海未ちゃんが大学四年生なので、一学年下の凛ちゃんは大学三年生のはずですよね・・・
修正しておきました。すみません。
ちなみにタイトルは、乃木坂46の『今、話したい誰かがいる』の歌詞から取りました。
果たして、このタイトルの意味とは・・・
《梨子視点》
「すぅ・・・はぁ・・・」
椅子に座り、深呼吸を繰り返す私。
既にコンクールは始まっており、私は自分の控え室で出番を待っていた。
「・・・大丈夫」
サクラピンクのシュシュを着けた右手首を、左手でギュっと握る。
「私は一人じゃない・・・」
緊張している自分を、奮い立たせるように呟く。
そう、私は一人じゃない。天くんもそう言って・・・
「っ・・・」
天くんの顔が思い浮かぶ。
天くん、今頃何してるのかな・・・
「っ・・・ダメダメ!」
首をブンブン横に振る。
天くんのことを思い出すと、寂しさが募って無性に会いたくなってしまう。
今は本番に向けて、集中しないと・・・
「しっかりしなさい、私。心を落ち着かせるのよ」
「そうそう、人前でパンツを晒さないように気を付けないと」
「嫌なこと思い出させないでよ!?二回も天くんに見られて、死ぬほど恥ずかしかったんだから!」
「一回目は桜色、二回目は白・・・三回目は何色でしょうね?」
「遠回しに今日の下着の色を聞くの止めてくれる!?っていうかいい加減に・・・」
そこまでツッコミを入れたところで、私はハッとした。
私、今誰と会話を・・・っていうかこの声って・・・
恐る恐る後ろを振り向くと、そこには・・・
「お疲れ様です、梨子さん」
天くんがニッコリ笑って立っていた。
う、嘘でしょ・・・?
「・・・夢?」
「えいっ」
「むぐっ!?」
思いっきり両頬を引っ張られる。
しっかり感触がある・・・夢じゃない・・・!
「おぉ、柔らかい・・・ちょっとクセになるかも」
「ふぁ、ふぁふぁふぃふぇ!(は、離して!)」
「はいはい」
大人しく離してくれる天くん。
私は両頬を擦りつつ、未だ信じられない気持ちで天くんを見つめた。
「な、何でここにいるの!?」
「空間移動を使いました」
「何その善子ちゃんみたいなセリフ!?」
「いや、空間移動=善子っていう共通の認識は何なんですか?」
呆れている天くん。
だって何か善子ちゃんっぽいし・・・
「って、そんなことはどうでもいいの!」
「うわ、酷い・・・善子のことを『どうでもいい』だなんて・・・」
「善子ちゃんのことじゃないわよ!?それより話を逸らさないで!」
ここで天くんワールドに引き込まれるわけにはいかない。
とりあえず、現状を把握しないと・・・
「そもそも予備予選はどうしたの!?」
「バッチリ見届けてきましたとも。凄く良いパフォーマンスでしたし、あれなら問題無く通過出来ると思いますよ」
「ホント!?良かったぁ・・・じゃなくて!じゃあ何でここにいるの!?」
「Aqoursの出番が終わってすぐ、会場を出て新幹線に乗ったんですよ。おかげで梨子さんの出番が来る前に、会場に着くことが出来ました」
笑っている天くん。
「ホント・・・駅まで送ってくれた星さんと、会場まで送ってくれた凛ちゃんには感謝しないと」
「星さん?凛ちゃん?」
「曜のお母さんと、μ'sの星空凛ちゃんです」
「えぇっ!?今、曜ちゃんのこと呼び捨てにした!?」
「食いつくところはそこですか・・・まぁ色々ありまして、本人から『呼び捨てにしてほしい』と言われたんです」
「・・・そうなんだ」
またしてもモヤッとしてしまう。
本当にもう・・・
「っていうか、いつ控え室に入ったの?そもそも関係者以外立ち入り禁止よ?」
「梨子さん、一度控え室を出ましたよね?驚かせようと思って、あの時に入らせてもらいました。ちなみにここに来る前に奈々さんに会って、関係者用のパスを借りたので何の問題も無く入って来れましたよ」
「お母さん・・・」
頭を抱える私。
何で勝手にパスを貸しちゃうかなぁ・・・
「・・・どうして来てくれたの?」
「え・・・?」
「どうしてわざわざ・・・ここまで来てくれたの?」
天くんはAqoursのマネージャーだ。
本来であれば、予備予選を一番に優先しなければいけないはずなのに・・・
いくらAqoursの出番を見届けたとはいえ、マネージャーとして皆の側にいてあげるべきなのに・・・
どうして私なんかのところに・・・
「どうしてって・・・そんなの決まってるじゃないですか」
あっけらかんと答える天くん。
「俺がAqoursのマネージャーだからですよ」
「だから、それならAqoursを優先すべきで・・・!」
「いるじゃないですか」
「え・・・?」
「いや、だから・・・いるじゃないですか。俺の目の前に、Aqoursのメンバーがもう一人」
私を指差す天くん。
「俺はAqoursのマネージャーですから。Aqoursのメンバー全員をサポートするのが、俺の仕事です」
当然と言わんばかりの表情を見せる天くん。
「メンバーの一人が、東京で頑張ってるんですよ?そりゃ来るに決まってるでしょう。サポートは全然出来ませんでしたけど、せめて応援ぐらいはと思いまして」
苦笑する天くん。
「当然皆にも話をして、ちゃんと了解を得てますよ。『私達の分まで応援してきてくれ』ですって」
屈託の無い笑みで語る天くんを、私はただ呆然と見つめていた。
じゃあ天くんは、最初から応援に来てくれるつもりだったってこと・・・?
他でもない、私の為に・・・?
「それで・・・来てくれたの・・・?」
震える声でそう尋ねた。
「東京までわざわざ・・・新幹線に乗ってまで・・・?」
「梨子さんを応援する為ですもん。大した出費でも無いですよ」
微笑む天くん。
「それに・・・約束したじゃないですか」
「約束・・・?」
「ピアノコンクールに出ることを決めた時、梨子さん俺に言いましたよね?『Aqoursのこと・・・頼むわね』って。俺はこう答えたはずですよ。『勿論です。マネージャーですから』って」
「っ・・・!」
「その『Aqours』に、貴女も入ってるじゃないですか。俺は最初からそのつもりで、ああいう風に答えたんですよ?」
悪戯っぽく笑う天くん。
「どうにかして、両方を見届ける方法を考えてたんですよね。いやぁ、Aqoursの出番が午前中で本当にラッキーでした。おかげで梨子さんの出番に間に合ってぇっ!?」
限界だった。
笑顔で話している天くんに、私は思いっきり抱きついた。
嬉しくて嬉しくて・・・涙が止まらなかった。
「ちょ、梨子さん!?何で泣いてるんですか!?」
慌てている天くん。
私は気付いてしまった。
もしかしたら、薄々は気付いていたのかもしれない。
気付かないフリをして、目を逸らしていたのかもしれない。
それでも・・・たった今、自分の気持ちを確かに認識してしまった。
私は・・・天くんのことが好きなのだと。
この心の優しい男の子に・・・恋をしているのだと。
誰よりも私に寄り添ってくれる、誰よりも私の味方でいてくれる彼に・・・惚れてしまったのだと。
今ならハッキリと分かる。
天くんと鞠莉さんが一緒に寝ているところを見た時や、天くんについて楽しそうに話す真姫さん達を見た時・・・
あの時に感じたモヤモヤは、嫉妬だったんだ・・・
皆に嫉妬してしまうくらい、私は天くんに想いを寄せていたのね・・・
「ありがとう・・・来てくれて・・・本当に・・・ありがとう・・・!」
「・・・どういたしまして」
優しく微笑み、私を抱き締めてくれる天くん。
天くんと抱き合うのは初めてじゃないのに、胸のドキドキが止まらない。
天くんの温もりに包まれながら、今までで一番の幸せを感じる私なのだった。
エンダアアアアアアアアアアイヤアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
・・・いや、別に結ばれたわけでは無いんですけど(笑)
どうも〜、ムッティです。
さてさて、遂に梨子ちゃんが自分の気持ちに気付きました!
正真正銘、ガチヒロイン候補の誕生です!
・・・いや、他の皆もれっきとしたヒロイン候補ですけどね(笑)
今回天への気持ちに気付いた梨子ちゃんですが、正式なヒロインに決まったわけではありません。
他の皆も天に対して、多かれ少なかれ好意を抱いてますからね。
それが恋になるかはともかく、他のメンバーもまだまだヒロインになる可能性があります。
この先ヒロインが梨子ちゃんになるのか、それとも他の子がヒロインになるのか・・・
それを決めるのは・・・未来の自分です( ̄ー ̄)ドヤ
・・・すみません、優柔不断なせいで決まってないだけです(土下座)
この先物語を進めていく上で、『梨子ちゃんが良いな』と思えば梨子ちゃんにしますし・・・
『他の子が良いな』と思えば他の子にしますし・・・
それは本当に分からないので、皆さんにはこれからもこの作品にお付き合いいただけると幸いです。
いやホント・・・見捨てないで下さい(土下座)
さて、いよいよピアノコンクール本番・・・
果たして梨子ちゃんは、良い演奏が出来るのでしょうか・・・
次の話は明日投稿予定です!
それではまた次回!以上、ムッティでした!