絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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沼津に行ってみたいなぁ・・・

聖地巡礼とかやってみたい。


礼儀正しい人ほど怒ると怖い。

 「善子ちゃん、来なかったずら・・・」

 

 帰りのバスを待ちながら、肩を落とすずら丸。

 

 結局今日、自称・堕天使が学校に来ることは無かった。よほど昨日のことを引きずっているんだろうか・・・

 

 「連絡先って分かんないの?」

 

 「分からないずら。家は・・・変わってないなら覚えてるずら」

 

 「じゃあもう少し待ってみて、何日経っても来ないようなら家に行ってみようか。俺も付き合うからさ」

 

 「勿論ルビィも行くよ」

 

 「天くん、ルビィちゃん・・・」

 

 涙目のずら丸。俺はずら丸の頭を撫でた。

 

 「ホント優しいな、ずら丸は」

 

 「友達の心配をするのは当たり前ずら」

 

 そんな会話をしていると・・・

 

 「あっ、絢瀬くん・・・」

 

 「え?」

 

 不意に名前を呼ばれたので振り向くと、高海先輩と渡辺先輩がいた。二人もちょうど帰るところらしい。

 

 今朝のこともあって、高海先輩は気まずそうな顔をしている。俺は二人に歩み寄ると、頭を下げた。

 

 「高海先輩、今朝はキツい言い方をしてしまってすみませんでした。渡辺先輩も、不快な思いをさせてしまってすみません」

 

 「そんな!?」

 

 「頭上げてよ!?」

 

 慌てる高海先輩と渡辺先輩。

 

 「私がいけなかったんだよ!絢瀬くんの言う通り、ちゃんと五人集めてから申請書を出しに行くべきだったのに・・・ごめんなさい!」

 

 「あの場に最初からいた私が、千歌ちゃんと生徒会長の間に入らなきゃいけなかったんだよ!なのに嫌な役を絢瀬くんに押し付ける形になっちゃって・・・本当にごめん!」

 

 「ですよね。じゃあお二人が悪いということで」

 

 「「掌返し!?」」

 

 「冗談ですよ」

 

 思わず笑ってしまう俺。

 

 「これ以上は、お互い謝り続けることになりますから・・・この話はこれで終わりにしませんか?」

 

 「絢瀬くん・・・うん!」

 

 「そうしよっか!」

 

 笑みを浮かべる二人。良かった、どうやら一件落着のようだ。

 

 「天くん、先輩達とケンカでもしてたずら?」

 

 いつの間にか、ずら丸が俺の隣に立っていた。

 

 「まぁ色々あったんだよ、色々」

 

 「あっ、入学式の時の可愛い子!」

 

 高海先輩が顔を輝かせる。

 

 「こんにちは、国木田花丸っていいます」

 

 「私は高海千歌!よろしくね!」

 

 「渡辺曜であります!ヨーソロー!」

 

 ずら丸達が自己紹介しあう中、ルビィちゃんは俺の背中から顔を覗かせていた。

 

 「ぴ、ぴぎぃ・・・」

 

 「あっ、花丸ちゃんと一緒にいた子!」

 

 「ぴぎぃっ!?」

 

 俺の背中に隠れるルビィちゃん。あれ、これってずら丸の役割だった気が・・・

 

 「絢瀬くん、ずいぶん懐かれたね?」

 

 「まぁ色々あったんですよ、色々」

 

 渡辺先輩の言葉に、苦笑しながら返す俺。

 

 「あ、この子は黒澤ルビィちゃんです。ダイヤさんの妹なんですよ」

 

 「嘘!?」

 

 「ホントに!?」

 

 驚愕している二人。まぁ何と言うか、対照的な姉妹だもんなぁ・・・

 

 「花丸ちゃん、ルビィちゃん、スクールアイドルやってみない!?」

 

 「マルはちょっと・・・」

 

 「ぴぎぃ・・・」

 

 首を横に振る二人。高海先輩がうなだれる。

 

 「えぇ・・・絶対人気出るのにぃ・・・」

 

 「それより、高海先輩と渡辺先輩は作曲って出来るんですか?」

 

 俺はそこが気になっていた。高海先輩か渡辺先輩、どちらかが音楽をやっていたりするんだろうか・・・

 

 「作曲?出来ないよ?」

 

 「私も出来ないなぁ」

 

 「えっ・・・」

 

 呆然としてしまう俺。おいおい・・・

 

 「・・・どうするつもりなんですか?」

 

 「え?スクールアイドルって作曲できないとマズいの?」

 

 「・・・マジかぁ」

 

 俺は頭を抱えてしまった。どうやらこの二人は知らないらしい。

 

 「え、何?どういうこと?」

 

 「・・・スクールアイドルをやるということは、ラブライブを目指すわけですよね?」

 

 「そりゃあ当然だよ!」

 

 大きく頷く高海先輩。

 

 ラブライブというのは、スクールアイドルの頂点を決める大会のことだ。その規模は凄まじく、決勝はドームで行なわれるほどである。

 

 しかしそんなラブライブには、出場する為の絶対条件が存在するのだ。

 

 「・・・ラブライブで披露する曲は、オリジナルの曲じゃないといけないんですよ」

 

 「「・・・えっ」」

 

 「しかも予選から始まって決勝まで進んだ場合、当然一曲だけでは足りません。複数のオリジナルの曲が必要になります。厳密に言えば、オリジナルなら同じ曲を繰り返し披露しても問題はありませんが・・・同じパフォーマンスの繰り返しで勝ち進めるほど、ラブライブは甘くないです」

 

 俺の説明に、顔色が悪くなっていく高海先輩と渡辺先輩。

 

 「・・・つまり作曲が出来ないと、ラブライブに出場することも出来ないってこと?」

 

 「そういうことです」

 

 頷く俺。

 

 俺の背中に隠れているルビィちゃんも、うんうんと頷いていた。流石スクールアイドルが好きなだけあって、この条件を知っていたらしい。

 

 「そ、そんな・・・」

 

 「早くも夢が断たれた・・・」

 

 その場にへたり込む二人。アララ・・・

 

 「まぁでも、お二人が作曲出来なくても大丈夫じゃないですか?要は作曲出来る人を探せば良いわけですし」

 

 「そうは言ってもさぁ・・・浦の星に作曲が出来る人なんて・・・」

 

 「梨子さんがいるじゃないですか」

 

 「・・・え?」

 

 ポカンとしている高海先輩。

 

 「いや、桜内梨子さんですよ。今日二年生のクラスに転入してきた人です。昨日言ってたじゃないですか。ピアノで曲を作ってるって」

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 叫ぶ高海先輩。完全に忘れてたなこの人・・・

 

 「そうだよ!桜内さんがスクールアイドル部に入ってくれたら解決するじゃん!」

 

 「でも千歌ちゃん、今日誘って断られてたよね?」

 

 「もう誘ってたんですか・・・」

 

 「いやぁ、可愛かったからつい・・・」

 

 頭を掻きながら苦笑する高海先輩。行動早いなこの人・・・

 

 「スクールアイドル部には入ってくれないとしても、曲だけでも依頼してみたらどうですか?まぁ梨子さんにも都合があるでしょうし、引き受けてくれるとはかぎりませんけど」

 

 「それ名案だよ!ありがとう絢瀬くん!」

 

 はしゃいでいた高海先輩だったが、ふと気付いたように俺を見た。

 

 「あれ?絢瀬くん、桜内さんのこと名前で呼んでるの?」

 

 「えぇ。俺のことは天で良いって言ったら、梨子さんも名前呼びで良いって」

 

 「えぇっ!?私は絢瀬くんからそんなこと言われてないんだけど!?」

 

 「私もだよ!?」

 

 「そうでしたっけ?」

 

 そういえば、何だかんだで二人には言ってなかった気がする・・・

 

 結局この後散々『不公平だ!』と言われ、二人とも俺のことを『天くん』と呼ぶようになった。

 

 そして俺も高海先輩を『千歌さん』、渡辺先輩を『曜さん』と呼ぶことになるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「で、また断られたんですか?」

 

 「そうなんだよねぇ・・・」

 

 溜め息をつく千歌さん。あれから数日間、千歌さんはひたすら梨子さんにアタックしているそうだが・・・

 

 答えはノー。梨子さん曰く、『そんな暇は無い』らしい。

 

 「もうちょっとな気がするんだけどねぇ・・・『ごめんなさい!』だったのが、『・・・ごめんなさい』に変わったし」

 

 「いや、単に迷惑してるだけでしょ。段々うざくなってきてるだけでしょ」

 

 「アハハ・・・やっぱり天くんもそう思う?」

 

 苦笑している曜さん。やはり千歌さんが鈍感なだけのようだ。

 

 「・・・貴女達」

 

 ダイヤさんがこめかみをピクピクさせている。

 

 「どうして生徒会室で雑談してますの!?」

 

 「花丸ちゃんから、天くんがここにいるって聞いたので」

 

 悪びれもせず答える千歌さん。

 

 放課後にダイヤさんと生徒会の事務作業をしていたところ、千歌さんと曜さんが生徒会室へ乱入してきたのだ。

 

 「天くんなら、何か良いアイデアがあるんじゃないかと思って」

 

 「天さんは生徒会の一員ですわよ!?巻き込むのはお止めなさい!」

 

 「まぁまぁ、とりあえず落ち着きましょう」

 

 苦笑しながらダイヤさんを宥める。

 

 「ちょっと休憩しましょうか。お茶でも淹れるので、千歌さんと曜さんも適当に座って下さい」

 

 「わーい!ありがとう!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 「全く・・・天さんは甘すぎますわ」

 

 何とかダイヤさんが落ち着いたところで、俺はお茶の準備を始める。

 

 一方、千歌さんはダイヤさんにスクールアイドルへの情熱を訴えかけていた。

 

 「私はスクールアイドル部を作って、皆と一緒に輝いてみせます!」

 

 「ですから、まずは部員を五人揃えてから来て下さいと言っているでしょう?」

 

 「勿論です!今はまだ二人ですけど、『ユーズ』だって最初は三人だったんですから!」

 

 生徒会室の空気が凍った気がした。何故だろう、今ダイヤさんの方を見てはいけないような気がする。

 

 「知りませんか!?第二回ラブライブ優勝!音ノ木坂学院スクールアイドルグループ!その名も『ユーズ』!」

 

 いや、『ユーズ』って・・・マジですか千歌さん・・・

 

 「・・・千歌さん、あれ『ミューズ』って読むんですよ」

 

 「・・・えっ」

 

 俺の指摘に固まる千歌さん。

 

 「嘘・・・『ユーズ』じゃないの・・・?」

 

 「お黙らっしゃああああああああああいっ!」

 

 「「ひぃっ!?」」

 

 ダイヤさんの怒りが爆発した。千歌さんと曜さんが悲鳴を上げる。

 

 「言うに事欠いて名前を間違えるですって!?あぁん!?」

 

 ヤンキー化するダイヤさん。大和撫子はどこへ行ったんだ・・・

 

 「μ'sはスクールアイドル達にとっての伝説!聖域!聖典!宇宙にも等しき生命の源ですわよ!?その名前を間違えるとは片腹痛いですわ!」

 

 千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 ねぇ、やっぱりこの人スクールアイドル好きだよね?μ'sのファンだよね?

 

 「その浅い知識だと、たまたま見つけたから軽い気持ちで『マネをしてみよう』とか思ったのですね!?」

 

 「そ、そんなこと・・・!」

 

 「ならば問題です!μ'sが最初に九人で歌った曲は!?」

 

 「え、えーっと・・・」

 

 「第二回ラブライブ予選、μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだ場所は!?」

 

 「う、う~ん・・・」

 

 「第二回ラブライブ決勝、μ'sがアンコールで歌った曲は!?」

 

 「あ、それは知ってます!『僕らは今の中で』ですよね!?」

 

 「ではその『僕らは今の中で』の冒頭でスキップしている四名は!?」

 

 「えぇっ!?」

 

 「ぶっぶっぶー!ですわ!」

 

 再び千歌さんに詰め寄るダイヤさん。

 

 もう確定だよ。絶対μ'sのファンだよこの人。あまりの豹変ぶりに曜さんが引いてるよ。

 

 「こんなの基本中の基本ですわよ!?正解は・・・」

 

 「絢瀬絵里、東條希、星空凛、西木野真姫」

 

 「その通り・・・え?」

 

 驚いてこちらを振り向くダイヤさん。

 

 そんなダイヤさんをよそに、俺はお茶を注いだ湯呑みをテーブルに並べていく。

 

 「μ'sが最初に九人で歌った曲は、『僕らのLIVE 君とのLIFE』。通称『ぼららら』」

 

 ダイヤさんと一緒に食べようと思って持ってきた和菓子を皿に分けながら、ダイヤさんの問題に答えていく。

 

 「μ'sがA-RISEと一緒にステージに選んだのは、当時A-RISEが通っていた秋葉原UTXの屋上。ちなみにそこで披露した曲は、『ユメノトビラ』ですね」

 

 「あっ、私その曲大好き!」

 

 目を輝かせる千歌さん。

 

 「その曲を聴いて、スクールアイドルをやりたいって思ったの!」

 

 「あ、そうだったんですね」

 

 自分自身に悩んでいた千歌さんなら、確かに大きく心を揺さぶられてもおかしくない。それほど力の込められた歌詞が、この曲には詰まっている。

 

 「凄いね天くん・・・そんなスラスラ答えられるなんて・・・」

 

 「ダイヤさんの言う通り、これくらいは基本中の基本ですよ」

 

 唖然としている曜さんに、笑いながら答える俺。

 

 「μ'sに憧れてスクールアイドルをやるなら、もう少しμ'sのことを知っておいても損は無いと思いますよ?スクールアイドルとしてどういう軌跡を辿ったのか、参考になる点は色々あるでしょうし・・・はい、お茶の用意ができましたよ」

 

 「おぉ、美味しそうな和菓子!」

 

 「もらっちゃって良いの!?」

 

 「勿論。ほらダイヤさん、一緒に食べましょう」

 

 「え、えぇ・・・」

 

 俺の方を見ながら、呆然としているダイヤさんなのだった。




どうも~、ムッティです。

ふと気付きましたが、全然話が進んでないですね・・・

未だアニメ二話の途中くらいですもんね・・・

もっとサクサク進められたら良かったんですが・・・

あぁ、早くイチャつかせたい←

まぁその前に、早くヒロイン決めろって話ですよね(笑)

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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