて布団で身体を隠すにこ。
顔が真っ赤になっている。
「アハハ、俺の嫁は相変わらず乙女だなぁ」
「うっさい!早く出てけバカ旦那!」
「はいはい。もう朝ご飯の準備出来てるからね」
笑いながら部屋を出る俺なのだった。
*****
「お兄様、今日の夕飯のメニューはお決まりですか?」
長い黒髪をサイドテールに結った女性が、隣を歩きながら尋ねてくる。
彼女は矢澤こころちゃん、矢澤家の次女である。
「勿論。今日はにこの誕生日だし、にこの好物をフルコースで出すつもりだよ」
「フフッ、お姉様が喜びそうですね」
クスクス笑うこころちゃん。
μ'sが活動していた当時は小学生だった彼女も、今では大学四年生になっていた。
今日は大学の講義が無いということで、こうして夕飯の買い出しに付き合ってくれているのだ。
「いやぁ、お兄は良い旦那さんだねぇ」
肩にかかるくらいまで伸びた茶髪を、同じくサイドテールに結った女性がニヤニヤしながらそう言う。
矢澤ここあちゃん、矢澤家の三女である。
「こんな旦那さんがいるなんて、お姉が羨ましいなぁ」
「ここあちゃんはモテるんだし、男なんて選び放題でしょ」
「いや、全然モテないって。そもそも大学に良い男もいないしねぇ」
溜め息をつくここあちゃん。
こころちゃんの双子の妹である彼女も、今では大学四年生になりこころちゃんと同じ大学に通っている。
ここあちゃんも今日は大学の講義が無いとのことで、俺に付き合ってくれていた。
「それにしても、お姉とお兄が結婚してもう一年かぁ・・・相変わらず仲良いよね」
「当然。夫婦の営みもバッチリだぜ」
「お、お兄様・・・そういった話はあまりされない方がよろしいかと・・・」
顔を赤くしているこころちゃん。
俺とにこが結婚したのは一年前・・・俺が大学を卒業したのと同時に籍を入れ、俺達は晴れて夫婦となった。
その頃には既にバリバリ働いていたにこには当然、仕事を辞めて専業主婦になるという考えは無かった。
そこで逆に俺が就職せず、専業主夫を務めることになったのだ。
それと同時に矢澤家に引っ越し、今では矢澤ファミリーの一員となっている。
「あれぇ?お兄は『夫婦の営み』としか言ってないのに・・・こころったら、何で顔を赤くしてるのかなぁ?」
「だ、だって『夫婦の営み』といったら・・・!」
「こころちゃん・・・俺の知らない間に、君の心は汚れてしまったんだね・・・」
「お兄様!?」
「俺はあくまでも『夫婦としての関係はバッチリ』って言ったつもりだったのに・・・」
「えぇっ!?」
「アタシもそう捉えてたのになぁ・・・」
「嘘でしょう!?」
「「うん、嘘」」
「息ぴったりですかっ!」
こころちゃんのツッコミ。
いやぁ、こころちゃんは面白いなぁ。
「フッフッフッ、お兄も悪よのぅ・・・」
「いやいや、ここあちゃんほどでは・・・」
「も、もう知りませんっ!」
ぷいっと顔を背けてしまうこころちゃん。
あー、いじけちゃった・・・
「アハハ、ゴメンゴメン」
苦笑しながら謝り、こころちゃんの手を取る。
「ほら、早く行こう?」
「っ・・・全くもう、お兄様ったら・・・」
「あっ、ズルい!アタシも!」
「はいはい」
もう片方の手をここあちゃんと繋ぎ、三人で歩き出す。
「さて、愛する妻の誕生日を盛大に祝うとしますか」
「なお、その愛する妻の妹二人と手を繋いでいる模様」
「全然やましくないもん。だって家族だもん」
「妻の妹と不倫・・・ありそうな話だよねぇ」
「不倫とか無い無い。俺は多目的トイレに女性を呼び出すなんてマネしないから」
「お兄様!?誰のことをおっしゃっているのですか!?」
「えっ、こころちゃん知らないの?ネット見ろ!」
「そのネタもダメです!」
「センテンススプリング!」
「それは別の人ですよねぇ!?」
ツッコミが止まらないこころちゃんなのだった。
*****
「にこ、誕生日おめでとう!」
「おめでとうございます、お姉様!」
「お姉、おめでとう!」
「おめでと~」
「あ、ありがと・・・」
少し照れ臭そうにお礼を言うにこ。
にこが仕事から帰って来たところで、俺達はにこの誕生日を盛大に祝っていた。
「それにしても、お母様がいないのは残念ですね・・・」
「仕方ないよ。琴乃さんは忙しいもん」
にこの母親にして俺の義母でもある矢澤琴乃さんは、現在仕事で出張中だ。
にこの誕生日に、家に居られないと知った時の琴乃さんの荒れっぷりといったら・・・
遅くまでヤケ酒に付き合わされたっけなぁ・・・
「全く、にこは愛されてるねぇ・・・」
「な、何よ急に・・・」
「俺も愛してるよ、にこ」
「っ・・・み、皆の前でそういうこと言わないのっ!」
「アハハ、お姉ったら顔真っ赤じゃん!」
「うっさいここあ!」
「お姉様、少しは素直になられた方がよろしいですよ?」
「こころ!?」
「にこ姉はツンデレだもんね」
「虎太郎まで!?」
矢澤家の長男である虎太郎くんにまでイジられ、ショックを受けているにこ。
「アハハ、虎太郎くんも言うようになったねぇ・・・あっ、ご飯おかわり要る?」
「お願い、天兄」
茶碗を差し出してくる虎太郎くん。
今年の四月から大学生になった虎太郎くんは、矢澤家の中で一番の長身になっていた。
出会った当時は幼稚園児だったのに、時が経つのは早いなぁ・・・
「オッケー。どんどんご飯を食べて、北●晶みたいな男になってね」
「いや、あの人女だから。そこは佐々木●介で良くない?」
「おぉ、流石は矢澤家の人間・・・ツッコミがキレキレだわ」
「いつも天と一緒にいたら、自然にツッコミ力も上がるわ」
溜め息をつくにこ。
「天、私にもご飯のおかわりくれる?」
「25,252円になります」
「有料!?しかもメッチャ高くない!?」
「『にっこにっこにー』だけにね」
「別に上手くないわよ!?」
「アハハ、冗談冗談」
「全く、相変わらずボケ倒すんだから・・・」
呆れているにこ。
一方、他の三人は笑っていた。
「フフッ、これがホントの夫婦漫才ってヤツですね」
「誰が夫婦漫才よ!?」
「いやぁ、息ピッタリ!流石は夫婦!」
「ここで褒められても嬉しくないわっ!」
「にこ姉、仕事辞めて天兄と芸人を目指したら?」
「無理に決まってるでしょうが!」
「そうだよ虎太郎くん、俺は社長に恫喝されるとか嫌だからね?」
「アンタはどこの会社の話してんのよ!?」
「あっ・・・お前ら、テープ回してへんやろな?」
「止めなさい!?それは危ないわよ!?」
「危ない?反社の人間でもいた?」
「そのネタが危ないって言ってんのよ!?」
ツッコミを入れすぎて、ゼェゼェ息切れしているにこ。
面白いなぁ・・・
「流石は俺の嫁、ツッコミのスキルが違うわ」
「誰のせいで鍛えられたと思ってんのよ!?」
「・・・本当にお似合いの二人だよね」
「「確かに」」
虎太郎くんの呟きに、笑いながら頷くこころちゃんとここあちゃんなのだった。
*****
《にこ視点》
「天~、お風呂空いたわよ~」
お風呂から上がった私は、キッチンにいる天に声をかけた。
「オッケー、今入るよ」
笑顔で返事をする天。
夕飯の後片付けも終わったというのに、天は何やらキッチンで作業をしていた。
「何してるの?」
「明日の皆のお弁当の準備。今日の余り物とか使えそうだし、今のうちに小分けにして準備しておこうと思って」
手際よく作業している天。
天は毎朝、私達五人のお弁当を作ってくれている。
おまけに家事全般を全てこなしてくれているので、こっちとしては本当に大助かりなのだが・・・
「・・・ねぇ、天」
「ん?」
「専業主夫・・・大変じゃない?」
私が今の仕事を続けられるよう、天は今の役目を引き受けてくれた。
本当にありがたいと思うのと同時に・・・天に対しての申し訳無さもあった。
「もし天が負担を感じてるなら、その・・・」
「・・・にこ」
天に抱き寄せられる。
私の身体が、天の腕の中にすっぽりと収まった。
「負担なんて感じてないよ」
微笑む天。
「仕事をしてる時のにこ、凄く活き活きしてる。そんなにこを見られるのが俺は嬉しいし、そんなにこの力になれるならいくらでもなりたいと思う」
「天・・・」
「こころちゃんもここあちゃんも、虎太郎くんも琴乃さんも・・・今の俺にとって本当の家族だから。家族の為に頑張るのは当然でしょ?」
天に頭を撫でられる。
「俺は今、凄く幸せだよ。にこと一緒になれて、矢澤家の一員になれて・・・良かったなって、心からそう思う。だからにこは、今の仕事を思いっきり頑張ってほしい。それが俺の願いだよ」
「・・・変わらないわね、アンタ」
天の背中に手を回す。
本当に天は、昔と全然変わらない。
「全く、底なしのお人好しなんだから・・・」
この優しさに、私はどれほど救われただろう・・・
天がいなかったら、きっと今の私はいない。
照れ臭くて、なかなか口には出せないけど・・・本当に感謝していた。
「・・・お風呂」
「え?あぁ、うん。今入るよ」
「・・・私も一緒に入る」
「はい?」
首を傾げている天の手を引き、お風呂場へと向かう私。
「さぁ、行くわよ」
「ちょ、にこは今上がったばかりじゃ・・・」
「もう一度入りたい気分なの。夫婦水入らずで、裸の付き合いといこうじゃない」
「いや、俺に裸見られて良いの?」
「良いに決まってるでしょ。夫婦なんだから」
「朝はメッチャ恥ずかしがってたじゃん」
「私、過去は振り返らないから」
「今朝の話だよねぇ!?」
「うっさい!良いから行くわよ!」
本当はメチャクチャ恥ずかしいけど・・・
感謝の言葉を口に出来ないのなら、行動で示すしかない。
「この宇宙No.1嫁のにこが、アンタの背中を流してあげるわ!光栄に思いなさい!」
「いや、気持ちは嬉しいんだけどさぁ・・・愛する嫁の裸を前に、理性を保てる気がしないんだけど・・・」
「・・・良いわよ」
「え・・・?」
キョトンとする天に、私は顔を赤くしながらもハッキリと告げた。
「・・・天の好きにして良いから」
「っ・・・」
天の顔も赤くなる。
私の誕生日の夜は、まだまだ終わりそうにないのだった。
にっこにっこにー!ムッティです。
にこちゃんの誕生日回、いかがでしたか?
本編には登場していませんが、今回はこころちゃん・ここあちゃん・虎太郎くんも登場させてみました!
キャラや年齢は想像で描いておりますので、悪しからず・・・
ちなみに今回、こころちゃんとここあちゃんは双子設定です。
アニメでは違っていましたが、元々は双子設定らしいですね。
大きくなった二人のイラストをネットで見ましたが、メッチャ可愛かったなぁ( ´∀`)
それとにこちゃんママの名前ですが、琴乃さんにしてみました。
由来は勿論、声優さんの名前です( ̄ー ̄)
さてさて、恒例の支援絵紹介タイム!
ことりちゃん大好きさんから、こちらの支援絵をいただきました!
【挿絵表示】
にこちゃんキタアアアアアッ!!!!!
『僕たちはひとつの光』の時のにこちゃんですね。
相変わらず上手すぎや・・・
ことりちゃん大好きさん、いつもありがとうございます(^^)
次回の誕生日回は、8月1日の千歌ちゃんを予定しております。
その次が、8月3日の穂乃果ちゃんですね。
・・・誕生日回、間に合うかな(´・ω・`)
が、頑張ります((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
それではまた次回!以上、ムッティでした!