絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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映画『HELLO WORLD』を観てきました。

一行さんが可愛すぎて辛い(´・ω・`)


人を想っての行動が人を苦しめることもある。

 日曜日・・・

 

 「んー、美味しい!」

 

 ダイビングショップのアルバイトを終えた俺は、松浦家で夕食をご馳走になっていた。

 

 「流石は西華さん、やっぱり料理上手ですね」

 

 「フフッ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

 

 笑っている女性・・・松浦西華さん。果南さんのお母さんである。

 

 「最近は夕飯を食べに来てくれなかったもんだから、少し寂しかったんだぞ?」

 

 「すいません。同居人を一人にするのも可哀想なので」

 

 ちなみにその同居人は、今日も麻衣先生や翔子先生と一緒に食事に行っている。まぁ教育実習も来週で終わるし、それまで『ガンガン呑みに行こう』みたいなノリなんだろう。

 

 俺も誘われたが、久しぶりに西華さんの手料理が食べたかったので遠慮しておいた。

 

 「全く、お母さんったら張り切っちゃって・・・」

 

 溜め息をつく果南さん。

 

 「天が来る時だけ、いつも夕飯が豪勢なんだよね・・・」

 

 「そりゃそうさ」

 

 笑顔で答える西華さん。

 

 「何と言っても、アタシの息子になるかもしれない男だからね」

 

 「ぶふぅぅぅぅぅっ!?」

 

 飲んでいたお茶を盛大に吹き出す果南さん。

 

 「ゲホッ・・・ゴホッ・・・い、いきなり何言ってんの!?」

 

 「いや、だって天は果南の旦那候補だろう?もしアンタ達が結婚したら、天はアタシの息子になるじゃないか」

 

 「け、結婚っ!?」

 

 果南さんの顔が真っ赤になる。

 

 「な、何でそんな話になってるの!?」

 

 「アンタがハグする男なんて、天しかいないじゃないか。お父さんだって、『天だったら果南を嫁にやってもいい』って言ってたし」

 

 「あ、あの人は・・・また勝手なことを・・・!」

 

 あっ、果南さんが怒った・・・

 

 果南さんのお父さん、絶対タダでは済まないな・・・

 

 「天、果南を嫁にもらう気は無いかい?我が娘ながら、果南はとても魅力のある女だと私は思うんだけど?」

 

 「ちょ、お母さん!?」

 

 「確かに、果南さんとの結婚は魅力的ですね」

 

 「そ、天・・・恥ずかしいよ・・・」

 

 「果南さんと結婚したら西華さんが義理のお母さんになるわけですし、いつでもこの美味しい手料理を食べられますもんね」

 

 「そっち!?私の魅力じゃないじゃん!?」

 

 「誰も果南さんが魅力的なんて言ってませんよ。果南さんとの結婚が魅力的だって言ったじゃないですか」

 

 「っ!天のバカっ!」

 

 ぷいっとそっぽを向いてしまう果南さん。

 

 おぉ、いつもはお姉さんな果南さんが子供っぽい・・・何か新鮮だなぁ・・・

 

 「ちょっと天、アンタの嫁が不機嫌になっちゃったじゃないか」

 

 「サラッと嫁発言するの止めてくれません?」

 

 こうやって外堀って埋められていくんだね・・・

 

 とまぁ、それはさておき・・・

 

 「まぁ真面目に答えると、果南さんはとても魅力的な女性だと俺も思いますよ。美人でスタイル抜群なのは勿論のこと、性格も良いですし。元気で明るくて、それでいて優しくて・・・果南さんと結婚できる男は、間違いなく幸せ者ですね」

 

 「っ・・・」

 

 そっぽを向いたままの果南さんだが、耳が真っ赤になっていた。

 

 そんな様子を、ニヤニヤしながら眺めている西華さん。

 

 「ほほう、つまり天は果南に不満は無いと?」

 

 「あるわけないでしょう。でも、果南さんには選ぶ権利がありますから。っていうか選びたい放題でしょうから、俺なんかよりもっと良い人がいると思いますけど」

 

 「って天は言ってるけど、果南的にはどうなんだい?」

 

 「・・・ノーコメントで」

 

 「えー?天はこんなにぶっちゃけたのにー?」

 

 「う、うるさいなぁ!いいでしょ別に!」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶ果南さん。

 

 「ただ、その・・・天は自分を卑下し過ぎじゃないかな。天は十分良い男だと・・・私は思うよ?」

 

 「何この人可愛いんですけど」

 

 「ちょ、急にハグしてこないでよ!?」

 

 思わず果南さんにハグしてしまう俺。

 

 恥ずかしそうにモジモジしながらそんなことを言われたら、誰だってこうしたくなるだろう。

 

 「フフッ・・・やっぱりお似合いだよ、アンタ達」

 

 笑っている西華さん。

 

 「さてと・・・邪魔者は一時退散して、ちょっと食後のデザートを作ってくるよ。それまで二人でイチャイチャしてな」

 

 「よ、余計な気を回さなくて良いから!」

 

 果南さんの抗議もどこ吹く風で、西華さんはキッチンへ行ってしまった。

 

 後に残されたのは顔を真っ赤にしている果南さんと、そんな果南さんにハグしている俺だけだ。

 

 「・・・さて、ご飯食べよ」

 

 「嘘でしょ!?今までのやり取りは何だったの!?」

 

 「え、イチャイチャしたかったんですか?」

 

 「そ、そんなわけないじゃんっ!もう知らないっ!」

 

 再びプイッと顔を背けてしまう果南さん。

 

 感情の起伏が激しいなぁ・・・

 

 「ところで果南さん、明日から復学するらしいですね」

 

 「えっ、何で知ってるの!?」

 

 「麻衣先生と翔子先生に教えてもらいましたけど」

 

 「ちょっと待って!?いつの間に名前で呼ぶほど親しくなったの!?」

 

 「・・・色々あったんですよ。色々」

 

 この間の呑み会は二人とも酔い潰れて、結局ウチに泊まっていったもんな・・・

 

 生徒の家で酔い潰れて泊まっていく教師・・・色々ヤバくね?

 

 「それより復学の件ですけど、前もって教えといて下さいよ」

 

 「アハハ、ゴメンゴメン。ビックリさせようと思ってさぁ」

 

 笑っている果南さん。

 

 「天や皆の驚いた顔が見たかったのに、まさか既にネタバレされてたとはねぇ」

 

 「ダイヤさんには言ってあるんですか?」

 

 「うん。っていうか、ダイヤにしか言ってないんだけどね」

 

 「小原理事長にも言ってないんですか?」

 

 「・・・理事長なんだし、言わなくても分かるでしょ」

 

 声のトーンが落ちる果南さん。

 

 「この間、ちょっと顔を合わせる機会があってね。復学について話をしたんだけど、もう知ってたよ。流石は理事長だよね」

 

 すいません、実はその現場にいました・・・とは言わなかった。

 

 その現場にいて会話を聞いた上で、あえてこの質問をしたからな。

 

 「・・・言わなくても分かる、ですか」

 

 「天・・・?」

 

 首を傾げる果南さんに、俺は一言だけ言っておくことにした。

 

 「前にダイヤさんにも言ったんですけど・・・言葉にしなくても分かるだなんて、そんなのはただの甘えですよ」

 

 「っ・・・」

 

 「・・・まぁ部外者である俺が踏み込むのも野暮ですから、これ以上は何も言いませんけどね」

 

 それだけ言い、黙々とご飯を食べ進める俺。

 

 果南さんはしばらく黙っていたが、やがてポツリと呟いた。

 

 「私は・・・間違ってたのかな・・・」

 

 「・・・どうでしょうね」

 

 俺には果南さんを批判する権利は無いし、そもそもこの件に関しては何が正解だったのか明言出来ない。

 

 何故なら・・・

 

 「果南さんの行動は全て・・・小原理事長を想ってのことだったんでしょう?それに対して、俺は『間違いだった』とは言いたくありません」

 

 「っ!?」

 

 息を呑む果南さん。どうやら、俺が知っているとは思わなかったらしい。

 

 「ただ小原理事長も、半端な覚悟で浦の星に戻ってきたわけではないと思います。そんな彼女の気持ちを受け入れるのか、それとも突き放すのか・・・それはもう一度考えてあげて下さい。小原理事長の為にも・・・果南さんの為にも」

 

 俺の言葉に、何も返すことが出来ない果南さんなのだった。




どうも〜、ムッティです。

今回は果南ちゃんのお母さんが出てきましたね。

アニメには登場しなかったので、個人的なイメージで描いてしまった・・・

イメージ的には、ポケモンサンムーンのライチさんみたいな感じですかね。

方角の入った名前って案外難しくて、『西 名前 女の子』でググった結果が西華(さいか)でした。

どうやら、天と果南がくっつくことを期待しているご様子・・・

果たしてどうなるのか・・・

そして果南ちゃんと鞠莉ちゃん、二人の運命やいかに・・・

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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