いつの間にか2月になっていたんだ・・・
翌日・・・
「あぁ、緊張する・・・!」
「落ち着きなよ」
そわそわしている梨子を見て、思わず笑ってしまう俺。
仕事へと向かう希ちゃんを見送った俺は、梨子が借りているスタジオへとやってきていた。
今日はラブライブ予備予選の結果発表がある為、梨子はずっとそわそわしているのだ。
「発表までまだ時間があるし、今から緊張してたら身体がもたないよ」
「・・・天くんは落ち着いてるわね」
「μ'sのマネージャーをやってた頃、嫌というほど経験したからね」
苦笑する俺。
「もう俺達に出来ることは何も無いし、後はなるようにしかならないから。開き直ることも大事だって、あの時身を持って学んだよ」
「・・・それもそうね。そわそわしても仕方ないか」
気持ちを落ち着かせるように、深呼吸を繰り返す梨子。
「すぅ・・・はぁ・・・」
「ヒッヒッフー・・・ヒッヒッフー・・・」
「いやそれラマーズ法よねぇ!?私は妊婦じゃないわよ!?」
「あれ?出産間近じゃなかったっけ?」
「違うわ!そもそも誰の子を身ごもるのよ!?」
「俺しかいないじゃん」
「ふぇっ!?」
何故か急に顔を赤くする梨子。
あれ?どうしたんだろう?
「き、急にそんな・・・いきなり言われても・・・」
「おーい?梨子?」
「わ、私にだって・・・心の準備ってものが・・・」
「もしもーし?聞こえてる?」
「で、でも・・・天くんが望むなら・・・」
「えいっ」
「あたっ!?」
梨子の頭にチョップをお見舞いする。
「ちょっと!?いきなり何するのよ!?」
「あ、戻ってきた」
完全に心ここにあらずといった感じで、何か色々考え事してたもんなぁ・・・
そんなに予備予選の結果が心配なんだろうか・・・
「まぁとにかく、ここにいると余計に結果が気になるだろうからさ。もうすぐ約束の時間だし、そろそろ外に出ない?」
「・・・そうね。気分転換も兼ねて、外の空気を吸いに行きましょうか」
深く息を吐き、立ち上がる梨子。
実は昨日凛ちゃんと、この近くのカフェでお茶をする約束をしていたのだ。
昨日の演奏を聴いてすっかり梨子のファンになった凛ちゃんは、梨子と色々な話をしてみたいらしい。
「そういえば、凛ちゃんが梨子に紹介したい人がいるんだってさ。今日連れてくるって言ってたよ」
「紹介したい人?誰かしら?」
「会うまで内緒って言ってたけど・・・あの人しかいないだろうね」
「え・・・?」
首を傾げている梨子。
「天くん、心当たりあるの?」
「勿論。凛ちゃんといったらあの人だもん」
「むぅ・・・」
何故か頬を膨らませている梨子。
「ん?どうしたの?」
「・・・凛さんのこと、理解してるんだなぁって」
「え?もしかして妬いてる?」
「べっつにぃ?」
ぷいっとそっぽを向く梨子。
やれやれ・・・
「心配しなくても、今の俺はAqoursのマネージャーだから。ほら、早く行くよ」
梨子の手を引いて歩き出す。
全く、梨子は心配性なんだから・・・
「そういうことじゃないんだけど・・・まぁ、今はそれで良いわ」
梨子は苦笑しながら何かを呟くと、俺の手をギュっと握り返すのだった。
*****
「天くううううううううううんっ!」
「俺は“みがわり”を使った!」
「キャアッ!?」
俺の身代わりの梨子が現れた!
俺に代わって身代わりの梨子が攻撃を受けた!
「ちょ、何で急に私の後ろに隠れるのよ!?」
「凛ちゃんの“すてみタックル”のヤバさを舐めちゃいけない。俺のHPが一撃で持っていかれるからね」
「それをもろに受けた私の身にもなってくれる!?」
「大丈夫。女の子が相手だと、凛ちゃんの攻撃力は半減するから」
「どんな特性!?」
「おぉ、梨子ちゃん細い!肌もスベスベにゃ!」
「凛さん!?変なところ触らないで下さい!」
「凛ちゃ~ん!」
待ち合わせしていたお店の前でそんなやり取りをしていると、凛ちゃんの後ろから一人の女性が走ってくる。
女性は俺達のところに辿り着くと、苦しそうに両膝に手をついた。
「ハァッ・・・ハァッ・・・もう、急に走り出さないでよぉ!」
「にゃはは、身体が勝手に動いちゃったんだにゃ」
「全くもう・・・」
ようやく落ち着いたのか、ゆっくりと息を吐く女性。
そして顔を上げ、俺の方を見て優しく微笑む。
「久しぶり、天くん」
「久しぶり、花陽ちゃん」
俺も笑みを浮かべる。
一方、梨子は驚きの表情を浮かべていた。
「えっ、もしかして・・・μ'sの小泉花陽さん!?」
「あぁっ!?Aqoursの桜内梨子さんですよね!?」
「えぇっ!?」
急に花陽ちゃんにガシッと手を握られ、動揺している梨子。
「まさか本物に会えるなんて・・・感激です!」
「え、えーっと・・・」
キラキラした目で見つめられ、リアクションに困っている梨子。
まさかμ'sのメンバーからこんな反応をされるなんて、想像もしてなかっただろうな・・・
「花陽ちゃん、ホントにスクールアイドル大好きだよね」
「当然だよ!」
力説する花陽ちゃん。
「しかもAqoursは、今凄く勢いのあるグループの一つなんだよ!?そんなグループの人に会えるなんて・・・奇跡だよ!」
「・・・何か今、花陽ちゃんと千歌さんが重なって見えたわ」
「奇遇ね天くん。私も全く同じことを思ったわ」
苦笑する梨子。
「っていうか梨子、よく花陽ちゃんのこと分かったね?」
「ほら、ルビィちゃんが鞄に缶バッジ付けてるから」
「あぁ、なるほど・・・ルビィは花陽ちゃんのファンだもんね」
納得する俺。一方、花陽ちゃんは驚きの表情を浮かべていた。
「えっ、ルビィちゃんって・・・まさか、Aqoursの黒澤ルビィさんのこと!?」
「そうそう。ルビィはμ'sのことが大好きで、推しメンが花陽ちゃんなんだよ。花陽ちゃんのことが好き過ぎて、鞄に花陽ちゃんの缶バッジ付けてるくらいだし」
「うぅ・・・生きてて良かった・・・!」
「そこまで!?」
泣いている花陽ちゃんにツッコミを入れる梨子。
花陽ちゃんは相変わらずだなぁ・・・
「ねぇねぇ天くん、Aqoursに凛を推してくれてる子はいないのかにゃ?」
「あぁ、花丸が凛ちゃん推しだよ。『Love wing bell』の時の凛ちゃんの写真を、食い入るように見てたもん」
「ホントかにゃ!?」
「良かったね、凛ちゃん!」
「うん!メッチャ嬉しいにゃ!」
手を繋ぎ、嬉しそうに笑い合う花陽ちゃんと凛ちゃん。
俺にはそんな二人の姿が、ルビィと花丸に重なって見えた。
「・・・俺もすっかりAqoursに染まったなぁ」
苦笑しながら呟く俺なのだった。
*****
《梨子視点》
「んー、このケーキ美味しい♪」
幸せそうな表情でケーキを頬張る花陽さん。
お店に入った私達は、まったりとティータイムを過ごしていた。
「ほら天くん、これ美味しいよ!あ~ん♪」
「あ~ん・・・ん、ホントに美味しいね」
「でしょでしょ!?」
「こっちのケーキも美味しいよ。あ~ん」
「あ~ん・・・んー、美味しい!」
「・・・この二人ってカップルなんですか?」
「全く違うけど、気にしたら負けにゃ」
苦笑する凛さん。
「ことりちゃんみたいにベタベタくっつくわけじゃないけど、天くんとの距離の近さではかよちんも負けてないにゃ。かよちんは天くんをもの凄く可愛がってるし、そんなかよちんに天くんもよく懐いてるんだにゃ」
「・・・そういえば前に、ことりさんと花陽さんを『天使だ』って言ってましたね」
カップルでも無いのに、ここまで距離が近いなんて・・・
もっと私も積極的に行くべきかしら・・・
「そうそう天くん、時間があったら穂乃果ちゃんに会いに行ってあげて。天くんにもの凄く会いたがってたから」
「ホントに?ちょうどこの後『穂むら』に行く予定だから、そこで会えると良いな」
嬉しそうに笑う天くん。
「っていうか、穂乃果ちゃん大学卒業出来るの?海未ちゃんに聞いたけど、単位ギリギリらしいじゃん」
「まぁ最初の頃、にこちゃんや凛ちゃんと一緒に遊び呆けてたからねぇ・・・」
「うっ・・・」
花陽さんにジト目で見つめられ、気まずそうに顔を逸らす凛さん。
「同じ大学に私達がいたから、何とか勉強を教えられたけど・・・そうじゃなかったら留年してたかもね」
「えっ!?」
驚く私。
「μ'sの皆さんって、皆同じ大学に通われてるんですか!?」
「正確に言うと、ことりちゃんと真姫ちゃん以外は皆同じ大学だよ」
答えてくれる花陽さん。
「ことりちゃんは服飾系の大学、真姫ちゃんは医大にそれぞれ進学したの。それ以外の皆は、音ノ木坂大学に進学したんだよ」
「それぞれ学部や学科は違うけど、キャンパスは一緒だからよく会ってるんだにゃ」
「そうだったんですか・・・」
九人中七人が同じ大学って、ある意味凄いわね・・・
「まぁにこちゃん・希ちゃん・絵里ちゃんは卒業しちゃったから、残ってるのは私達と穂乃果ちゃん・海未ちゃんだけなんだけどね」
苦笑する花陽さん。
「穂乃果ちゃんと海未ちゃんが卒業したら、とうとう私達だけになるのかぁ・・・寂しくなるね、凛ちゃん」
「大丈夫にゃ。穂乃果ちゃんはきっと留年してくれるにゃ」
「うん、縁起でも無いことをサラッと言うの止めよう?」
「いや、穂乃果ちゃんなら有り得るよね」
「天くんまで何てこと言うの!?」
花陽さんのツッコミ。
あれ?穂乃果さんってμ'sのリーダーよね?
何でこんなに信用されてないのかしら・・・
「まぁ穂乃果ちゃんはともかく、まだ雪穂ちゃんと亜里姉がいるんだしさ。そう寂しがることもないって」
笑いながら言う天くん。
確か雪穂さんって、穂乃果さんの妹さんなのよね・・・
そして亜里沙さんが、天くんの二番目のお姉さんだったかしら?
「あっ、亜里沙ちゃんといえば・・・」
少し言いにくそうに口ごもる花陽さん。
「天くん・・・亜里沙ちゃんから、絵里ちゃんのこと聞いてる・・・?」
「絵里姉のこと・・・?」
首を傾げる天くん。
そんな天くんに、花陽さんは心配そうな表情で告げるのだった。
「絵里ちゃん、体調を崩しちゃったみたいで・・・寝込んでるんだって」
どうも〜、ムッティです。
アニメ一期十一話の内容も終わり、いよいよ十二話の内容へと移るわけですが・・・
遂に白米大好き娘こと、小泉花陽ちゃんが登場しました\(^o^)/
案の定、天との距離の近さが・・・(笑)
そして何やら、絵里ちゃんは体調を崩している模様・・・
果たして天はどうするのか・・・
これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ
それではまた次回!以上、ムッティでした!