絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

29 / 173
咳が止まらない・・・

久しぶりに風邪ひいたけど、やっぱり健康なのが一番だとつくづく思うわ・・・


大切に想うからこそ伝えたい言葉がある。

 《善子視点》 

 

 「・・・これで良し」

 

 マンションのゴミ捨て場に段ボール箱を置きながら、私は小さく呟いた。

 

 この中には衣装を始め、堕天使関連のグッズが全て入っている。堕天使を卒業すると決めた私には、もう必要の無いものだ。

 

 「これで本当に卒業か・・・」

 

 本当は卒業なんてしたくない。でもこれ以上は、周りに迷惑をかけてしまう。

 

 ただでさえ今回、スクールアイドル部の皆に迷惑をかけてしまったのだ。それに・・・

 

 「天・・・」

 

 こんな私を受け入れてくれた、大切な友達の顔が浮かぶ。

 

 いつも穏やかで温厚なあの天が、私の為に生徒会長に対して本気で怒ってくれた。本当に嬉しかったけど・・・それと同時に、本当に申し訳なかった。

 

 天は生徒会長のことを、心から尊敬できる人だと言っていた。私がいつまでも堕天使を引きずっていたせいで、天は尊敬する生徒会長を怒鳴ってしまったのだ。

 

 これ以上天に迷惑をかけない為にも、堕天使は卒業しないといけない。私はこれからも、天とは友達でいたいから。

 

 「・・・バイバイ」

 

 小さく呟き、ゴミ捨て場を後にする。これで私は、堕天使を卒業・・・

 

 「本当にそれで良いの?」

 

 「っ!?」

 

 聞き覚えのある声に、慌てて視線を向ける。そこには・・・

 

 「天!?」

 

 私の大切な友達が立っていた。どうしてここに・・・

 

 「っていうかよっちゃん、ちゃんと分別した?捨てるにしてもちゃんと分別しないと、業者さんが困っちゃうよ?」

 

 「全部燃えるゴミだから大丈夫よ」

 

 「部屋にあったグッズの中に、明らかに燃えるゴミには出せないものもあった気がするんだけど?」

 

 「・・・火をつければ全部燃えんのよ」

 

 「シニヨン燃やすぞ中二病」

 

 「ごめんなさい」

 

 容赦の無いツッコミに、思わず謝ってしまう。

 

 「・・・何でアンタがここにいんのよ?」

 

 「善恵さんからラインきたんだよね。『善子が断捨離なう』って」

 

 「相変わらず人の母親と仲良しね・・・」

 

 そういえばこの間、『天くんが息子だったらなぁ・・・そうだ善子!天くんと結婚しなさい!そしたら天くんは私の息子になるわ!』とか言ってたわね・・・

 

 まぁ確かに、天が相手なら悪くないかも・・・って何考えてんのよ私!?

 

 「よっちゃん?何か顔が赤いけど大丈夫?」

 

 「な、何でもないわよ!それより何しに来たのよ!?」

 

 「いや、よっちゃんが堕天使を卒業する瞬間に立ち会おうかと思って。朝早くに来てスタンバってたんだよね」

 

 「・・・アンタねぇ」

 

 大方、私のことを心配してくれたんだろう。そんなことの為に、わざわざこんな時間にここまで来るなんて・・・

 

 ホント、バカなんだから・・・

 

 「・・・わざわざありがとね。私は大丈夫よ。もう堕天使は卒業するから」

 

 「・・・俺の目には、大丈夫そうには見えないけど」

 

 「っ・・・」

 

 見抜かれていた。こういう時の天は本当に鋭い。

 

 「俺はね、よっちゃん。よっちゃんの決めたことに、俺が口を挟むべきじゃないと思った。だから堕天使を卒業するって言った時、何も言わなかった。本当は卒業したくないんだって、分かってたのに」

 

 私から目を離さない天。

 

 「だからせめて、よっちゃんが堕天使を卒業するところに立ち会おうって。よっちゃんを一人にしたくなかったから、ここまで来た。でも・・・今のよっちゃんの顔を見て、やっぱり思ったよ。よっちゃんは堕天使を卒業すべきじゃない」

 

 「・・・ふざけないで」

 

 天を睨みつける。人の気持ちも知らないで・・・

 

 「私は普通の高校生になりたいの。ようやく・・・ようやく気持ちの整理をつけて、堕天使グッズを捨てにきたのに・・・何でそんなこと言うの?何で私の気持ちを踏みにじるようなことを言うのよ?」

 

 「じゃあよっちゃん・・・堕天使を卒業して、これから笑顔でいられる自信ある?」

 

 「っ・・・それは・・・」

 

 「・・・無いよね。やっぱり」

 

 寂しそうに笑う天。

 

 「言ったはずだよ、よっちゃん。よっちゃんが笑顔でいられるのが一番だって。大切な友達が、毎日を笑顔で過ごせないなんて・・・俺は嫌だから」

 

 「天・・・」

 

 「普通の高校生になりたいって気持ちを、否定してるわけじゃないよ。でも普通の高校生になることで、よっちゃんが笑顔でいられなくなるっていうなら・・・無理に堕天使を卒業してほしくない。そんな寂しそうなよっちゃん、見たくないから」

 

 「・・・バカ」

 

 天に歩み寄り、天の胸を叩く。

 

 「バカ、バカ、バカ・・・!」

 

 何度も胸を叩く。本当に、どうしてコイツはいつもいつも・・・!

 

 「何でそんな・・・私に優しくするのよぉ・・・!」

 

 天の胸に縋る。気付けば、涙が溢れて止まらなくなっていた。

 

 「何で・・・どうして・・・!」

 

 「・・・さっき言ったでしょ」

 

 優しい温もりに包まれる。天が私を抱き締めてくれていた。

 

 「よっちゃんは大切な友達だって。最初は花丸の友達だからとか、借りを返す為だとか言ってたけど・・・今はそれ以上に、よっちゃんの力になりたい気持ちが強いから」

 

 微笑む天。

 

 「堕天使ヨハネだって良いじゃん。それだってよっちゃんの・・・津島善子の一部なんだから。全部ひっくるめてよっちゃんだって、俺はそう思うよ」

 

 優しく頭を撫でられる。ホントにコイツは・・・

 

 「それに・・・そう思ってるのは俺だけじゃないよ」

 

 「え・・・?」

 

 「堕天使ヨハネちゃん!」

 

 大きな声が響き渡る。視線を向けると・・・堕天使の衣装を着たスクールアイドル部の五人が、笑顔で立っていた。

 

 「「「「「スクールアイドル部に入りませんか!?」」」」」

 

 「っ・・・」

 

 息を呑む私。アンタ達まで・・・

 

 「・・・良いの?変なこと言うわよ?」

 

 「良いよ」

 

 「時々、儀式とかするかもよ・・・?」

 

 「そのくらい我慢するわ」

 

 「リトルデーモンになれっていうかも・・・」

 

 「嫌だったら嫌だっていうずら」

 

 「ぴぎっ!」

 

 笑顔で頷いてくれる皆。と、私の背中に天の手が触れた。

 

 「思いっきり羽ばたくと良いよ。やりたいことをやったら良い。今のよっちゃんには、それが許されるんだから」

 

 「やりたいこと・・・」

 

 「憧れてるだけじゃなくて、今度は自分の手で掴みにいきなよ。ここで折れたら、堕天使ヨハネの名が泣くよ?」

 

 笑っている天。

 

 全く、そこまで言うのなら・・・やってやろうじゃない。

 

 「はい、これ」

 

 千歌さんが黒い羽を差し出す。これ、私の・・・

 

 「昨日部室に忘れていったよ。堕天使ヨハネのアイデンティティなんでしょ?」

 

 微笑む千歌さん。

 

 「一緒に頑張ろう?」

 

 「っ・・・うんっ!」

 

 手を伸ばし、黒い羽を掴む。そして頭のシニヨンに差した。

 

 「堕天使ヨハネ・・・ここに降臨っ!」

 

 「おぉ、この痛々しい感じ・・・まさによっちゃんって感じがするよ」

 

 「アンタ喧嘩売ってんの!?」

 

 「よっ、中二病患者」

 

 「やかましいわ!」

 

 そんなツッコミを入れながらも、気付けば自然と笑顔になっている私がいるのだった。




どうも~、ムッティです。

今回の話で、アニメ一期の第5話が終了・・・

ではありません。

次の話まで続きます。

それから第6話へ入っていこうと思いますので、よろしくお願い致します。

あと前書きでも述べましたが、思いっきり風邪をひきました。

皆さんも風邪にはお気を付け下さい。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。