そして今回の話で第30話目・・・
ノリと勢いで書き始めたこの物語だけど、我ながらよくここまで書いてきたなぁ・・・
それではいってみよー!
放課後・・・
「ふぅ・・・」
生徒会室の前で、深く息を吐く俺。
よっちゃんは正式にスクールアイドル部に加入することになり、早速千歌さん達と一緒に練習に励むことになった。
俺は生徒会の仕事がある為ここに来たのだが・・・昨日ダイヤさんとあんなことがあったので、顔を合わせるのがとても気まずい。
とはいえ、顔を出さないわけにもいかないからな・・・よし。
「・・・失礼します」
思い切ってドアを開ける。そこには、既に席について仕事をしているダイヤさんの姿があった。
「あっ・・・」
俺を見て驚くダイヤさん。
どういった言葉をかけようか迷った俺だったが、机の上の書類の山を見て黙って席についた。
「・・・今日はいつもより書類が多いですね」
「そ、そうですわね・・・」
「とりあえず、こっちを片付ければ良いですか?」
「え、えぇ・・・お願いします」
二人で黙々と仕事を進める。時折ダイヤさんがチラッとこちらを窺ってくるが、口を開くことはなかった。
やがて書類が半分ほど片付いた頃・・・
「あ、あの・・・天さん・・・」
意を決したように、ダイヤさんが口を開いた。
「昨日のことなのですが、その・・・」
「ダイヤさん」
恐らく謝ろうとしたダイヤさんの言葉を、俺は途中で遮った。
「俺には・・・姉が二人いるんです」
「はい・・・?」
戸惑うダイヤさん。
何の脈絡も無くいきなり関係無い話をされたら、誰だってこうなるよな・・・
「上の姉は、高校時代に生徒会長をやっていまして。弟である俺の目から見ても、立派に生徒会長としての仕事を果たしていました。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「・・・生徒会長だった頃の姉は、良くも悪くも真面目過ぎたんです」
苦笑する俺。
「不器用で頭が固くて、融通の利かないところがありまして・・・周りに頼らず、一人で突っ走ってしまうような人でした。『自分がやらないといけない』っていう使命感が強くて、俺も当時は側で見ててハラハラしてました」
心の優しい副会長が支えてくれていなかったら、今頃姉は潰れていたかもしれない。彼女には本当に感謝している。
「だから浦の星に来て、ダイヤさんと出会って驚きました。ダイヤさん、当時の姉にそっくりなんですもん」
「わ、私がですか・・・?」
「えぇ。真面目で不器用で頭が固くて・・・当時の姉を見ている気分です」
「・・・素直に喜べませんわ」
複雑そうなダイヤさん。まぁ『不器用』とか『頭が固い』とか言われてるしな・・・
「だからですかね・・・何だかダイヤさんのこと、放っておけないんですよ。『側で支えないと』って思いますし・・・より感情が入ってしまうんです」
俺は頭の中で、昨日のことを振り返っていた。
「昨日、ダイヤさんが堕天使を否定した時・・・当時の姉と重なってしまったんです。学校の為に一生懸命頑張っていた人達のことを、姉が否定したことがあって・・・俺はそれがとても悲しくて、『何でそんなことを言うんだ』って怒りました。その人達は、俺にとって大切な人達で・・・だからこそ、姉が認めてくれなかったことが悲しくて。そんな姉とダイヤさんが重なって、ついあんなに怒ってしまいました」
「天さん・・・」
「ダイヤさんに対して、あそこまで怒る必要は無かった・・・よっちゃんの気持ちも考えたら、もっと穏便に済ますべきだった・・・結果として俺はダイヤさんを傷付け、よっちゃんを泣かせてしまいました。とてもじゃないですけど、姉のことを言えた義理ではありませんね」
俺は椅子から立ち上がり、ダイヤさんに対して深く頭を下げた。
「昨日は本当に申し訳ありませんでした」
今の俺にはこれしか出来ない。ダイヤさんから罵倒されても仕方が無い。
だが・・・
「・・・頭を上げて下さい、天さん」
柔らかな両手で頭を支えられ、そのまま元の位置へと戻される。
「昨日家に帰ってから、ルビィに津島さんのことを聞きましたわ。私があの時、どれほど津島さんを傷付ける発言をしていたのか・・・ようやく気付きました」
「ダイヤさん・・・」
「おまけに熱くなりすぎて、スクールアイドル部を貶すような言葉まで言いかけてしまって・・・天さんが止めてくださって、本当に助かりましたわ」
ダイヤさんは優しく微笑むと、今度は両手を俺の頬に添えた。
「・・・天さんは、お姉様のことをとても大事に思われているのですね。だからこそ、そんなお姉様と重なる私を大事に思ってくださっている・・・本当に嬉しく思いますわ」
ダイヤさんの額が、俺の額にコツンと触れた。
「これからもどうか、私のことを支えて下さい。間違っていると思えば、遠慮なく怒っていただいて構いません。私は天さんのことを、心から信頼していますわ」
「・・・優し過ぎますよ、ダイヤさん」
「それはお互い様ですわ」
面白そうに笑うダイヤさん。
「私もルビィも、そしてスクールアイドル部の皆さんも・・・天さんの優しさに助けられた身ですから。これからも頼りにしてますわよ、天さん」
「・・・ご期待に添えるよう頑張ります」
「よろしい」
笑顔で頷くダイヤさん。
「さて、残りの書類を片付けてしまいましょう。早くしないと日が暮れてしまいますわ」
「そうですね。さっさと終わらせちゃいましょうか」
笑い合い、再び仕事を再開する俺達。
「あ、ダイヤさん」
「何ですの?」
「確かにダイヤさんは姉に似てますけど・・・それを抜きにしても、俺はダイヤさんのことを大事に思ってますから。それは忘れないで下さいね」
「っ・・・ズルいですわ・・・」
何故か顔を赤くするダイヤさんなのだった。
*****
「お待たせしました」
「遅いよ天くん!私はもうお腹ペコペコなんだから!」
「私もお腹空いた!」
お腹を押さえている千歌さんと曜さん。
生徒会の仕事も終わり、俺はスクールアイドル部の皆と正門の前で合流していた。
「でも善子ちゃん、本当に良いの?大勢で押しかけちゃって・・・」
「ヨハネよ。呼んだのはお母さんなんだから、遠慮する必要なんて無いわよ」
梨子さんの問いに、溜め息をつきながら答えるよっちゃん。実は今朝のやりとりの後、俺はよっちゃんの家にお邪魔して善恵さんに事情を説明していたのだ。
よっちゃんがスクールアイドル部に入ると知った善恵さんの感激っぷりは尋常ではなく、よっちゃんと俺を抱き締めて号泣してしまうほどだった。
その後『今夜はお祝いよ!』と高らかに宣言した善恵さんは、今夜の夕飯の席に俺とスクールアイドル部の皆を招待してくれた。
そんなわけで俺達は、これから津島家で夕飯をご馳走になる予定なのだ。
「全く、何がお祝いよ・・・たかだか部活に入っただけだっていうのに・・・」
「いや、引きこもりの娘が部活に入ったら喜ぶでしょ。善恵さんはよっちゃんのこと、凄く心配してたんだよ?俺もよく相談に乗ってたもん」
「何であの人は娘の同級生に相談してんのよ・・・」
呆れているよっちゃん。
まぁよっちゃんも、心配をかけてしまったことは申し訳なく思っているようだ。善恵さんが号泣してる時、よっちゃんもつられて泣いてたし。
「今日の夕飯は豪華にするんだって、善恵さん張り切ってたっけ・・・食い意地を張るであろう花丸に、ほとんど食べられちゃう気がするけど」
「天くんはマルを何だと思ってるずら!?」
「胃袋ブラックホール娘」
「否定出来ないのが辛いずら!」
「だ、大丈夫だよ花丸ちゃん!花丸ちゃんはいくら食べてもスタイル良いもん!」
「ル、ルビィちゃん・・・!」
「そうだね。花丸は栄養がお腹周りじゃなくて、別の場所に行ってるもんね」
「・・・花丸ちゃんはルビィの敵だね」
「ルビィちゃん!?」
瞳から光が消えたルビィの一言に、ショックを受けている花丸。
やっぱりルビィ、気にしてたんだね・・・
「私も花丸ちゃんに負けないくらい食べるよ!」
「私も負けないからね!」
「望むところずら!」
「・・・何でルビィのには栄養が行かないんだろう」
「げ、元気出してルビィちゃん!」
千歌さんと曜さんが花丸と張り合い、梨子さんは落ち込んでいるルビィを必死に励ましている。
賑やかだなぁ・・・
「全く、騒がしいわね」
いつの間にか、よっちゃんが俺の隣を歩いていた。
「どうやら、私の静かな日常は終わりみたいね」
「静かな日常(笑)」
「何笑ってんのよ!?」
「wwwww」
「草を生やすなっ!」
ムキーッと怒っているよっちゃん。相変わらず面白いなぁ・・・
「まぁ、静かな時間を過ごすのも大切だと思うけどさ・・・こうやって皆でわいわいやってる時間も、悪くはないでしょ?」
「・・・まぁね」
照れたようにそっぽを向くよっちゃん。
「こんな時間を過ごせるのも、その・・・アンタのおかげよ。ありがと」
「あ、よっちゃんがデレた」
「デ、デレてなんかないんだからっ!」
おぉ、ツンデレのテンプレみたいなセリフ・・・よっちゃんはツンデレだったのね。
「・・・よっちゃんの力になれたのなら、良かったよ」
よっちゃんの頭を撫でる。
「スクールアイドル、俺もサポートするから。一緒に頑張ろうね」
「・・・うん」
小さく笑いながら頷くよっちゃん。
「期待してるよ。堕天使ヨハネ様」
「・・・善子」
「え・・・?」
「・・・善子で良いわよ」
顔を赤くしながら言うよっちゃん。嘘だろオイ・・・
「名前で呼ばれるの、嫌がってなかったっけ・・・?」
「・・・アンタには、名前で呼んでほしいなって思ったのよ。『ヨハネ』じゃなくて、『善子』って・・・私の大切な友達だから」
耳まで真っ赤になっているよっちゃん。そっか・・・
「・・・ありがとう、善子」
「っ!」
「これからもよろしくね、善子」
「ちょ、何度も呼ばなくて良いから・・・!」
「善子おおおおおっ!」
「うにゃあああああっ!?」
両手で顔を覆いながら、全力で走り去る善子。
「え、善子ちゃん!?どうしたの!?」
「ヨハネよおおおおおっ!」
「ちょ、待ってよ善子ちゃん!?」
「だからヨハネだってばあああああっ!」
「善子ちゃあああああんっ!?」
「ヨハネえええええっ!」
千歌さん、曜さん、花丸が慌てて追いかけていく。やれやれ・・・
「ほらルビィ、落ち込んでる場合じゃ無いよ」
「ぴぎっ!?天くん!?」
「梨子さんも早く。置いてかれちゃいますよ」
「ちょ、天くん!?」
ルビィと梨子さんの手を引き、笑みを浮かべながら善子達の後を追いかける。
気付けばルビィも梨子さんも、千歌さんも曜さんも花丸も笑っていた。そしてもう一人・・・
先頭を走る善子の笑顔は、今までで一番輝いて見えたのだった。
どうも~、ムッティです。
前書きでも述べましたが、今回の話でアニメ一期第5話までの内容が終了となります。
天があそこまで怒った理由は、姉の姿とダイヤさんの姿を重ねてしまったことが原因でした。
ダイヤさんが堕天使を否定して善子ちゃんを傷付けたことに対する怒りに、そのことがプラスされてブチギレに繋がってしまったわけですね。
感想でもいただきましたが、まだ高一になったばかりの天の精神的な未熟さが出た形と言えます。
いやホント、ダイヤさん推しの方々には大変申し訳ない展開となってしまいました・・・
和解したので許して下さい(土下座)
さて、そして『絢瀬天と九人の物語』が30話目を迎えました。
映画を見た興奮から、ノリと勢いで書き始めたのがこの作品でございます。
そんなこの作品がここまで続くことが出来たのは、ひとえにいつも読んでくださる皆様のおかげです。
皆様からの感想に、どれほどモチベーションが上がっていることか・・・
本当にありがとうございます。
お気に入り登録、☆評価をしてくださった方々もありがとうございます。
これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。
次の話からは、アニメ一期第6話の内容に入っていきます。
まだ詳しくは言えませんが・・・あの人を出す予定です(誰だよ)
次の話もお楽しみに(・∀・)ノ
それではまた次回!以上、ムッティでした!