全てはAqoursのクリアファイルを手に入れる為・・・
おかげで全種類コンプリート出来ましたが、店員さんからは白い目で見られました。
解せぬ。
「うぅ、こんなに人が多いなんて・・・」
俺の腕にしがみつき、恐る恐る歩いている海未ちゃん。パフォーマンスの準備に向かった皆と別れた俺達は、イベントを鑑賞する為に客席へと向かっていた。
マネージャーとはいえ、他のスクールアイドル達も使用する控え室には入れないからな。
「どこかの誰かさん達がスクールアイドルブームを巻き起こして以来、スクールアイドルの人口は年々増加してるからね。必然的にスクールアイドルファンも増えて、こういうイベントはいつもお客さんでいっぱいになるんだよ」
「く、詳しいですね・・・」
「μ'sが解散してからも、こういうイベントにはよく連れて来られてたからねぇ・・・初代部長と二代目部長と三代目部長に」
「あぁ、にこと花陽と亜里沙ですか」
苦笑する海未ちゃん。あの三人は本当にスクールアイドルが好きだからなぁ・・・
「まぁそのおかげで、最近のスクールアイドルのことも把握出来てるんだけどね。このイベントに参加するスクールアイドルも、ほとんど知ってるグループだったし」
「いや、ほとんど知ってるって・・・凄くないですか?」
「というより、割と有名なグループがたくさん参加してるんだよね」
苦笑する俺。
「何しろ、ラブライブの決勝まで進んだことのあるグループばかりだから」
「えぇっ!?このイベント、そんなにレベルの高いものだったんですか!?」
「気付くの遅くない?」
俺が呆れていると・・・
「あら?Aqoursのマネージャーさん?」
ふいに声をかけられる。振り向くとSaint Snowの二人・・・鹿角姉妹が立っていた。
「あぁ、おはようございます」
「おはようございます」
丁寧に挨拶を返してくれる聖良さん。一方理亞さんは聖良さんの陰に隠れ、こちらを睨み付けていた。
「理亞さんもおはようございます」
「・・・ふんっ」
そっぽを向く理亞さん。聖良さんが困ったように笑う。
「すみません・・・この子、昨日のことを根に持ってまして・・・」
「あぁ、パンツの件ですか」
「言わなくていいっ!」
ガルルル・・・とこちらを威嚇してくる理亞さん。どうやら、本格的に警戒されてしまっているようだ。
「天・・・また女の子のパンツを見てしまったんですか?」
「だって理亞さんが見せつけてくるんだもん」
「見せつけてないわよ!?」
「スカートで跳んだら同じことでしょう」
「うぐっ・・・」
言葉に詰まる理亞さん。と、聖良さんが海未ちゃんの顔を見て首を傾げる。
「ところで、そちらの女性は?」
「初めまして、天の彼j・・・」
「正体バラすぞ(ボソッ)」
「姉ですっ!」
慌てて言い直す海未ちゃん。
ちなみに今の海未ちゃんは伊達メガネとマスクをしており、髪型もポニーテールにしている。要は正体がバレないように変装しているのだ。
こんなところにμ'sの園田海未がいると分かったら、大騒ぎになりそうだしな・・・スクールアイドルファンの中で、μ'sのことを知らない人なんていないだろうし。
「お姉様でしたか。ずいぶん仲がよろしいんですね」
「姉は人見知りなもので、こういった人混みが苦手なんですよ」
ここは適当に誤魔化しておく。向こうも気付いてないみたいだし。
「我々は客席でイベントを鑑賞させていただきますので。お二人も頑張って下さい」
「あら、他所のスクールアイドルを応援して良いんですか?」
「Aqoursのマネージャーをやっているからといって、他のスクールアイドルを敵視しているわけではありませんから。俺はスクールアイドル好きなので」
「フフッ、ありがとうございます」
笑みを浮かべる聖良さん。
「それではまた・・・理亞、行きましょう」
理亞さんを引き連れて去っていく聖良さん。去り際、理亞さんがこちらに向かって『アッカンベー』をしてきた。
アララ、嫌われたもんだな・・・
「・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。『アッカンベー』くらい可愛いもんだし」
「いえ、そうではなくて・・・」
心配そうに俺を見る海未ちゃん。
「あの二人のこと、本当は好きじゃありませんよね・・・?」
「・・・よく分かったね」
素直に驚いてしまった。表面上は上手く取り繕ってたつもりだったんだけど・・・
「丁寧な態度ではありましたが、ちょっと丁寧すぎましたね」
苦笑する海未ちゃん。
「普段の天を知っている身としては、少し冷淡な態度に感じましたよ。もっとも、普段の天を知らない人は気付かないでしょうけど」
「よく見てるねぇ・・・」
「これでも長い付き合いなんですから、それくらい分かりますよ。それに・・・五年前にもいたじゃないですか。天がああいう態度をとった人達が」
「あぁ・・・そうだったね」
当時のことを思い出して苦笑する。
今でこそ仲良くなってはいるが、最初の印象は悪かったっけな・・・
「懐かしいなぁ・・・って、そろそろ時間か。早くしないと始まっちゃう」
「えぇ、急ぎましょう」
「うん、急ぎたいから離れてくんない?」
「それは無理です」
「断言したよこの人・・・」
俺が呆れていると、海未ちゃんがおずおずと尋ねてきた。
「そういえば天、先ほどの話なのですが・・・今回のイベントには、かなりの実力者達が参加しているんですよね?Aqoursは、その・・・大丈夫でしょうか?」
「・・・大丈夫、ではないだろうね」
俺は首を横に振ると・・・あまり口にしたくない予想を言うのだった。
「恐らく、Aqoursは・・・」
*****
「お疲れ様でした」
千歌さん達を労う俺。イベント終了後、俺と海未ちゃんは千歌さん達と合流していた。
皆の表情は・・・どこか暗いものだった。
「ダメだった・・・」
「優勝どころか、入賞すら出来なかったずら・・・」
落ち込むルビィと花丸。
今回のイベントは、観客の投票で優勝グループを決めるというものだった。得票数が一番多かったグループが優勝、八位以内に入ったグループは入賞という形だ。
残念ながらAqoursの名前は、八位までには呼ばれなかった。
「でも声は出てましたし、ミスもこれまでで一番少なかったですよ?今までで一番良い出来だったのではありませんか?」
皆のことを気遣い、フォローしようとする海未ちゃん。
確かに俺の目から見ても、今までで一番良い出来だったとは思う。ただ・・・
「・・・それでも、この結果なのよね」
溜め息をつく善子。
今までで一番の出来であっても、優勝どころか入賞すら出来ていない・・・その現実が、皆に重くのしかかっているのだ。
「・・・私ね、Saint Snowを見た時に思ったの」
曜さんが呟く。
「これがトップレベルのスクールアイドルなんだって。このくらい出来なきゃダメなんだって。なのに・・・入賞すらしてなかった」
そう、Saint Snowも入賞出来ていなかった。イベントのトップバッターとして登場した彼女達は、大いに会場を沸かせてイベントを盛り上げた。
そのレベルはとても高く、入賞した他のグループと比べても遜色ないものだったと思う。Aqoursの出番はその次だったのだが・・・その前のSaint Snowが良すぎて、イマイチ盛り上がりに欠けてしまったほどだ。
それほど良かったSaint Snowでさえ、入賞すらしていなかったのだ。
「あの人達のレベルで無理なら、そのレベルさえに届いていない私達じゃ・・・」
「でも・・・全力で頑張ったじゃん、私達」
落ち込む曜さんに対し、笑いかける千歌さん。
「海未先生も言ってくれたけど、今日が今までで一番良い出来だったと思う。周りはラブライブの決勝まで進んだことのある人達ばかりだし、入賞出来なくて当たり前だよ」
「だけど、ラブライブの決勝に出ようと思ったら・・・今日出ていた人達くらい、上手くなきゃいけないってことでしょ・・・?」
「それはそうだけど・・・でも、今はそんなこと考えても仕方ないよ」
「千歌ちゃん・・・」
あくまでも笑顔の千歌さん。全く、不器用なんだから・・・
「・・・とりあえず、何か食べに行きませんか?お腹空いちゃって」
「あ、賛成!私もお腹ペコペコ!」
俺の提案に乗ってくる千歌さん。と、千歌さんのスマホが鳴った。
「はい、高海ですけど・・・はい・・・はい・・・」
何やら話し込む千歌さん。やがて電話を切ると、困ったような表情でこちらを見た。
「さっきのイベントのスタッフさんが、渡したいものがあるから来てほしいって」
「渡したいもの?」
「うん。参加者全員に渡してるものらしいんだけど、渡しそびれちゃったんだってさ」
「スマホ貸して下さい。『そっちが持ってこいやハゲ』って伝えとくんで」
「喧嘩売る気満々!?女性スタッフさんだよ!?」
「だから男女平等ですって」
「だからこういう時に使うセリフじゃないって!?」
千歌さんのツッコミ。ホント空気の読めないスタッフだな・・・
「とりあえず行ってくるよ。天くんと海未先生は待ってて」
「大丈夫ですか?私達もついていった方が・・・」
「大丈夫ですよ。すぐ戻ってきますから」
千歌さん達がイベント会場へと戻っていく。大丈夫かなぁ・・・
「・・・皆、もの凄く落ち込んでましたね」
海未ちゃんの表情も優れない。
「その中でも、一番落ち込んでいたのは・・・」
「大丈夫。分かってるから」
海未ちゃんの言葉を遮る俺。あれで気付かないわけがない。
「ホント・・・似てるよね」
「・・・ですね」
揃って溜め息をつく俺と海未ちゃんなのだった。
*****
「全く、これだから海未ちゃんは・・・」
溜め息をつく俺。俺は今、迷子になった海未ちゃんを探していた。
待っている間に、皆の分の飲み物を買いに行ってくれたのだが・・・先ほど泣きながら『助けて下さい!』と電話がかかってきたのだ。
どうやら、帰り道が分からなくなってしまったらしい。
「だから一緒に行こうって言ったのに・・・」
そんな愚痴を呟きながら、海未ちゃんのことを探していると・・・
「あら、またお会いしましたね」
ある~日~、人混みの中~、Saint Snowさんに~、出会った~♪
「チェンジで」
「何がですか!?」
聖良さんのツッコミ。熊さんより出会いたくない人達に出会ってしまった・・・
「まぁいいや・・・お二人とも、ウチの姉を見ませんでしたか?」
「な、何か凄く投げやりな感じですけど・・・お姉様は見てませんね。はぐれてしまったんですか?」
「えぇ、どうやら迷子になってしまったみたいでして・・・電話で聞いたかぎりでは、どうやらこの辺にいるみたいなんですけど」
「私達も探すの手伝いましょうか?」
「あぁ、大丈夫です。多分すぐ捕獲出来ると思うので」
「いや、捕獲って・・・」
呆れている聖良さん。
ふと聖良さんの陰に隠れる理亞さんへと視線を向けると・・・その目には涙が浮かんでいた。
「えっ・・・泣くほど俺のこと嫌いですか?」
「違うわよ!?」
慌ててゴシゴシと目元を拭う理亞さん。聖良さんが苦笑している。
「入賞出来なかったことが、よほど悔しかったみたいで」
「姉様!余計なこと言わないで!」
「あぁ、なるほど・・・」
「何よ!?悪い!?」
「いや、全然」
首を横に振る俺。
「それだけ理亞さんが、このイベントに本気で挑んでたっていうことでしょう?上から目線みたいになって申し訳ないですけど・・・立派だと思います」
「っ・・・ふんっ」
そっぽを向く理亞さん。
「そんなの当たり前じゃない。お遊びで参加してるアンタ達とは違うのよ」
「理亞」
咎めるように声をかける聖良さん。だが、理亞さんは止まらなかった。
「姉様だってあの子達に、『μ'sのようにラブライブを目指しているのだとしたら、諦めた方が良いかもしれません』って言ってたじゃない」
「それは・・・」
「・・・ずいぶんな言い方ですね」
「「っ!?」」
思わずドスの効いた声が出てしまう。それを聞いた鹿角姉妹が硬直してしまった。
「お遊び?諦めた方が良い?貴女達がAqoursの何を知ってるんですか?」
怒りがふつふつと湧き上がり、腸が煮えくり返る。
「それがAqoursの為を思って言った言葉なら、話は別ですが・・・とてもそうは聞こえませんね。入賞出来なかったことが悔しくて、Aqoursに八つ当たりしたんですか?」
「そ、そんなつもりは・・・」
震えている聖良さん。理亞さんも再び涙目になっていた。
「やっぱり俺は、貴女達のことがきr・・・」
「ストップ」
誰かに後ろから抱きつかれ、口を手で塞がれる。
「それ以上は言っちゃダメよ、天くん」
ウェーブのかかったセミロングヘアの女性が、優しく微笑んでいた。えっ・・・
「なっ!?貴女はっ・・・!」
その女性の顔を見た聖良さんが、驚愕の表情を浮かべる。その女性とは・・・
「何でこんなところにいるの・・・あんじゅちゃん」
「フフッ♪」
A-RISEのメンバー・・・優木あんじゅその人なのだった。
どうも〜、ムッティです。
私事で大変恐縮ですが、本日誕生日を迎えました。
また一つ歳を重ねてしまった・・・
読者の皆様・・・いつもこの作品を読んでいただき、本当にありがとうございます。
この作品を書き続けることが出来るのも、ひとえに皆様の応援のおかげだと思っております。
こんな自分ではありますが、これからも応援していただけると幸いでございます。
これからもどうぞ、よろしくお願い致します。
さてさて、今回はA-RISEの優木あんじゅちゃんが登場したわけですが・・・
μ'sは勿論、A-RISEも出したかったんですよねー。
次の話では綺羅ツバサちゃんと藤堂英玲奈ちゃん、そして・・・
μ'sのあのメンバーも登場する予定です。
お楽しみに(・∀・)ノ
それではまた次回!以上、ムッティでした!