ソードとシールド、どっちにしようかな・・・
翌日・・・
「ルビィちゃん、入部届け出したみたい。梨子さんからラインきたよ」
「良かったずら」
俺と花丸は、図書室でお喋りしていた。今日は花丸が当番の日なので、俺も普通に受付の椅子に座ってしまっている。
「早速これから練習だって。ルビィちゃん、張り切ってるんじゃないかな」
「天くんは行かなくて良いずら?」
「残念ながら、今日も生徒会なのよね」
ダイヤさんが所用で少し遅くなるとのことだったので、それまでの時間潰しにこうして図書室に来ているのだった。
「花丸こそ、良かったの?」
「何がずら?」
「ルビィちゃんと一緒に、スクールアイドル部に入らなくて」
「・・・オラには無理ずら」
首を横に振る花丸。
「オラとか言っちゃうし、運動は苦手だし・・・スクールアイドルに向いてないずら」
「その割には、スクールアイドルの雑誌読んでるじゃん」
「ずらっ!?」
机の引き出しにしまってあった雑誌を取り出す俺。花丸がこういう雑誌をこっそり読んでいることを、俺は前から知っていた。
「そ、それは・・・ルビィちゃんの好きなものを知ろうと思って・・・!」
「あ、このページの端が折ってある」
「ずらあああああっ!?」
雑誌を取り戻そうとする花丸を避け、そのページを開く俺。そこには、ウエディングドレス姿の女の子が写っていた。
「星空凛ちゃんか・・・μ'sの特集みたいだけど、何でこのページだけ折ってあるの?」
「うぅ・・・それは・・・」
「それは?」
続きを促すと、花丸が観念したように口を開いた。
「何か凄く・・・キラキラしてたから・・・」
「・・・なるほど」
これは確か、凛ちゃんがセンターを務めた『Love wing bell』の時か・・・
「懐かしいな・・・」
「天くん?」
首を傾げる花丸。俺は花丸へと視線を向けた。
「・・・凛ちゃんも、最初はスクールアイドルに向いてないって思ってたらしいよ」
「え・・・?」
「自分には女の子らしい服なんて似合わないからって。凄くコンプレックスを持ってたみたいなんだけど、それを乗り越えられたんだって」
「ど、どうやって・・・」
「同じμ'sのメンバーの小泉花陽ちゃんが、凛ちゃんの背中を押してくれたんだって。花陽ちゃんと凛ちゃんは小さい頃からの親友同士で、凛ちゃんにとって花陽ちゃんの存在は大きかったみたいだよ」
驚いている花丸に、俺は笑みを向けた。
「ちなみに花陽ちゃんがμ'sに入る時、背中を押したのは凛ちゃんなんだって。自分に自信が無かった花陽ちゃんを勇気付けて、μ's入りを後押ししたらしいよ。それにしても、この二人の関係・・・まるでどこかの誰かさん達だと思わない?」
「っ・・・!」
息を呑む花丸。
「花丸はルビィちゃんの背中を押して、Aqours入りを後押しした。なら次は、ルビィちゃんが花丸の背中を押す番じゃないかな・・・ね、ルビィちゃん?」
「ぴぎっ!?」
「ずらっ!?」
入り口の陰に隠れていたルビィちゃんが飛び上がり、それに花丸が驚いて飛び上がった。
「ルビィちゃん!?いつの間に!?」
「ア、アハハ・・・少し前に来たんだけど、二人が話してたからつい・・・」
「花丸は気付いてなかったみたいだけど、ツインテールが丸見えだったよ。隠れるなら透明マント持ってこないと」
「どこのハ●ー・ポ●ター!?そんなもの実在しないよ!?」
「じゃあ黒澤家に代々伝わる古の術とか無いの?」
「無いよ!?天くんは黒澤家を何だと思ってるの!?」
「スクールアイドル大好き一族」
「それは私とお姉ちゃんだけだからね!?」
ルビィちゃんは一通りツッコミを入れると、花丸の方を見た。
「花丸ちゃん、ルビィね・・・花丸ちゃんのことずっと見てた」
「え・・・?」
「ルビィに気を遣って体験入部してるんじゃないかって、ルビィの為に無理してるんじゃないかって・・・心配だったから」
実際花丸がスクールアイドル部に体験入部したのは、ルビィちゃんをスクールアイドル部に入部させる為だ。そういう意味では、ルビィちゃんに気を遣ったというのは間違いじゃない。
でも・・・
「でも・・・花丸ちゃん、とっても嬉しそうだった。練習してる時も、皆でお話してる時も・・・それを見て気付いたの。花丸ちゃん、スクールアイドルが好きなんだって」
「マルが・・・?」
驚いている花丸。
ルビィちゃんの言う通り、練習の時の花丸はとても楽しそうだった。運動は苦手という意識が強すぎて、自分では気付いてなかったのかもしれないけど。
「花丸ちゃんと一緒にスクールアイドルが出来たらって、ずっと思ってた。一緒に頑張れたらって」
「・・・それでも、マルには無理ずら。体力も無いし、向いてないずら」
首を横に振り、俯く花丸。やれやれ・・・
「マルがスクールアイドルなんて、そんな・・・」
「ダメずら」
後ろから花丸を抱き締める。小原理事長に脅されて落ち込んでいた時、花丸が俺にしてくれたみたいに。
「そ、天くんっ!?」
「そうやって自分を卑下して、『無理』とか『向いてない』とか言っちゃダメずら。自分の気持ちに正直になるずら」
「・・・マルの真似しないでほしいずら」
「意地っ張りな誰かさんへの罰ずら」
「むぅ・・・」
ジト目で見上げてくる花丸に、俺は笑みを浮かべた。
「ルビィちゃんが正直な気持ちをぶつけてるんだから、花丸も正直な気持ちを言うべきだと思うよ。花丸はスクールアイドルをやりたいの?やりたくないの?」
「・・・やってみたいずら」
小さく呟く花丸。
「でも・・・マルに出来るかな・・・」
「一番大切なのは、出来るかどうかじゃない・・・やりたいかどうかでしょ」
花丸を抱く腕に力を込める。
「一緒に頑張ろう。俺もサポートするから」
「天くん・・・」
「花丸ちゃん」
ルビィちゃんが花丸に手を差し出す。
「ルビィ、スクールアイドルがやりたい。花丸ちゃんと一緒に」
「ルビィちゃん・・・」
花丸は笑みを浮かべると、ルビィちゃんの手を握った。
「よろしくずら」
「っ・・・うんっ!」
涙を浮かべるルビィちゃん。良かった・・・
「さて、じゃあ善は急げって言うし・・・入部届けを出しに行こうか」
そう言って花丸から離れようとすると、腕を掴まれた。ルビィちゃんと握手している手と反対の手で、花丸が俺の腕を掴んでいる。
「花丸・・・?」
「・・・もう少しだけ。もう少しだけ、このままでいてほしいずら」
耳まで真っ赤にしながら、小さな声で呟く花丸。ルビィちゃんがニヤニヤしている。
「ひょっとして、ルビィはお邪魔だったかな?」
「そ、そんなことはないずら!マルはただ・・・!」
「失礼しまーす」
花丸が慌てて言い訳しようとしていると、千歌さん・曜さん・梨子さんが図書室へと入ってきた。
「あ、花丸ちゃん。ルビィちゃんはどこに・・・って天くん!?」
「ちょっと!?何で花丸ちゃんを抱き締めてるの!?」
「そういう関係なんです」
「「「えぇっ!?」」」
「天くん!?何言ってるずら!?」
「抱き締めたり抱き締められたりする関係なんです」
「言い方っ!間違ってないけど言い方を考えるずらっ!」
「間違ってないの!?」
「やっぱりそういう関係なの!?」
「違うずらあああああっ!?違わないけど違うずらあああああっ!?」
「どっちよ!?」
ギャーギャー騒いでる四人。それを見て、ルビィちゃんがクスクス笑っていた。
「フフッ、天くんも悪い人だね」
「ルビィちゃんには負けるよ」
笑いあう俺達。と、ルビィちゃんが微笑んだ。
「・・・今回はありがとね、天くん。天くんのおかげで、お姉ちゃんにも花丸ちゃんにも本音が言えたよ」
「ダイヤさんの件は花丸のおかげだし、花丸の件はルビィちゃんが頑張ったからだよ。俺は何もしてないから」
「そんなことないよ。天くんがいなかったら、ルビィは踏み出せてなかったと思う。本当にありがとう」
「ルビィちゃん・・・」
屈託の無い笑顔を見せるルビィちゃん。俺はその笑みに、ダイヤさんの面影を見た気がした。
やっぱり姉妹なんだな・・・
「それとね・・・天くんに一つお願いがあるの」
「お願い?」
急にモジモジし始めるルビィちゃん。どうしたんだろう?
「これからはルビィのこと、呼び捨てで呼んでほしいっていうか・・・ほら!花丸ちゃんのことも呼び捨てで呼んでるし、ルビィのこともそう呼んでほしいなって!」
急に早口でまくし立てるルビィちゃん。顔が真っ赤である。
「了解。じゃあ、改めてよろしくね・・・ルビィ」
「っ・・・うんっ!」
「天くん!早くこっちに来て誤解を解くずら!」
花丸が焦っている。やれやれ・・・
「誤解じゃないでしょ。事実なんだから」
「その言い方が誤解を招いてるずら!」
「それより千歌さん、花丸がスクールアイドル部に入りたいそうですよ」
「えぇっ!?ホントに!?」
「そ、それは・・・ホントずら」
「やったあああああっ!?」
「ヨーソローっ!」
「ずらっ!?」
花丸に抱きつく千歌さんと曜さん。と、梨子さんが俺達のところへやってくる。
「それで?今回も天くんが暗躍してたわけ?」
「いや、暗躍って・・・ひょっとして梨子さん、怒ってます?」
「別にぃ?天くんが誰を抱き締めようが天くんの自由だしぃ?」
「うわぁ・・・」
めんどくさいなぁ、この人・・・何に怒ってるのか知らないけど。
「ほら、拗ねてないで行きますよ。花丸の入部届けを出しに行かないと」
「ちょ、手を引っ張らないでよ!?」
「良いじゃないですか。俺と梨子さんだって抱き合った仲でしょ」
「誤解を招く言い方しないでくれる!?」
「ずらっ!?梨子さんとも抱き合ってたずらっ!?」
「違うのよ花丸ちゃん!?あれはただのスキンシップで・・・!」
「何か今の会話だけ聞いてると、天くんって女ったらしみたいだよね」
「曜さん、人聞きの悪いこと言わないで下さい。デスノー●に名前書き込みますよ」
「最後までそのネタ引きずるの!?」
皆でわいわい騒ぎながら、図書室を後にする。
新しくスクールアイドル部に加わった、引っ込み思案な仲良しコンビ・・・花丸とルビィがどんな姿を見せてくれるのか、今からとても楽しみな俺なのだった。
どうも~、ムッティです。
今回でアニメ一期の第四話が終了となります。
次回からは第五話の内容に入っていきます。
遂に善子回・・・善子ちゃんの運命やいかに。
それではまた次回!以上、ムッティでした!