絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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あ、ありのまま今起こったことを話すぜ・・・

昨日俺は☆評価を付けてくれた人の数が40人だと思っていたが、今日見たらいつの間にか50人になっていた・・・

何を言っているのか分からないと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった・・・

嬉しすぎて頭がどうにかなりそうだった・・・

半分の人が☆10の最高評価だとか、9割以上の人が☆8以上の高評価だとか、本来俺が受け取っていい評価じゃ断じてない・・・

身に余る光栄を味わったぜ・・・



皆様、本当にありがとうございます。


心からの懇願は相手の心を揺さぶる。

 『えぇっ!?じゃあことりさんと真姫さん、にこさんとも会ってたの!?』

 

 「まぁね」

 

 『ずるいずるいずるいっ!私だって天と会いたかったのにぃっ!』

 

 電話越しに、悔しがっている女性の声が聞こえる。苦笑する俺。

 

 「仕方ないでしょ。亜里姉は東京にいなかったんだから」

 

 『うぅ、やっぱり旅行はキャンセルすればよかった・・・』

 

 「でも楽しかったんでしょ?」

 

 『楽しかった!』

 

 俺の問いに声を弾ませる女性・・・絢瀬亜里沙。俺のもう一人の姉であり、キャンパスライフを絶賛満喫中の大学二年生だ。

 

 俺が先週東京に行った時は、旅行に行っていた為に会うことが出来なかった。その旅行先でのお土産を送ってくれた為、近況報告も兼ねて俺の方から電話したのだ。

 

 「それなら良かった。雪穂ちゃんは元気?」

 

 『元気だけど、相変わらず真面目だよ。熱心に勉強するのもいいけど、もっとキャンパスライフを満喫すべきだと思うんだよね』

 

 「姉がちゃんらんぽらんだと、妹はしっかり者になるんだよ」

 

 『今サラッと穂乃果さんをディスらなかった!?』

 

 「同じようなちゃらんぽらんの姉がいる身として、雪穂ちゃんの気持ちはよく分かるわ」

 

 『私までディスられた!?』

 

 「まぁお土産を送ってくれたから、『ちゃらんぽらん』から『頭のネジが外れた子』に格上げしてあげるね」

 

 『それ格上げなの!?むしろ下がってない!?』

 

 亜里姉のツッコミ。

 

 雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの妹で、亜里姉にとって一番の親友だ。亜里姉と雪穂ちゃんは同じ大学に通っており、今回の旅行も二人で行ってきたらしい。

 

 「雪穂ちゃんにも連絡しないとね。雪穂ちゃんからもお土産送ってもらっちゃったし」

 

 『そうしてあげて。雪穂、天のこと凄く心配してたから』

 

 俺も雪穂ちゃんとは仲良くさせてもらっており、何かとお世話にもなっていた。

 

 内浦へ行くことが決まった時には、『母親かっ!』とツッコミを入れたくなるほど心配されたものである。

 

 「了解。後で連絡しとくよ」

 

 『よろしくね。それから・・・お姉ちゃんのことなんだけど』

 

 少し言い辛そうな亜里姉。

 

 俺に気を遣うくらいなら、絵里姉の話題なんて出さなきゃいいのに・・・

 

 「・・・元気にやってるの?」

 

 『・・・何だか最近、無理してるような気がして』

 

 亜里姉の声が暗くなる。

 

 『いつも通りに振舞ってはいるんだけど、少し元気が無いっていうか・・・疲れてるんじゃないかなって思うんだよね』

 

 「仕事が大変なんじゃないかな。社会人一年目で、慣れないことも多いだろうし」

 

 『・・・それだけじゃないって、天も分かるでしょ?』

 

 溜め息をつく亜里姉。

 

 『天がいなくなってから、お姉ちゃんはあまり笑わなくなっちゃってさ・・・雰囲気も少し暗くなったし、自分から話をすることも減っちゃって・・・その分、凄く仕事に打ち込んでるみたいだけど』

 

 絵里姉は大学を卒業後、公務員として区役所で勤務している。

 

 実に堅実で絵里姉らしいが、今の亜里姉の話だとまるで・・・

 

 『・・・μ'sに入る前のお姉ちゃんみたい、でしょ?』

 

 「っ・・・」

 

 読まれていたらしい。

 

 周りに心を開くことが出来ず、信頼出来る友達が希ちゃんしかいなかった頃・・・音ノ木坂が統廃合の危機に陥り、生徒会長としての責任感だけで行動していた頃・・・

 

 話を聞くかぎり、今の絵里姉はあの頃の絵里姉と似ているかもしれない。

 

 『・・・ねぇ、天』

 

 いつになく真面目で、それでいて切実な声で俺の名前を呼ぶ亜里姉。

 

 『天がどんな思いでテスト生の話を受けたのか、私には分からないけど・・・私は天に帰ってきてほしい。いつまでも三人で暮らすことは出来ないかもしれないけど、今はまだ三人で暮らしていたい。お姉ちゃんだってそれを望んだから、テスト生の話を受けることに反対したんだよ?』

 

 「・・・分かってるよ」

 

 呟く俺。

 

 「それでも、俺は・・・」

 

 『お願い、天・・・』

 

 涙声になる亜里姉。

 

 『天がいない生活は、私も寂しいんだよ・・・帰ってきてよ、天・・・』

 

 「・・・ゴメン、亜里姉」

 

 いたたまれなくなり、電話を切る俺。亜里姉の涙声が、耳から離れない。

 

 「天ー?」

 

 ちょうどその時、お風呂から上がった海未ちゃんがリビングに入ってきた。

 

 「先にお風呂をいただき・・・どうしたんですか?」

 

 暗い表情を浮かべる俺に気付き、心配そうに声をかけてくれる海未ちゃん。俺は海未ちゃんに視線を向けた。

 

 「・・・ねぇ、海未ちゃん。最後に絵里姉と会った時、どんな様子だった?」

 

 「どんな様子、とは?」

 

 「いつもより元気が無かったとか、疲れた様子だったとか・・・」

 

 「・・・亜里沙から聞いたんですね」

 

 溜め息をつく海未ちゃん。

 

 「天がいなくなってから、絵里が心配で何度か家にお邪魔しましたが・・・元気は無かったですね。いつも通りに振舞ってはいましたが、少し無理をしているという印象を受けました。特に最後に会った時は、疲労の色が見えたように思います」

 

 「・・・そっか」

 

 「・・・黙っていてすみませんでした」

 

 「海未ちゃんが謝る必要なんて無いよ。俺の方こそ、気を遣わせちゃってゴメンね」

 

 海未ちゃんに謝る俺。俺がこのことを知れば、『俺のせいでそうなった』と罪悪感を感じてしまうと思ったんだろう。

 

 絵里姉も知られたくないから隠そうとしたんだろうし、そんな絵里姉の気持ちも汲んでくれたんだと思う。

 

 「・・・亜里沙は、何と?」

 

 「・・・帰ってきてほしいって」

 

 「・・・どうするんですか?」

 

 「・・・どうしようかね」

 

 力なく椅子に体重を預ける俺。

 

 「Aqoursのことが心配ですか?」

 

 「それもある。俺がマネージャーを辞めたら、小原理事長が何をするか分からないし」

 

 「・・・あの女ですか」

 

 忌々しそうな表情の海未ちゃん。

 

 俺が言えることでもないけど、海未ちゃんってホント小原理事長が嫌いだよね・・・

 

 「まぁ、それを差し置いても・・・やらなきゃいけないことがあるから」

 

 「マネージャーとしての、最低限の責務というやつですね」

 

 「・・・それだけじゃないけどね」

 

 「え・・・?」

 

 首を傾げる海未ちゃん。まぁ、今はそれも置いといて・・・

 

 「絵里姉と喧嘩して、亜里姉を悲しませて・・・我ながら最低の弟だね、俺は」

 

 「天・・・」

 

 「あぁ、ゴメン・・・お風呂入ってくるね」

 

 これ以上海未ちゃんを暗い気持ちにさせないよう、椅子から立ち上がりリビングを出ようとすると・・・

 

 後ろから海未ちゃんに抱き締められた。

 

 「海未ちゃん・・・?」

 

 「・・・私は天に戻ってきてほしくて、浦の星に教育実習生としてやってきました。その気持ちは今も変わりません」

 

 俺を抱き締める腕に、ギュっと力を込める海未ちゃん。

 

 「ですが・・・後悔はしてほしくありません。内浦にやって来たことも、浦の星に入学したことも・・・Aqoursの皆と楽しそうに過ごす天を見て、私はそう思いました」

 

 「海未ちゃん・・・」

 

 「天が自分自身で選んだ道じゃないですか。だったら何があっても、前を向いて歩かないとダメでしょう。後ろばかり見て歩いているようでは、それこそ絵里や亜里沙に怒られてしまいますよ」

 

 「・・・そうだよね」

 

 海未ちゃんの言う通りだ。

 

 これは俺自身が選んだ道・・・絵里姉や亜里姉に反対されても、俺はこの道を選んだのだ。

 

 だったら、後ろを向いてちゃいけないよな・・・

 

 「・・・ありがとね、海未ちゃん」

 

 身体に回されている海未ちゃんの腕に、そっと手を置く俺なのだった。




どうも〜、ムッティです。

さて、前書きでは長々とポルナレフさんのセリフをパクっておりますが(笑)

改めて皆様、本当にありがとうございます。

身に余る光栄で大変恐縮ではありますが、本当に嬉しく思います。

これからも『絢瀬天と九人の物語』をよろしくお願い致します。



さて、今回からアニメ一期第九話の内容へと入っていきます。

まぁ今回は、天と亜里沙の会話で終わってしまっているのですが・・・

亜里沙から『帰ってきてほしい』と懇願された天・・・

姉の願いに、天はどのような決断を下すのか・・・

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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