まだまだ初心者だけど(´・ω・`)
「わぁ・・・!」
目を輝かせている海未ちゃん。
流石はこの辺りで一番のイベントというだけあって、会場は多くの人で賑わっていた。
屋台もたくさん並んでおり、焼きそばやたこ焼き等の美味しそうな匂いが漂っている。
「片っ端から制覇しましょう!」
「子供か」
呆れている真姫ちゃん。
「っていうか、海未って人の多いところ苦手じゃなかった?」
「それを気にしないくらい、屋台に心を奪われてるんだろうね」
「穂乃果じゃないんだから・・・」
溜め息をつく真姫ちゃん。
確かに今の海未ちゃんって、穂乃果ちゃんに似てるかも・・・
「それで?Aqoursのステージはいつなの?」
「あと一時間くらいで始まる予定だよ。それまではゆっくりしてても大丈夫」
「でも、席を確保しておかないといけないんじゃない?」
「それなんだけど・・・」
俺は苦笑しつつ、ポケットからチケットを取り出した。
「実は美渡さんから、花火大会の有料観覧席のチケットを渡されたんだよね。しかも一番良い席で、ステージも花火も間近で見られるらしいよ」
「嘘でしょ!?よくそんなチケット手に入ったわね!?」
「・・・まぁ、入手経路の予想はつくけどね」
十中八九、小原家のコネだろう。美渡さんは千歌さんから、俺に渡してくれって頼まれたって言ってたし・・・
『絶対に見に来い』っていうメッセージなんだろうな。
「・・・言われなくても行くっての」
「天?」
「天!真姫!早く行きますよ!」
少し先で、海未ちゃんがブンブン手を振っている。やれやれ・・・
「行こっか」
「えぇ」
俺と真姫ちゃんは苦笑すると、先を行く海未ちゃんの後を追いかけるのだった。
*****
「んー、焼きそば美味しいですぅ!」
席に座り、焼きそばを頬張る海未ちゃん。
屋台を巡り色々と買い物をした俺達は、観覧席へと移動していた。
っていうかここ、本当に特等席だな・・・
「はい真姫ちゃん、あーん」
「あーん・・・ん、美味しいわね」
「屋台で買う食べ物って、何か美味しく感じるよね」
「ちょ、ずるいですよ天!私にも『あーん』して下さい!」
「はいはい」
苦笑しながら、海未ちゃんの口元にたこ焼きを持っていく。
と、俺の視界が真っ暗になった。背後から誰かに目隠しされたらしい。
「だ~れだ♪」
その声を聞いた瞬間、冷や汗が止まらなくなる。
あっ、ヤバい・・・
「ま、麻衣先生・・・?」
「ピ~ンポ~ン♪」
目隠しが外された瞬間、俺の首に麻衣先生の腕が回される。
「どこかの誰かさんに体調不良と嘘をつかれ、今日まで学校を休まれ、とっても心配していたのにも関わらず、美女二人を侍らせている場面を目撃して、怒り心頭のクラス担任・・・その名も赤城麻衣先生で~す♪」
「本当にすいませんでしたあああああっ!」
全力で謝罪する。
俺はAqoursの皆と顔を合わせたくなくて、東京から帰って来た後も学校を休んでいた。
麻衣先生には申し訳ないと思いながらも、体調不良という嘘をつき続けたのだ。
「体調不良じゃなかったのかな~?美女二人とイチャイチャ出来る元気があるなら、学校くらい来れるんじゃないかな~?」
「ちょ、麻衣先生・・・首が絞まって・・・」
「先生悲しいな~?教え子がこんなに悪い子だったなんてショックだな~?」
「あっ、ヤバい・・・意識が・・・」
「ちょ、天!?」
「麻衣さん、勘弁してあげて下さいっ!」
「・・・冗談よ」
力を抜く麻衣先生。
し、死ぬかと思った・・・
「っていうか、最初から事情は知ってたわ。花丸ちゃんにルビィちゃん、善子ちゃんに吐かs・・・教えてもらったから」
「今何か物騒なこと言いかけましたよねぇ!?」
「それで事態を把握して、海未ちゃんを問い詰めたの。三秒で吐かせたわ」
「そこは言い直さないんだ!?そして海未ちゃん吐くの早くない!?」
「す、すみません・・・もう隠しても無駄だと思いまして・・・」
「全く、海未ちゃんは天くんに甘いんだから・・・」
麻衣先生は溜め息をつくと、そのまま後ろから俺を抱き締めてくる。
「・・・最初から正直に言ってよ。私はそんなに信用出来ない?」
「いえ、そんなことは・・・」
「もっと私を頼りなさい。分かった?」
「・・・はい、すみませんでした」
「よろしい」
優しく頭を撫でられる。
「クラスの皆も、天くんのこと心配してるんだから。ちゃんと顔見せに来てね」
「分かりました」
そういや、何度も連絡もらってたっけ・・・悪いことしたな・・・
「・・・ホント、年上の女に好かれるわね」
「まぁまぁ。大目に見てあげて下さいよ」
ちょっと不機嫌そうな真姫ちゃんを、海未ちゃんが苦笑しながら宥めてくれている。
「全く、真姫はすぐ嫉妬するんですから」
「なっ!?別に嫉妬なんてしてないわよ!?」
「そこが真姫ちゃんの可愛いところだけどね」
「う、うるさいっ!そんな言葉に騙されないんだからねっ!」
「大好きだよ、真姫ちゃん」
「っ・・・うぅ・・・」
涙目の真姫ちゃん。耳まで真っ赤になっている。
「ちょっと天くん、この可愛い生き物は何?」
「西木野真姫ちゃんです。メイドさんをやってるんですよ」
「ちょ、天!?それは言わなくていいから!」
「えぇっ!?真姫がメイド!?」
「た、ただのバイトだから!ことりに頼まれただけだから!」
「西木野さん、赤城家の専属メイドになりませんか?」
「嫌ですよ!?オコトワリシマス!」
「おっ、やっぱり本家の『オコトワリシマス』は違うね」
「本家って何!?」
「麻衣ちゃ~ん!」
聞き覚えのある声がする。
振り向くと、翔子先生がこちらへ向かってくるところだった。
「遅くなってゴメンなさい・・・って天くん!?会いたかった~!」
「No!べ~つ~に~」
「げふっ!?」
抱きつこうとしてくる翔子先生を避ける。盛大にずっこける翔子先生。
「ちょっと!?そこは『Yes!き~み~に~』でしょ!?」
「A●Bはそうかもしれませんが、AYSは違うんで」
「AYSって何!?」
「A・YA・SEの略です」
「略す必要あった!?」
「っていうか、何で先生方がここにいるんですか?」
「え?鞠莉ちゃんから『色々とご迷惑をおかけしたお詫びです』って、観覧席のチケットをもらったからだけど?」
「どんだけ席確保してんのあの人・・・」
呆れる俺。
その時、周りの明りがフッと消えた。
「おっ、遂に始まるみたいね」
「ちょ、私暗いの苦手なんだけど!?」
「じゃあ何で来たんですか貴女・・・」
俺にしがみつく翔子先生に呆れていると・・・
「皆さん!こんばんは!」
千歌さんの声が、マイクを通して響き渡るのだった。
*****
《千歌視点》
「皆さん、こんばんは!」
声を張り上げる私。
「私達は、浦の星女学院スクールアイドル・・・せーのっ!」
「「「「「「「「「Aqoursですっ!」」」」」」」」」
九人で自己紹介した瞬間、ステージが眩い光に照らされる。
観覧席の人達からは、私達が暗闇の中に浮かび上がっているように見えるだろう。
「僭越ではありますが・・・この花火大会を盛り上げるべく、私達Aqoursが一曲披露させていただきたいと思います!」
たくさんの拍手が聞こえてくる。こちらからではよく見えないが、かなりのお客さんがいるんだろう。
問題は・・・
「天くん・・・」
隣の梨子ちゃんが小さく呟く。
美渡姉からは『会場まで車で送り届けて、チケットも渡した』と連絡をもらったけど・・・来てくれてるかな・・・
「・・・大丈夫」
曜ちゃんが私の手を握った。
「きっと来てくれてる。信じよう?」
微笑む曜ちゃん。
私も笑みを浮かべて小さく頷くと、再び観覧席の方を向いた。
「今日披露する曲は・・・私達の大切な人が作ってくれた曲です!」
「その人は、いつでも私達を支えてくれました!」
私に続き、声を張り上げる曜ちゃん。
「どんなに心が折れそうな時でも、その人のおかげで乗り越えることが出来ました!」
「いつでも私達の味方をしてくれて、いつでも私達を励ましてくれました!」
泣きそうな表情で叫ぶ梨子ちゃん。
「その人がいなかったら・・・今の私達はいません!」
「不安な時は寄り添ってくれる、とても優しい人です!」
凛とした表情のルビィちゃん。
「いつも勇気をくれるその人には、本当に感謝しています!」
「そっと背中を押してくれる、頼れる人です!」
微笑んでいる花丸ちゃん。
「その人に出会えて、本当に良かったと思っています!」
「いつもいつもボケるから、ツッコミが本当に大変だけど!」
苦笑している善子ちゃん。
「それでも・・・その人の優しさに、私は救われました!」
「ちょっとエッチだし、よく人をおちょくってくるけど!」
笑っている果南ちゃん。
「その人と一緒にいると、本当に安心することが出来ます!」
「人を思いやることの出来る、本当に心の優しい人です!」
穏やかな笑みを浮かべるダイヤさん。
「あの人の前では、ありのままの自分でいられます!」
「昔から本当に変わらない・・・人を包み込んでくれる人です!」
力強く叫ぶ鞠莉さん。
「皆から愛される・・・私も大好きな人です!」
「そんな私達にとって大切な人が、私達の為に作ってくれた曲・・・初めて聴いた時、思わず涙が出てしまいました」
歌詞が三年生の三人に、そして私達の気持ちにシンクロして・・・
皆で聴く前に梨子ちゃんと二人で聴いたのだが、二人揃って泣いてしまった。
「この曲には、その人の心がこもっています!」
「だから私達も、心をこめて歌いたいと思います!」
「その人に、私達の気持ちが届くように!」
「日頃の感謝の気持ちを!」
「その人のことが大好きだっていう気持ちを!」
「私達にとって、かけがえのない人なんだっていう気持ちを!」
「その人が作ってくれた曲にのせて!」
「私達なりに精一杯頑張って!」
「その人に届くと信じて・・・歌います!」
鞠莉さんがそう叫ぶのと同時に、それぞれが開始位置に移動する。
そして・・・
「それでは・・・聴いて下さい!」
「「「「「「「「「未熟DREAMER!」」」」」」」」」
曲が流れ出すのだった。
どうも〜、ムッティです。
さてさて、前回は触れませんでしたが・・・
この作品では、真姫ちゃんがサンタさんの真実を知っております(笑)
アニメで真姫ちゃんがサンタさんを信じていることが判明した時、可愛さのあまり悶えたのは良い思い出(笑)
この作品で五年後の真姫ちゃんを登場させるにあたって、この部分はどうすべきか悩みましたが・・・
真実を知ってもらうことにしました(泣)
ゴメンよ真姫ちゃん(泣)
さて、Aqoursの想いは天に届くのか・・・
これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ
それではまた次回!以上、ムッティでした!