何とか間に合ったぜ・・・
ちなみに今回のお話は、果林ちゃん視点で進みますのでご了承下さい。
それではいってみよー!
「あれ?果林さん?」
「あら、せつ菜じゃない」
放課後に部室で読書をしていると、後輩のせつ菜がやって来た。
今日の同好会は休みになったから、誰も来ないと思っていたんだけど・・・
「どうして部室に?」
「昨日忘れ物をしてしまったので、回収にきたんです。果林さんはどうしてここに?」
「彼の付き添いよ」
そう言って、視線を膝元に落とす。
そこには・・・
「すぅ・・・すぅ・・・」
私の膝枕でスヤスヤ眠っている、天の姿があった。
それを見たせつ菜が微笑む。
「フフッ・・・天さん、気持ち良さそうに眠ってますね」
「ここ最近、夜遅くまで曲作りしてくれてるみたいなのよ。今日もさっきまで作業してたんだけど、眠そうだったから強制的に仮眠をとらせたの」
「次のライブ、近いですもんね・・・本当に、天さんと侑さんには頭が上がりません」
「全くよね」
天の頭を撫でる私。
相変わらず無茶するんだから・・・
「フフッ・・・果林さんは、本当に天さんが大好きなんですね」
「なっ!?いきなり何を言い出すのよ!?」
「しーっ、天さんが起きちゃいますよ」
「あっ・・・」
慌てて口元を押さえつつ、せつ菜を恨みがましく睨む。
「アハハ、ごめんなさい」
「もう・・・」
溜め息をつく私。
まぁ、その通りなんだけどね・・・
「そういえば果林さんと天さんって、同好会が始まる前からお付き合いされてましたよね?お二人の馴れ初めって、どういった感じだったんですか?」
「急に切り込んできたわね・・・まぁ、隠すことでも無いんだけど」
目をキラキラさせながら尋ねてくるせつ菜に呆れつつ、天と出会ったあの日のことを思い出す私なのだった。
*****
一年前・・・
「・・・参ったわ」
溜め息をつく私。
今日は学校も仕事も休みだったから、気分転換で動物園にでも行こうと思って外へ出てきたんだけど・・・
「・・・ここ、どこかしら」
完全に迷子になってしまった。
必死にスマホのマップと睨めっこしていると・・・
「えーっと・・・朝香先輩?」
急に声を掛けられる。
振り向くと、見覚えの無い男の子が立っていた。
「貴方は・・・?」
「あ、虹ヶ咲学園一年の絢瀬天です」
「・・・あぁ、虹ヶ咲唯一の男子生徒!」
今年から共学となった虹ヶ咲だが、入学した男子はたった一人・・・
その一人がこの男の子、絢瀬天くんだ。
そういえば噂には聞いてたけど、顔は見たことなかったわね・・・
「よく私のことが分かったわね?会ったこと無いのに」
「朝香先輩は有名人ですから」
「そう?まぁ読者モデルやってるから、顔は知られてるかもしれないけど」
「いえ、歩く公然猥褻罪として有名です」
「何それ!?」
ちょっと待って!?
私そんな不名誉な称号で有名なの!?
「『スタイルが良過ぎて目の毒』『目のやり場に困る』『無駄にエロい』『色気がありすぎていけない方向に走ってしまいそう』等々、あちこちで意見を聞きますよ」
「どんな意見!?っていうか、最後の意見は身の危険を感じるんだけど!?」
虹ヶ咲のモラルが不安になる内容だった。
大丈夫かしら・・・
「ところで先輩、ひょっとして道に迷われてます?」
「え、何で分かったの?」
「挙動が明らかに迷子でしたけど」
「うっ・・・」
何も言い返せない私。
ここは素直に頼ろうかしら・・・
「実は動物園に行きたくて・・・場所、分かるかしら?」
絢瀬くんにスマホを見せると、何故かポカンとした表情を浮かべた。
「いや、先輩・・・後ろを見て下さい」
「え?」
絢瀬くんに言われて後ろを振り返ると・・・
すぐ目の前に、目的地の動物園があった。
「・・・・・」
汗がダラダラ流れる。
嘘でしょ・・・?
「・・・さようなら」
「ちょっと待って!?」
哀れな子を見るような目をしながら立ち去ろうとする絢瀬くんを、全力で引き止める。
「違うの!これは違うの!」
「大丈夫です先輩。先輩はきっとナイスバディを得る為の代償として、頭のネジを十本くらい失ったんですよね。俺はちゃんと分かってますから」
「何も分かってないじゃない!?っていうか十本って多くない!?」
「何かを得る為には、それと同等の代価が必要・・・等価交換の法則ですもんね」
「どこのハガレンよ!?お願いだから話を聞いて!?」
マズいわ・・・!
このままじゃ、先輩としての威厳が・・・!
「そうだわ絢瀬くん!貴方今日暇かしら!?」
「無限大の地図を広げて、果てしないあの場所へ行かないといけないんで忙しいです」
「どこのD●-iCE!?『ONE PI●CE』の主題歌じゃない!?」
「そういうことなんで帰りますね」
「ちょっと待ちなさい!」
絢瀬くんの腕を掴む。
こうなったら・・・!
「今日一日、私に付き合いなさい!これは先輩命令よ!」
「パワハラで訴えて良いですか?」
「美人な先輩と一日デート出来るんだから、役得だと思いなさい!」
「自分で美人とか言っちゃう時点でドン引きなんですけど」
「お昼ご飯奢ってあげるから!」
「何してるんですか朝香先輩!早く行きますよ!」
「急に態度が変わったわね!?」
掌返しが早い絢瀬くんなのだった。
*****
「見て絢瀬くん!パンダよパンダ!」
「はしゃぎっぷりが凄いですね・・・」
苦笑する絢瀬くん。
動物園へやって来た私達は、色々な動物を見て回っていた。
「朝香先輩がパンダ好きって、何か意外ですね」
「うっ・・・どうせ『キャラじゃない』って言いたいんでしょ?」
「人相の悪い強面のオジサンが、実は大の子供好きだった時くらいの衝撃です」
「そこまで!?」
絢瀬くんの中で、私ってどういうイメージなのかしら・・・
「まぁでも、可愛いなって思いました」
「っ・・・き、急に何を言い出すのよ・・・」
「思いっきり抱きつきたいです」
「えぇっ!?そ、そんないきなり・・・!」
「あの白黒の毛をモフモフしたいですよね」
「パンダの話!?」
「そうですけど?」
首を傾げる絢瀬くん。
わ、私としたことが・・・
とんでもない勘違いをしてたわ・・・
「っていうか、人メッチャ多いですね」
「休日の動物園だもの。これくらい普通・・・キャッ!?」
人だかりに押され、よろけてしまう私。
すると・・・
「大丈夫ですか?」
絢瀬くんが私を受け止め、優しく支えてくれた。
「あ、ありがとう・・・」
「いえいえ。はぐれても困りますし、とりあえず人だかりから離れましょうか」
絢瀬くんはそう言うと、私の手を握った。
「あ、絢瀬くん!?」
「ん?何ですか?」
「な、何でもない・・・」
私だけ意識しているのが恥ずかしくて、言葉を飲み込んでしまう。
意外にも大きな手の温もりを感じながら、そっと絢瀬くんの手を握り返す私なのだった。
*****
「いやぁ、楽しかったですね」
「そ、そうね・・・」
「先輩?どうしました?」
「な、何でもないわよ!?」
すっかり日も暮れ、私達は学生寮への帰路に着いていたのだが・・・
私はさっきの手の温もりを思い出し、未だにドキドキしていた。
(うぅ、何でこんなにドキドキしてるのよ・・・)
周りからは『恋愛経験が豊富そう』などとよく言われるが、実は完全にゼロだというのはここだけの話だ。
男性と付き合ったことはおろか、手さえ繋いだこともない。
そもそも恋をしたことすらないのである。
(初めて男の子と手を繋いだ結果、この有り様・・・うぶすぎるでしょ・・・)
何だか顔が熱いし、とても恥ずかしい・・・
でも、不思議と嫌な気分ではない・・・
そんなモヤモヤを抱えている間に、いつの間にか学生寮に着いていた。
「それじゃ、今日はありがとうございました」
「・・・ごめんなさいね。一日付き合わせちゃって」
「役得だと思えって言ったのは先輩でしょうに」
「あ、あれはもう忘れて!」
「アハハ、先輩は面白いですね」
笑っている絢瀬くん。
全くもう・・・
「あ、そうだ」
絢瀬くんは何かを思い出すと、鞄の中から袋を取り出した。
「これ、さっきの動物園で買ったんです。良かったらどうぞ」
「私に・・・?」
驚きながらも受け取る。
いつの間に・・・
「開けても良いかしら?」
「どうぞ」
ゆっくりと封を開けると、中にはパンダのストラップが入っていた。
「可愛い・・・」
「でしょ?偶然見つけたんで、先輩にどうかなって」
微笑む絢瀬くん。
「・・・お世辞でも何でもなく、今日は本当に楽しかったです」
「え・・・?」
「朝香先輩って、クールで大人な女性っていう印象がありましたけど・・・本当は凄く可愛い女の子なんだなって思いました」
「なっ・・・!?」
「アハハ、今度はパンダのことじゃないですよ」
笑う絢瀬くん。
この子、最初から気付いて・・・
「また学園で会ったら、声掛けて下さいね。それじゃ」
そう言って立ち去ろうとする彼の手を、気付いたらギュッと掴んでいた。
「先輩・・・?」
「・・・ライン」
「え・・・?」
「ライン、教えなさい・・・休みの日、また付き合ってちょうだい・・・」
小さな声で呟く。
恥ずかしくて顔を上げられない。
「か、勘違いしないでよね!?私がパンダ好きだなんて知ってるの、貴方しかいないんだから!責任取ってパンダ巡りに付き合えって言ってるの!」
「何だ、ただのツンデレか」
「誰がツンデレよ!?」
「はいはい、落ち着いて下さい」
いきり立つ私に苦笑しつつ、絢瀬くんはスマホを取り出してラインを教えてくれた。
「これで良し、と・・・それじゃ、デートのお誘いを楽しみにしてますね」
「だからデートじゃないから!」
絢瀬くんは私のツッコミに笑いながら、一礼して去っていった。
全くもう・・・
「・・・楽しかったわね、今日」
一人呟く。
気を遣うことなく自然に、一人の女の子として私を見て接してくれた絢瀬くん・・・
私には、それが何よりも嬉しかったのだ。
「フフッ・・・次はどこへ付き合ってもらおうかしら?」
思わず笑みが零れる。
この気持ちを何と呼ぶのか知らないまま、次に彼と出掛ける日を心待ちにしている私なのだった。
*****
「そんなことがあってから、天と二人で遊びに出掛けるようになって・・・」
「へ~?」
「『私は天が好きなんだ』って気付いて、アプローチするようになって・・・」
「ほ~?」
「それで、その・・・私の方から告白して、今に至るというか・・・」
「なるほど~?」
「そのニヤニヤ顔を今すぐ止めなさい!」
「しーっ、天さんが起きちゃいますって」
「あっ・・・」
慌てて口元を押さえる私。
うぅ、何を暴露させられているのかしら・・・
「それにしても、果林さんって案外純情なんですねぇ」
「わ、悪い!?」
「全然。むしろキュンとしちゃいました」
せつ菜はそう言って微笑むとその場にしゃがみ、天の頬をツンツン突いた。
「天さんは幸せ者ですねー。あの果林さんに想ってもらえるなんて」
「ちょっと、人の彼氏の頬を突くの止めてちょうだい」
「フフッ、嫉妬ですか?」
「・・・何とでも言ってちょうだい」
「アハハ、ちょっとからかい過ぎましたね。すみません」
苦笑しながら謝るせつ菜。
全く・・・
「本当に、お二人はお似合いのカップルだと思います。私も恋愛したいなぁ・・・」
「・・・天は渡さないわよ?」
「どれだけ天さんが大好きなんですか・・・ってもうこんな時間!?すみません、予定があるので失礼します!」
慌てて部室を出て行くせつ菜。
それで目が覚めたのか、天の目がゆっくり開く。
「んっ・・・」
「あら天、おはよう」
「・・・おはよう、果林」
寝たまま身体を伸ばす天。
「今誰かいなかった・・・?」
「せつ菜よ。忘れ物を取りに来たんですって」
「あぁ、せつ菜か・・・俺も会いたかったな・・・」
「あら、彼女の前で浮気宣言?」
「違うって。新曲のことで話し合いたくて」
天は苦笑すると、手を伸ばして私の頬に触れた。
「全く、俺の彼女は妬いてくれるねぇ」
「重くて悪かったわね」
「そうやって自虐的にならないの」
優しく頬を撫でてくれる天。
「まぁ、そういうところも好きなんだけど」
「っ・・・だ、騙されないんだから!」
顔が赤くなる私。
我ながらチョロい女ね・・・
「そういえば果林、ライブの次の週の日曜日って空いてる?」
「え?えぇ、仕事も休みだから空いてるわよ」
「じゃあ、久々に動物園行こっか。パンダ見たいでしょ?」
「・・・天がどうしてもって言うなら、付き合ってあげるわ」
「アハハ、じゃあお願い」
「し、仕方ないわね・・・」
言葉とは裏腹に、胸が高鳴る私。
その日が待ち遠しくて仕方ない。
「もう、俺の彼女は素直じゃないんだから」
笑う天。
素直じゃない、か・・・
「・・・そうね。たまには素直になってみようかしら」
「え・・・?」
私は笑みを浮かべ、そのまま上半身を倒すと・・・
天の唇に自分の唇を重ねた。
「っ・・・」
「んっ・・・」
やがて名残惜しく思いながらも唇を離し、至近距離で天の瞳を見つめる。
「いつもありがとう、天・・・大好きよ」
赤くなる天の顔を見ながら、改めて天が大好きなのだと実感する私なのだった。
はぁい♪ムッティよ♪
・・・おえっ(吐き気)
今回は果林ちゃんの誕生日回でした!
果林ちゃんの魅力は、ずばりギャップだと思うんですよね。
大人な雰囲気を漂わせつつ、方向音痴だったりエマちゃんにお世話されていたり・・・
ギャップがたまらん( ´∀`)
そんなわけで今回は大人な果林ちゃんではなく、一途で純情な果林ちゃんをテーマに書いてみましたが・・・
いかがだったでしょうか?
気が付けばニジガクメンバーの誕生日回も、半数以上書いてきましたね。
残るは8月のせつ菜ちゃん、10月の栞子ちゃん、11月の璃奈ちゃん、12月の彼方ちゃんの4人・・・
侑ちゃんは誕生日が不明なので、どこかのタイミングで書けたら良いなぁ・・・
っていうかその前に7月の善子ちゃん、そして本編も書かないとなぁ・・・
が、頑張ります・・・(震え声)
それではまた次回!以上、ムッティでした!