絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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果林ちゃん、誕生日おめでとう!

何とか間に合ったぜ・・・

ちなみに今回のお話は、果林ちゃん視点で進みますのでご了承下さい。

それではいってみよー!


【朝香果林】素直に・・・

 「あれ?果林さん?」

 

 「あら、せつ菜じゃない」

 

 放課後に部室で読書をしていると、後輩のせつ菜がやって来た。

 

 今日の同好会は休みになったから、誰も来ないと思っていたんだけど・・・

 

 「どうして部室に?」

 

 「昨日忘れ物をしてしまったので、回収にきたんです。果林さんはどうしてここに?」

 

 「彼の付き添いよ」

 

 そう言って、視線を膝元に落とす。

 

 そこには・・・

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 私の膝枕でスヤスヤ眠っている、天の姿があった。

 

 それを見たせつ菜が微笑む。

 

 「フフッ・・・天さん、気持ち良さそうに眠ってますね」

 

 「ここ最近、夜遅くまで曲作りしてくれてるみたいなのよ。今日もさっきまで作業してたんだけど、眠そうだったから強制的に仮眠をとらせたの」

 

 「次のライブ、近いですもんね・・・本当に、天さんと侑さんには頭が上がりません」

 

 「全くよね」

 

 天の頭を撫でる私。

 

 相変わらず無茶するんだから・・・

 

 「フフッ・・・果林さんは、本当に天さんが大好きなんですね」

 

 「なっ!?いきなり何を言い出すのよ!?」

 

 「しーっ、天さんが起きちゃいますよ」

 

 「あっ・・・」

 

 慌てて口元を押さえつつ、せつ菜を恨みがましく睨む。

 

 「アハハ、ごめんなさい」

 

 「もう・・・」

 

 溜め息をつく私。

 

 まぁ、その通りなんだけどね・・・

 

 「そういえば果林さんと天さんって、同好会が始まる前からお付き合いされてましたよね?お二人の馴れ初めって、どういった感じだったんですか?」

 

 「急に切り込んできたわね・・・まぁ、隠すことでも無いんだけど」

 

 目をキラキラさせながら尋ねてくるせつ菜に呆れつつ、天と出会ったあの日のことを思い出す私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 一年前・・・

 

 「・・・参ったわ」

 

 溜め息をつく私。

 

 今日は学校も仕事も休みだったから、気分転換で動物園にでも行こうと思って外へ出てきたんだけど・・・

 

 「・・・ここ、どこかしら」

 

 完全に迷子になってしまった。

 

 必死にスマホのマップと睨めっこしていると・・・

 

 「えーっと・・・朝香先輩?」

 

 急に声を掛けられる。

 

 振り向くと、見覚えの無い男の子が立っていた。

 

 「貴方は・・・?」

 

 「あ、虹ヶ咲学園一年の絢瀬天です」

 

 「・・・あぁ、虹ヶ咲唯一の男子生徒!」

 

 今年から共学となった虹ヶ咲だが、入学した男子はたった一人・・・

 

 その一人がこの男の子、絢瀬天くんだ。

 

 そういえば噂には聞いてたけど、顔は見たことなかったわね・・・

 

 「よく私のことが分かったわね?会ったこと無いのに」

 

 「朝香先輩は有名人ですから」

 

 「そう?まぁ読者モデルやってるから、顔は知られてるかもしれないけど」

 

 「いえ、歩く公然猥褻罪として有名です」

 

 「何それ!?」

 

 ちょっと待って!?

 

 私そんな不名誉な称号で有名なの!?

 

 「『スタイルが良過ぎて目の毒』『目のやり場に困る』『無駄にエロい』『色気がありすぎていけない方向に走ってしまいそう』等々、あちこちで意見を聞きますよ」

 

 「どんな意見!?っていうか、最後の意見は身の危険を感じるんだけど!?」

 

 虹ヶ咲のモラルが不安になる内容だった。

 

 大丈夫かしら・・・

 

 「ところで先輩、ひょっとして道に迷われてます?」

 

 「え、何で分かったの?」

 

 「挙動が明らかに迷子でしたけど」

 

 「うっ・・・」

 

 何も言い返せない私。

 

 ここは素直に頼ろうかしら・・・

 

 「実は動物園に行きたくて・・・場所、分かるかしら?」

 

 絢瀬くんにスマホを見せると、何故かポカンとした表情を浮かべた。

 

 「いや、先輩・・・後ろを見て下さい」

 

 「え?」

 

 絢瀬くんに言われて後ろを振り返ると・・・

 

 すぐ目の前に、目的地の動物園があった。

 

 「・・・・・」

 

 汗がダラダラ流れる。

 

 嘘でしょ・・・?

 

 「・・・さようなら」

 

 「ちょっと待って!?」

 

 哀れな子を見るような目をしながら立ち去ろうとする絢瀬くんを、全力で引き止める。

 

 「違うの!これは違うの!」

 

 「大丈夫です先輩。先輩はきっとナイスバディを得る為の代償として、頭のネジを十本くらい失ったんですよね。俺はちゃんと分かってますから」

 

 「何も分かってないじゃない!?っていうか十本って多くない!?」

 

 「何かを得る為には、それと同等の代価が必要・・・等価交換の法則ですもんね」

 

 「どこのハガレンよ!?お願いだから話を聞いて!?」

 

 マズいわ・・・!

 

 このままじゃ、先輩としての威厳が・・・!

 

 「そうだわ絢瀬くん!貴方今日暇かしら!?」

 

 「無限大の地図を広げて、果てしないあの場所へ行かないといけないんで忙しいです」

 

 「どこのD●-iCE!?『ONE PI●CE』の主題歌じゃない!?」

 

 「そういうことなんで帰りますね」

 

 「ちょっと待ちなさい!」

 

 絢瀬くんの腕を掴む。

 

 こうなったら・・・!

 

 「今日一日、私に付き合いなさい!これは先輩命令よ!」

 

 「パワハラで訴えて良いですか?」

 

 「美人な先輩と一日デート出来るんだから、役得だと思いなさい!」

 

 「自分で美人とか言っちゃう時点でドン引きなんですけど」

 

 「お昼ご飯奢ってあげるから!」

 

 「何してるんですか朝香先輩!早く行きますよ!」

 

 「急に態度が変わったわね!?」

 

 掌返しが早い絢瀬くんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「見て絢瀬くん!パンダよパンダ!」

 

 「はしゃぎっぷりが凄いですね・・・」

 

 苦笑する絢瀬くん。

 

 動物園へやって来た私達は、色々な動物を見て回っていた。

 

 「朝香先輩がパンダ好きって、何か意外ですね」

 

 「うっ・・・どうせ『キャラじゃない』って言いたいんでしょ?」

 

 「人相の悪い強面のオジサンが、実は大の子供好きだった時くらいの衝撃です」

 

 「そこまで!?」

 

 絢瀬くんの中で、私ってどういうイメージなのかしら・・・

 

 「まぁでも、可愛いなって思いました」

 

 「っ・・・き、急に何を言い出すのよ・・・」

 

 「思いっきり抱きつきたいです」

 

 「えぇっ!?そ、そんないきなり・・・!」

 

 「あの白黒の毛をモフモフしたいですよね」

 

 「パンダの話!?」

 

 「そうですけど?」

 

 首を傾げる絢瀬くん。

 

 わ、私としたことが・・・

 

 とんでもない勘違いをしてたわ・・・

 

 「っていうか、人メッチャ多いですね」

 

 「休日の動物園だもの。これくらい普通・・・キャッ!?」

 

 人だかりに押され、よろけてしまう私。

 

 すると・・・

 

 「大丈夫ですか?」

 

 絢瀬くんが私を受け止め、優しく支えてくれた。

 

 「あ、ありがとう・・・」

 

 「いえいえ。はぐれても困りますし、とりあえず人だかりから離れましょうか」

 

 絢瀬くんはそう言うと、私の手を握った。

 

 「あ、絢瀬くん!?」

 

 「ん?何ですか?」

 

 「な、何でもない・・・」

 

 私だけ意識しているのが恥ずかしくて、言葉を飲み込んでしまう。

 

 意外にも大きな手の温もりを感じながら、そっと絢瀬くんの手を握り返す私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「いやぁ、楽しかったですね」

 

 「そ、そうね・・・」

 

 「先輩?どうしました?」

 

 「な、何でもないわよ!?」

 

 すっかり日も暮れ、私達は学生寮への帰路に着いていたのだが・・・

 

 私はさっきの手の温もりを思い出し、未だにドキドキしていた。

 

 (うぅ、何でこんなにドキドキしてるのよ・・・)

 

 周りからは『恋愛経験が豊富そう』などとよく言われるが、実は完全にゼロだというのはここだけの話だ。

 

 男性と付き合ったことはおろか、手さえ繋いだこともない。

 

 そもそも恋をしたことすらないのである。

 

 (初めて男の子と手を繋いだ結果、この有り様・・・うぶすぎるでしょ・・・)

 

 何だか顔が熱いし、とても恥ずかしい・・・

 

 でも、不思議と嫌な気分ではない・・・

 

 そんなモヤモヤを抱えている間に、いつの間にか学生寮に着いていた。

 

 「それじゃ、今日はありがとうございました」

 

 「・・・ごめんなさいね。一日付き合わせちゃって」

 

 「役得だと思えって言ったのは先輩でしょうに」

 

 「あ、あれはもう忘れて!」

 

 「アハハ、先輩は面白いですね」

 

 笑っている絢瀬くん。

 

 全くもう・・・

 

 「あ、そうだ」

 

 絢瀬くんは何かを思い出すと、鞄の中から袋を取り出した。

 

 「これ、さっきの動物園で買ったんです。良かったらどうぞ」

 

 「私に・・・?」

 

 驚きながらも受け取る。

 

 いつの間に・・・

 

 「開けても良いかしら?」

 

 「どうぞ」

 

 ゆっくりと封を開けると、中にはパンダのストラップが入っていた。

 

 「可愛い・・・」

 

 「でしょ?偶然見つけたんで、先輩にどうかなって」

 

 微笑む絢瀬くん。

 

 「・・・お世辞でも何でもなく、今日は本当に楽しかったです」

 

 「え・・・?」

 

 「朝香先輩って、クールで大人な女性っていう印象がありましたけど・・・本当は凄く可愛い女の子なんだなって思いました」

 

 「なっ・・・!?」

 

 「アハハ、今度はパンダのことじゃないですよ」

 

 笑う絢瀬くん。

 

 この子、最初から気付いて・・・

 

 「また学園で会ったら、声掛けて下さいね。それじゃ」

 

 そう言って立ち去ろうとする彼の手を、気付いたらギュッと掴んでいた。

 

 「先輩・・・?」

 

 「・・・ライン」

 

 「え・・・?」

 

 「ライン、教えなさい・・・休みの日、また付き合ってちょうだい・・・」

 

 小さな声で呟く。

 

 恥ずかしくて顔を上げられない。

 

 「か、勘違いしないでよね!?私がパンダ好きだなんて知ってるの、貴方しかいないんだから!責任取ってパンダ巡りに付き合えって言ってるの!」

 

 「何だ、ただのツンデレか」

 

 「誰がツンデレよ!?」

 

 「はいはい、落ち着いて下さい」

 

 いきり立つ私に苦笑しつつ、絢瀬くんはスマホを取り出してラインを教えてくれた。

 

 「これで良し、と・・・それじゃ、デートのお誘いを楽しみにしてますね」

 

 「だからデートじゃないから!」

 

 絢瀬くんは私のツッコミに笑いながら、一礼して去っていった。

 

 全くもう・・・

 

 「・・・楽しかったわね、今日」

 

 一人呟く。

 

 気を遣うことなく自然に、一人の女の子として私を見て接してくれた絢瀬くん・・・

 

 私には、それが何よりも嬉しかったのだ。

 

 「フフッ・・・次はどこへ付き合ってもらおうかしら?」

 

 思わず笑みが零れる。

 

 この気持ちを何と呼ぶのか知らないまま、次に彼と出掛ける日を心待ちにしている私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「そんなことがあってから、天と二人で遊びに出掛けるようになって・・・」

 

 「へ~?」

 

 「『私は天が好きなんだ』って気付いて、アプローチするようになって・・・」

 

 「ほ~?」

 

 「それで、その・・・私の方から告白して、今に至るというか・・・」

 

 「なるほど~?」

 

 「そのニヤニヤ顔を今すぐ止めなさい!」

 

 「しーっ、天さんが起きちゃいますって」

 

 「あっ・・・」

 

 慌てて口元を押さえる私。

 

 うぅ、何を暴露させられているのかしら・・・

 

 「それにしても、果林さんって案外純情なんですねぇ」

 

 「わ、悪い!?」

 

 「全然。むしろキュンとしちゃいました」

 

 せつ菜はそう言って微笑むとその場にしゃがみ、天の頬をツンツン突いた。

 

 「天さんは幸せ者ですねー。あの果林さんに想ってもらえるなんて」

 

 「ちょっと、人の彼氏の頬を突くの止めてちょうだい」

 

 「フフッ、嫉妬ですか?」

 

 「・・・何とでも言ってちょうだい」

 

 「アハハ、ちょっとからかい過ぎましたね。すみません」

 

 苦笑しながら謝るせつ菜。

 

 全く・・・

 

 「本当に、お二人はお似合いのカップルだと思います。私も恋愛したいなぁ・・・」

 

 「・・・天は渡さないわよ?」

 

 「どれだけ天さんが大好きなんですか・・・ってもうこんな時間!?すみません、予定があるので失礼します!」

 

 慌てて部室を出て行くせつ菜。

 

 それで目が覚めたのか、天の目がゆっくり開く。

 

 「んっ・・・」

 

 「あら天、おはよう」

 

 「・・・おはよう、果林」

 

 寝たまま身体を伸ばす天。

 

 「今誰かいなかった・・・?」

 

 「せつ菜よ。忘れ物を取りに来たんですって」

 

 「あぁ、せつ菜か・・・俺も会いたかったな・・・」

 

 「あら、彼女の前で浮気宣言?」

 

 「違うって。新曲のことで話し合いたくて」

 

 天は苦笑すると、手を伸ばして私の頬に触れた。

 

 「全く、俺の彼女は妬いてくれるねぇ」

 

 「重くて悪かったわね」

 

 「そうやって自虐的にならないの」

 

 優しく頬を撫でてくれる天。

 

 「まぁ、そういうところも好きなんだけど」

 

 「っ・・・だ、騙されないんだから!」

 

 顔が赤くなる私。

 

 我ながらチョロい女ね・・・

 

 「そういえば果林、ライブの次の週の日曜日って空いてる?」

 

 「え?えぇ、仕事も休みだから空いてるわよ」

 

 「じゃあ、久々に動物園行こっか。パンダ見たいでしょ?」

 

 「・・・天がどうしてもって言うなら、付き合ってあげるわ」

 

 「アハハ、じゃあお願い」

 

 「し、仕方ないわね・・・」

 

 言葉とは裏腹に、胸が高鳴る私。

 

 その日が待ち遠しくて仕方ない。

 

 「もう、俺の彼女は素直じゃないんだから」

 

 笑う天。

 

 素直じゃない、か・・・

 

 「・・・そうね。たまには素直になってみようかしら」

 

 「え・・・?」

 

 私は笑みを浮かべ、そのまま上半身を倒すと・・・

 

 天の唇に自分の唇を重ねた。

 

 「っ・・・」

 

 「んっ・・・」

 

 やがて名残惜しく思いながらも唇を離し、至近距離で天の瞳を見つめる。

 

 「いつもありがとう、天・・・大好きよ」

 

 赤くなる天の顔を見ながら、改めて天が大好きなのだと実感する私なのだった。




はぁい♪ムッティよ♪

・・・おえっ(吐き気)

今回は果林ちゃんの誕生日回でした!

果林ちゃんの魅力は、ずばりギャップだと思うんですよね。

大人な雰囲気を漂わせつつ、方向音痴だったりエマちゃんにお世話されていたり・・・

ギャップがたまらん( ´∀`)

そんなわけで今回は大人な果林ちゃんではなく、一途で純情な果林ちゃんをテーマに書いてみましたが・・・

いかがだったでしょうか?

気が付けばニジガクメンバーの誕生日回も、半数以上書いてきましたね。

残るは8月のせつ菜ちゃん、10月の栞子ちゃん、11月の璃奈ちゃん、12月の彼方ちゃんの4人・・・

侑ちゃんは誕生日が不明なので、どこかのタイミングで書けたら良いなぁ・・・

っていうかその前に7月の善子ちゃん、そして本編も書かないとなぁ・・・

が、頑張ります・・・(震え声)

それではまた次回!以上、ムッティでした!
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