絢瀬天と九人の物語   作:ムッティ

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今年の箱根駅伝は凄いな・・・

続々と区間新が出るじゃないか・・・


距離が近い人だからこそ気を遣う。

 「ワン、ツー、スリー、フォー・・・」

 

 果南さんのカウントに合わせて、二人でフォーメーションを確認しながら踊る千歌さんと曜さん。

 

 しかし・・・

 

 「あっ!?」

 

 「うわっ!?」

 

 途中でお互いがぶつかってしまう。

 

 練習を始めてからというもの、どうにも上手くいかない状態が続いていた。

 

 「これで十回目ですわね・・・」

 

 「曜だったら合うと思ったんだけど・・・」

 

 困った表情のダイヤさんと果南さん。

 

 これはなかなか難しいな・・・

 

 「私が悪いの!同じところで遅れちゃって・・・」

 

 「違うよ!私が歩幅を曜ちゃんに合わせられなくて・・・」

 

 「ストップ」

 

 曜さんと千歌さんの間に入る俺。

 

 「どっちが悪いとか、そういう問題じゃないですから。まだ始めたばかりですし、上手くいかなくて当然です」

 

 「天くん・・・」

 

 「焦らなくて大丈夫ですから、ゆっくりやりましょう。繰り返しやっているうちに、身体で覚えられるはずです」

 

 「うん、頑張る!」

 

 「ヨーソロー!」

 

 気合いを入れ直し、再び位置につく二人。

 

 「・・・流石ね、マネージャー」

 

 隣にやってきた鞠莉が、微笑みながら小さな声で話しかけてくる。

 

 「焦り気味の二人を、あっという間に落ち着かせちゃうなんて」

 

 「・・・落ち着いてたら良いんだけどね」

 

 「え?」

 

 首を傾げる鞠莉。

 

 俺は溜め息をつきつつ、練習に集中しながらもどこかぎこちない曜さんを見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ワン、ツー、スリー、フォー・・・」

 

 コンビニの駐車場の隅で練習している千歌さんと曜さん。

 

 学校での練習が終わり、俺達は近くのコンビニにやって来ていた。

 

 三年生組は学校に残ってやる事があるらしく、居るのは俺達一年生組と二年生の二人だけである。

 

 「あっ、ゴメン・・・」

 

 「ううん、こっちこそ・・・」

 

 またしても二人の身体がぶつかる。

 

 なかなか息が合わないな・・・

 

 「そ~らくんっ」

 

 「うおっ!?」

 

 二人の練習を眺めていると、頬に冷たい物が当たった。

 

 驚いて振り向くと、花丸がアイスを持って立っていた。

 

 「はいこれ、マルと半分こずら」

 

 「・・・あぁ、明日は雪か」

 

 「マルがアイスをあげるのがそんなに珍しいずらか!?」

 

 「いや、だって食い意地を張るスクールアイドルランキングNo.2の花丸だよ?」

 

 「そんな不名誉な称号は要らないずら!っていうかNo.1は誰ずら!?」

 

 「白米大好き娘」

 

 「誰ずら!?」

 

 「アハハ、いつか紹介するよ。アイスありがと」

 

 花丸からアイスをもらいつつ、再び二人の練習に目を向ける。

 

 「結構苦戦してるわね・・・」

 

 「二人とも大変そう・・・」

 

 善子とルビィもやって来て、二人の練習を心配そうに見つめていた。

 

 「果南も言ってたけど、あの二人なら合うと思ってたわ。普段から仲も良いし、息ピッタリって感じじゃない」

 

 「だからこそ、じゃないかな」

 

 善子の言葉に答える俺。

 

 「『距離が近い人には気を遣わない』ってよく言うけどさ・・・俺は逆だと思うんだよ」

 

 「逆って言うと?」

 

 「距離が近い人だからこそ、気を遣うんじゃないかってこと。例えば深刻な悩み事を抱えていたとして、それをすぐに家族や友達に話そうって思える?『心配をかけたくない』って思ったりしない?」

 

 「それは・・・そうかも」

 

 「あの二人も、多分そうなんだと思う。お互いに『負担をかけたくない』っていう気持ちがあるから、遠慮し合ってどうしても息が合わない・・・そんな気がする」

 

 「相変わらず、人をよく見てるわね・・・」

 

 驚き半分、呆れ半分といった様子の善子。

 

 「だから天も、お姉さんと喧嘩しちゃったの?」

 

 「何聞いてくれちゃってるずらこの似非堕天使いいいいいっ!」

 

 「ごはぁっ!?」

 

 「天くん気にしないで!何でもないからね!」

 

 善子の顎に花丸の頭突きがクリーンヒットする中、ルビィが慌てて取り繕う。

 

 俺は思わず苦笑してしまった。

 

 「アハハ、気を遣わせちゃってゴメン・・・っていうか、知ってたんだね」

 

 「う、うん・・・実は曜ちゃんから聞いてて・・・」

 

 「え、何で曜さんが知ってんの?」

 

 「東京に行った時、真姫さんと南ことりさんに聞いたんだって」

 

 「・・・なるほどね」

 

 確かにあの時、絵里姉の話題になったもんな・・・

 

 恐らく俺がトイレに行った時に、気になった曜さんが二人に聞いたんだろう。

 

 ことりちゃんが積極的に話すとは思えないし、話したのは多分真姫ちゃんだろうな・・・

 

 つまりあの後、曜さんの元気が無かったのはそれが原因だったのね・・・

 

 「・・・何か、色々と合点がいったわ」

 

 「天くん?」

 

 「あぁ、何でもない。こっちの話」

 

 笑う俺。

 

 「・・・俺と絵里姉の場合は逆だよ。気を遣うどころか、お互いにワガママを言い合っただけ。その結果どっちも折れなくて、今に至る・・・って、最近まではそう思ってたんだけどね」

 

 鞠莉の話を聞くかぎり、絵里姉は鞠莉に俺のことをお願いしていたみたいだしな・・・

 

 あれだけ内浦行きに反対していたのに、陰でそんなことをしていたなんて・・・

 

 「・・・ホント、よく分かんないわ」

 

 そんなことをぼやきつつ、千歌さんと曜さんの練習を見ていると・・・

 

 「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト・・・よし、これなら大丈夫!」

 

 「凄い!流石は曜ちゃん!」

 

 ようやく動きが揃い、喜んでいる二人。

 

 「おぉ、天界的合致!」

 

 「天界は関係ないずら」

 

 「でも凄い!ちゃんと揃ってたよ!」

 

 善子・花丸・ルビィも喜ぶ中、俺は素直に喜ぶことが出来なかった。

 

 今の動きって・・・

 

 

 

 『さ~よな~らと~言え~ばき~みの~♪』

 

 

 

 「あっ、電話だ」

 

 「着信音がまさかの『オレンジ』!?」

 

 ポケットからスマホを取り出す千歌さんに、思わずツッコミを入れてしまう俺。

 

 「え、そんなに驚く?」

 

 「だって千歌さん、いつも『オレンジ』って言葉を嫌がるじゃないですか!」

 

 「嫌がってはいないよ!?『ミカン』『ミカン色』を、『オレンジ』『オレンジ色』と一緒にされるのが嫌なの!」

 

 「『ミカン』と『オレンジ』の違いはともかく、『ミカン色』と『オレンジ色』の違いが俺には分からない!」

 

 「何言ってるの!?全然違うでしょうが!」

 

 「ち、千歌ちゃん!早く電話に出ないと!」

 

 「あっ、そうだった!」

 

 曜さんに言われ、慌てて電話に出る千歌さん。

 

 「もしもし・・・あっ、梨子ちゃん!」

 

 どうやら電話は梨子さんからのようだ。

 

 千歌さんは一通り話し終えると、スマホをスピーカーモードにしてこちらへ向けた。

 

 「ちょっと待ってね・・・はい、花丸ちゃん」

 

 「ずらっ!?えーっと・・・もすもす?」

 

 「ひねもす?」

 

 『どこのウサ耳博士よ!?』

 

 「ずらぁっ!?」

 

 梨子さんのツッコミに驚き、俺の背中に隠れる花丸。

 

 やれやれ・・・

 

 「よう・・・五年ぶりだな・・・」

 

 『エレンかっ!今朝会ったでしょうが!』

 

 「落ち着いて下さい、リコ班長」

 

 『それ駐屯兵団の人だから!っていうか誰のせいよ!?』

 

 相変わらずツッコミがキレッキレだった。

 

 流石は梨子さんである。

 

 「で、久しぶりのシャバはどうですか?」

 

 『私は刑務所を出所した元囚人かっ!そもそもついこの間も東京に来たじゃない!』

 

 「あぁ、そういえばそうでしたね」

 

 そう言われてみると、別に久しぶりの東京でもないのか・・・

 

 『・・・フフッ』

 

 電話越しに、梨子さんの笑い声が聞こえる。

 

 「梨子さん?どうかしました?」

 

 『いや、天くんはいつも通りだなって』

 

 クスクス笑っている梨子さん。

 

 『皆がいなくて、少し寂しいなって思ってたんだけど・・・何だか元気が出たわ』

 

 「・・・言ったでしょう、一人じゃないって」

 

 笑みを浮かべる俺。

 

 「離れていても、皆ちゃんと梨子さんを応援してますから。ね、皆?」

 

 「勿論!」

 

 「梨子ちゃん、ファイト!」

 

 「堕天使パワーを送ってあげるわ!」

 

 「それは要らないと思うずら」

 

 「何でよ!?」

 

 ワイワイ騒ぐ俺達。

 

 そんな俺達を、少し離れたところで曜さんが微笑みながら見ていた。

 

 「ほら曜さんも。梨子さんにエールを送ってあげて下さい」

 

 「えぇっ!?えーっと・・・」

 

 突然のことに慌てる曜さん。

 

 その時、千歌さんのスマホからピーピー音が鳴った。

 

 「あぁっ!?電池切れそう!」

 

 「アホ毛で充電すれば良いじゃないですか」

 

 「出来るかっ!梨子ちゃんゴメン!そろそろ切るね!」

 

 『うん、じゃあまたね』

 

 梨子さんとの電話が切れる。

 

 千歌さんは笑みを浮かべると、スマホを胸に抱えた。

 

 「・・・良かった、喜んでるみたいで」

 

 「ですね。皆の声が聞けて、安心したんじゃないですか?」

 

 「それも勿論あると思うけど・・・多分、一番は天くんのおかげじゃないかな」

 

 「俺ですか?」

 

 思わず首を傾げる。何かやったっけ?

 

 「うん。梨子ちゃん、天くんと話してる時凄く楽しそうだもん」

 

 「え、そうですか?」

 

 「ハァ・・・天くんは乙女の気持ちが分かってないねぇ・・・」

 

 「乙女(笑)」

 

 「何で笑ってるの!?」

 

 「いやwww千歌さんがwww乙女ってwww」

 

 「ムキーッ!もう怒ったぞー!」

 

 「行きなさい千歌!やっちゃえ!」

 

 「うわ善子、『ヤッちゃえ』なんてサイテー」

 

 「そういう意味じゃないわよ!?」

 

 「善子ちゃん、それは流石に私でも引くよ・・・」

 

 「花丸ちゃん、善子ちゃんは何かイケないことを言っちゃったの?」

 

 「ルビィちゃんは気にしないでほしいずら。善子ちゃんの心が穢れてるだけの話ずら」

 

 「違うって言ってるでしょうがあああああっ!っていうかヨハネよおおおおおっ!」

 

 「ア、アハハ・・・」

 

 苦笑する曜さん。

 

 その笑みはやはり、いつもより寂しげに見えた。

 

 「・・・何とかしないとな」

 

 それを見て、小さく呟く俺なのだった。




どうも〜、ムッティです。

果林ちゃん可愛くないですか(唐突)

スクスタで新しいストーリーが配信されたのですが、お勉強が出来ない果林ちゃん可愛い( ´∀`)

あんなに大人びているのに、『勉強したくない』と駄々をこねるのが子供っぽくて・・・

そのギャップにやられました(笑)

ニジガクの推しメンは、果林ちゃんで決定かな。

早くアニメ見たいなぁ・・・



さてさて、本編ではやはり曜ちゃんの様子が気になりますね。

果たして天はどう動くのか・・・

これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ

これからもこの作品をよろしくお願い致します!
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