絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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少しずつ気温も下がって、段々と過ごしやすくなってきた感じがする・・・

忌々しい夏よ、さらば。


雨降って地固まる。

 《鞠莉視点》

 

 「・・・ふぅ」

 

 天井を見上げ、深く息を吐く私。私はスクールアイドル部の部室で、ダイヤと二人で果南が来るのを待っていた。

 

 千歌っち達が気を遣ってくれて、ここを私達だけにしてくれたのだ。本当に良い後輩に恵まれたと思う。

 

 「果南さんは・・・来るでしょうか?」

 

 「来る」

 

 ダイヤの問いに、ハッキリと答える私。

 

 「私は天を信じるわ」

 

 頭の中に、先ほどの天の優しげな顔が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 『・・・最初からそう言えば良かったのに』

 

 

 

 

 

 本当にその通りだ。最初から天に事情を説明して協力をお願いしていたら、きっと天は力を貸してくれただろう。

 

 何せ自分を脅した、こんな最低な女の為に動いてくれる優しい人なのだから。

 

 「・・・謝らないとね」

 

 果南と仲直りすることが出来たら、ちゃんと天に謝ろう。

 

 『酷いことをしてごめんなさい』って。『また昔みたいに仲良くしてほしい』って。

 

 都合の良いことを言っている自覚はあるけど、それでも・・・私は天と一緒にいたいから。

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

 「っ・・・」

 

 部室のドアが開き、果南が入ってきた。覚悟を決めた表情をしている。

 

 「鞠莉・・・ダイヤもいたんだね」

 

 「果南・・・」

 

 「果南さん・・・」

 

 空気が張り詰める。緊張してしまい、なかなか口を開くことが出来ない。

 

 そんな中、一つ深呼吸をした果南は・・・私達に対して頭を下げた。

 

 「・・・ゴメン」

 

 「え・・・?」

 

 「果南・・・さん・・・?」

 

 呆気にとられてしまう私とダイヤ。

 

 あの果南が、私達に対して頭を下げて謝っている。

 

 「・・・私が悪かった」

 

 ゆっくりと頭を上げた果南は、ポツリポツリと語り始めた。

 

 「もう聞いたと思うけど・・・二年前、私は『歌えなかった』んじゃなくて『歌わなかった』の。鞠莉の足の怪我が悪化しないように、パフォーマンス中にアクシデントが起きないように・・・『歌わない』ことを選んだ」

 

 「果南・・・」

 

 「東京から帰ってきた後、鞠莉が翔子先生と留学の話をしてるのを聞いちゃったの。『自分はスクールアイドルだから』って断る鞠莉を見て・・・申し訳なくなっちゃって」

 

 俯く果南。

 

 「鞠莉は元々、スクールアイドルに興味無かったでしょ?それを私が強引に引き込んでさ・・・怪我させた上に留学まで断らせて、自分が本当に嫌になった。私は鞠莉から、未来の色々な可能性を奪ってるんだって」

 

 「そんなこと・・・」

 

 「だからダイヤに事情を話して、スクールアイドルをやめることにした。Aqoursを解散して、鞠莉を自由にしてあげないといけないって。あの時は、それが正しいんだって信じてた。でも・・・」

 

 果南の目に涙が溜まっていく。

 

 「私は・・・間違ってた。『鞠莉の為』だなんて言いながら、その鞠莉と何も話さずに勝手に動いて・・・結果として鞠莉を傷つけてた。鞠莉の為を思うなら、ちゃんと話をすべきだったのに・・・」

 

 「っ・・・」

 

 私も込み上げてくるものがあった。泣くまいと必死に堪える。

 

 「・・・天から聞いた。鞠莉は私が本当に『歌えなかった』と思って、凄く心配してくれてたんでしょ?それで留学の話を断ろうとしてたんだよね?」

 

 「・・・天の鋭さには敵わないわね」

 

 分かっているんだろうとは思っていたけど・・・本当に脱帽だわ。

 

 「私がちゃんと言葉にしてたら・・・」

 

 「Stop」

 

 なおも反省の言葉を続けようとする果南の口を、手で優しく塞いだ。

 

 「それは私も同じよ。二年前、自分の素直な気持ちを言葉にして伝えていたら・・・こんなことにはなっていなかったでしょうね」

 

 「鞠莉・・・」

 

 「・・・謝るのは私の方よ、果南。貴女に辛い思いをさせて、気を遣わせてしまったのは私のせい。だから・・・ごめんなさい」

 

 果南に対して頭を下げる。

 

 果南は驚いたような表情を見せた後・・・小さく笑った。

 

 「フフッ・・・あの鞠莉が頭を下げるなんてね」

 

 「それは果南も同じでしょう?私だってビックリしたわよ」

 

 「私達、お互いに頭を下げて謝ることなんてなかったもんね」

 

 「フフッ、確かに」

 

 私も笑みを浮かべる。と・・・

 

 「じゃあ、仲直りの証として・・・」

 

 両腕を広げる果南。

 

 「ハグ、しよ・・・?」

 

 笑っている果南。その目には・・・涙が滲んでいた。

 

 「っ・・・!」

 

 限界だった。

 

 勢いよく果南の胸に飛び込んだ私は、堪えきれずに声を上げて泣いた。私を受け止めてくれた果南も、子供のように泣きじゃくっている。

 

 二年の時を経て、ようやく・・・ようやく私達は、仲直りすることが出来たのだ。

 

 「・・・全く」

 

 抱き合いながら号泣する私達を、包み込むように抱き締めてくれるダイヤ。

 

 「お二人とも、子供みたいですわよ」

 

 「・・・そういうダイヤだって泣いてるじゃない」

 

 「・・・これは汗ですわ」

 

 苦しい言い訳だった。明らかに目が真っ赤になっている。

 

 「・・・ダイヤ、ゴメン」

 

 ダイヤにも謝る果南。

 

 「私のせいで、ダイヤにも辛い思いを・・・」

 

 「・・・ブッブー、ですわ」

 

 果南の口を塞ぐダイヤ。

 

 「私も果南さんに協力した身・・・いわば共犯ですわ。ですから、果南さんが謝ることなど無いのです」

 

 「ダイヤ・・・」

 

 「・・・ゴメンなさい、鞠莉さん。私も貴女に謝らなければいけませんわね」

 

 「・・・もう良いのよ、ダイヤ」

 

 首を横に振る私。

 

 「私の方こそゴメンなさい・・・ダイヤの気持ちも知らないで、苦しめるようなことばかりして・・・」

 

 「・・・良いのです」

 

 ダイヤの身体が震えている。

 

 「もう、良いのです・・・お二人が仲直りして下さっただけで・・・私は・・・私は、本当に嬉しいのですから・・・!」

 

 「ダイヤっ・・・」

 

 「っ・・・!」

 

 とめどなく涙が溢れてくる。私も果南もダイヤも、再び声を上げて泣き始めた。

 

 流した涙が、これまでのわだかまりを溶かしてくれるようだった。

 

 「・・・鞠莉、涙で顔がグチャグチャだよ?」

 

 「果南もでしょ。人のこと言えないじゃない」

 

 「おやめなさい。二人とも同じくらい酷い顔ですわよ」

 

 「いや、一番酷い顔してるのダイヤだから」

 

 「確かに」

 

 「ぴぎゃっ!?」

 

 思いっきり泣いて、少しだけスッキリした後・・・お互いのグチャグチャになった顔を見て、私達は笑い合った。

 

 こんなに泣いたのは、いつ以来かしら・・・

 

 「・・・またスクールアイドルやりましょ。失敗したままじゃ終われないもの」

 

 「・・・しょうがないなぁ。リベンジに付き合ってあげるよ」

 

 「そもそも果南さんが歌わなかったから失敗した件について」

 

 「ちょ、ダイヤ!?それを言っちゃう!?」

 

 「仕方ないので私もやりますわ。今こそ果南さんの敵討ちを果たしましょう」

 

 「勝手に殺さないでくれる!?私死んでないんだけど!?」

 

 「フフッ、決まりね♪」

 

 こうして私達は、新たな一歩を踏み出すのだった。




どうも〜、ムッティです。

季節が秋に移り変わりつつある中、早くも食欲が止まりません(笑)

『食欲の秋』とは言いますが、ちょっと早いような気が・・・

太らないように気を付けねば・・・

さて、遂に果南ちゃんと鞠莉ちゃんが仲直りしましたね。

ダイヤさんも含め、再びスクールアイドルをやることを決意しました。

しかし忘れてはならないのが、天の『マネージャーを辞める』発言・・・

果たしてどうなってしまうのか・・・

次の話は明日投稿します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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