絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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もうすぐ9月・・・

早く夏なんて終わってしまえ(゜言゜)


人から認めてもらえるのは嬉しいものである。

 「・・・ん」

 

 夜中、ふと目が覚めてしまう俺。何やら右腕が重いような・・・

 

 「ずらぁ・・・」

 

 花丸が俺の右腕に抱きつき、幸せそうに眠っていた。そういえば寝る場所をじゃんけんで決めた結果、花丸と梨子さんの間になったんだっけ・・・

 

 っていうか、俺の右腕が花丸の胸の谷間に挟み込まれてるんだけど。メッチャ柔らかい感触に包まれてるんだけど。

 

 「ムニャムニャ・・・もう食べられないずらぁ・・・」

 

 「・・・無防備だなぁ」

 

 思わず苦笑してしまう。一応俺も思春期の男子だということを、理解してもらいたいんだけど・・・

 

 花丸を起こさないよう、そっと右腕を抜いた時だった。

 

 「天くん・・・?」

 

 花丸とは反対側から声がした。

 

 そちらに顔を向けると、俺の方に顔を向けている梨子さんと目が合った。

 

 「梨子さん?起きてたんですか?」

 

 「うん、少し前に目が覚めちゃってね・・・それから眠れないの」

 

 苦笑する梨子さん。

 

 「しかも私が寝てる間に、あんなことになってるし。驚いちゃった」

 

 「あんなこと・・・?」

 

 首を傾げる俺。

 

 梨子さんが視線を向けた先を見ると・・・別々の布団で寝ていたはずの海未ちゃんと曜さんが、同じ布団で身を寄せ合って眠っていた。

 

 マジか・・・

 

 「千歌さんならともかく、曜さんはちょっと意外ですね・・・」

 

 「そうよね・・・あの二人、あんなに仲良かったかしら・・・?」

 

 梨子さんも首を傾げている。

 

 まぁ、仲が良いに越したことはないから良いけど。

 

 「海未ちゃんは人見知りですし、仲の良い人が増えるのは良いことです。梨子さんも海未ちゃんと仲良くしてあげて下さいね」

 

 「・・・何か天くん、海未先生の保護者みたいになってるわよ」

 

 「昔から海未ちゃんを知ってる身として、心配してるだけですよ」

 

 お互い布団に身を横たえながら向かい合い、他愛も無い話をする。

 

 気分転換も兼ねて少し話せば、梨子さんもまた眠れるかもしれないし。

 

 「大切に想ってるのね、海未先生のこと」

 

 「・・・そりゃあそうですよ」

 

 何となく照れ臭くなってしまう。

 

 「海未ちゃんも、ことりちゃんも、真姫ちゃんも・・・μ'sのメンバー全員が、俺にとってかけがえのない人達ですから」

 

 「フフッ・・・海未先生が聞いたら号泣しそうなセリフね」

 

 「オフレコでお願いします」

 

 こんなセリフ、なかなか面と向かって言えないからな・・・

 

 「・・・凄いわね、天くんは。そうやって言い切れるくらい、大切な人達と出会えたんだもの。きっと音ノ木坂で、良い時間を過ごしたのね」

 

 「梨子さん・・・?」

 

 梨子さんの表情が暗くなる。どうしたんだろう・・・?

 

 「・・・私、中学の頃にピアノの全国大会に行ったことがあってね。だから高校から入った音ノ木坂では、結構期待されてたの」

 

 「そうだったんですか・・・」

 

 音ノ木坂は、伝統的に音楽で有名な学校だ。

 

 その方面で腕を鳴らした学生が入ってくることも多く、梨子さんもその内の一人だったんだろう。

 

 「だから期待に応えなきゃって、いつも練習ばかりしてて・・・でも結局、大会では上手くいかなくてね。そのせいか、音ノ木坂に行くことに対して気が引けちゃって・・・」

 

 「・・・なるほど」

 

 それでさっき、千歌さんの提案を断ったのか・・・

 

 音ノ木坂にいた頃、苦しい思いをしたことを思い出してしまうから・・・

 

 「音ノ木坂が嫌いなわけじゃないのよ?ただ・・・期待に応えられなかった自分が情けないし、期待してくれた人達に申し訳ない・・・そんな気持ちになっちゃって」

 

 「梨子さん・・・」

 

 「だから、海未先生やμ'sの人達は凄いと思う。周りからの期待に応えて、廃校を阻止したんだもの。それどころか、スクールアイドルブームまで巻き起こしちゃって・・・千歌ちゃんや天くんに出会うまで知らなかったけど、本当に偉大な人達だと思うわ」

 

 微笑む梨子さん。

 

 「そして・・・その偉大な人達を、『かけがえのない人達』って言い切れる天くんもね」

 

 「いや、俺は別に・・・」

 

 「曜ちゃんが言ってたわよ?『南さんと西木野さんは、本当に天くんと仲が良かった』って。海未先生も天くんに心を許してるし、μ'sの人達にとって天くんの存在は大きいんでしょうね。偉大な人達の支えになっている天くんも、私から見たら凄い人よ」

 

 梨子さんはそう言うと、悲しげに目を伏せた。

 

 「私も期待に応えられてたら・・・もっと練習して、大会で上手くいってたら・・・少しは音ノ木坂の役に立てたのかな・・・」

 

 「・・・もしそうなっていたら、俺達が出会うことはなかったでしょうね」

 

 「え・・・?」

 

 驚く梨子さん。俺は梨子さんに微笑みかけた。

 

 「もし梨子さんが、音ノ木坂で順調にいっていたら・・・環境を変えてみようなんて思わなかったでしょう?浦の星に来ることもなく、俺達と出会うこともなかったはずです。少し言い方は悪いですが・・・梨子さんが音ノ木坂で上手くいかなかったから、俺達は出会えたんだと思います」

 

 「天くん・・・」

 

 「それとも・・・梨子さんは、俺達に出会わなければ良かったと思いますか?」

 

 「なっ!?そんなわけないじゃない!」

 

 「しーっ、皆が起きちゃいます」

 

 「あっ・・・」

 

 慌てて口を押さえる梨子さん。俺は思わず笑ってしまった。

 

 「・・・俺が言いたいのは、たらればの話をしても仕方ないってことです。過去のことは変えられないんですから」

 

 「それはそうだけど・・・」

 

 「それに苦しい思いをしたからこそ、今の梨子さん・・・Aqoursの桜内梨子がいるんじゃないですか。スクールアイドル、やってみてどうですか?」

 

 「・・・凄く楽しいわ。心からやりがいを感じてる」

 

 「そう思えるなら、梨子さんの歩んできた道は間違いじゃないですよ。期待に応えられずに苦しんだことも、何かを変えようとしてもがいたことも・・・無駄なことなんて何一つありません。全てが梨子さんの礎になってます」

 

 俺は梨子さんへと手を伸ばした。

 

 「梨子さんのしてきた努力が全て分かるだなんて、そんなおこがましいことは言えませんけど・・・その様子を見ていれば、一生懸命やってきたってことくらいは分かります。周囲の期待に応えようとして、必死に頑張ったんだろうなってことも・・・」

 

 梨子さんの頭を、優しく撫でる。

 

 「前にも言いましたけど、梨子さんはもっと胸を張っていいと思います。引け目とか、情けなさとか、申し訳なさとか・・・そういったものを感じるなとは言いません。ただ、もっと自分のことを褒めてあげて下さい。自分で思っている以上に、梨子さんは凄い人なんですよ。俺が保証します」

 

 「っ・・・」

 

 梨子さんの目から、一筋の涙が伝う。

 

 それを機に次々に涙が滴り落ち、梨子さんの枕を濡らしていった。

 

 「本当に・・・ずるいわね、天くんは・・・」

 

 ボロボロと涙を零す梨子さん。

 

 「あの時も、今も・・・私を泣かせにくるんだから・・・」

 

 「良いじゃないですか。嬉し涙なんですから」

 

 笑みを浮かべる俺。

 

 「俺には、梨子さんの心に寄り添うことしか出来ませんから・・・それで梨子さんが、少しでも元気になってくれるなら嬉しいです」

 

 「・・・十分すぎるくらいよ」

 

 泣きながら微笑む梨子さん。

 

 「なるほどね・・・だからμ'sの人達は、天くんのことを・・・」

 

 「梨子さん?」

 

 「フフッ・・・何でもないわ」

 

 梨子さんはそう言うと、おもむろに俺の布団に入ってきた。

 

 「ちょ、どうしたんですか!?」

 

 動揺する俺に何も言わず、抱きついてくる梨子さん。

 

 「お願いだから・・・少しだけ、このままでいさせて・・・」

 

 俺の胸に顔を埋める梨子さん。その肩は震えており、まだ泣いているのが分かった。

 

 「・・・俺で良ければ、喜んで」

 

 梨子さんの身体を、優しく抱き締める俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

今回は梨子ちゃん回となりました。

アニメでは千歌ちゃんと梨子ちゃんが話していましたが、この作品では千歌ちゃんに代わり天が梨子ちゃんと話しています。

何だか二人が良い感じになっていますが・・・

本当にヒロイン未定でお送りしております(笑)

果たしてヒロインは誰になるのか・・・

そろそろ絞った方が良いのかなぁとも思うのですが、これが決められないんですよねぇ・・・

どうか長い目で見ていただけると幸いです(笑)

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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