絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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両腕とも筋肉痛・・・

日頃の運動不足を痛感するわ・・・


損な役回りなど誰もやりたくはない。

 翌日・・・

 

 「あ、ずら丸とルビィちゃんとやら。おはよう」

 

 「おはようずらぁ・・・」

 

 「お・・・おはよう・・・」

 

 浦の星行きのバスに乗ると、ずら丸とルビィちゃんとやらが一番後ろの席に座っていた。

 

 「ずら丸はずいぶん眠そうだね?」

 

 「つい読書に夢中になって、夜更かししちゃったずら・・・」

 

 欠伸を噛み殺すずら丸。よほど眠いようだ。

 

 「学校に着くまで寝てたら?寄りかかっても良いよ?」

 

 「じゃあお言葉に甘えるずらぁ・・・」

 

 隣に座った瞬間、俺の右肩に頭をコテッと乗せるずら丸。そのまま俺の右半身に体重を預けてくる。

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 「・・・寝るの早いな」

 

 苦笑しながら、ずら丸の右隣に座っているルビィちゃんとやらの方を見ると・・・

 

 「ぴぎっ!?」

 

 視線が合い、慌てて逸らすルビィちゃんとやら。どうやらまだ慣れないらしい。

 

 ふとルビィちゃんとやらのバッグに目をやると、女の子の顔が写った缶バッジが付いていることに気付いた。あれって・・・

 

 「・・・もしかしてルビィちゃんとやら、スクールアイドル好きなの?」

 

 「ぴぎっ!?」

 

 ビクッと肩を震わせるルビィちゃんとやら。

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「いや、その缶バッジ・・・小泉花陽ちゃんだよね?」

 

 「っ!?分かるの!?」

 

 「うん、μ'sのメンバーでしょ?」

 

 μ'sというのは、例の音ノ木坂に在籍していたスクールアイドルグループの名前だ。

 

 そのグループを結成していた九人の内の一人・・・それが缶バッジに写っている女の子、小泉花陽ちゃんなのである。

 

 「μ'sを知ってるの!?」

 

 「そりゃあ知ってるよ。有名なグループだもん」

 

 目を輝かせるルビィちゃんとやら。これは高海先輩と話が合いそうだ。

 

 「推しメンっている!?」

 

 「俺は東條希ちゃんかな。包容力のある感じが好きなんだよね」

 

 「分かる!大人の女性って感じがするよね!」

 

 「そうなんだよ。ルビィちゃんとやらは、花陽ちゃん推しなの?」

 

 「そうなの!可愛くて憧れてるんだ!」

 

 よほど好きなのか、表情が活き活きとしているルビィちゃんとやら。ちょっと引っ込み思案だけど、こういう一面もあるんだな・・・

 

 「絢瀬くんは、μ'sの曲で好きな曲ってある!?」

 

 「んー、やっぱり『Snow halation』かなー。っていうか、天で良いよ?俺も何だかんだ、ルビィちゃんとやらのこと名前で呼んじゃってるし」

 

 「い、良いの・・・?」

 

 「勿論。っていうか、俺もそろそろ普通にルビィちゃんって呼んで良い?『とやら』って付けるの大変で・・・」

 

 俺の言葉にポカンとしていたルビィちゃんとやらだったが、やがてクスクス笑い出す。

 

 「フフッ・・・最初から普通に呼んでくれて良かったのに」

 

 「いきなり下の名前で呼ぶのも図々しいかなって思ってさ」

 

 「その割には、ほぼ下の名前で呼んでたよね?」

 

 「・・・まぁ確かに」

 

 ルビィちゃんとやらはひとしきり笑うと、おずおずと手を差し出してきた。

 

 「えっと、昨日はちゃんと自己紹介できなかったけど・・・黒澤ルビィです。よろしくね・・・天くん」

 

 高海先輩に触れられただけで叫んでしまっていたこの子が、勇気を出して手を差し出してくれている。やはり少し怖いのか、若干手が震えていた。

 

この勇気に、俺はちゃんと応えないといけないな・・・

 

 「・・・改めまして、絢瀬天です。よろしくね・・・ルビィちゃん」

 

 差し出された手をそっと握り、握手を交わす。

 

 視線が合った俺達は、お互い照れ笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「この学校には、スクールアイドルは必要無いからですわ!」

 

 「だからどうしてですか!?」

 

 「・・・俺のほっこりした朝を返して下さい」

 

 げんなりしてしまう俺。

 

 ダイヤさんからの連絡で生徒会室へ行くと、ダイヤさんと高海先輩が顔を突き合わせて言い争いをしていた。渡辺先輩が、少し離れたところでおろおろしている。

 

 「渡辺先輩、何があったんですか?」

 

 「わ、私もスクールアイドル部に入ることにしたんだけど・・・申請書を出しに来たら却下されちゃって・・・」

 

 「・・・あぁ、なるほど」

 

 出来ればスルーしたいけど、渡辺先輩も困ってるみたいだし・・・俺が止めるしかないのか・・・

 

 俺は溜め息をつくと、二人の間に入った。

 

 「はいはい、そこまでにしましょうね」

 

 「絢瀬くん!?」

 

 「天さん!?」

 

 ようやく俺の存在に気付いたようで、驚いている二人。やれやれ・・・

 

 「とりあえず高海先輩、この件に関しては貴女が悪いです」

 

 「えぇっ!?何で!?」

 

 「渡辺先輩が入っても、部員は二人だけじゃないですか。最低でも五人必要だっていう話、忘れたわけじゃないでしょう?」

 

 「そ、それは・・・」

 

 「まずは部員を五人集めてから、申請書を提出しに来るべきです。そこで認められないと言われたら、その時いくらでも抗議したら良いでしょう。高海先輩は昨日、ダイヤさんのことを横暴だと言いましたけど・・・条件を満たせていないのに抗議している今の貴女の方が、よほど横暴だと俺は思います」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛む高海先輩。

 

 「それからダイヤさん、貴女も大概ですよ」

 

 「なっ!?私もですか!?」

 

 「当たり前じゃないですか」

 

 冷たい目でダイヤさんを見る俺。

 

 「『認めない』とか『必要無い』とか・・・具体的な理由も言わずに生徒のやりたいことを否定するなんて、それが生徒会長のやる事ですか?」

 

 「っ・・・それは・・・!」

 

 「まぁ今はいいです。高海先輩が申請条件を満たせていませんから。ですが、もしちゃんと条件を満たした上で申請に来たら・・・今みたいな態度は許されませんからね?」

 

 俯いてしまうダイヤさん。

 

 少し言い過ぎたかもしれないが、こういうことはハッキリさせておかないといけない。

 

 「・・・渡辺先輩、高海先輩を連れて行ってもらって良いですか?生徒会の仕事のことで、ダイヤさんから話があるみたいなので」

 

 「分かった。千歌ちゃん、行こう?」

 

 「うん・・・」

 

 渡辺先輩が高海先輩の手を引いて、生徒会室を出て行く。

 

 謝罪の意味を込めて軽く頭を下げると、渡辺先輩は苦笑しながら手を振ってくれた。高海先輩のアフターケアは、渡辺先輩に任せて良いだろう。

 

 問題は・・・

 

 「・・・申し訳ありませんでした」

 

 俯いたまま、小さな声で謝るダイヤさん。

 

 「生徒会長として、不適切な態度でしたわ・・・ですが、私は・・・」

 

 「・・・何か理由があるんでしょう?」

 

 「っ!?」

 

 驚いたように顔を上げるダイヤさん。

 

 「俺だって、ダイヤさんが何の理由も無くあんなこと言ってるなんて思ってませんよ。昨日知り合ったばかりですけど、それくらいは分かってるつもりです」

 

 この学校の生徒のことを、とても大事に思っている・・・そのことは、昨日話をさせてもらってよく分かった。

 

 スクールアイドルを否定するのは、きっと何かしらの理由があってのことだと思う。

 

 「無理に話せなんて言いませんけど、高海先輩の想いにはちゃんと向き合ってあげて下さい。じゃないと向き合ってもらえない高海先輩も、向き合うことをしないダイヤさんも・・・二人とも苦しい思いをしますから」

 

 「天さん・・・」

 

 「・・・なんて、ちょっと柄にもないこと言っちゃいましたね。さっきもキツい言い方をしてしまって、すみませんでした」

 

 少なくとも、先輩に対してとるべき態度ではなかったしな・・・

 

 頭を下げると、ダイヤさんが慌てていた。

 

 「そ、天さんが謝る必要はありませんわ!悪いのは私なのですから!」

 

 「ですよね。悪いのはダイヤさんですよね」

 

 「急に態度が変わりましたわね!?」

 

 「人の足元を見る男、それが俺です」

 

 「ただの最低な人間じゃないですか!?」

 

 「そうですけど。それが何か?」

 

 「開き直りも甚だしいですわよ!?」

 

 全力ツッコミにより、息切れしているダイヤさん。ようやく本調子に戻ったようだし、この辺にしておくか・・・

 

 「ところでダイヤさん、俺に何か用があったんじゃないですか?」

 

 「ハッ!?そうでしたわ!」

 

 ようやく本題を思い出したらしいダイヤさん。

 

 「実は今日から転入してくる生徒がいて、もうすぐ生徒会室に来る予定なのです。せっかくですので、天さんにも立ち会っていただこうと思いまして」

 

 「あぁ、桜内梨子さんですね」

 

 「えぇ、桜内梨子さん・・・って何で知ってますの!?」

 

 「実は・・・かくかくしかじか」

 

 「なるほど、そういった事情が・・・って通じるわけないでしょう!?それで通じるのはアニメやマンガの世界だけですわよ!?」

 

 「おぉ、見事なノリツッコミ」

 

 「させないで下さいます!?」

 

 そんなやり取りをしていると、生徒会室のドアをノックする音がした。

 

 「どうぞ」

 

 「失礼します」

 

 入ってきたのは、やはり桜内さんだった。緊張しているのか、少し表情が強張っている。

 

 「初めまして、桜内梨子です」

 

 「特技はピアノですよね」

 

 「そう、特技はピアノ・・・って絢瀬くん!?」

 

 「どうも」

 

 にこやかに手を振ってみる。桜内さんは唖然としていた。

 

 「な、何でここに・・・」

 

 「俺、生徒会長の下僕なんで」

 

 「下僕!?」

 

 「誤解を生む発言は止めて下さいます!?」

 

 ダイヤさんはツッコミを入れると、咳払いをしてから桜内先輩を見た。

 

 「コホンッ・・・初めまして、生徒会長の黒澤ダイヤですわ。天さんとはお知り合いのようですので紹介は省きますが、彼も生徒会の一員なのです」

 

 「そ、そうでしたか・・・」

 

 驚きながらも納得した様子の桜内さん。

 

 「これからよろしくお願いします、桜内さん・・・あ、桜内先輩か」

 

 「フフッ、どっちでも大丈夫よ。こちらこそよろしくね、絢瀬くん」

 

 「あ、できたら天って呼んで下さい。そっちの方が呼ばれ慣れてるので」

 

 「じゃあ天くんで。私のことも梨子で良いから」

 

 「了解です、梨子さん」

 

 「・・・コホンッ」

 

 再びダイヤさんの咳払いが入る。何故か少しモジモジしていた。

 

 「と、ところで桜内さん?貴女、音ノ木坂から転校してきたそうですわね?」

 

 「えぇ、そうですけど・・・」

 

 「音ノ木坂には有名なスクールアイドルグループがいたと噂に、あくまでも噂に聞いていますが・・・お会いしたことはありまして?」

 

 「いえ、残念ながらありません。私はずっとピアノしかやってこなかったので、そういったことには疎くて・・・スクールアイドルというのも、昨日初めて知ったくらいです」

 

 「そ、そうですか・・・」

 

 明らかに肩を落とすダイヤさん。あれ、もしかしてダイヤさん・・・

 

 「そ、それでは!いくつか注意事項を説明させていただきますわ!」

 

 慌てて切り替えるダイヤさんに、疑惑の眼差しを向ける俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

ようやく天とルビィちゃんの距離が少し縮まりましたね。

ちなみに天を希ちゃん推しにしたのは、作者が希ちゃん推しだからです(笑)

いやぁ、可愛いですよね希ちゃん。

しかも大きいし・・・何がとは言わないけど。

さて、梨子ちゃんも転入してきたわけですが・・・

果たして果南ちゃんと鞠莉ちゃんはいつ出せるのか・・・

早く出したいところですね。

それではまた次回!以上、ムッティでした!
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