久しぶりに風邪ひいたけど、やっぱり健康なのが一番だとつくづく思うわ・・・
《善子視点》
「・・・これで良し」
マンションのゴミ捨て場に段ボール箱を置きながら、私は小さく呟いた。
この中には衣装を始め、堕天使関連のグッズが全て入っている。堕天使を卒業すると決めた私には、もう必要の無いものだ。
「これで本当に卒業か・・・」
本当は卒業なんてしたくない。でもこれ以上は、周りに迷惑をかけてしまう。
ただでさえ今回、スクールアイドル部の皆に迷惑をかけてしまったのだ。それに・・・
「天・・・」
こんな私を受け入れてくれた、大切な友達の顔が浮かぶ。
いつも穏やかで温厚なあの天が、私の為に生徒会長に対して本気で怒ってくれた。本当に嬉しかったけど・・・それと同時に、本当に申し訳なかった。
天は生徒会長のことを、心から尊敬できる人だと言っていた。私がいつまでも堕天使を引きずっていたせいで、天は尊敬する生徒会長を怒鳴ってしまったのだ。
これ以上天に迷惑をかけない為にも、堕天使は卒業しないといけない。私はこれからも、天とは友達でいたいから。
「・・・バイバイ」
小さく呟き、ゴミ捨て場を後にする。これで私は、堕天使を卒業・・・
「本当にそれで良いの?」
「っ!?」
聞き覚えのある声に、慌てて視線を向ける。そこには・・・
「天!?」
私の大切な友達が立っていた。どうしてここに・・・
「っていうかよっちゃん、ちゃんと分別した?捨てるにしてもちゃんと分別しないと、業者さんが困っちゃうよ?」
「全部燃えるゴミだから大丈夫よ」
「部屋にあったグッズの中に、明らかに燃えるゴミには出せないものもあった気がするんだけど?」
「・・・火をつければ全部燃えんのよ」
「シニヨン燃やすぞ中二病」
「ごめんなさい」
容赦の無いツッコミに、思わず謝ってしまう。
「・・・何でアンタがここにいんのよ?」
「善恵さんからラインきたんだよね。『善子が断捨離なう』って」
「相変わらず人の母親と仲良しね・・・」
そういえばこの間、『天くんが息子だったらなぁ・・・そうだ善子!天くんと結婚しなさい!そしたら天くんは私の息子になるわ!』とか言ってたわね・・・
まぁ確かに、天が相手なら悪くないかも・・・って何考えてんのよ私!?
「よっちゃん?何か顔が赤いけど大丈夫?」
「な、何でもないわよ!それより何しに来たのよ!?」
「いや、よっちゃんが堕天使を卒業する瞬間に立ち会おうかと思って。朝早くに来てスタンバってたんだよね」
「・・・アンタねぇ」
大方、私のことを心配してくれたんだろう。そんなことの為に、わざわざこんな時間にここまで来るなんて・・・
ホント、バカなんだから・・・
「・・・わざわざありがとね。私は大丈夫よ。もう堕天使は卒業するから」
「・・・俺の目には、大丈夫そうには見えないけど」
「っ・・・」
見抜かれていた。こういう時の天は本当に鋭い。
「俺はね、よっちゃん。よっちゃんの決めたことに、俺が口を挟むべきじゃないと思った。だから堕天使を卒業するって言った時、何も言わなかった。本当は卒業したくないんだって、分かってたのに」
私から目を離さない天。
「だからせめて、よっちゃんが堕天使を卒業するところに立ち会おうって。よっちゃんを一人にしたくなかったから、ここまで来た。でも・・・今のよっちゃんの顔を見て、やっぱり思ったよ。よっちゃんは堕天使を卒業すべきじゃない」
「・・・ふざけないで」
天を睨みつける。人の気持ちも知らないで・・・
「私は普通の高校生になりたいの。ようやく・・・ようやく気持ちの整理をつけて、堕天使グッズを捨てにきたのに・・・何でそんなこと言うの?何で私の気持ちを踏みにじるようなことを言うのよ?」
「じゃあよっちゃん・・・堕天使を卒業して、これから笑顔でいられる自信ある?」
「っ・・・それは・・・」
「・・・無いよね。やっぱり」
寂しそうに笑う天。
「言ったはずだよ、よっちゃん。よっちゃんが笑顔でいられるのが一番だって。大切な友達が、毎日を笑顔で過ごせないなんて・・・俺は嫌だから」
「天・・・」
「普通の高校生になりたいって気持ちを、否定してるわけじゃないよ。でも普通の高校生になることで、よっちゃんが笑顔でいられなくなるっていうなら・・・無理に堕天使を卒業してほしくない。そんな寂しそうなよっちゃん、見たくないから」
「・・・バカ」
天に歩み寄り、天の胸を叩く。
「バカ、バカ、バカ・・・!」
何度も胸を叩く。本当に、どうしてコイツはいつもいつも・・・!
「何でそんな・・・私に優しくするのよぉ・・・!」
天の胸に縋る。気付けば、涙が溢れて止まらなくなっていた。
「何で・・・どうして・・・!」
「・・・さっき言ったでしょ」
優しい温もりに包まれる。天が私を抱き締めてくれていた。
「よっちゃんは大切な友達だって。最初は花丸の友達だからとか、借りを返す為だとか言ってたけど・・・今はそれ以上に、よっちゃんの力になりたい気持ちが強いから」
微笑む天。
「堕天使ヨハネだって良いじゃん。それだってよっちゃんの・・・津島善子の一部なんだから。全部ひっくるめてよっちゃんだって、俺はそう思うよ」
優しく頭を撫でられる。ホントにコイツは・・・
「それに・・・そう思ってるのは俺だけじゃないよ」
「え・・・?」
「堕天使ヨハネちゃん!」
大きな声が響き渡る。視線を向けると・・・堕天使の衣装を着たスクールアイドル部の五人が、笑顔で立っていた。
「「「「「スクールアイドル部に入りませんか!?」」」」」
「っ・・・」
息を呑む私。アンタ達まで・・・
「・・・良いの?変なこと言うわよ?」
「良いよ」
「時々、儀式とかするかもよ・・・?」
「そのくらい我慢するわ」
「リトルデーモンになれっていうかも・・・」
「嫌だったら嫌だっていうずら」
「ぴぎっ!」
笑顔で頷いてくれる皆。と、私の背中に天の手が触れた。
「思いっきり羽ばたくと良いよ。やりたいことをやったら良い。今のよっちゃんには、それが許されるんだから」
「やりたいこと・・・」
「憧れてるだけじゃなくて、今度は自分の手で掴みにいきなよ。ここで折れたら、堕天使ヨハネの名が泣くよ?」
笑っている天。
全く、そこまで言うのなら・・・やってやろうじゃない。
「はい、これ」
千歌さんが黒い羽を差し出す。これ、私の・・・
「昨日部室に忘れていったよ。堕天使ヨハネのアイデンティティなんでしょ?」
微笑む千歌さん。
「一緒に頑張ろう?」
「っ・・・うんっ!」
手を伸ばし、黒い羽を掴む。そして頭のシニヨンに差した。
「堕天使ヨハネ・・・ここに降臨っ!」
「おぉ、この痛々しい感じ・・・まさによっちゃんって感じがするよ」
「アンタ喧嘩売ってんの!?」
「よっ、中二病患者」
「やかましいわ!」
そんなツッコミを入れながらも、気付けば自然と笑顔になっている私がいるのだった。
どうも~、ムッティです。
今回の話で、アニメ一期の第5話が終了・・・
ではありません。
次の話まで続きます。
それから第6話へ入っていこうと思いますので、よろしくお願い致します。
あと前書きでも述べましたが、思いっきり風邪をひきました。
皆さんも風邪にはお気を付け下さい。
それではまた次回!以上、ムッティでした!