絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

35 / 173
タイトルは『鋼の錬金術師』に登場するグリードのセリフから取りました。

有り得ないなんてことは有り得ない、なんてことは有り得ない・・・って無限ループしそうなセリフではありますが(笑)

まぁ要はどんなことでも起こり得るし、『絶対』は無いということですね。

ちなみに自分がハガレンの中で好きなキャラはランファンです。


有り得ないなんて事は有り得ない。

 翌日・・・

 

 『以上、頑張ルビィ!こと黒澤ルビィがお伝えしました!』

 

 理事長室にて、千歌さん達が製作したPVを見ている俺達。

 

 これは・・・

 

 「よく伝わりますね・・・ルビィの可愛さが」

 

 「「「「「そっち!?」」」」」

 

 「いやぁ、そんなぁ・・・」

 

 照れているルビィ。いや、照れてる場合じゃないよルビィ・・・

 

 「海未ちゃん、どう思う?」

 

 「いや、どう思うと聞かれても・・・」

 

 返答に困る海未ちゃん。まぁそうだよね・・・

 

 「や、やっぱりイマイチ・・・?」

 

 「・・・良い出来映え、とは言えませんね」

 

 「・・・だよねぇ」

 

 俺の一言に、ガックリと肩を落とす千歌さん。自分でも分かっていたらしい。

 

 「なかなか上手くいかなくて・・・PVって難しいね」

 

 「経験者として、それは分かります」

 

 頷いている海未ちゃん。俺は小原理事長へ視線を移した。

 

 「小原理事長はどう思いますか?」

 

 「・・・すぴー・・・すぴー・・・」

 

 「”●砕”」

 

 「痛ぁっ!?」

 

 足を高く上げ、小原理事長の頭目掛けてかかとを振り下ろす。椅子から飛び上がり、頭を押さえながら痛みに悶える小原理事長。

 

 「ちょっと天!?何するのよ!?」

 

 「どうも、黒足の絢瀬です」

 

 「どこのサ●ジ!?理事長に暴力だなんて、普通なら退学ものよ!?」

 

 「出来るもんならやってみて下さいよ。俺を利用する為にこの学校に呼んだのは、一体誰でしたっけ?」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まる小原理事長。と、ここで千歌さんが抗議の声を上げる。

 

 「何で寝てるんですか!本気なんですから、ちゃんと見て下さい!」

 

 「・・・本気?」

 

 小原理事長の表情が変わった。今までのおちゃらけたものとは違う、冷たい表情だ。

 

 「・・・それでこの体たらくですか?」

 

 「ちょっと!?それは酷くないですか!?」

 

 「そうです!これだけ作るのがどれほど大変だったと思ってるんですか!」

 

 「努力の量と結果は比例しませんッ!」

 

 曜さんと梨子さんが反論するも、一言で黙らせる小原理事長。

 

 「大切なのは、このTownやSchoolの魅力をちゃんと理解しているかですッ!」

 

 「小原理事長、流石に言い過ぎなのでは・・・」

 

 「海未ちゃん」

 

 海未ちゃんが間に入ろうとするのを、手を掴んで引き止める。

 

 言い方は厳しいが、今回ばかりは小原理事長が正しい。確かにこのPVを作る為に、千歌さん達は一生懸命頑張ったんだと思う。

 

 それでも出来上がったPVは、内浦の魅力を伝えるには不十分と言わざるをえないものだった。『努力したからそれで良い』という話ではないのだ。

 

 「それってつまり・・・」

 

 「私達が理解していないということですか・・・?」

 

 「じゃあ理事長は、魅力が分かってるってこと・・・?」

 

 ルビィ・花丸・善子に対し、小原理事長は不敵な笑みを浮かべた。

 

 「少なくとも、貴女達よりはね・・・聞きたいですか?」

 

 「結構です」

 

 即座に断る千歌さん。

 

 「そういう大切なことは、自分で気付けなきゃ意味無いですから・・・皆、行こう」

 

 曜さん達を連れ、理事長室から出て行く千歌さん。俺も後に続こうとするが、海未ちゃんはその場から動こうとしなかった。

 

 「海未ちゃん?行かないの?」

 

 「先に行って下さい。私は小原理事長にお話がありますので」

 

 「・・・分かった。程々にね」

 

 海未ちゃんの心情を察した俺は、それだけ忠告して理事長室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《鞠莉視点》

 

 「それで?話って何かしら?」

 

 園田先生に尋ねる私。

 

 年齢は彼女の方が上だけれど、立場は私の方が上・・・彼女は理事長としての私に話があるようだし、それなら私も理事長として接するべきだ。

 

 ここは敬語を使わず、堂々としているべきだろう。

 

 「今のPVの件なら、私は間違ったことは言ってないつもり・・・」

 

 「・・・少し黙りなさい」

 

 「っ!?」

 

 底冷えするような低い声に、私はゾッとしてしまった。こちらを射抜くような鋭い眼光に、思わず身体が固まってしまう。

 

 「今の件についても言いたいことはありますが、天に止められてしまったので何も言わないでおきます。それより・・・話というのは天のことです」

 

 私を睨み付ける園田先生。

 

 「貴女が天を脅したことは、黒澤生徒会長から聞いています。本来であれば、私としても黙って見過ごすつもりなどありませんでしたが・・・天は引き続き、Aqoursを支えるつもりだと言っていました。それが天の意思である以上、私が出しゃばることは出来ません。ですが・・・」

 

 園田先生は私の目の前に立つと、執務用の机を思いっきり叩いた。大きな音に、身体がビクッと反応してしまう。

 

 「これ以上、天を傷付けたり苦しめたりするようであれば・・・私は勿論、μ'sのメンバー達が黙ってはいません。特に絵里が、どれほど天を大切に思っているか・・・幼馴染の貴女が、知らないはずありませんよね?」

 

 園田先生はそう言うと、踵を返して出口へと歩いていった。

 

 「貴女にどのような思惑があるのか知りませんが・・・天を脅してAqoursのマネージャーをやらせたことを、後悔する日が必ずやって来ます。その時に思い知るといいでしょう・・・自分のやったことが、どれほど罪深いことなのかを」

 

 それだけ言い残し、園田先生は理事長室から出て行った。その瞬間、何かから解放されたように身体の力が一気に抜ける。

 

 「後悔か・・・そんなもの・・・とっくにしてるわよっ・・・」

 

 涙で視界が滲む中、思わず本音を呟いてしまう私なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「魅力かぁ・・・」

 

 部室の椅子に座り、考え事に耽る俺。

 

 千歌さん達は作戦会議をするとのことで、最早スクールアイドル部の溜まり場となっている千歌さんの家へと向かった。

 

 俺も誘われたのだが、少し一人で考えたかったので断ったのだ。

 

 「っていうか、海未ちゃん大丈夫かなぁ・・・」

 

 理事長室を出る時に顔を見たけど、完全に目が据わってたもんなぁ・・・

 

 あれは海未ちゃんがガチでキレている時にする目だ。あの目で睨まれたら最後、身体が固まって動かなくなってしまうのだ。

 

 ちなみにソースは俺。ガチでキレた時の海未ちゃんは、μ'sの中の誰よりも怖いのである。

 

 「・・・まぁ、大丈夫か」

 

 相手は仮にも理事長だし、海未ちゃんも少しは自重するだろう。それより、PVについて考えないと・・・

 

 そう思っていた時、体育館の方から音がすることに気付いた。

 

 「誰かいる・・・?」

 

 今日はどこの部も体育館を使っていないはずだけどな・・・

 

 部室を出て体育館を覗いてみると、体育館のステージ上で踊るダイヤさんの姿があった。

 

 「ダイヤさん・・・?」

 

 あのダイヤさんが、体育館のステージ上で踊っている。それにしても・・・

 

 「・・・凄いな」

 

 優雅で美しいダイヤさんの踊りに、俺は釘付けになっていた。

 

 『踊り』というより、これは『舞い』と言った方が良いかもしれない。見る者をここまで魅了するなんて・・・

 

 そのまま夢中になって見ていると、ダイヤさんが俺の存在に気付いた。

 

 「そ、天さんっ!?」

 

 みるみる顔が赤くなっていく。まさか見られているとは思わなかったらしい。

 

 「い、いつからそこに!?」

 

 「少し前からです。そこからずっと、ダイヤさんに見惚れてました」

 

 「み、見惚れっ・・・!?」

 

 耳まで真っ赤になるダイヤさん。可愛いなぁ・・・

 

 「凄いですね、ダイヤさん。思わず引き込まれちゃいましたよ」

 

 「ま、まぁダンスには少し自信があるので・・・」

 

 照れ笑いを浮かべるダイヤさん。

 

 「とはいえ、もう披露する機会もありませんから・・・」

 

 「ダイヤさん・・・」

 

 恐らく千歌さんならここで、『一緒にスクールアイドルやりませんか?』と声をかけるだろう。

 

 だが、それに対するダイヤさんの答えはノーだ。何故なら・・・

 

 「・・・果南さんや小原理事長と、また一緒にスクールアイドルをやりたいですか?」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛むダイヤさん。

 

 これがダイヤさんの答え・・・二人が一緒でなければ、スクールアイドルはやらない。この答えが覆ることはないだろう。

 

 だったら・・・

 

 「もし果南さんと小原理事長が、もう一度スクールアイドルをやると言ったら・・・ダイヤさんもやりますか?」

 

 「・・・有り得ませんわ」

 

 俯くダイヤさん。

 

 「鞠莉さんは乗り気のようですが・・・果南さんが再びスクールアイドルをやることはないでしょう。果南さんの意思は固いですから」

 

 「今はあの二人の意思はどうでもいいです」

 

 バッサリ切り捨てる俺。ダイヤさんが目を見開いて驚く。

 

 「俺が聞いているのは、ダイヤさんの意思です。もう一度聞きますが・・・あの二人がもう一度スクールアイドルをやると言ったら、ダイヤさんもやりますか?」

 

 「・・・やりますわ」

 

 目に涙を浮かべているダイヤさん。

 

 「私はもう一度・・・果南さんと鞠莉さんと・・・一緒にスクールアイドルがやりたいですわ・・・!」

 

 「・・・それが貴女の本音ですか」

 

 二年前、何故Aqoursが解散したのかは分からない。ただ現状から推測すると、恐らく原因は果南さんと小原理事長にある。

 

 何があったかは知らないが、ダイヤさんとしては解散なんてしたくなかったんだろうな・・・

 

 「・・・その思い、大切にして下さい」

 

 「え・・・?」

 

 呆然とするダイヤさんに、俺は微笑んだ。

 

 「ダイヤさんは、千歌さんがスクールアイドル部を設立すると宣言した時・・・ここまで来るなんて予想してましたか?」

 

 「・・・正直、無理だと思ってましたわ」

 

 「まぁ、普通はそう思いますよね」

 

 階段を上り、ステージに上がる俺。

 

 「でもここまで来た。曜さんや梨子さん、ルビィと花丸、それに善子・・・一緒に輝きを目指す仲間を集めて、ここまで来たんですよ」

 

 そう、ここまでの流れはまるで・・・

 

 「μ'sみたいだな・・・それが俺の感想です」

 

 「μ's・・・ですか?」

 

 「えぇ。最初は穂乃果ちゃんがスクールアイドルをやると宣言して、幼馴染のことりちゃんや海未ちゃんがそれに賛同して。そこから仲間が増えていき、μ'sになったんです。ラブライブで優勝するほどのグループになるなんて、あの時は想像もしてませんでした」

 

 いつだって彼女達は、俺の想像を遥かに超える活躍を見せてくれた。周りを巻き込み、スクールアイドルブームを巻き起こしたのだ。

 

 その中心にいたのは、紛れも無くリーダーの穂乃果ちゃんだった。

 

 「穂乃果ちゃんと千歌さんって、どことなく似てるところがあるというか・・・何かやってくれそうな雰囲気があるんですよね。その千歌さんが今、周りを巻き込みながらスクールアイドルをやっている・・・可能性はあると思いません?」

 

 「私達が、再び一緒にスクールアイドルをやれる可能性・・・ですか?」

 

 「えぇ。あの人のことですから、そのうちダイヤさん達をも巻き込むことになるでしょう。意思が固いという果南さんだって、心が動くこともあるかもしれません」

 

 「そんなこと・・・」

 

 「有り得ないと決め付けるのは勿体ないですよ」

 

 俺はダイヤさんを真っ直ぐ見つめた。

 

 「だからその気持ち、絶対に捨てないで下さい。今の果南さんと小原理事長を繋いでいるのは、ダイヤさんなんですから」

 

 「天さん・・・」

 

 俺はそれだけ言うとステージを降り、ダイヤさんに一礼して体育館を後にする。

 

 最後に見たダイヤさんの瞳は、大きく揺れ動いていたのだった。




どうも~、ムッティです。

暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

自分は暑くて死にそうになってます(´д`|||)

実は春夏秋冬の中で、夏が一番嫌いです。

とにかく暑いのが苦手でして・・・

逆に寒い方が好きなので、一番好きな季節は冬です。

好きな順でいうと、冬→秋→春→夏ですかね。

皆さんの好きな季節はいつでしょうか?

・・・作品と全く関係ない話でしたね(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。