来月公開される映画『フラグタイム』の主題歌として、伊藤美来さんと宮本侑芽さんがこの曲をカバーしてるんですよね。
改めて聴いてみて、やっぱり良い曲だなと思いました。
「・・・言い残した言葉はありますか?」
「すいませんでした」
海未ちゃんに土下座して謝る俺。
東京から家に帰ってきてまったりしていたら、帰宅した海未ちゃんが俺を見て怒りのオーラを出し始めてしまったのだ。
事情を説明したものの、海未ちゃんの怒りは収まらず今に至っている。
「どれほど心配したと思っているんですか?」
「心配かけてすいません」
「麻衣さんや学校に嘘をつくのが、どれほど大変だったと思ってるんですか?」
「迷惑かけてすいません」
「『すいません』しか言えないんですか貴方は」
「それしか言えなくてすいません」
海未ちゃんにガチで怒られるの、久しぶりだなぁ・・・
まぁ俺が悪いんだけども。
「全く・・・」
溜め息をつく海未ちゃん。
「・・・まぁ、天が何の理由も無くこんなことをするとは思っていませんでしたけど。せめて私には、ちゃんと理由を説明してほしかったです」
「返す言葉もございません」
まぁ確かに、海未ちゃんには説明しておくべきだったかもな・・・
「それで?曲作りは上手くいったんですか?」
「うん、真姫ちゃんが凄く良い曲を作ってくれたよ」
俺が思い描いていたもの・・・いや、それ以上の出来映えだった。
流石は真姫ちゃん、本当に頼りになるわ。
「あの歌詞にピッタリな曲調だし、花火大会にも合ってるんじゃないかな。きっと良いステージになると思うよ」
「・・・ずるいです」
「え・・・?」
「ずるいですっ!私も天や真姫と一緒に曲を作りたかったですぅ!μ'sの曲作りは、私達三人でやってたじゃないですかぁっ!」
「あー、そうだったねぇ・・・」
作詞が俺と海未ちゃんで、作曲が真姫ちゃん・・・μ'sの曲作りは、基本的にこの三人でやっていたのだ。
「私だけ除け者なんて酷いですっ!何で誘ってくれなかったんですか!?」
「いや、歌詞はもう出来上がってたからさぁ・・・」
「うぅ・・・」
涙目の海未ちゃん。
「そんなにすぐ歌詞が出来上がってたんですか?」
「まぁ、題材が題材だったからね」
「何を題材にしたんですか?」
「それは花火大会までのお楽しみ」
「そんなぁっ!?」
ガックリうなだれる海未ちゃんを見て、俺は思わず笑ってしまった。
「まぁ、本当に楽しみにしててよ。きっと良いステージになるからさ」
「・・・花火大会、間に合うんでしょうか?」
不安そうな海未ちゃん。
「天がマネージャーを辞めると宣言してから、皆もの凄く落ち込んでるんですよ?あれでは花火大会どころでは・・・」
「だから曲を作ったんだよ」
溜め息をつく俺。
「衣装は曜さんとルビィが先行して作り始めてたし、ダイヤさんが加わったことで三年生の分もすぐに出来上がるでしょ。振り付けやフォーメーションも果南さんや小原理事長がいるから、花丸と善子の負担は相当軽くなっただろうし。後は曲さえ出来てしまえば、花火大会には間に合うはず・・・だから俺と真姫ちゃんで作ったんだよ。今の千歌さんと梨子さんじゃ、すぐに作るのは難しいだろうから」
「・・・何だかんだ言って、Aqoursのことを考えていたんですね」
「当たり前でしょ。『もうマネージャー辞めるんで関係ありません』って思えるほど、浅い付き合いはしてないからね」
苦笑する俺。
「・・・Aqoursのマネージャーとして、中途半端には終わりたくないから。九人での初ステージを見届けて、正式にマネージャーは辞めるよ」
「・・・そうですか」
複雑そうな表情の海未ちゃん。
「・・・天がそう決めたのなら、私は何も言いません」
「・・・ありがと」
俺はゆっくり立ち上がると、海未ちゃんの頭を撫でた。
「あ、そうそう・・・花火大会、真姫ちゃんも来るって」
「ええええええええええっ!?」
今日一番の大声を上げる海未ちゃん。
「ちょ、何でですか!?」
「自分の作った曲がどんな形で披露されるのか、気になるから見たいんだってさ。真姫ちゃんにも見てほしいって思ってたから、ちょうど良かったよ」
「私とのデートはどうなるんですか!?」
「何でデートってことになってるのか、説明求む」
「男女が二人きりで出かけるんですよ!?これはもうデートでしょう!?」
「じゃあデートじゃないわ。男一人に女二人だもん」
「うわあああああん!?」
奥の部屋へと走っていく海未ちゃん。やれやれ・・・
「・・・これで良かったんだよな」
独り言を呟く。
「俺にとってμ'sは特別・・・『μ'sの一員として終わりたい』という気持ちは、あの頃からずっと変わってない」
だからこそ、亜里姉や雪穂ちゃんのお願いも断った。
それなのに・・・
「・・・何でモヤモヤしてんだろ」
Aqoursのマネージャーを辞めると宣言してから、皆の悲しそうな表情を見てから・・・どうにも心がスッキリしなかった。皆と過ごした日々を思い出しては、『これで良いんだろうか』という思いがよぎる。
「・・・これで良いんだ」
自分にそう言い聞かせていると、スマホに通知が届いた。
チェックしてみると、千歌さんからメッセージが届いていた。
『素敵な曲をありがとう!もし花火大会に来なかったら、志満姉にチクるからね!』
「・・・ハハッ、それは困るな」
思わず苦笑してしまう俺なのだった。
*****
《梨子視点》
「ひっぐ・・・えぐっ・・・」
「ちょっとダイヤ、泣きすぎだって・・・ぐすっ」
「果南も泣いてマース・・・うぅ・・・」
千歌ちゃんの部屋で泣いているダイヤさん・果南さん・鞠莉さん。
その理由は・・・
「良い曲だね、これ・・・」
「そりゃあこの人達も泣くわ・・・」
ルビィちゃんと善子ちゃんがしみじみと呟く。
私達は今、天くんと西木野真姫さんが作ってくれた曲を聴いていた。本当に良い曲だし、特に天くんが書いたこの歌詞・・・
ダイヤさん達にとっては、心に沁みるものだと思う。
「これ、西木野さんの歌声だよね?凄く良い・・・」
「引き込まれるずらぁ・・・」
聴き入っている曜ちゃんと花丸ちゃん。
確かに、西木野さんの歌声は素晴らしいものだった。流石はμ'sの作曲担当、作る音楽も歌声も素敵だわ・・・
「花火大会は、この曲でいこうと思う」
千歌ちゃんが真剣な表情で話を切り出す。
「天くんが私達の為に動いてくれて、こんな素敵な曲を作ってくれたんだもん。私達に出来るのは、この曲にふさわしいパフォーマンスをすることじゃないかな」
「千歌ちゃん・・・」
今の千歌ちゃんには、落ち込んだり迷ったりしているような感じは一切ない。覚悟を決めた顔をしていた。
「賛成であります!」
「マルもずら!」
「頑張ルビィ!」
「ククッ、このヨハネにも異論は無い」
次々に賛成する皆。
千歌ちゃんは笑顔で頷くと、三年生達の方を見る。
「果南ちゃん、ダイヤさん、鞠莉さん・・・力を貸してくれる?」
「当然でしょ」
涙を拭う果南さん。
「もう私達はAqoursの一員なんだから。ね、二人とも?」
「勿論ですわ。良いステージにする為に、私達も全力を尽くしましょう」
「Yes!久々のステージ、ワクワクするわね!」
ダイヤさんと鞠莉さんも笑顔で頷いてくれる。
スクールアイドルとしての経験がある人達がいてくれると、本当に頼もしいわね・・・
「曜さん、ルビィ、衣装の方はどうなっていますの?」
「私達の分はほとんど出来てます。後はダイヤさん達の分ですね」
「私もお手伝いします。三人で分担してやりましょう」
「それならすぐ仕上がりそうだね!」
「花丸ちゃん、善子ちゃん、振り付けとフォーメーションどうする?」
「ヨハネよ。振り付けは私とずら丸で、『こういう感じにしよう』っていう大まかな方向性は考えてるわ」
「じゃあ私と果南で、フォーメーションを考えようかしら。後でお互いの出来上がったものを見て、すり合わせていきましょう」
「了解ずら!」
それぞれ話し合いが進んでいく。これなら花火大会に間に合いそうだ。
「梨子ちゃん、私達は運営側との話し合いに専念しよう。当日の流れを把握したいし、段取りもしておかないと」
「そうね」
頷く私。本来であれば、天くんがやってくれていたであろう仕事だけど・・・
天くんはもう・・・
「・・・諦めちゃダメだよ」
表情を見て察したのか、私の手を優しく握る千歌ちゃん。
「まだ私達、天くんに何も伝えられてないんだから。諦めるのは早いよ」
「千歌ちゃん・・・」
「花火大会のステージを成功させて、その後・・・天くんにちゃんと伝えよう?『私達には、天くんが必要なんだ』って」
「っ・・・うんっ!」
涙をこらえ、笑顔で頷く。そうよね、簡単に諦めちゃダメよね・・・
「夢が叶う日が来る可能性は・・・諦めなかった人にしか無いんだから」
前に天くんに言われた言葉を思い出し、気持ちを奮い立たせる私なのだった。
どうも〜、ムッティです。
いやぁ・・・花火大会引っ張りすぎじゃね?←
ここまで引っ張ると、逆に花火大会での話を書くのが難しいんだけど・・・
誰だよ!ここまで引っ張ったヤツは!
・・・ゴメンなさい、私です(´・ω・`)
はい、そんなわけで次回は花火大会です。
果たしてAqoursのステージは成功するのか?
そして天を引き留めることは出来るのか?
これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ
それではまた次回!以上、ムッティでした!