絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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相も変わらずスクスタにハマっている今日この頃・・・

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人の心は複雑なものである。

 「はい、どうぞ」

 

 「ありがとう」

 

 「いただきます」

 

 麦茶の入ったコップを、千歌さんと梨子さんに差し出す俺。

 

 演奏を終えた梨子さんを労うべく、俺達はリビングに移動していた。

 

 「・・・凄く良い曲だった」

 

 ポツリと呟く千歌さん。

 

 「何て言うか・・・梨子ちゃんがいっぱい詰まってた」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 自分の作った曲を褒められて、少し嬉しそうな梨子さん。

 

 一方、千歌さんは何か言いたそうな表情をしている。

 

 「あのね、梨子ちゃん・・・」

 

 「ん?何?」

 

 「その・・・」

 

 言いよどむ千歌さん。

 

 俺は千歌さんの背中にそっと手を添えた。

 

 「・・・落ち着いて。焦らなくて大丈夫ですよ」

 

 「・・・うん」

 

 千歌さんは一度深呼吸をすると、梨子さんを真剣な眼差しで見つめた。

 

 「・・・ピアノコンクール、出てほしい」

 

 「っ・・・」

 

 梨子さんは息を呑むと、少し悲しげに目を伏せた。

 

 「・・・私が一緒じゃ、嫌?」

 

 「違うよっ!」

 

 大きな声を上げる千歌さん。

 

 「一緒が良いに決まってるよっ!でもっ・・・!」

 

 「落ち着けアホみかん」

 

 「あたっ!?」

 

 頭にチョップをお見舞いする。やれやれ・・・

 

 「ちょ、天くん!?何するの!?」

 

 「チョップです」

 

 「それは見れば分かるよ!?何でそんなことするのかって聞いてるんだけど!?」

 

 「千歌さんのアホ毛が目障りだったんで」

 

 「そんな理由!?」

 

 「まぁ冗談はさておき・・・落ち着けって言ってるでしょうが」

 

 千歌さんを宥める俺。

 

 「すぐ感情的にならないの。どうして梨子さんにピアノコンクールに出てほしいのか、梨子さんに伝わるように話して下さい」

 

 「っ・・・ゴメン」

 

 千歌さんは一言謝ると、再び深呼吸した。

 

 「・・・思い出したの。梨子ちゃんをスクールアイドルに誘った時のこと」

 

 ポツリポツリと語り出す千歌さん。

 

 「スクールアイドルを一緒に続けて、梨子ちゃんの中の何かが変わって・・・またピアノに前向きに取り組めたら、凄く素敵だなって。私、そう思ってたなって」

 

 「千歌ちゃん・・・」

 

 「梨子ちゃんがAqoursを大切に思ってくれて、ラブライブを優先しようとしてくれて・・・凄く嬉しかった。私だって、梨子ちゃんと一緒に予備予選に出たい。でも・・・」

 

 悲しそうに笑みを浮かべる千歌さん。

 

 「梨子ちゃんにとってピアノは、同じくらい大切なものだったんじゃないの?」

 

 「っ・・・」

 

 「その気持ちに・・・答えを出してあげて」

 

 梨子さんに手を差し伸べる千歌さん。

 

 「私、待ってるから。どこにも行かないって、ここで皆と一緒に待ってるって約束するから。だから・・・!」

 

 千歌さんが言い終える前に、梨子さんが思いっきり千歌さんを抱き締める。

 

 梨子さんの目には、涙が浮かんでいた。

 

 「ホント・・・変な人・・・」

 

 涙声の梨子さん。

 

 千歌さんの目にも、みるみる涙が滲んでいく。

 

 「でも・・・大好き」

 

 千歌さんを抱き締める腕に、ギュっと力を込める梨子さん。

 

 「・・・ありがとう、千歌ちゃん。私、ピアノコンクール出るよ」

 

 「っ・・・」

 

 堪えきれなくなったのか、千歌さんの目から次々と涙が溢れる。

 

 「梨子ちゃんっ・・・!」

 

 梨子さんの胸に顔を埋め、泣き出す千歌さん。

 

 千歌さんだって本当は、梨子さんと一緒にステージに立ちたいはずだ。それでも梨子さんの為を思い、ピアノコンクールに送り出す決意を固めた。

 

 流石、Aqoursのリーダーだな・・・

 

 「・・・梨子さん」

 

 呼びかける俺。

 

 「梨子さんの弾くピアノは、温かくて優しくて・・・聴いてくれる人達の心に絶対響きます。俺が保証しますよ」

 

 「天くん・・・」

 

 「梨子さんが心を込めて作ったあの曲を、胸を張って披露してきて下さい。『これが私の作った曲なんだ』って」

 

 俺は梨子さんの頭を撫でた。

 

 「梨子さんは一人じゃありませんよ。梨子さんのことを、心から応援している仲間達がいる・・・それを忘れないで下さいね」

 

 「っ・・・ありがとう・・・」

 

 泣きながら微笑む梨子さん。

 

 「Aqoursのこと・・・頼むわね」

 

 「勿論です。マネージャーですから」

 

 笑みを浮かべる俺。

 

 「予備予選は必ず突破します。次のステージには梨子さんも出てもらいますから、楽しみにしてて下さい」

 

 「フフッ・・・期待してるわ」

 

 俺に寄りかかってくる梨子さん。

 

 「私も頑張るから。応援しててね」

 

 「えぇ、勿論」

 

 梨子さんと千歌さんを、包み込むように抱き締める俺。

 

 俺達はしばらくの間、三人で身を寄せ合って過ごしたのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ふぅ・・・」

 

 再び千歌さんの部屋へと戻ってきた俺。

 

 眠っている鞠莉ちゃんを起こさないよう、そっと布団に入り込む。

 

 と、鞠莉ちゃんの目がパッチリ開いた。

 

 「お帰りなさい」

 

 「・・・起きてたんかい」

 

 「千歌っちや梨子と一緒に部屋を出て行った時から、ずっと起きてたわよ」

 

 鞠莉ちゃんは小さく笑うと、ギュっと俺に抱きついてきた。

 

 「こんな魅力的な女の子を差し置いて、他の女の子と夜のデートに行くなんて・・・天は浮気者デース」

 

 「デートじゃないし、自分で『魅力的』とか言っちゃうのはどうなのよ?」

 

 「あら、マリーは魅力的じゃないの?」

 

 「おっぱいが大きいところに関しては魅力的かな」

 

 「フフッ、天のエッチ♡」

 

 あからさまに豊満な胸を押し付けてくる鞠莉ちゃん。

 

 うん、ご馳走様です。

 

 「それで、二人はどうしたの?」

 

 「外に出てちょっと汗かいたから、もう一度お風呂に入ることにしたんだよ。まだ帰って来てないところをみると、俺の方が先に上がったみたいだね」

 

 合宿中のお風呂は、志満さんのご厚意で大浴場を使わせてもらっている。

 

 今の時間は誰も入っておらず、男湯は貸切状態だった。

 

 女湯の方も同じだろうし、あの二人はもうしばらくお風呂を満喫してくるだろうな。

 

 「鞠莉ちゃんも入ってきたら?お風呂好きでしょ?」

 

 「んー、そうね・・・天も一緒に入るなら行くわよ」

 

 「オッケー、身体の隅々まで洗ってあげるよ」

 

 「いやん♡天ってばホントにエッチなんだから♡」

 

 腰をくねらせる鞠莉ちゃん。

 

 こんな風にまた、鞠莉ちゃんと冗談を言い合えるようになるとはな・・・

 

 「・・・フフッ」

 

 鞠莉ちゃんは笑みを浮かべると、俺の胸に顔を埋めた。

 

 「何だか懐かしいわね・・・昔に戻ったみたい」

 

 「・・・うん」

 

 鞠莉ちゃんの頭を優しく撫でる俺。

 

 「改めて・・・これからよろしくね、鞠莉ちゃん」

 

 「・・・鞠莉」

 

 「え・・・?」

 

 「鞠莉って呼んでちょうだい。ちゃん付けじゃなくて、呼び捨てで」

 

 微笑む鞠莉ちゃん。

 

 「天、言ってくれたわよね。『新しい関係を築いていきたい』って。その初めの一歩として、呼び捨てにしてほしいの」

 

 「いや、でも鞠莉ちゃんの方が年上だし・・・」

 

 「・・・昔も同じこと言ってたじゃない」

 

 ジト目で俺を見る鞠莉ちゃん。

 

 「私は最初から『呼び捨てでいい』って言ってたのに、『年上だから』っていう理由で頑なに拒まれて・・・妥協点がちゃん付けだったのよね」

 

 「ハハハ、昔ノコトナンテ覚エテナイヨ」

 

 「誤魔化さないの」

 

 俺の頬をつねる鞠莉ちゃん。

 

 「それとも、さっきの言葉は嘘だったのかしら?」

 

 「いや、勿論本心だけどさ・・・」

 

 「だったら・・・お願い」

 

 上目遣いで俺を見る鞠莉ちゃん。

 

 うわぁ、その目はズルいなぁ・・・

 

 「分かったよ・・・鞠莉」

 

 「っ・・・」

 

 一瞬で耳まで赤くなる鞠莉。やれやれ・・・

 

 「自分から言い出したくせに、何で恥ずかしがってんの」

 

 「・・・うるさい」

 

 鞠莉はそう言うと、再び俺の胸に顔を埋めた。

 

 「・・・これからよろしくね、天」

 

 「・・・こっちこそよろしく、鞠莉」

 

 鞠莉を優しく抱き締める俺。

 

 俺達はそのまま、再び意識を手放すのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 《梨子視点》

 

 「ふぅ・・・サッパリしたね」

 

 「良いお湯だったわね」

 

 千歌ちゃんとそんな会話をしながら、千歌ちゃんの部屋へと戻る。

 

 眠っている皆を起こさないよう、そっと自分の布団に戻ろうとしていると・・・

 

 「梨子ちゃん、見て見て」

 

 千歌ちゃんが指を差す。

 

 そこには・・・同じ布団で抱き合って眠る、天くんと鞠莉さんの姿があった。

 

 全く、天くんったら・・・

 

 「・・・さっきまで私達のこと抱き締めてたのに、もう別の女の子を抱き締めてるのね」

 

 「あ、梨子ちゃんが嫉妬してる」

 

 「そ、そんなんじゃないからっ!」

 

 「しーっ、皆が起きちゃうよ」

 

 「あっ・・・」

 

 慌てて口を押さえる私。

 

 「・・・でもさ、良かったよね」

 

 微笑ましそうに二人を眺める千歌ちゃん。

 

 「あの二人、ずっと距離があったから。仲直り出来たみたいで、何かホッとしたよ」

 

 「・・・そうね」

 

 幸せそうに寝ている二人を眺める私。

 

 確かにこの二人の間には、ずっと距離があった。

 

 それが縮まって仲良くなったのだから、本当に喜ばしいことだと思う。

 

 「喜ばしいこと・・・なのよね」

 

 「梨子ちゃん?」

 

 首を傾げる千歌ちゃん。

 

 何故かは分からないけど・・・何となく、胸の奥がモヤモヤしていた。

 

 何でだろう・・・?

 

 「・・・何でもないわ。私達も寝よっか」

 

 「うん。おやすみ」

 

 「おやすみなさい」

 

 千歌ちゃんがベッドに入るのを見届け、私も布団に入る。

 

 「・・・気のせいよね」

 

 胸のモヤモヤを無視して、目を閉じる私なのだった。




どうも〜、ムッティです。

今回の話で、アニメ一期第十話までの内容が終わりましたね。

梨子ちゃんがピアノコンクールへの出場を決め、天が鞠莉ちゃんを呼び捨てにするようになりました。

そして梨子ちゃんは、天と鞠莉ちゃんを見て何やらモヤモヤしている様子・・・

果たしてこのモヤモヤの正体とは・・・

次回からは十一話の内容に入っていきたいと思います。

個人的に描きたいシーンもあるので、早く執筆を進めたいところです(>_<)

とりあえず、年内に十一話の内容が終わると良いなぁ(希望的観測)

頑張って投稿していきますので、皆様どうぞよろしくお願い致します。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

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