絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

45 / 173
雨が降っているのを見て、脳内でシドの『レイン』が再生される今日この頃。


心の優しい人ほど思い悩んでしまうものである。

 《曜視点》 

 

 「・・・ハァ」

 

 溜め息をつく私。何となく眠れなかった私は、大部屋を抜け出して中庭の縁側に腰掛けていた。

 

 ただぼんやりと空を眺めていると・・・

 

 「フフッ・・・内浦と違って、星はあまり見えないでしょう?」

 

 背後から声がする。慌てて振り向くと、海未先生が微笑みながら立っていた。

 

 「どうしてここに・・・?」

 

 「ふと目が覚めてしまったものですから。少し外の空気を吸おうかと思って出てきたのですが、先客がいて驚きました」

 

 笑う海未先生。

 

 多分、私がいないことに気付いて探しに来てくれたんだろうな・・・

 

 「隣、いいですか?」

 

 「あ、どうぞ・・・」

 

 私の隣に腰を下ろす海未先生。改めて思うけど、本当に綺麗な人だなぁ・・・

 

 「ん?どうかしましたか?」

 

 「あ、いえ・・・海未先生、彼氏とかいないのかなって」

 

 「か、彼氏!?」

 

 顔を赤くする海未先生。

 

 「な、何ですかいきなり!?」

 

 「いや、海未先生って美人じゃないですか。きっとモテるんだろうなって思って」

 

 「ま、真顔で褒めないで下さい・・・天じゃないんですから・・・」

 

 恥ずかしそうな海未先生。

 

 「彼氏なんて、今まで一度もいたことありませんよ・・・」

 

 「えっ、意外ですね・・・スクールアイドルとしても有名になったわけですし、てっきり学生時代からモテモテなのかと・・・」

 

 私が首を傾げていると、海未先生が溜め息をついた。

 

 「・・・正直な話、告白されたことは何度かありましたよ。全てお断りしましたけど」

 

 「どうしてですか?」

 

 「そもそも私、男性と話すことが苦手でして・・・」

 

 「えぇっ!?天くんとあんなに仲良く話してるじゃないですか!?」

 

 抱きついたりとかもしてるのに・・・弟みたいな存在だから大丈夫ってことなのかな?

 

 「・・・実は天とも、初対面の時はまともに話せなかったんですよ」

 

 苦笑する海未先生。

 

 「当時天は小学生で、私は高校生・・・それでも上手く話せなかったんです。どれだけ私が男性を苦手としているか、よく分かるでしょう?」

 

 「・・・確かに」

 

 それはちょっと重症な気がするなぁ・・・

 

 「じゃあ、どうして天くんと話せるようになったんですか?」

 

 「・・・そうですねぇ」

 

 海未先生はゆっくり空を見上げると、何を思い出したのかクスッと笑った。

 

 「・・・天が私に寄り添ってくれたから、ですかね」

 

 「え・・・?」

 

 「上手く話せない私を急かすこともせず、かと言って自分から強引に距離を詰めようとしてくることもない・・・ゆっくり時間をかけて私と向き合い、少しずつ距離を縮めようとしてくれました」

 

 微笑む海未先生。

 

 「私が落ち込んだ時は励ましてくれて、私が不安な気持ちになっている時は勇気づけてくれて・・・そんな天だからこそ、私も心を開くことが出来たんだと思います」

 

 「海未先生・・・」

 

 「前に私は、天のことを『弟みたいなもの』と言いましたが・・・正しくは『弟のようであり、それでいて自分と対等な存在』と言うべきでしょうか」

 

 「対等な存在・・・?」

 

 「年下ではあるけれど、子供だとは思っていないということです。自分と対等・・・信頼の置ける相手として見ているんですよ。これは私だけでなく、μ'sのメンバー全員に言えることですね」

 

 言い切る海未先生。言葉の端々に、天くんへの信頼が窺える。

 

 「曜は今日、ことりと真姫に会ったんでしょう?天への接し方を見て、何か感じませんでしたか?」

 

 「・・・二人とも、天くんのことを大切に想ってるんだなって感じました」

 

 南さんも西木野さんも、天くんに会えて本当に嬉しそうだった。

 

 確かにあの距離の近さは、信頼関係が無いと無理だと思う。

 

 「・・・天くんとμ'sの皆さんの関係って、何なんですか?メンバーの弟っていうだけじゃ、そこまでの信頼関係は築けないですよね?」

 

 「・・・天が話していない以上、私から話すことは出来ません」

 

 首を横に振る海未先生。

 

 「ですが天と貴女達が繋がり続けるかぎり、いずれは明らかになるでしょう。何せ天は、Aqoursのマネージャーなのですから」

 

 「マネージャー、か・・・」

 

 「曜?」

 

 首を傾げる海未先生に、私は自分の気持ちを正直に話すことにした。

 

 「私、ちょっと分からなくなっちゃって・・・このまま天くんに、マネージャーを続けてもらっても良いのか」

 

 「・・・天に不満がある、ということですか?」

 

 「違います!」

 

 慌てて否定する私。

 

 「天くんは本当に良い子です!鞠莉さんに脅されてマネージャーの役目を押し付けられたのに、私達のことを考えてしっかりサポートしてくれて!天くんがいてくれたから、私達はここまでくることが出来たんです!ただ・・・」

 

 「ただ・・・?」

 

 「・・・西木野さんと南さんに聞いたんです。テスト生の話を巡って、天くんがお姉さん・・・絢瀬絵里さんと大喧嘩してしまったこと」

 

 俯く私。

 

 「南さんが言ってました。二人はとっても仲の良い姉弟だって。その二人が、浦の星のテスト生の話で揉めたって知って・・・何だか申し訳ない気持ちになってしまって」

 

 ふいに涙が込み上げてくる。泣くつもりなんて無かったのに・・・

 

 「二人が仲直り出来るのなら・・・天くんは東京に戻って、お姉さんのところに帰った方が良いんじゃないかって。その方が、私達と一緒にいるよりも幸せなんじゃないかって・・・そう思ったんです」

 

 鞠莉さんに脅された時、天くんは言っていた。『この学校に来てしまったことを、心の底から後悔している』と。

 

 お姉さんと喧嘩してまで浦の星に来てくれたのに、あんな目に遭って・・・天くんの幸せを考えたら、私達と一緒にいない方が・・・

 

 「・・・ありがとうございます」

 

 背後から海未先生に優しく抱き締められる。

 

 「天のことを、そんなにも大切に想ってくれて・・・嬉しいです」

 

 「海未先生・・・」

 

 「全く、あの二人ときたら・・・いえ、恐らく話したのは真姫ですね?ことりは止めようとしたんでしょうけど、真姫に押し切られたのではありませんか?」

 

 あまりにも的確な予想に、思わず驚いてしまう私。

 

 そんな私の表情を見て、海未先生が苦笑いを浮かべる。

 

 「どうやら当たりみたいですね」

 

 「ど、どうして・・・」

 

 「長い付き合いですから。何となく分かりますよ」

 

 溜め息をつく海未先生。

 

 「まぁ流石にあの二人も、曜がここまで思い悩むとは思わなかったんでしょうね。気を遣わせてしまってすみません」

 

 「い、いえ!聞いたのは私ですから!」

 

 慌てて首を横に振る。

 

 海未先生は困ったように笑うと、私を抱き締める腕に力を込めた。

 

 「・・・正直、私も天に戻ってきてほしいと思っていました。浦の星での教育実習を希望したのも、天を連れて帰るつもりでいたからなんです」

 

 「そうだったんですか・・・」

 

 「まぁ、拒否されてしまいましたけどね」

 

 苦笑する海未先生。

 

 「『今の俺はAqoursのマネージャーだから』だそうです。今の貴女達を見捨てることは出来ないと、ハッキリ言われてしまいました」

 

 「っ・・・」

 

 天くん・・・私達の為にそこまで・・・

 

 「いくら天でも、義務感でここまで動くことは出来ませんよ。貴女達のことを大切に思っているからこそ、浦の星に残る道を選んでいる・・・そうでなければ、小原理事長に脅された時点で東京に戻ってきているはずです」

 

 それは天くんも言ってくれていた。私達のことが好きだから、脅されたとはいえマネージャーを引き受けたんだって。

 

 「天は自分の意思で浦の星へ行くことを選び、自分の意思で浦の星に残ることを選んだんです。曜が思い悩む必要は無いんですよ」

 

 「で、でも・・・そのせいでお姉さんと喧嘩を・・・」

 

 「大丈夫です。いずれ仲直りしますから」

 

 言い切る海未先生。

 

 「天も絵里も、少し素直じゃないところはありますが・・・お互いのことを大切に想っていますから。亜里沙も含め、あの姉弟の絆は深いですよ。側で見てきた私が言うんですから、間違いありません」

 

 「・・・本当ですか?」

 

 「本当です」

 

 海未先生が優しく微笑む。

 

 「それに・・・貴女達と一緒にいる時の天は、とても楽しそうでしたよ?あれで『一緒にいて幸せじゃない』なんて、そんなバカなことはありません。だからこそ天は、貴女達と一緒にいる道を選んだのではありませんか?」

 

 海未先生の言葉に、私は安堵していた。海未先生の目から見て、天くんが楽しそうに見えているのなら・・・それはきっと間違いじゃない。

 

 私達よりもずっと長く、天くんのことを近くで見てきた人なんだから。

 

 「さて、ずいぶん長く話し込んでしまいましたね・・・明日は朝早いんでしょう?早く寝て備えましょう」

 

 「・・・はいっ!」

 

 海未先生と一緒に立ち上がる。心のモヤモヤが少し晴れたような気がして、今ならよく眠れそうだ。

 

 「そうだ海未先生、同じ布団で一緒に寝ませんか?それならもっと安心して眠れるような気がします」

 

 「そ、それは少し恥ずかしい気が・・・」

 

 「海未先生・・・お願いっ!」

 

 「なっ!?ことりの入れ知恵ですか!?」

 

 「え?何の話ですか?」

 

 「・・・まさかの無自覚ですか。曜、恐ろしい子・・・!」

 

 ブツブツ呟いている海未先生に、首を傾げる私なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は、曜ちゃんと海未ちゃんのお話し回でした。

海未ちゃんのお姉さん感がハンパない(笑)

海未ちゃんがお姉ちゃんだったら、色々口うるさく言いながらも可愛がってくれそうな気がします。

ただ個人的にお姉ちゃんになってほしいのは、ことりちゃんですかね。

ことりちゃんの弟になって、天みたいに溺愛されたい(切実)

天、代われ(゜言゜)

さて、元気が無い人といえば・・・曜ちゃん以外にもう一人いましたね。

そんなわけで、次の話は梨子ちゃん回です。

明日投稿しますので、お楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。