絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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ことりちゃん、誕生日おめでとう!

1日遅れてゴメンね・・・


簡単には受け止められないこともある。

 「さて、そろそろ行くわよ」

 

 「えぇ・・・せっかく天くんと会えたのにぃ・・・」

 

 「文句言わない。これから仕事でしょうが」

 

 不満そうに俺に抱きつくあんじゅちゃんに、溜め息をつくにこちゃん。

 

 どうやらA-RISEはこれから仕事があるらしく、長居は出来ないとのことだった。

 

 芸能人も大変だなぁ・・・

 

 「こっちはマネージャーさんから、時間通りに連れてくるよう厳しく言われてるんだから。これで遅刻なんてしたら、怒られるのは私なのよ」

 

 「じゃあ遅刻しても大丈夫ね。怒られるのはにこなんだから」

 

 「しばくわよハゲ」

 

 「だからハゲじゃないわよ!?」

 

 ツバサちゃんのツッコミ。

 

 A-RISEの熱烈なファンだったにこちゃんが、こんなセリフを吐く日が来るとは・・・

 

 「ほらあんじゅ、気持ちは分かるが仕事に行くぞ」

 

 「うぅ・・・分かったわよぉ・・・」

 

 英玲奈ちゃんに宥められ、渋々従うあんじゅちゃん。

 

 「じゃあ天くん、またね・・・んっ」

 

 「っ!?」

 

 急に頬にキスされ、流石に俺もビックリしてしまう。

 

 「ちょ、あんじゅちゃん!?」

 

 「フフッ♡」

 

 俺から離れたあんじゅちゃんが、悪戯っぽく笑う。

 

 「頬じゃなくて、唇の方が良かったかしら?」

 

 「あんじゅさん!?何してるんですか!?」

 

 慌てて俺を後ろから抱き寄せ、あんじゅちゃんを睨みつける海未ちゃん。

 

 「天は渡しませんからね!?」

 

 「あら、嫉妬?海未ちゃんも可愛いわね」

 

 「あんじゅ、からかうのは止めなさい」

 

 やれやれ、と言いたげなツバサちゃん。

 

 「じゃあ天、また会いましょう」

 

 「今度はゆっくり話そう。お互い積もる話もあるだろうしな」

 

 「寂しくなったら、いつでも連絡ちょうだいね♪」

 

 「ありがとう。仕事頑張ってね」

 

 三人に手を振る俺。

 

 にこちゃんも三人の後に続こうとしたが、ふと足を止めた。

 

 「・・・Aqoursのこと、ちゃんと支えてあげなさいよ。今それが出来るのは、マネージャーである天しかいないんだから」

 

 「分かってる。ほったらかしにしておくつもりは無いよ」

 

 俺の言葉に、にこちゃんが小さく笑みを浮かべた。

 

 「私が認めた男が、『こんなところで終わる人達じゃない』って断言したんだもの。あの子達の成長を楽しみにしてるわ」

 

 それだけ言い残すと、手をひらひらと振って去っていくにこちゃん。

 

 かつてのツインテールではなく、長い黒髪をなびかせながら歩くその背中は・・・とても大きく見えた。

 

 「・・・大人だなぁ」

 

 「ですね」

 

 頷く海未ちゃん。

 

 「絵里や希とは、また違った感じの大人っぽさですよね」

 

 「うん、何と言うか・・・人生の先輩っていう感じがする」

 

 時には優しく、時には厳しく・・・

 

 にこちゃんには昔から、何かと目をかけてもらってたっけなぁ・・・

 

 「全く・・・普段はイジられキャラのくせに、何でこういう時だけ・・・」

 

 「フフッ・・・でも、そこがにこらしいですよね」

 

 二人でそんなことを言いながら苦笑していると・・・

 

 「ねぇ、あの人ってμ'sの・・・」

 

 「嘘!?園田海未!?」

 

 「えっ、じゃあ横にいる男の子って・・・」

 

 「まさか彼氏!?」

 

 周りがメッチャざわついていた。えっ・・・

 

 「・・・そういえば、にこに伊達メガネとマスクを取られたんでした」

 

 冷や汗をダラダラ流しながら呟く海未ちゃん。

 

 よし、にこちゃんはいつか絶対に泣かすとして・・・

 

 「とりあえず退散っ!」

 

 「ラジャーッ!」

 

 全力でその場から走り去る俺と海未ちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ふぅ・・・」

 

 「危なかったですね・・・」

 

 ホッと一息つく俺達。

 

 全力ダッシュで逃走した俺達は、何とか最初にいた場所まで戻って来ることが出来たのだった。

 

 「そろそろ千歌さん達も戻って来ると思うんだけど・・・あっ」

 

 そんな話をしていると、千歌さん達がこちらへ向かってくるのが見えた。どうやら、ちょうど良いタイミングだったらしい。

 

 ただ・・・

 

 「・・・何か、元気無くない?」

 

 「ですね・・・さっきより暗いといいますか・・・」

 

 明らかに落ち込んだ表情の皆。どうしたんだろう?

 

 「お帰りなさい」

 

 「っ・・・」

 

 俺がそう声をかけた瞬間・・・ルビィが勢いよく俺に抱きついてきた。

 

 「おっと・・・ルビィ?」

 

 「・・・ひっぐ・・・うぅっ・・・」

 

 俺の胸に顔を埋めながら、泣きじゃくるルビィ。

 

 俺は戸惑いながらも、ルビィの頭を優しく撫でた。

 

 「何かあったんですか・・・?」

 

 「・・・これです」

 

 問いかける海未ちゃんに、千歌さんが一枚の紙を渡す。

 

 そこには、今回のイベントに参加したグループの名前が順位で並べて書いてあった。右側には得票数も書いてある。

 

 「Saint Snowは9位・・・入賞までもう少しだったのか・・・」

 

 手の届く位置にあったのに、掴むことが出来なかったわけか・・・気の強そうな理亞さんが泣いていたのも納得できる。

 

 それより問題なのは・・・

 

 「Aqoursは・・・最下位。得票数・・・0」

 

 「そんな・・・」

 

 絶句する海未ちゃん。つまりあの会場にいた観客の中で、Aqoursに投票した人はいなかったということか・・・

 

 俺と海未ちゃんはAqoursの身内になるから、あえて誰にも投票しなかったもんな・・・

 

 「0・・・だったの・・・」

 

 泣きながら言うルビィ。

 

 「ルビィ達に・・・ひっぐ・・・投票してくれた人は・・・えぐっ・・・誰もいなかったの・・・うぅっ・・・」

 

 「・・・そっか」

 

 そっとルビィを抱き締める。

 

 「我慢しなくて良いよ・・・気が済むまで泣いて良いから」

 

 「っ・・・うわあああああんっ!」

 

 大声で泣くルビィ。

 

 そんなルビィの様子を、他の皆も沈痛な面持ちで見つめていた。

 

 「・・・Saint Snowさんからも、言われちゃったの。『μ'sのようにラブライブを目指しているのなら、諦めた方が良いかもしれない』って」

 

 「『馬鹿にしないで。ラブライブは遊びじゃない』とも言われちゃったよね・・・」

 

 「っ・・・!」

 

 梨子さんと曜さんの言葉を聞いた海未ちゃんが、唇をぐっと噛む。

 

 「あの二人・・・そんなことを言ったのですか・・・!」

 

 怒りの表情を浮かべる海未ちゃん。

 

 「まだ遠くへは行ってないはず・・・!」

 

 「止めときな」

 

 海未ちゃんがあの二人を追いかける前に、釘を刺しておく。

 

 「天!?何故止めるのですか!?」

 

 「あの二人に対して怒った俺が、こんなことを言える立場じゃ無いのは分かってるけど・・・今はあの二人のことなんてどうでもいいよ」

 

 淡々と答える俺。

 

 「人を傷つける言葉を平気で言えるようなヤツらに、これ以上構っていたくないから。そんなヤツらに怒りをぶつけてる暇があるなら・・・俺は皆の側にいたい」

 

 「っ・・・天・・・」

 

 「・・・とりあえず、海未ちゃんの家に戻ろっか。荷物をまとめて内浦に帰ろう。早くしないと、帰るのが遅くなっちゃうから」

 

 「・・・分かりました」

 

 力なく頷く海未ちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 「ようやく落ち着いたか・・・」

 

 俺の肩に寄りかかって眠るルビィを見て、ホッと一息つく俺。

 

 園田家を出た俺達は、電車に乗って内浦へと向かっていた。

 

 「ルビィちゃん、安心したような顔で眠ってるわね」

 

 通路を挟んで俺の隣に座っている梨子さんが、笑みを浮かべながら言う。

 

 「きっと天くんが側にいるからね」

 

 「そうですかね?」

 

 「そうよ。花丸ちゃんと善子ちゃんだって、さっきまで落ち込んでたのに今は穏やかな顔で眠ってるじゃない。天くんと一緒だから安心してるのよ」

 

 俺の向かいの席で身を寄せ合って眠る花丸と善子を見て、微笑む梨子さん。

 

 安心してる、か・・・

 

 「・・・それなら嬉しいですね」

 

 ルビィによって握られている手を、そっと握り返す。

 

 「一緒にいるだけで、人を安心させることが出来る・・・そんな存在になりたいって、ずっと思ってましたから」

 

 「え・・・?」

 

 「・・・フフッ」

 

 首を傾げる梨子さんに対し、俺の言葉を聞いていた海未ちゃんが小さく笑った。

 

 「それはひょっとして、希の影響ですか?」

 

 「・・・まぁね」

 

 照れ臭くなり、海未ちゃんから視線を外す俺。

 

 「天は希に懐いてましたもんね。ことり以上に」

 

 「み、南さん以上・・・?」

 

 「ちょっと曜さん、何でそんなにげんなりしてるんですか?」

 

 「いや、あの甘々な感じを見せつけられてるからさぁ・・・あれ以上ってことは、胸焼けどころじゃ済まないなぁと思って・・・」

 

 「大丈夫ですよ、曜」

 

 胸を押さえる曜さんに、海未ちゃんが苦笑しながら言う。

 

 「あそこまでの甘々空間になることはありませんから。安心して下さい」

 

 「でも、天くんが南さん以上に懐いてるんですよね?」

 

 「そうですが、天と希はああいう感じではないんですよ。会えば分かります」

 

 「は、はぁ・・・」

 

 よく分かっていない様子の曜さん。

 

 全く、海未ちゃんときたら・・・

 

 「東條希さんか・・・会ってみたいわね、千歌ちゃん」

 

 「・・・・・」

 

 「千歌ちゃん?」

 

 「・・・えっ?」

 

 梨子さんに話を振られたことに気付かない千歌さん。ようやく気付いたようで、バツの悪そうな顔をする。

 

 「ゴメン、聞いてなかった・・・」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 心配そうな表情の梨子さん。

 

 「やっぱり千歌ちゃん、イベントの結果を気にして・・・」

 

 「ち、違うって!そんなんじゃないから!」

 

 慌てて笑みを浮かべ、取り繕おうとする千歌さん。

 

 と、ここで曜さんが真剣な表情で千歌さんに尋ねた。

 

 「じゃあ千歌ちゃんは・・・悔しくないの?」

 

 「「「っ・・・!」」」

 

 息を呑む俺・梨子さん・海未ちゃん。その質問は・・・

 

 「そ、そりゃあちょっとはね・・・でも、皆であそこに立てたんだもん!私は満足だよ!」

 

 無理矢理作ったような笑顔を見せる千歌さん。ホント、この人は・・・

 

 「千歌ちゃん・・・スクールアイドル、やめる?」

 

 「っ・・・」

 

 続けられた曜さんの問いに、答えられなくなってしまった千歌さん。

 

 いつもなら、勢いよく『やめない!』と答えているところだが・・・

 

 「・・・そこまでにしましょう、曜さん。これ以上はダメです」

 

 「・・・ゴメン」

 

 素直に引き下がる曜さん。

 

 重苦しい雰囲気に包まれ、電車に揺られる俺達なのだった。




どうも〜、ムッティです。

昨日9月12日は、ことりちゃんの誕生日でしたね!

改めておめでとう!

誕生日記念とかで、一話のみの特別編とか書いてみるのも面白そうですよね。

まぁそういうのを書くのは、もう少し話が進んでからになると思いますが・・・

鞠莉ちゃんとか未だに和解してませんし、まだ登場してないμ'sのメンバーもいますし・・・

とりあえず、早く三年生編に入りたいところです(>_<)

引き続きマイペースに投稿していきますので、これからもよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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