翌日・・・
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト・・・おぉ、揃ってるじゃん!」
「良い感じですわ!」
果南さんとダイヤさんが、千歌さんと曜の動きを賞賛する。
昨日の夜、何度も練習した成果が出たようだ。
「えへへ、やったね曜ちゃん!」
「うんっ!」
嬉しそうにハイタッチする二人。
良かった良かった・・・
「フフッ、微笑ましい顔しちゃって」
後ろから鞠莉が抱きついてくる。
「ウチの敏腕マネージャーが、今回も動いてくれたのかしら?」
「さぁ、どうだろうね」
はぐらかす俺。
「どこぞの鋭いお嬢様が、梨子さんにまで根回ししたおかげじゃないの?」
「あら、知ってたのね」
いたずらっぽく舌を出す鞠莉。
「天も曜の様子に気付いてるだろうし、動いてくれるとは思ったんだけどね。念の為、私も動いておこうと思って」
「お気遣いどうも。今度はもっと率先して動いてくれると助かるんだけど」
「それは天に任せるわ。私はいつまでも貴方の影よ」
「何その黒子みたいなセリフ。俺は火神じゃないんだけど」
「コラーッ!」
そんな会話をしていると、曜がこっちを指差して叫んだ。
「人が一生懸命練習してる時に、二人でイチャイチャしないのっ!」
「いや、曜と千歌さんのイチャイチャには負けるわ」
「誤解を招く発言は止めてくれる!?」
「え、今『曜』って呼び捨てにした・・・?」
「しかもタメ口・・・?」
驚いている皆。
俺の後ろでは、鞠莉が頬を膨らませていた。
「ちょっと天!?どういうことなの!?」
「見ての通りデース」
「私の真似は止めてくれる!?それより、どういうことか説明してちょうだい!」
「色々あったんだよ、色々」
「その色々を教えろって言ってるのっ!」
「んー・・・曜にベッドの上で抱きつかれて、そのまま・・・ね?」
「「「「「「「ええええええええええっ!?」」」」」」」
「ちょっとおおおおおおおおおおっ!?」
皆が驚愕している中、慌てて詰め寄ってくる曜。
「何で最後を意味深にするの!?何も無かったでしょうが!」
「あぁ、俺とは何も無かったよね・・・俺とは」
「何その強調の仕方!?」
「曜は千歌さんと一緒にお風呂に入って、そのまま・・・ね?」
「わざとだよねぇ!?絶対確信犯だよねぇ!?」
曜が俺の胸ぐらを掴んで揺らす中、果南さんが千歌さんに詰め寄っていた。
「千歌!?今の話は本当なの!?」
「うん、曜ちゃんと一緒にお風呂に入ったよ!気持ち良かった!」
「気持ち良かった!?」
「果南ちゃん深読みしないで!?お風呂が気持ち良かったんだよね、千歌ちゃん!?」
「うん!あと曜ちゃんに身体を洗ってもらって、凄くスッキリした!」
「スッキリした!?」
「だから深読み止めて!?背中を流しただけだから!」
「あと曜が、千歌さんを情熱的に抱き締めたりとかね」
「天くんんんんんんんんんん!?余計なこと言わないでくれる!?」
「そうそう、アレはビックリしたよ!ずっと『良いのっ!良いのっ!』って・・・」
「千歌ちゃんんんんんんんんんん!?その言い方は誤解されるってば!?」
曜が悲鳴をあげる中、皆ドン引きしていた。
「曜・・・いつの間にそういう方向に・・・」
「果南ちゃん!?違うからね!?」
「安心しなさい曜。愛の形は人それぞれよ」
「鞠莉ちゃん!?ママと同じこと言わないでくれる!?」
「曜さん・・・私達は温かく見守っていますわ・・・」
「ダイヤさん!?そう言いながら何で距離をとるんですか!?」
「ねぇねぇ、『そういう方向』って何?」
「ルビィは知っちゃダメよ」
「マル達と一緒に大人しく離れるずら」
「だから違うってばああああああああああっ!?」
「まぁそういうわけなんで、皆さんこれからも温かく曜を見守ってあげて下さいね」
「「「「「「はーい」」」」」」
「・・・もう帰りたい」
「曜ちゃん?何で落ち込んでるの?」
首を傾げる千歌さん。
どうやら無自覚で曜を追い込んでいたらしい。
「ほら曜、何落ち込んでんの。練習やるよ」
「元凶は天くんでしょうが!」
ウガーッと威嚇してくる曜に苦笑していると、俺のスマホにメールが届いた。
「ん?何だろう・・・おっ、予備予選の順番が決まったみたいですよ」
「えっ、ホント!?」
「えぇ、割と早い順番ですね。恐らくですけど、午前中には回ってくるんじゃないかと思います」
「午前中ですか・・・となると、尚更前日までに完璧にしておきませんと・・・」
顎に手をやるダイヤさん。
午前中かぁ・・・ん?
「千歌さん、梨子さんのピアノコンクールって、午後からでしたよね?」
「え?あ、うん。だから梨子ちゃんの出番は、夕方くらいになりそうって言ってたよ」
「夕方・・・」
Aqoursの出番は午前中に終わって、梨子さんの出番は夕方頃か・・・
「・・・よし」
「天くん?」
千歌さんが首を傾げる中、俺は皆の顔を見渡すのだった。
「ちょっと相談したいことがあるんですけど・・・」
*****
《梨子視点》
「・・・ふぅ」
練習を終え、椅子にもたれかかる私。
明日はいよいよピアノコンクールということで、今日は最後の追い込みをしていたのだ。
「お疲れ様」
目の前にペットボトルの水が差し出される。
私は笑顔でそれを受け取った。
「ありがとうございます、真姫さん」
「どういたしまして」
微笑む真姫さん。
最後にどうしても真姫さんの意見を聞きたくて、忙しい中をわざわざ来てもらったのだ。
「すみません、お時間を作っていただいて・・・」
「構わないわよ。私も梨子が弾くピアノを聴いてみたかったし」
笑う真姫さん。
「それに、梨子のことは天からも頼まれてるから」
「えっ、天くんが!?」
「えぇ。『ピアノ経験者としてアドバイスを求められるかもしれないから、その時はよろしくね』って」
「・・・もう、天くんったら」
流石は私達のマネージャー、その辺りもフォローしてくれていたようだ。
「ところで梨子、この後って時間あるかしら?」
「え?えぇ、特に予定は無いですけど」
「もし良かったら、一緒に夕食を食べない?この辺りに美味しいお店があるのよ」
「私で良ければ喜んで」
「フフッ、決まりね」
笑みを浮かべる真姫さん。
その時、真姫さんのスマホが鳴った。
「あら、誰かしら・・・って、もう着いたの?早いわねぇ」
「どうかしたんですか?」
「実は今日の夕食、あと二人来る予定でね。もうお店に着いちゃったんですって」
苦笑する真姫さんなのだった。
「私達も早く行きましょう。一人はともかく、もう一人は待たせると怒られちゃうわ」
*****
《梨子視点》
「梨子!」
「海未先生!」
真姫さんとお店に行くと、お店の前で待っていた海未先生が笑顔でハグしてくれた。
「お久しぶり・・・というほどでもありませんが、また会えて嬉しいです」
「私もです。お元気そうで」
「や~ん♡可愛い~♡」
「うわっ!?」
海未先生の隣にいた人に、いきなり抱きつかれる。
えっ、何!?
「ことり、初対面でいきなり抱きつくのは止めなさい。梨子が戸惑っているでしょう」
「アハハ、ゴメンゴメン。可愛かったからつい」
「『ことり』って・・・もしかして、南ことりさんですか!?」
「はい、南ことりです♪」
笑顔で自己紹介してくれる女性・・・南ことりさん。
この人が・・・
「っていうかアンタ達、来るの早いわよ」
呆れている真姫さん。
「待ち合わせの時間まで、まだ十五分もあるじゃない」
「何を言っているのですか、真姫。五分前行動は常識ですよ」
「いや、だからまだ十五分もあるんだってば。しかも海未から『着きました』っていう連絡来たの、三十分前だったでしょうが」
「何を言っているのですか、真姫。三十分前行動は常識ですよ」
「さっきより時間延びてるじゃない!?それで待たせると怒るんだから、理不尽にも程があるわよ!?この黒歴史ポエマー!」
「ちょ、言ってはならないことを言いましたね!?このサンタクロース信者!」
「アンタもそれ持ち出すの止めなさいよ!?もう真実知ってるから!」
「二人とも相変わらずだね・・・」
苦笑する南さん。
「梨子ちゃん、私達は先に中に入ろう?」
「は、はい・・・」
ギャーギャー喚く二人をよそに、先にお店の中に入る私達なのだった。
*****
《梨子視点》
「そっかぁ、天くんはマネージャーとして頑張ってるんだね」
「えぇ、本当に支えてもらってます」
食事をしつつ、ことりさんと会話する私。
最初は『南さん』と呼んでいたのだが、『海未ちゃんと真姫ちゃんは名前呼びなのに、私だけ苗字呼びは嫌だ』と言って拗ねてしまったのだ。
なのでそこから名前呼びに変更したのである。
「あぁ、何か天くんに会いたくなってきちゃった・・・今から内浦行ってくる!」
「落ち着きなさい、天依存症患者」
隣に座っていた真姫さんが、呆れたようにことりさんの肩を掴む。
「全く・・・ことりは本当に天を溺愛してるんだから・・・」
「それは貴女も同じでしょう、真姫」
「いや、海未ちゃんも大概だよね」
三人は顔を見合わせると、おかしそうに笑い出した。
仲が良いなぁ・・・
「皆さん、天くんのことが本当に大好きなんですね」
「勿論!」
笑顔で頷くことりさん。
「天くんが内浦へ行くって知った時は、私も一緒について行こうと思ったもん!」
「あぁ、あの時は大変でしたね・・・本気で行く気でしたもんね・・・」
「挙句の果てには大学まで辞めようとして・・・止めるの大変だったわ・・・」
遠い目をしている海未先生と真姫さん。
そ、そんなことがあったのね・・・
「でも、どうしてそんなに天くんのことを・・・?」
「んー、そうだねぇ・・・」
ことりさんは宙を見上げると・・・柔らかい笑みを浮かべた。
「・・・救われたから、かな」
「救われた・・・?」
「昔から私、人に遠慮しちゃうところがあってね。幼馴染の穂乃果ちゃんや海未ちゃんにさえ、ちょっと遠慮しちゃったりして・・・それで一度、μ'sを辞める寸前までいっちゃったことがあるの」
「えぇっ!?」
驚く私。
それって結構な事件なんじゃ・・・
「穂乃果ちゃんとも喧嘩しちゃって、そのまま喧嘩別れしちゃいそうだったんだけどね・・・そんな時、初めて天くんに怒られちゃって」
苦笑することりさん。
「『本当の気持ちに蓋をしたまま過ごしたって、辛い思いをするのはことりちゃんなんだよ!?』って。『そんな辛そうなことりちゃんを見るのは、俺も辛いんだよ!』って。あの時は泣いちゃったなぁ」
「そうだったんですね・・・」
「うん。その後穂乃果ちゃんとは仲直り出来て、μ'sも辞めずに済んで・・・だから天くんには、本当に感謝してるんだ」
笑みを浮かべることりさん。
「その一件があってからは、遠慮しすぎることも無くなったっていうか・・・特に天くんの存在が今まで以上に大きくなって、天くんの前ではありのままの自分でいられるようになったんだよね」
「ありのまま過ぎて、見てるこっちは胸焼けしそうですけどね・・・」
「あの甘々空間は、誰も入り込めないものね・・・」
「アハハ・・・」
げんなりした海未先生と真姫さんを見て、苦笑してしまう私。
曜ちゃんからも聞いてはいたけど、よほど凄いらしわね・・・
「そういえば梨子ちゃん、曜ちゃんは元気でやってる?」
「曜ちゃんですか?えぇ、元気ですよ」
「それなら良いんだけど・・・あの子、私と同じ匂いがするんだよね。人に遠慮しがちっていうか・・・」
「あー・・・確かに、そういうところはあるかもしれませんね」
「あっ、曜といえば・・・」
海未先生は何かを思い出したようで、真姫さんとことりさんに呆れた視線を向けた。
「二人とも、曜に天と絵里が喧嘩していることを話したでしょう。可哀想に、曜はそのことで思い悩んでいましたよ?」
「えぇっ、ホント!?」
「それは悪いことしたわね・・・」
「まぁ私の方でフォローはしておいたので、大丈夫だとは思いますが・・・」
「あっ、それなら大丈夫だと思います」
慌てて言葉を挟む私。
「実は私達、曜ちゃんから天くんとお姉さんの件を聞いたんですけど・・・その時に曜ちゃん、『絶対に仲直りするって海未先生が言ってたから大丈夫』って笑顔で言ってましたから。特に悩んでいる様子も無かったので」
「そうでしたか・・・それなら良かったです」
ホッとした様子の海未先生。
「ですが確かに、曜はことりに似て遠慮がちなところがありますからね。それが原因で思い悩むことが無いと良いのですが・・・」
「天くんが側にいるんだから大丈夫だよ。もしそうなっても、私の時みたいにちゃんと曜ちゃんを支えてくれるはずだよ」
「そうね。それで曜がことりみたいに、天とイチャイチャしてなきゃ良いけど・・・」
「やっぱり内浦行ってくる!」
「落ち着きなさいことり!?急にどうしたのですか!?」
「天くんとイチャイチャするのは私の特権なのっ!」
「いつからアンタの特権になったのよ!?」
騒ぐ三人を見て、思わず笑ってしまう私。
ホントに愛されてるわね、天くんは・・・
「っ・・・」
何故かまたモヤモヤしてしまった。
何なのかしら、この感じ・・・
「梨子?どうしたのですか?」
「い、いえっ!皆、今頃どうしてるかなぁと思いまして!」
慌てて誤魔化す私。
「そうね。予備予選も明日だものね」
真姫さんはそう言って微笑むと、私の方を見た。
「梨子は仲間を信じて、明日はコンクールに集中しなさい。私達も応援に行くから」
「梨子の演奏、楽しみにしてますね」
「梨子ちゃん、ファイト!」
「あ、ありがとうございます!」
真姫さんの言う通り、今は仲間を信じてコンクールに集中しないと・・・
気持ちを入れ直す私なのだった。
どうも〜、ムッティです。
英語が話せるようになりたい(唐突)
この前駅のホームで電車を待っていたら、外国人の女の子三人に話しかけられまして・・・
どの電車に乗れば目的地に行けるのか分からず、自分に聞いてきたみたいで・・・
その時は英語が話せる人と一緒にいたので助かったのですが、『英語を理解して話せるようになりたい』と思いました(´・ω・`)
2020年は、改めて英語を学んでみようかな・・・
さてさて、本編では曜ちゃんがあらぬ誤解を受けましたが(笑)
梨子ちゃんがμ'sのメンバー三人と食事してましたね。
ここでの会話から分かると思いますが、天が曜ちゃんと重ねていたのはことりちゃんでした。
・・・はい、気付いてましたよね(笑)
感想でも『ことりちゃんですよね?』という声を多くいただきましたもんね(笑)
そして梨子ちゃん、またしてもモヤモヤしている模様・・・
果たしてピアノコンクールはどうなるのか・・・
そして予備予選はどうなるのか・・・
これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ
それではまた次回!以上、ムッティでした!