おめでたいことだけど、何でXYの時に優勝してくれなかったんだ・・・
あの時の作画が一番綺麗だったし、決勝戦のフルバトルはマジで激アツだったのに・・・
あと、セレナちゃんカムバック(´・ω・`)
「何かこの海を見ると、『戻ってきた』って感じがするよ」
「フフッ、すっかり内浦の人になってますね」
海沿いを散歩している俺と海未ちゃん。
無事に沼津駅に到着した俺達は、駅まで迎えに来てくれた志満さんと美渡さんの車でそれぞれの家へと帰った。
帰宅後に何となく風に当たりたくなった俺が散歩に行こうとしたところ、海未ちゃんも行きたいと言うので一緒に外に出てきたのだった。
「久しぶりの東京はどうでしたか?」
「久しぶりって言っても、引っ越してまだ三ヶ月程度だけど・・・少し懐かしく感じたかな。『あぁ、こんなところだったな・・・』って感じちゃったよ」
それだけ内浦の景色に慣れてしまったということだろう。
そう考えると俺にとって、三ヶ月という期間は案外長かったのかもしれないな・・・
「・・・私としては、それは少し寂しいですね」
そっと俺との距離を詰め、手を握ってくる海未ちゃん。
「確かに内浦は良い所ですが・・・」
「分かってるよ」
海未ちゃんの手を優しく握り返す。
「俺にとって、東京が大切な場所なのは今も変わらないから。海未ちゃんや皆との思い出がたくさんあるし・・・姉さん達と一緒に暮らしてきた場所だからね」
「天・・・」
「次に東京に行く時は、今回は会えなかったμ'sのメンバーにも会いたいな。亜里姉とも会いたいし・・・可能であれば、絵里姉とも」
「・・・会えますよ、きっと」
微笑む海未ちゃん。
「今度は連絡してあげて下さい。皆喜んで天に会いに来ますから」
「・・・うん。そうするよ」
ことりちゃんにも同じ事を言われたもんな・・・
今度穂乃果ちゃん達に連絡してみよう。
「それより、千歌達は大丈夫でしょうか・・・帰り際も意気消沈していましたが・・・」
「・・・大丈夫、とは言えないかな」
とはいえ、今はどんなに励ましても意味が無いと思う。まだ自分達の中で現実を受け止めきれていない以上、他の人の言葉に耳を傾けることなど出来ないだろう。
まずは一晩、自分達の中で今回の結果とじっくり向き合ってもらおう。話はそれからだ。
「明日、これからのことについて皆と話してみるよ。とりあえず今日は、考える時間をあげた方が良いと思う」
「そうでしょうか・・・」
心配そうな表情の海未ちゃん。恐らく、先ほどの千歌さんの様子が頭をよぎっているんだろう。
曜さんは千歌さんの反骨心を煽る為に、よく『じゃあやめる?』というセリフを口にする。そうすると負けず嫌いな千歌さんは、『やめない!』と宣言してより一層やる気を出すのだ。
ところが今回、曜さんに『やめる?』と聞かれた千歌さんは何も答えなかった。つまり今、千歌さんの心は折れそうになっているということだ。
海未ちゃんとしては、そこが心配なところなんだと思う。
「このまま『やめる』と言い出したら・・・」
「その時はツバサちゃんも言ってたけど、『その程度の覚悟だった』ってことだよ」
肩をすくめる俺。
「でも・・・折れないよ。あの人は」
「・・・そうですね。私も信じます」
そんな会話をしていた時だった。
「私は諦めないッ!」
誰かの叫ぶ声が聞こえた。この声って・・・
「必ず取り戻すのッ!あの時をッ!」
小原理事長が涙を流しながら叫んでいるのが見えた。隣にはダイヤさんが立っている。
そして・・・果南さんが二人に背を向けて、その場を立ち去るところだった。
「・・・あんまり見ちゃいけない場面に遭遇しちゃったね」
「・・・そのようですね」
二人揃って溜め息をつく。こっちはこっちで大変そうだなぁ・・・
「どうします?見なかったことにしますか?」
「・・・海未ちゃんも人が悪いよね」
恨みのこもった眼差しを向ける俺。
「俺がそういうこと出来ない性格だって、分かってて聞くんだもん」
「・・・今回に関しては、本当に見なかったことにしてほしいと思ってますよ」
苦い表情の海未ちゃん。
「天がどう思っているのかは分かりませんが・・・私は小原理事長を許していませんので。後の二人には申し訳ないですが、彼女をフォローする気が一切起きません」
「海未ちゃんもなかなか言うようになったねぇ・・・」
苦笑する俺。
「悪いけど、俺は果南さんの後を追いかけるよ。海未ちゃんは・・・どうする?」
「・・・人が悪いのは天も一緒じゃないですか」
呆れている海未ちゃん。
「天にそんな聞かれ方をして、『では先に帰ります』なんて言えるわけないでしょう。人の性格を分かってて聞くのは止めて下さい」
「海未ちゃん、俺のこと好きだもんね」
「大好きですけど。それが何か?」
「恥ずかしがったりしないのね・・・」
今度は俺が呆れる番だった。逆にこっちが恥ずかしくなるんだけど・・・
「では私は、ダイヤと小原理事長のところへ行ってきます。先ほども言いましたが、フォローするつもりは一切ありませんからね」
「何を言うかは任せるよ。海未ちゃんなら大丈夫だろうし」
「ずいぶん信じてくれるじゃないですか」
「いつだって信じてるよ。海未ちゃんのこと大好きだもん」
「っ・・・ホントに人が悪いですね・・・」
そう言いながらも、頬を赤く染める海未ちゃん。
俺は小さく笑うと、果南さんの後を追いかけるのだった。
*****
《果南視点》
「・・・ハァ」
歩きながら溜め息をつく私。
「諦めない、か・・・」
キッカケはダイヤからの電話だった。妹のルビィちゃんが東京から帰ってきたらしいのだが、家に着いてダイヤの顔を見た瞬間に泣き出してしまったのだという。
どうやらAqoursは、イベントで思うような結果を残すことが出来なかったらしい。だから私はダイヤと・・・鞠莉を呼び出した。
鞠莉は浦の星の統廃合を阻止する為に、Aqoursを利用しようとしている。それを止めさせないと、千歌達が傷つくことになると思ったから。
だけど・・・
「・・・それだけじゃ、ないんだよね」
鞠莉がAqoursを応援する理由・・・それは・・・
「こんばんはのハグっ!」
「うわっ!?」
誰かがいきなり背後から抱きついてくる。この声は・・・
「そ、天っ!?」
「こんばんは。果南さん」
笑みを浮かべている天。ど、どうしてここに・・・?
「海未ちゃんと散歩してたら、果南さん達のシリアスな場面に遭遇したので追いかけてきたってところです」
「心の声を読んで答えるの止めてくれない?」
「果南さんは海未ちゃんと一緒で、すぐ顔に出るから分かりやすいんですよ」
笑っている天。本当にこの子は・・・
「・・・それで?私を慰めに来てくれたってわけ?」
「甘えんなハグ魔」
「まさかのトドメを刺しに来たの!?」
「冗談ですよ」
天は苦笑すると私から離れ、申し訳なさそうな表情になる。
「・・・俺が果南さんのところに来たのは、謝罪する為です」
「謝罪・・・?」
「えぇ。東京のイベントでのことは、既に聞いてるんでしょう?だからダイヤさんや小原理事長と、今後のAqoursについての話をしてたんじゃないですか?」
「・・・鋭いね」
ダイヤも言っていたが、こういうことに関しての天の察しの良さは尋常じゃない。まるで全てを見透かされているようだ。
「果南さん、言ってましたよね。千歌さん達には笑顔で帰ってきてほしいって。でも俺は、それを叶えることが出来ませんでした」
悲しそうに笑う天。
「いえ、それ以前に・・・イベントで結果が残せないことは、初めから分かっていました。今のAqoursには、それだけの実力がないということも・・・にも関わらず、俺はそれを果南さんには伝えなかった・・・何も言い訳出来ません」
「天・・・」
「結果としてAqoursはショックを受け、笑顔で内浦に帰ってくることは出来ませんでした。そしてそれが原因で、果南さんは小原理事長と喧嘩になってしまった・・・全て俺の責任です」
天はそう言うと、私に向かって深々と頭を下げた。
「すみませんでした」
「・・・止めてよ」
首を横に振る私。
「鞠莉との喧嘩は私達の問題なんだから。天のせいじゃないよ。それに・・・私だって分かってたよ。千歌達が結果を残せないだろうってことは」
これでも二年前、イベントに参加して周りのレベルの高さを実感した身だ。ライブやPVはチェックしていたけど・・・千歌達の今のレベルは、二年前の私達と大して変わらないと思う。
それを分かっていながら、私は天に身勝手なお願いをしたのだ。
「私達は歌えなかったけど・・・千歌達はちゃんとパフォーマンス出来たんでしょ?それはきっと、天が側にいてくれたからだと思う。それだけで十分役目を果たしてくれたんだから、天は謝る必要なんかないんだよ」
あのお願いをした時、天は最初頷いてくれなかった。それはきっと、東京に行きたくないからだろうと思っていたけど・・・それだけじゃなかったんだと思う。
千歌達が結果を残せないことが分かってたからこそ、簡単に頷くことが出来なかったんだろう。
「・・・私の方こそゴメン。嫌な思いさせちゃったね」
天に頭を上げさせ、正面から抱き締める。
「千歌達を支えてくれてありがとう。それだけで十分だよ」
「果南さん・・・」
私に身を委ねてくれる天。
さっきまで心の中がグチャグチャだったのに、天とこうして触れ合っていると心が落ち着いてくる。
「ねぇ、天・・・千歌達は大丈夫かな・・・?」
「・・・心配ですか?」
「そりゃあね・・・心配にもなるよ」
鞠莉が利用しようとしているのは気に食わないし、これ以上傷ついてほしくないとも思うけど・・・
やっぱり千歌達には、スクールアイドルを続けてほしい。歌って踊るあの子達は、本当に楽しそうで・・・キラキラしてるから。
「もし今回のことで、スクールアイドルをやめることになったら・・・」
「ストップ」
「っ・・・」
私の唇に、天の人差し指が触れた。
「そういうネガティブな発言は、果南さんらしくないですよ。果南さんの長所はポジティブなところでしょうに・・・あっ、おっぱいが大きいところもですね」
「ちょ、だからそれセクハラ発言だってば!?」
「否定しないところを見ると、自分でも大きいって思ってるんですね」
「いや、まぁ少しは・・・って何を言わせるの!?」
うぅ、天ってばエッチなんだから・・・
天はひとしきり笑うと、優しく微笑んだ。
「・・・千歌さんと曜さんのことは、幼馴染の果南さんがよく分かってるでしょう?梨子さんも善子も、花丸もルビィも・・・そんなに柔な人達じゃないですよ。少しは信じてあげて下さい」
「・・・そうだよね」
心配するあまり、あの子達を信じてあげられてなかった・・・それじゃダメだよね・・・
「もう遅いですから、家まで送りますよ。行きましょう?」
「・・・うん。ありがと」
差し出された天の手を握る。触れた手の温もりに、少し胸が高鳴る私なのだった。
*****
《ダイヤ視点》
「果南・・・」
涙を流しながら、果南さんの去っていった方を見つめる鞠莉さん。私はそんな鞠莉さんに、何も言葉をかけられずにいました。
鞠莉さんは浦の星の統廃合を阻止する為、Aqoursを利用しようとしています。ですが、それだけではありませんでした。
鞠莉さんの真の目的は・・・
「ダイヤや松浦さんと、もう一度スクールアイドルをやること・・・」
「「っ!?」」
驚く私達。海未先生が、冷たい表情で立っていました。
「それが貴女の目的なのでしょう?小原理事長」
「ど、どうしてそれを・・・」
「貴女方が二年前にスクールアイドルをやっていたことは、赤城先生から聞いていました。何らかの理由で解散し、直後に貴女が留学したことも知っています。その事実を聞いた時、ピンときましたよ」
冷たい眼差しを向ける海未先生。
「何故留学から戻ってきたのか、何故スクールアイドル部を応援するのか・・・何故天を脅して、マネージャーをやらせているのか」
「っ・・・」
凛とした佇まいから放たれる威圧感に、私は言葉を発することが出来ませんでした。鞠莉さんも固まってしまっています。
「二年前の解散は、貴女にとっては不本意なものだったのでしょう?受け入れざるをえなかったものの、貴女は納得などしていなかった。そして二年後・・・浦の星の統廃合の話が進んだことを知った貴女は、浦の星に戻ることを決めた」
淡々と語る海未先生。
「まずは浦の星の統廃合を阻止すべく、音ノ木坂の南理事長に相談した。その際に共学化のテスト生として天を推薦され、天を利用することに決めた。恐らく最初は、自分達のマネージャーをやらせるつもりだったのでしょう?」
「っ・・・」
何も言うことが出来ない鞠莉さん。
どうやら海未先生の仰っていることは、概ね間違いなさそうですわね・・・
「ですが、貴女も分かっていたはずです。またスクールアイドルをやろうと言ったところで、ダイヤや松浦さんが簡単には頷かないだろうということを。そんな時、スクールアイドル部を立ち上げようとしている後輩がいることを知った貴女は方針を変えた。三人で再び始めるのではなく、後輩が作るであろうグループに便乗してしまおうと」
冷ややかな目で鞠莉さんを見る海未先生。
「先にグループを作ってもらえれば、理事長として力を貸すことが可能になります。浦の星の統廃合を阻止する為に利用することも出来ますし、ダイヤと松浦さんを説得する時間だって稼ぐことが出来る・・・だから貴女は、千歌達のマネージャーをやるように天を脅したのでしょう?」
「・・・鋭いわね」
「少し考えれば、誰にでも分かることです」
溜め息をつく海未先生。
「私が気付いているのですから、当然天だって分かっています。それなのにあの子は、ダイヤや松浦さんと距離を縮めようとする貴女の背中を押すようなことまでして・・・お人好しにも程があります」
そう語る海未先生は呆れた様子でしたが・・・その中にどこか、誇らしげな感じが混ざっているように思えました。
「恐らく天は、貴女のことをそこまで恨んではいないでしょう。貴女から受けた仕打ちを許してはいないでしょうが、理由を察して理解はしているはずです。もっとも・・・私は未だに怒りが収まりませんけどね」
鞠莉さんを鋭く睨みつける海未先生。
「天を傷つけた貴女を、私は許すことが出来ません」
「・・・本当に天を大切に想っているのね」
「当然です」
言い切る海未先生。
海未先生は、どうしてそこまで天さんのことを・・・エリーチカの弟だから、という理由では説明がつきませんわね・・・
「他のμ'sのメンバーも、私と同じことを言うでしょう。天の意向で、貴女のしでかしたことは他のμ'sのメンバーに伝えていませんが・・・もし事実を知れば、すぐにでも浦の星に乗り込んでくるでしょうね。私達にとって、貴女は決して許すことの出来ない存在なんですよ」
「そんなこと分かってるわよッ!」
耐え切れなくなったのか、鞠莉さんが叫びました。
「μ'sのメンバーがどれほど天を大切に想っているかなんて、絵里を知ってる私が分からないはずないでしょ!?私がやってしまったことの重さもッ!どれほど天を傷つけてしまったのかもッ!十分すぎるほど感じてるわよッ!」
その瞬間、乾いた音が鳴り響きました。海未先生が鞠莉さんの頬を引っ叩いたのです。
「・・・ふざけないで下さい」
海未先生の眼差しは・・・これ以上ないほど、冷たく鋭いものになっていました。
嫌でも分かります。海未先生は今・・・ブチギレているということが。
「μ'sのメンバーが、どれほど天を大切に想っているかが分かる?そんなはずないでしょう。天と十年近く会っていなかった貴女が、私達が共に過ごしてきた時間を知るはずがないのですから」
鞠莉さんの胸倉を掴む海未先生。
「やってしまったことの重さを感じている?だとしたら勘違いも甚だしいですね。貴女が想像してる以上に、天は傷ついていますよ」
「う、海未先生っ!それ以上はダメですっ!」
拳を握り締めた海未先生を見て、慌てて二人の間に入る私。
海未先生は溜め息をつくと、鞠莉さんから手を離しました。
「・・・ダイヤがいてくれて助かりました。危うく本気で殴るところでしたね」
海未先生の言葉にゾッとする私。海未先生は再び鞠莉さんに視線を向けます。
「貴女にとって、ダイヤや松浦さんと過ごす時間がどれほど大切だったのか・・・私は貴女ではないので分かりません。ですが・・・少しだけ理解は出来ていると思います。私にも思うところがありますので」
海未先生はそう言うと、くるりと踵を返しました。
「だからこそ忠告しておきますが・・・もう少し方法を考えなさい。貴女だって天のことを、大切に想っているのでしょう?その天を傷つけて、仮に大切な時間を取り戻すことが出来たとして・・・貴女は心の底から喜ぶことが出来るのですか?」
「っ・・・」
俯く鞠莉さん。目からは次々と涙が零れ落ちます。
そんな鞠莉さんに背中を向けたまま、静かにその場を立ち去る海未先生なのでした。
どうも〜、ムッティです。
今回の話は、いつもより少し長めです。
ちょうど良い感じに区切れなかったぜ・・・
ちなみに次の話で、アニメ一期第八話の内容が終了します。
いよいよアニメ一期第九話、三年生編へと入っていくわけですね。
ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんの運命やいかに・・・
そして天と鞠莉ちゃんは和解出来るのか・・・
絶賛執筆中ですので、お楽しみに(・∀・)ノ
次の話は明日投稿します。
それではまた次回!以上、ムッティでした!