良いところだったなぁ・・・
《果南視点》
「それでは明日の朝四時、海の家に集合ということで!」
「・・・ダイヤさんって、時々アホになるよね」
「アハハ・・・否定出来ないかも」
やる気に満ち溢れたダイヤを見て、苦笑しながらヒソヒソ話している天とルビィちゃん。
いや、朝四時って・・・
「無理に決まってるよね、鞠莉?」
隣の鞠莉に話を振るが、返事が返ってこない。
鞠莉は複雑そうな表情で、ルビィちゃんと談笑している天をジッと見ていた。
「・・・天が気になるの?」
「っ!?」
耳元で囁くと、鞠莉がビクッとしてこっちを見た。
やれやれ・・・
「天と話したいんでしょ?見てないで行っておいでよ」
「・・・何か、距離感が掴めなくて」
寂しそうに笑う鞠莉。
「ずっと距離があったから、すぐには縮められないっていうか・・・多分天も同じだと思う。未だに『小原理事長』呼びだもの」
「鞠莉・・・」
そういえば、天はまだ鞠莉のことを『小原理事長』って呼んでたっけ・・・
昔は『鞠莉ちゃん』って呼んでたらしいけど・・・
「これから少しずつ、距離を縮めていけたら・・・天と仲間になれたんだもの。今はそれだけで十分よ」
そう言って笑う鞠莉だったが、強がっているのが見え見えだった。
全く・・・
「・・・だったら、この合宿で少しでも距離を縮めなきゃね」
「え・・・?」
「焦る必要は無いけど、せっかくのチャンスなんだもん。これを逃す手は無いよ」
「・・・そうね。頑張ってみるわ」
微笑む鞠莉。
二人の間だけ距離があるのは、こっちも見てて寂しいからね・・・
「・・・さて、私も一肌脱ぎますか」
小さく呟く私なのだった。
*****
翌朝・・・
「すぅ・・・すぅ・・・」
気持ち良く熟睡している俺。すると・・・
『ピーンポーン』
「・・・ん?」
インターホンの音で目が覚める。
むくりと身体を起こして時計を見ると、時刻は五時を過ぎたところだった。
「誰だよ・・・こんなに朝早く・・・」
眠りを妨げられて若干イラッとしていると、再びインターホンが鳴った。
『ピーンポーン』
「はいはい、出れば良いんでしょ・・・」
欠伸をしながら玄関に向かい、ドアを開ける。
「どちら様でs・・・」
「天くううううううううううん!」
「ごふっ!?」
花丸が猛烈な勢いで抱きついてきた。
な、何事・・・?
「ちょ、花丸!?どうした!?」
「どうしたもこうしたもないずら!」
涙目の花丸。
「今日は朝四時に海の家に集合のはずなのに、何で誰も来ないずら!?」
「ホントに四時に行ったんだ・・・」
呆れる俺。
誰も真に受けてないと思ってたのに・・・
「マルは三時半から待ってたのに、一時間経っても誰も来なかったずら!あまりにも寂しかったから、天くんを迎えに来たずら!」
「可愛すぎか」
思わず花丸を抱き締めてしまう。
何だろう、今の花丸がメチャクチャ愛おしい。
「とりあえず入って。皆が来るまでゆっくりしていきなよ」
「ずらぁ・・・」
花丸の手を引いて家に入れつつ、ダイヤさんをしばくことと決意する俺なのだった。
*****
「今度ふざけたマネしたら内浦の海に沈めんぞ、この前髪パッツン堅物ですわ女」
「うぅ・・・申し訳ありませんでした・・・」
砂浜で涙目になりながら正座しているダイヤさん。結局全員揃ったのは、朝九時のことだった。
しれっと一番最後にやってきたダイヤさんの頭に全力で『雷鳴●卦』を叩き込んだ俺は、そのままダイヤさんを正座させて説教タイムに入ったのだった。
「っていうか、朝四時って言った張本人が何で一番最後に来てるんですか」
「合宿が楽しみすぎて、昨晩はなかなか寝ることが出来なくて・・・目が覚めたらあんな時間に・・・」
「遠足前の小学生か」
このポンコツ生徒会長め・・・
「ま、まぁまぁ天くん!もうその辺にしてあげるずら!」
花丸が慌ててフォローに入る。
ちなみにあの後、花丸はウチでもう一眠りしていた。一緒に朝ご飯も食べたので、すっかり元気モードである。
「・・・まぁ花丸に免じて、この辺にしておくとして。他の皆は?」
「あそこずら」
指を差す花丸。そこには・・・
「おりゃあっ!」
「とりゃあっ!」
「よっ!」
「それっ!」
「あ~、気持ち良い~・・・」
「すぅ・・・すぅ・・・」
海に飛び込んでいる千歌さんと曜さん、ビーチバレーをしている果南さんと小原理事長、浮き輪に乗ってプカプカ浮いているルビィ、ビーチパラソルの下に寝そべって爆睡している善子の姿があった。
「・・・見事に遊んでるわね」
「・・・本当にあのメニューやらせようかな」
「それは勘弁して!?」
悲鳴を上げる梨子さんなのだった。
*****
「さぁ、気合い入れていきましょう」
「「「「「「お、おー・・・」」」」」」
砂浜に突っ伏した状態で手を上げる千歌さん・曜さん・ルビィ・善子・果南さん・小原理事長。
全員『●鳴八卦』を叩き込まれた後である。
「容赦ないわね・・・」
「怖いずら・・・」
「恐ろしいですわ・・・」
こちらに畏怖の視線を向ける梨子さん・花丸・ダイヤさん。
そんなことはまるで気にせず、俺は辺りを見渡した。
「ところで、海の家ってどこですか?」
「あそこだよ」
千歌さんが指差した方を見ると・・・ボロボロの木造の建物があった。
どう見ても寂れた感じが否めない。
「・・・さて、壊しますか」
「ストップううううううううううっ!?」
慌てて俺を羽交い絞めにする曜さん。
「あれ、何で止めるんですか?」
「止めるに決まってるでしょ!?何で壊そうとしてるの!?」
「え、だって解体の手伝いでしょ?」
「いや違うから!営業の手伝いだから!」
「こんな店に客なんて来るわけないでしょうが!」
「それを呼び込むのか私達の仕事でしょうが!」
「俺達にどうしろと!?曜さんがストリップショーでもしてくれるんですか!?」
「嫌だよ!?それじゃ完全にいかがわしいお店じゃん!?」
「根性見せろよ露出狂!」
「まだそれ引きずるの!?違うって言ってるでしょうが!」
「はいはい、そこまで」
ギャーギャー言い合う俺と曜さんの間に、果南さんが割って入る。
「とりあえず、どうしたら客を呼び込めるか考えよう。エッチな方法は無しで」
「じゃあ無理です」
「諦めるの早っ!?他に方法は無いの!?」
「んー、店に来てくれた人に百万円を渡すとか?」
「まさかの賄賂!?そのお金はどこから!?」
「小原理事長が何とかしてくれるでしょ」
「いや無理だから!」
小原理事長のツッコミ。
チッ、無理か・・・
「っていうか、問題は隣の店ですよね」
視線を向ける俺。そこには、とてもお洒落なカフェのような海の家があった。
建物も新しく飾りも華やかで、多くのお客さんで賑わっている。
「この二つが並んでたら、そりゃ皆隣に行くでしょ」
「アハハ・・・確かに・・・」
苦笑する梨子さん。
さて、どうしたものか・・・
「・・・勝算が無いわけじゃないんですけどね」
「えっ、ホント!?」
驚く千歌さん。
何だかんだ言いつつ、可能性はあると俺は考えていた。
何故なら・・・
「えぇ。こっちの店には、あっちの店に無いものがありますからね」
「えっ?何かあった?」
首を傾げる善子。
やれやれ、気付いてないのか・・・
「皆スクールアイドルじゃん。スクールアイドルがやってる海の家なんて、話題性抜群でしょ。上手くいけば、Aqoursの知名度アップにも繋がるだろうし」
「それですわ!」
顔を輝かせるダイヤさん。
「その点を上手く活かすことが出来れば、こちらにも勝機はあるはず・・・!」
「でしょうね」
頷く俺。
「まぁそもそも、これほどの美少女が九人もいるんですから。俺だったら、絶対こっちの店に来ますよ」
「「「「「「「「「っ・・・」」」」」」」」」
何故か顔を赤くする九人なのだった。
どうも〜、ムッティです。
前書きでも述べましたが、大阪・京都へ旅行に行ってきました!
大阪ではたこ焼きをメチャクチャ食べ、USJでアトラクションに乗りまくり・・・
京都では観光名所を巡りつつ、紅葉を見てました。
特に良いなぁと思ったのは、京都の宇治ですね。
旅行の最終日にふらっと立ち寄ったんですが、のどかで本当に良い所でした。
『響け!ユーフォニアム』の舞台にもなった場所ということで、作品の中にも出てきた『宇治橋』とかを見てちょっとテンション上がってました(笑)
今度はゆっくり宇治を楽しみたいなぁ・・・
さてさて、本編では遂に合宿が始まりましたね。
果たして天と鞠莉ちゃんの距離は縮まるのか・・・
次の話は明日投稿します。
それではまた次回!以上、ムッティでした!