絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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台風半端ないって!アイツ半端ないって!

メッチャ電車遅れるもん!運休するもん!

そんなんどうしようもできひんやん普通!

・・・ホント大変だったなぁ(遠い目)


避けては通れない道もある。

 「ゆ、優木あんじゅ・・・!?」

 

 「嘘でしょ・・・!?」

 

 絶句している聖良さんと理亞さん。

 

 一方のあんじゅちゃんは、嬉しそうに俺に頬ずりをしていた。

 

 「天くん久しぶり~♪大きくなったわね~♪」

 

 「まぁ、成長期だからね」

 

 あんじゅちゃんの登場ですっかり毒気を抜かれた俺は、苦笑しながら返した。

 

 「あんじゅちゃんこそ・・・また一段と実ったんじゃない?」

 

 「フフッ、天くんのエッチ♡」

 

 そう言いながらも、俺の身体に二つの立派なモノを押し付けてくるあんじゅちゃん。

 

 いや、何というか・・・ご馳走様です。

 

 「っていうか、何であんじゅちゃんがここに?」

 

 「半日だけオフになったから、今日のイベントを見に来たの」

 

 笑うあんじゅちゃん。

 

 「どうしても見に来たかったのよね。天くんがマネージャーをやってるグループが出るっていうんだもの」

 

 「えっ、何でそれを・・・」

 

 「あっ!いたいた!」

 

 「あんじゅ!探したぞ!」

 

 こちらに向かってくる二つの影・・・って、あれ?

 

 「もう、急にいなくならないで・・・って天じゃない!久しぶりね!」

 

 ショートヘアの女性が笑顔で話しかけてくる。この人も相変わらずだなぁ・・・

 

 「久しぶり、ツバサちゃん・・・ハゲた?」

 

 「ハゲてないわっ!」

 

 全力でツッコミを入れてくる女性・・・綺羅ツバサちゃん。A-RISEのリーダーである。

 

 「っていうか、久しぶりに会って第一声がそれなの!?」

 

 「あぁ、ゴメン。聞き方が悪かったね・・・生え際後退した?」

 

 「オブラートに包んでるようで全然包んでないじゃない!?」

 

 「毛根死滅した?」

 

 「最早どストレート!?」

 

 「いや、何か前よりおでこが広くなった気がするんだけど・・・」

 

 「そんな疑いの眼差しで見ないでくれる!?本当にハゲてないから!」

 

 「ハハッ、相変わらず天は面白いな」

 

 ロングへアで切れ長の目の女性が、楽しそうに笑っている。

 

 「ツバサをそこまでイジることが出来るのは、天だけだろうな」

 

 「英玲奈ちゃんも久しぶり。ますますカッコ良くなったね」

 

 「・・・それは喜んで良いものなのか?」

 

 反応に困っている女性・・・藤堂英玲奈ちゃん。同じくA-RISEのメンバーである。

 

 「一応私も女なのだが・・・」

 

 「大丈夫。ちゃんと知ってるから」

 

 苦笑する俺。

 

 「こんな綺麗な人を、男と勘違いしたりしないよ」

 

 「なっ・・・お前はまたそういう恥ずかしいことを・・・!」

 

 「あら英玲奈、言葉とは裏腹にずいぶん嬉しそうじゃない」

 

 「ツバサ!?何を言ってるんだお前は!?」

 

 今度はツバサちゃんが英玲奈ちゃんをからかい、英玲奈ちゃんが顔を真っ赤にしている。

 

 相変わらず仲が良いなぁ・・・

 

 「綺羅ツバサと藤堂英玲奈まで・・・!?」

 

 「どうなってるの・・・!?」

 

 口をパクパクさせている聖良さんと理亞さん。まぁ無理もないか・・・

 

 「あら、この二人・・・確かSaint Snowよね?どうしてこっちを見て驚愕の表情を浮かべてるの?」

 

 「いや、普通はこうなるんだよ」

 

 ツバサちゃんの反応に呆れる俺。

 

 「それほどA-RISEは有名なんだから」

 

 A-RISE・・・第一回ラブライブ優勝グループであり、μ'sと共にスクールアイドルブームを巻き起こした存在だ。

 

 高校卒業後は芸能界に入り、正式にプロのアイドルとしてデビュー・・・今や大人気アイドルグループへと成長を遂げている。

 

 スクールアイドルの先駆者であり、スクールアイドルファンの間では『神』と呼ばれているグループなのだ。

 

 「マ、マネージャーさん!?貴方、A-RISEとどういう関係なんですか!?」

 

 「んー・・・犬猿の仲ですかね」

 

 「ちょっと!?」

 

 ツバサちゃんのツッコミ。

 

 「この場面で冗談言ったって通じないでしょ!?」

 

 「いやほら、出会った頃は仲良くなかったじゃん」

 

 「それは天が私達を敵視してたからでしょ!?」

 

 「うん、マジで気に食わなかった。特にツバサちゃん」

 

 「うわぁ・・・ハッキリ言われると凹むわぁ・・・」

 

 落ち込むツバサちゃん。

 

 言われてみると、今のSaint Snowは当時のA-RISEに似てるかもしれない。

 

 「安心しなよ、今は大好きだから」

 

 「えっ、ホント!?」

 

 「あんじゅちゃんのことが」

 

 「や~ん♡嬉しいわ♡」

 

 「うわああああん!?」

 

 「あぁっ!?ツバサがガチ泣きしてる!?」

 

 まるでコントのようなやり取りを繰り広げる俺達。すると・・・

 

 「ちょっとアンタ達!」

 

 聞き覚えのある声がする。声のした方を振り向くと・・・

 

 「勝手に行動してんじゃないわよ!どんだけ探したと思ってんの!?」

 

 「うぅ、天ぁ・・・天ぁ・・・」

 

 サングラスをかけた長い黒髪の女性と、その女性に手を引かれている海未ちゃんがいた。

 

 「あぁ、ごめんなさい。その代わり、ちゃんと天くんは発見しておいたわよ」

 

 「天あああああっ!」

 

 勢いよく抱きついてくる海未ちゃん。やれやれ・・・

 

 「よしよし、もう大丈夫だよ」

 

 「うぅ、怖かったですぅ・・・」

 

 「全く・・・相変わらずどっちが年上だか分かんないわね・・・」

 

 溜め息をつく女性。

 

 「まぁそれはさておき・・・久しぶりね、天」

 

 かけていたサングラスを外す女性。

 

 その顔を見た聖良さんが、またしても驚きの表情を浮かべた。

 

 「なっ・・・μ'sの・・・!?」

 

 「久しぶり、にこちゃん」

 

 目の前の女性・・・矢澤にこちゃんに挨拶する俺。

 

 まさかにこちゃんにまで会うことになるとは・・・

 

 「あれ?背縮んだ?」

 

 「縮むかっ!むしろ伸びたわっ!」

 

 「にこちゃん・・・そんな悲しい嘘は止めよう・・・?」

 

 「嘘じゃないわよ!?そんな憐れむような目で見ないでくれる!?」

 

 「大丈夫。小さくても需要はあるって」

 

 「それ身長の話よねぇ!?胸の話だったらしばくわよ!?」

 

 ツッコミを連発するにこちゃん。相変わらずイジりやすいなぁ・・・

 

 「っていうか、何でにこちゃんがここにいるの?」

 

 「ツバサ達と一緒に、今日のイベントを見に来たのよ」

 

 溜め息をつくにこちゃん。

 

 「昨日ことりと真姫から、『天に会った』っていう連絡が来てね。天がマネージャーを務めてるAqoursが、このイベントに出るっていうじゃない。どんなもんかと思って見に来たってわけ」

 

 「あぁ、だからあんじゅちゃんが知ってたのね」

 

 納得する俺。

 

 にこちゃんは大学を卒業後、A-RISEの所属事務所で働いている。その為かA-RISEの三人と仲良くなっており、プライベートでも遊びに行ったりする仲なんだとか。

 

 五年前まで、A-RISEの追っかけしてたっていうのに・・・

 

 「それでイベントが終わってこの辺りをうろついてたら、偶然海未を発見してね。話を聞いたら、天とはぐれたっていうじゃない。この辺りにいることは電話で伝えたっていうから、ちょっと周りを探してみようってことになったんだけど・・・」

 

 ツバサちゃん達を睨むにこちゃん。

 

 「コイツらが好き勝手に動くもんだから、いつの間にかはぐれちゃって・・・どうしようかと思ったわよ」

 

 「アハハ、ゴメンゴメン」

 

 苦笑しながら謝るツバサちゃん。

 

 なるほど、そういうことだったのね・・・

 

 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」

 

 黙っていられなくなったのか、話に割り込んでくる理亞さん。

 

 「アンタ、A-RISEとどういう関係なわけ!?しかもμ'sの矢澤にこまで!」

 

 「μ'sのメンバーなら、ここにもう一人いるわよ」

 

 「ちょ、にこ!?」

 

 海未ちゃんの伊達メガネとマスクを外すにこちゃん。

 

 「そ、園田海未・・・!?」

 

 海未ちゃんの顔を見た理亞さんが固まる。

 

 聖良さんにいたっては、完全に絶句してしまっていた。

 

 「じゃあアンタ、園田海未の弟だったの!?」

 

 「あー・・・すいません。海未ちゃんが姉っていうのは嘘なんですよ」

 

 苦笑する俺。と、ここでにこちゃんが口を挟む。

 

 「この子の名前は絢瀬天・・・μ'sの絢瀬絵里の弟よ」

 

 「ハァッ!?」

 

 「ちょっとにこちゃん、勝手に人の素性をバラさないでよ」

 

 「今さらでしょ。私達やA-RISEとの関わりがバレてるんだから」

 

 「そうだけどさぁ・・・」

 

 今のカミングアウトで、鹿角姉妹は完全にフリーズしてしまっていた。

 

 まぁA-RISEやμ'sのメンバーが登場した挙句、絵里姉のことまで知ってしまったらこうなるか・・・

 

 「えーっと・・・まぁそんなわけです。姉がμ'sのメンバーなので、μ'sの皆とは関わりがありまして。ツバサちゃん達ともその流れで知り合ったんですよ」

 

 「あら、それだけじゃないわ」

 

 ニヤリと笑うツバサちゃん。

 

 「何と言っても天は、あのμ'sの・・・」

 

 「えいっ」

 

 「むぐっ!?」

 

 海未ちゃんが持っていたコーラのペットボトルを開け、ツバサちゃんの口に突っ込んだ。

 

 そのまま傾け、ツバサちゃんの口の中へとコーラを流し込む。

 

 「むぐぅっ!?」

 

 「すみませんね。今の何でもないんで忘れて下さい」

 

 「むぐぐぐぅっ!?」

 

 「あぁっ!?ツバサちゃんがコーラで死にかけてる!?」

 

 「勘弁してやってくれ天!このバカには後でちゃんと言い聞かせておくから!」

 

 あんじゅちゃんと英玲奈ちゃんが必死に止めてくるので、仕方なく止めてあげた。

 

 コーラから解放され、咳き込むツバサちゃん。

 

 「ゲホッ、ゲホッ・・・ちょっと天!?容赦なさすぎよ!?」

 

 「ああん・・・?」

 

 「すいませんでした!」

 

 俺の絶対零度の視線に、即座に土下座を敢行するツバサちゃん。

 

 鹿角姉妹が完全に引いているが、そんなことはどうでもいい。

 

 「まぁそれはさておき・・・先ほどのAqoursに対する侮辱、俺は絶対に忘れませんので。人を見下している暇があるのなら、自分自身を磨くことをオススメします。貴女方も入賞できていないという事実を、どうかお忘れなく」

 

 「っ・・・申し訳ありませんでした・・・」

 

 頭を下げる聖良さん。

 

 「理亞、行きましょう・・・」

 

 「う、うん・・・」

 

 その場を去っていく二人。やれやれ・・・

 

 「・・・ありがとね、あんじゅちゃん。危うく言い過ぎるところだったよ」

 

 「フフッ、どういたしまして」

 

 微笑むあんじゅちゃん。

 

 「まぁ、天くんが怒る気持ちは分かるけどね。頑張っている人に対して、あのセリフは酷いと思うわ」

 

 「天、何かあったのですか・・・?」

 

 「うん、まぁ色々とね」

 

 海未ちゃんの問いに、苦笑しながら答える俺。

 

 と、にこちゃんが溜め息をつく。

 

 「大方、あの二人がAqoursに対して何か言ったんでしょう?何を言ったのかは知らないけど・・・Aqoursのパフォーマンスが、他のグループより劣っていたのは事実よ」

 

 「ちょっとにこ、そんな言い方・・・!」

 

 「海未だって本当は気付いてるでしょ?フォローするだけが優しさじゃないのよ?」

 

 「それは・・・」

 

 「それに・・・天は分かってたんじゃないの?このイベントにAqoursが参加すれば、こういう結果になるだろうって」

 

 「・・・まぁね」

 

 にこちゃんの問いに、溜め息をつきながら頷く俺。

 

 「このイベントで、周りのレベルの高さを実感することになるだろうとは思ってたよ。今のAqoursのレベルじゃ、優勝どころか入賞さえ出来ないことも分かってた」

 

 「そんな・・・だったらどうして・・・!」

 

 「ラブライブを目指す以上、そこは絶対に理解してないといけないところだからね。スクールアイドルを続けていく上で、避けては通れない道なんだよ」

 

 「同感だな」

 

 頷く英玲奈ちゃん。

 

 「他のスクールアイドル達の実力と、それに対しての自分達の実力・・・それを把握出来ていないようでは、話にならないからな」

 

 「そうね。あと大事なのは、強い意思があるかどうかってところかしら」

 

 ツバサちゃんも口を挟んでくる。

 

 「今回Aqoursは、周りとの実力差を痛感したはずよ。もしこれで心が折れてしまったら・・・キツい言い方になってしまうけど、その程度の覚悟しかなかったってことよね」

 

 「そういうことになるね」

 

 苦笑する俺。でも・・・

 

 「もしAqoursの皆が、それでもスクールアイドルを続けるというのであれば・・・今より絶対に伸びる」

 

 「・・・信じてるのね。あの子達のこと」

 

 「勿論」

 

 にこちゃんの問いに、笑みを浮かべる俺。

 

 「こんなところで終わる人達じゃないよ。絶対に這い上がってくるから」

 

 「・・・変わらないわね。そういうところ」

 

 呆れたように、でもどこか嬉しそうに笑うにこちゃんなのだった。




どうも〜、ムッティです。

いやぁ・・・凄かったですね、台風。

皆さんは大丈夫でしたか?

よりによって月曜日に、通勤・通学の時間帯に多大なる影響を与えてましたもんね・・・

電車の運休や遅延で、駅は人で溢れかえってるし・・・

ようやく電車に乗れたと思ったら、ぎゅうぎゅう詰めで圧死しそうになるし・・・

どこへ行っても人、人、人ですよ。

本当に大変な目に遭いました(>_<)

やはり自然には勝てませんね・・・

さてさて・・・今回はツバサちゃんと英玲奈ちゃん、そしてにこちゃんも登場しました!

にこちゃんは芸能関係(裏方)の仕事とかやってそう・・・という勝手なイメージで、にこちゃんの職業を決めてしまいました(笑)

でもその方面に詳しい分、絶対有能なスタッフだと思うんですよね。

ゆくゆくはマネージャーとかやってそう。

さて、今回のイベントでスクールアイドルのレベルの高さを知ったAqours・・・

果たしてどうなるのか・・・

次回もお楽しみに(・∀・)ノ

それではまた次回!以上、ムッティでした!


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