やっぱり青学は強かった!
《曜視点》
「ハァ・・・」
皆と別れ、溜め息をつきながら帰り道を歩く私。
心のモヤモヤが晴れず、気が重い状態が続いていた。
「ホント・・・自分が嫌になる」
憂鬱な気分になりながらも、家に辿り着き玄関のドアを開けた。
「ただいまぁ・・・」
「お帰りなさい、曜さん。ご飯にします?お風呂にします?」
「んー、とりあえずお風呂で・・・え?」
曜『さん』?しかもこの声って・・・
慌てて声のした方を見ると、そこには・・・
「そ、天くんんんんんんんんんん!?」
「どうも~」
にこやかに手を振る天くん。
え、何!?どういうこと!?
「何で天くんが私の家に来てるの!?」
「そこに曜さんの家があるからです」
「そんな某登山家みたいな回答は求めてないよ!?っていうか、私達さっき別れたばかりだよねぇ!?」
「いや、別れたって・・・そもそも俺達付き合ってないでしょ」
「その『別れた』じゃなくて!何で私より天くんの方が家に着くの早いの!?」
「空間移動使ったんで」
「何善子ちゃんみたいなこと言い出してるの!?」
「帰って来て早々、何騒いでるの?」
天くんの後ろから、私のママが呆れた様子でやって来た。
「ちょ、ママ!?天くんが来てるんだけど!?」
「当たり前でしょ?天は今日、ウチに泊まるんだから」
「えぇっ!?」
驚く私。何でそんな話になってるの!?
「私聞いてないんだけど!?」
「あぁ、すいません。曜さんと別れてから決まった話なんで」
「どういうこと!?」
「さっき天から電話もらったのよ。『今日夕飯ご馳走になっても良いですか?』って」
説明してくれるママ。
「それに対して、私はこう答えたの・・・『どうせなら泊まっていきなさい』ってね」
「何で!?」
「だって私と天の仲だも~ん」
「「ね~♪」」
「どんだけ仲良くなってんの!?」
お、恐るべし天くん・・・
流石は『母親キラー』の異名を持つ子・・・
「そしたらさっきのコンビニまで、車で迎えに来てくれたんですよ。いやぁ、やっぱり星さんは優しいなぁ」
「アハハ、天の為なら火の中水の中よ」
「それで私より早かったのね・・・」
それなら、私も乗せてもらえば良かったなぁ・・・
「っていうか、何でお泊まり?前は夕飯食べた後、ママが車で送ってたよね?」
「曜に夜這いしてもらう為に決まってるじゃない」
「何で母親が娘を襲わせようとしてるの!?」
「アンタ達が結婚すれば、天が私の息子になるから」
「完全に私欲じゃん!?」
「俺はもう星さんのこと、本当の母親のように思ってますよ」
「我が息子よっ!」
「母上っ!」
「・・・何かもう、ツッコミに疲れた」
お互いの手を握り見つめ合う二人に、私はもうツッコミを入れる気力も無かった。
ツッコミ役って大変なんだなぁ・・・
「とりあえず、私はお風呂に入るね・・・」
「あ、じゃあ三人で入る?」
「入るわけないでしょうが!」
「曜さん、背中流しますよ」
「何で天くんは乗り気なの!?」
結局ツッコミを入れるハメになる私なのだった。
*****
「いやぁ、相変わらず星さんの料理は美味しいですね」
「アハハ、ありがと。遠慮せずにどんどん食べて」
笑顔でそう言ってくれる星さん。
曜さんのお母さんである渡辺星さんとは、以前夕飯をご馳走になってから親しくさせてもらっていた。
ウエーブのかかったグレーの髪が肩にかかるまで伸びており、その若々しさに最初は曜さんのお姉さんだと勘違いしたほどだ。
「ついでに、曜のことも食べちゃって良いからね」
「ぶふぉっ!?ちょ、ママ!?何言ってんの!?」
「安心して下さい。今夜美味しくいただきます」
「私は何も安心出来ないわっ!」
顔を真っ赤にしながら自分の肩を抱き、俺から距離を取る曜さん。
どうやら警戒させてしまったようだ。
「ねぇねぇ、天は曜のことどう思ってるの?好き?」
「ちょ、何を聞いてくれちゃってんの!?」
「大好きですよ」
「ふぇっ!?」
「人として」
「だから紛らわしいってば!?」
両手で顔を覆う曜さん。耳まで真っ赤になっている。
「どんなところが好き?」
「明るくて元気で、それでいて心の優しいところですかね。一緒に居て楽しいですし、凄く居心地が良いです」
「だってさ曜、良かったね」
「う、うるさいっ!」
「後は何と言っても美少女ですよね。スタイルも良いですし」
「も、もう良いからっ!」
これ以上ないほど顔を赤くし、涙目になっている曜さん。
星さんがニヤニヤしている。
「よし、明日はお赤飯でも炊こうかな」
「余計なことしないでええええええええええっ!?」
曜さんの絶叫が響き渡るのだった。
*****
「曜さん、機嫌直して下さいよ」
「ふんっ!天くんのバカっ!」
ふて腐れたようにベッドにうつ伏せになり、枕に顔を埋めている曜さん。
夕食後、俺達は曜さんの部屋にやって来ていた。お風呂にも入ったので、後は寝るだけである。
「っていうか、年頃の男女を同じ部屋で寝かせるってどういうつもりなの!?」
「それを言ったら、東京に行った時も合宿の時も同じ部屋で寝たじゃないですか」
「どっちも皆が一緒だったじゃん!今回は二人きりじゃん!」
「ですね。じゃあ俺、そろそろ寝ますんで」
「早っ!?天くんは私のこと意識したりしないの!?」
「・・・ハッ」
「腹立つ!この子腹立つ!」
バンバン布団を叩く曜さん。
情緒不安定だなぁ・・・
「まぁ冗談はさておき・・・ちょっと曜さんに聞きたいことがあるんですけど」
「ど、どうしたの急に・・・いきなり真剣な表情になったけど」
「・・・曜さんってレズなんですか?」
「うらぁっ!」
「ごふっ!?」
俺の顔面に曜さんの枕が命中する。
「真面目な顔してどんな質問してんの!?」
「いや、あくまでも俺の予想なんですけど・・・曜さん、千歌さんと仲の良い梨子さんに嫉妬してません?つまり曜さんは、千歌さんが好きなんじゃないかなって・・・そういう意味で」
「違うわ!確かに千歌ちゃんのことは好きだけど、友達としての『好き』だわ!」
「へー」
「一ミリも信じてない!?」
ショックを受けている曜さん。やれやれ・・・
「まぁ、それがあくまでも多分恐らく仮に本当だとして・・・」
「どんだけ信じてないの!?間違いなく本当だから!」
「はいはい・・・で、実際どうなんですか?嫉妬してるんですか?」
「・・・遠慮なく聞いてくるね」
「曜さんみたいに周りに遠慮しがちなタイプの人は、変に濁しながら聞くと誤魔化しながら答えますから。ズバッと踏み込んで聞くのが良いって学んだんですよ」
「何を学んじゃってるの君は・・・」
曜さんは溜め息をつくと、観念したように話し始めた。
「・・・天くんの言う通り、嫉妬してるんだろうね。ホント、自分の心の汚さが嫌になっちゃうよ」
「・・・曜さんって、ホント千歌さんが好きなんですね」
「アハハ、そうだね」
小さく笑う曜さん。
「・・・私ね、昔から『千歌ちゃんと一緒に何かやりたい』ってずっと思ってて。でもなかなか、一緒に何かをやることが出来なくて・・・だから千歌ちゃんが『一緒にスクールアイドルやろう』って誘ってくれた時は、凄く嬉しかったんだ」
笑みを浮かべ、天井を見上げる曜さん。
「でもすぐに梨子ちゃんが入って、二人で歌を作るようになって・・・気付いたら、皆も一緒になってて・・・それで思ったの。もしかして千歌ちゃん、私と二人は嫌だったのかなぁって」
「・・・どうしてそう思うんですか?」
「私、『要領が良い』って思われることが多くて。そういう子と一緒は、やりにくいのかなぁって・・・そんな風に思っちゃって」
寂しそうに笑う曜さん。
あぁもう、ホントにこの人は・・・
「・・・重なるんだよなぁ」
「重なる?」
「あぁ、こっちの話です。それより・・・」
俺は立ち上がると、曜さんの枕を拾い上げ・・・
「“雷●八卦”!」
「ごはぁっ!?」
フルスイングで枕を曜さんの頭に叩き込んだ。
勢いよくベッドに倒れこむ曜さん。
「ちょ、何するの!?」
「いや、ちょっと『渡辺曜をしばきたい症候群』の症状が出たんで」
「何その私に害しかない病気!?」
「まぁそれはともかく・・・とりあえずそこに正座して下さい」
「な、何で・・・」
「良いから正座しろやバカ曜!」
「は、はいっ!」
慌てて正座する曜さん。
「ハァ・・・千歌さんのことが好きっていう割に、千歌さんのこと何も分かってないよアンタ」
「むっ・・・これでも幼馴染だし、よく分かってるつもりだけど・・・」
「分かってたらこんなことで悩まないわ」
溜め息をつく俺。
最早タメ口だが、そんなことはどうでもいい。
「そもそも、曜さんの要領が良いわけないでしょ。制服を見た瞬間にベランダから身を投げるようなバカなんだから」
「うぐっ・・・」
「しかも俺の前で下着を丸出しにするアホなんだから」
「うぐぐっ・・・」
「そしてドジでマヌケなんだから」
「最後の付け足し要らなくない!?『バカ』『アホ』『ドジ』『マヌケ』を揃えたかっただけだよねぇ!?」
「黙って聞けやバカ曜!」
「はいいいいいっ!」
背筋がピーンと伸びる曜さん。やれやれ・・・
「・・・要領が良いように見えるだけで、本当は人一倍努力してることぐらい知ってるよ。バカにすんな」
「っ・・・」
「それを出会って数ヶ月の俺が知ってるのに、幼馴染の千歌さんが知らないわけないでしょ。『やりにくい』なんて思うわけないでしょうが」
曜さんを睨みつける俺。
「千歌さんを舐めんな。幼馴染のアンタが理解してなくてどうすんだよ」
「・・・ゴメン」
俯く曜さん。
俺は溜め息をつくと、曜さんの隣に腰を下ろした。
「・・・今日の最後の練習、梨子さんの歩幅でやってたでしょ」
「っ!?何で・・・」
「いつも練習見てるんだから、分からないわけないでしょ」
千歌さんは梨子さんの歩幅に慣れてしまっていた為、なかなか曜さんに合わせることが出来なかった。
だから曜さんは自分の歩幅を捨て、梨子さんの歩幅を再現することで千歌さんに合わせた。
最後に二人がピッタリ合ったのはその為だ。
「あれじゃ曜さんが報われないでしょうが。どっちかが犠牲になるダブルセンターなんて、見てて悲しいですよ」
「でも、合わせる為にはああするしか・・・」
「言ったでしょ、サポートするって」
曜さんの頭を撫でる俺。
「千歌さんと曜さんの、新しい形を作りましょう。二人にしか出来ない形が、きっとありますから」
「天くん・・・」
「それに・・・そう思ってるのは多分、俺だけじゃないですよ」
「え・・・?」
『曜ちゃあああああんっ!』
曜さんが首をかしげた瞬間・・・外から千歌さんの声がした。
おいおい・・・
「千歌ちゃん!?え、天くんが呼んだの!?」
「いや、全く・・・奇跡的な偶然に、俺も心底驚いてるところです」
まさかこんなタイミングでご本人登場とは・・・
凄いなあの人・・・
『曜ちゃあああああんっ!』
「ほら、呼んでますよ」
曜さんの背中を押す俺。
「行って下さい。そして話をしてきて下さい。今の曜さんには、一番必要なことでしょうから」
「天くん・・・うん、行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
部屋を飛び出す曜さんを、笑みを浮かべて見送る俺なのだった。
どうも〜、ムッティです。
年が明けたということで、母方の親戚が集まる新年会に行ってきました。
従姉妹達と話をしている中、米津玄師さんの話になったんですが・・・
従姉妹「米津玄師って凄いよね。『Lemon』も大ヒットしたし、米津玄師の作った『パプリカ』も凄い人気じゃん」
俺「確かにねぇ」
それを聞いていたおばあちゃんが、会話に入ってきたんですが・・・
おばあちゃん「えっ、米津さんって農家の人なの?」
いや違ううううううっ!?Σ(゜Д゜)
『Lemon』も『パプリカ』も曲のタイトルうううううっ!?Σ(゜Д゜)
笑いに包まれた新年会なのでした(笑)
さてさて、本編では天が曜ちゃんの家にお泊まりするというまさかの展開(笑)
ちなみに曜ちゃんママですが、名前はいつも通り勝手につけました。
渡辺 星(せい)さんです。
確かアニメでチラッと出たはずですが、容姿も性格も勝手に決めてしまいましたので悪しからず・・・
最後に千歌ちゃんが登場しましたが、果たして曜ちゃんのモヤモヤは晴れるのか・・・
これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ
それではまた次回!以上、ムッティでした!