絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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映画『天気の子』を観に行きたい。

新海誠監督の最新作だし、物凄く気になってる。


誰にでも秘密にしていることはある。

 翌日・・・

 

 「そういうわけだから、皆よろしくね」

 

 「「「「「お~っ!」」」」」

 

 朝のホームルーム前、俺は教室でクラスの皆に事情を説明していた。

 

 流石はフレンドリー軍団なだけあって、皆快く返事をしてくれる。

 

 「教育実習生ってどんな人かな?」

 

 「イケメンだったりして!?」

 

 「キャーッ!」

 

 「いや、女性らしいよ」

 

 「えぇっ!?イケメンじゃないの!?」

 

 「でも待って!イケメン系女子っていう可能性があるわ!」

 

 「それなら良し!」

 

 「良いんだ・・・」

 

 っていうか、よくそんなテンション上げられるな・・・

 

 あそこで机に突っ伏してる堕天使とは大違いだわ。

 

 「知らない人が来る知らない人が来る知らない人が来る・・・」

 

 ヤバいな、善子・・・完全に病んでるじゃん・・・

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・こ、怖い人じゃないと良いなぁ・・・」

 

 涙目になっているルビィ。あぁ、ここにも人見知りが・・・

 

 「善子ちゃんもルビィちゃんも落ち着くずら」

 

 二人を宥める花丸。

 

 「こういう時は、教育実習生さんをじゃがいもだと思えば良いずら」

 

 「「「それは違うと思う」」」

 

 「ずら!?」

 

 俺・善子・ルビィが同時にツッコミを入れる。むしろこの場合、教育実習生さんが俺達をじゃがいもだと思うケースだよね・・・

 

 そんなやり取りをしていると、朝のホームルーム開始を告げるチャイムが鳴った。

 

 「は~い皆さん、席についてくださいね~」

 

 教室に入ってくる赤城先生。俺達が席に着くと、赤城先生が俺達を見回した。

 

 「皆さんご存知だとは思いますが、今日から教育実習生の方がこのクラスにやってきます。入ってきてくださ~い」

 

 「は、はいっ!」

 

 赤城先生の呼びかけに、上ずった返事が返ってくる。

 

 あれ、今の声って・・・

 

 「し、失礼しますっ!」

 

 教室のドアが開き、スーツ姿の女性が入ってくる。綺麗な青い髪を腰の辺りまで伸ばした、とても美しい女性・・・

 

 「えっ・・・」

 

 「天くん?」

 

 絶句してしまう俺。そんな俺を、隣の花丸が不思議そうに見つめていた。

 

 「それでは、自己紹介をお願いします」

 

 赤城先生に促され、女性が緊張した面持ちで俺達の前に立った。

 

 「は、初めまして!教育実習で浦の星女学院に参りました、園田海未と申します!よ、よろしくお願いしましゅっ!」

 

 「えっ・・・ええええええええええっ!?」

 

 『今噛んだでしょ』などとツッコミを入れる暇もなく、ルビィの絶叫が響き渡った。

 

 「そ、園田海未さんっ!?μ'sのメンバーのっ!?」

 

 「ずらっ!?」

 

 「嘘っ!?」

 

 それを聞き、花丸と善子が驚きの声を上げる。

 

 教室がざわつく中、青い髪の女性・・・園田海未さんは涙目になっていた。困ったように視線を彷徨わせていた彼女は、やがて彼女を見て固まっていた俺と目が合い・・・

 

 次の瞬間、目からドバーッと涙が溢れた。

 

 「そっ・・・天ああああああああああっ!」

 

 「げふっ!?」

 

 勢いよく抱きつかれ、ひっくり返りそうになるのをどうにか堪える。

 

 「会いたかったですううううううううううっ!天ああああああああああっ!」

 

 「ちょ、海未ちゃん!?落ち着いて!?」

 

 「うわああああああああああんっ!?」

 

 俺に抱きつき、号泣している海未ちゃん。

 

 赤城先生やクラスの皆が唖然としている中、俺は溜め息をつきながら海未ちゃんの頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・やってしまいました」

 

 机に突っ伏して落ち込んでいる海未ちゃん。

 

 放課後、俺は海未ちゃんを連れてスクールアイドル部の部室へとやってきていた。

 

 「あんな醜態を晒して・・・もう教育実習なんて出来ません・・・」

 

 「相変わらずメンタル弱いねぇ・・・」

 

 溜め息をつく俺。一方・・・

 

 「な、何でμ'sの園田海未さんがここにいるの!?」

 

 「教育実習生ってどういうこと!?お姉ちゃん知ってたの!?」

 

 「私も知りませんでしたわ!一体何がどうなってますの!?」

 

 ヒソヒソ話している千歌さん、ルビィ、ダイヤさん。

 

 μ's大好きトリオの三人は、海未ちゃんを興奮と戸惑いの入り混じった表情で見つめていた。

 

 「ほら海未ちゃん、あそこに海未ちゃんのファンがいるよ。ラブアローシュートで打ち抜いてあげなよ」

 

 「人が落ち込んでる時に黒歴史を持ち出すの止めてもらえます!?」

 

 「ちなみに推しは穂乃果ちゃん、花陽ちゃん、エリーチカだって」

 

 「私のファンじゃないじゃないですか!?」

 

 「えーっと、天くん・・・?」

 

 俺と海未ちゃんが会話していると、曜さんがおずおずと話しかけてきた。

 

 「一応聞いておきたいんだけど・・・そちらの女性は、μ'sの園田海未さんで合ってるんだよね・・・?」

 

 「そうですよ。恥ずかしがり屋のくせに、ステージ上ではメチャクチャ投げキッスしまくってた園田海未ちゃんです」

 

 「その紹介やめてもらえます!?」

 

 「じゃあ、ラブアローシューターの園田海未ちゃんです」

 

 「それもやめて下さい!」

 

 海未ちゃんはコホンッと咳払いをすると、曜さん達の方に向き直った。

 

 「改めまして・・・浦の星女学院に教育実習で参りました、園田海未と申します。高校時代はスクールアイドルグループ・μ'sの一員として活動していました。よろしくお願い致します」

 

 深々と頭を下げる海未ちゃん。

 

 今の自己紹介が、今朝のホームルームで出来てたら良かったのに・・・

 

 「や、やっぱり本物なんですね!」

 

 「あ、あのっ!サインしていただいても良いですか!?」

 

 「わ、私もお願いします!」

 

 「私で良ければ喜んで」

 

 差し出された色紙に、スラスラとサインを書いていく海未ちゃん。色紙なんてどこから持ってきたんだろう・・・

 

 「「「やったぁ!」」」

 

 サインを胸に抱え、大はしゃぎしている三人。ダイヤさんに関しては、もうスクールアイドル好きを隠す気すら無いようだ。

 

 「フフッ、凄い盛り上がりようね」

 

 小原理事長が笑いながらやってくる。

 

 「Surpriseは大成功といったところかしら?」

 

 「帰れ成金」

 

 「相変わらず辛辣ね!?」

 

 涙目の小原理事長。

 

 この人が関わっていることは間違いないので、ここで洗いざらい白状してもらうことにしよう。

 

 「で、どういうことですか?」

 

 「単純な話よ。彼女の方から、『浦の星女学院で教育実習をさせてもらえないか』という打診があったの」

 

 「・・・ホントなの?」

 

 「本当ですよ」

 

 俺の問いに頷く海未ちゃん。

 

 「私は本来、母校である音ノ木坂で教育実習を行うのが普通なのですが・・・やむをえない事情があって、音ノ木坂での教育実習は避けるべきと判断したのです」

 

 「あぁ、ひょっとしてμ'sが有名だから?」

 

 「それもあるのですが・・・それよりさらに重大な問題がありまして・・・」

 

 神妙な表情の海未ちゃん。そんなに重大な問題なんだろうか・・・

 

 「音ノ木坂は・・・生徒数が多すぎて、私の精神が持たないんです」

 

 「教師目指すのやめちまえ」

 

 「酷い!?」

 

 ショックを受けている海未ちゃん。心配して損したわ・・・

 

 「あれだけの観客を前に歌って踊ってた人が、今さら何『精神が持たない』とか言い始めちゃってんの?」

 

 「あれは九人いたからです!今の私は一人で教壇という名のステージに立ち、一人で授業という名のライブをしなければいけないんですよ!?」

 

 「何ちょっと上手いこと言ってんの?」

 

 っていうか、その道を選んだのは海未ちゃん自身だろうに・・・

 

 「で、生徒数の少ない浦の星を選んだと・・・」

 

 「それもありますが、やはり天がいるというのが大きいですね。理事長からの勧めもありましたし」

 

 「あぁ、あの人経由で打診したのね・・・」

 

 絶対面白がってるよね、あの人・・・

 

 と、俺の制服の裾を誰かが掴んだ。振り向くと、困惑した表情の梨子さんが立っていた。

 

 「ね、ねぇ天くん・・・?園田さんとずいぶん仲が良いみたいだけど・・・あのμ'sのメンバーである園田さんと、一体どういう関係なの・・・?」

 

 「そ、そうずら!何でμ'sのメンバーの人とそんなに親しいずら!?」

 

 「こっちはさっきから、それが気になって仕方ないんだけど!?」

 

 花丸と善子も尋ねてくる。ですよねぇ・・・

 

 「天、彼女達に何も説明していないんですか?」

 

 「いや、自分から言いふらすのも良くないと思って・・・特にここにいる皆は、μ'sのこと知ってるしさぁ・・・」

 

 「あぁ、なるほど・・・とはいえ、もう説明するしかないのでは?こんな状況になってしまいましたし」

 

 「そうだね。海未ちゃんが俺に黙ってここに来なかったら、こんな状況になってないし説明する必要も無かっただろうね」

 

 「すみませんでした」

 

 もの凄いスピードで頭を下げる海未ちゃん。やれやれ・・・

 

 俺は溜め息をつくと、皆の方へと向き直った。

 

 「俺と海未ちゃんがどういった関係なのか・・・それを説明する為にはまず、皆さんに俺の名前を思い出してもらう必要があります」

 

 「名前?」

 

 首を傾げる千歌さん。

 

 「名前って・・・天くんでしょ?」

 

 「千歌さん、俺のフルネームって覚えてます?」

 

 「あっ、バカにしてる!?」

 

 頬を膨らませる千歌さん。

 

 「私だってそれくらい覚えてるよ!『絢瀬』天くんでしょ!?」

 

 「正解です。よく言えました」

 

 千歌さんの頭を撫でる俺。千歌さんの顔がニヤける。

 

 「え、えへへ・・・」

 

 「おーい、千歌ちゃーん?」

 

 「はっ!?」

 

 曜さんの呼びかけで正気に戻る千歌さん。慌てて俺の手を払い除ける。

 

 「そ、そんなのに騙されないんだから!」

 

 「思いっきり騙されてたことは置いといて・・・ダイヤさん、μ'sの中で誰が一番好きなんでしたっけ?」

 

 「エリーチカですわ!アイドルと生徒会長の兼任・・・カッコ良いですわぁ・・・!」

 

 うっとりしているダイヤさん。本当に好きなんだなぁ・・・

 

 「じゃあ、エリーチカのフルネームは言えますか?」

 

 「当然ですわ!エリーチカのフルネームは、『絢瀬』絵里・・・え?」

 

 固まるダイヤさん。他の皆も気付いたのか、小原理事長以外は全員固まってしまった。

 

 「あ、絢瀬・・・?」

 

 「ダイヤさんには、前に言いましたよね。俺には姉が二人いて、上の姉は高校時代に生徒会長を務めていたと」

 

 「ま、まさかっ・・・!?」

 

 「そのまさかです」

 

 俺は苦笑しながら、今まで話すことのなかった事実を告げるのだった。

 

 「μ'sの絢瀬絵里は・・・俺の姉なんですよ」




どうも~、ムッティです。

遂にこの作品にも、μ'sのメンバーが登場する日がやってまいりました!

一人目は海未ちゃんですね。

教育実習生として登場させるというプランは、実は結構前から考えてました。

最初は希ちゃんにしようと思っていたのですが、『ラブライブ!サンシャイン!!』が『ラブライブ!』の五年後らしいんですよね・・・

それだと希ちゃんは既に社会人になってるはずなので、大学四年生になっているはずの海未ちゃんに変更したんです。

同い年の穂乃果ちゃんやことりちゃんも考えましたが、海未ちゃんが一番先生っぽいかなと思いまして。

そして遂に明らかになった事実・・・

いやぁ、まさか天が絵里ちゃんの弟だったとは・・・

・・・はい、皆さん気付いてましたよね(笑)

だって苗字が同じですもんね。

しかもこの間天が、『姉は高校の時に生徒会長だった』って言ってましたもんね。

感想でもたくさん『ハラショー』をいただきました(笑)

教育実習生も絵里ちゃんだろうと、皆さん思われていたかと思いますが・・・

ごめんなさい。絵里ちゃんはまだ登場しません。

希ちゃんと同じで社会人になっている、ということもあるのですが・・・

他にもちょっとした事情がありまして、それは後々明らかになるかと思います。

今後の展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!
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