ヤバい、真姫ちゃん可愛い。
「送ってくれてありがとね、天くん」
「どういたしまして」
梨子の言葉に、笑みを浮かべる俺。
花陽ちゃんや凛ちゃんと別れた俺達は、梨子が泊まっているホテルへとやって来ていた。
「今日は楽しかったわ。花陽さんに凛さん、雪穂さんにも会えたし」
「なかなか個性的だったでしょ?」
「フフッ、ホントにね」
クスクス笑う梨子。
「でも皆、本当に天くんのことを大切に想ってるのね。羨ましいわ」
「・・・仲間だからね」
照れ笑いを浮かべる俺。
「ホント・・・良い仲間に恵まれたと思うよ」
穂乃果ちゃんにも会いたかったなぁ・・・
まぁ、次は会えるかな。
「じゃあ明日は、夕方頃に内浦に帰ろうか」
「私はそれで大丈夫だけど・・・本当に良いの?」
「何が?」
「その・・・お姉さんと会わなくて」
「あぁ、そのことね」
苦笑する俺。
どうやら心配をかけていたらしい。
「本当は今回、会いに行こうかと思ってたんだけどね・・・体調を崩してるんじゃ、俺が行くのは良くないと思うから」
「でも、お姉さんは喜ぶんじゃ・・・」
「・・・喜んでくれたら良いんだけどね」
絵里姉の場合、人に弱っているところを見せたがらないからなぁ・・・
特に絶賛喧嘩中の俺が相手じゃ、なおさら意固地になるだろう。
体調が悪い今、気が休まらなくなるような状況にするのは良くない。
「・・・会いに行くのは次の機会にするよ。俺が行ったところで、今の絵里姉にしてあげられることもないから」
「天くん・・・」
心配そうに俺を見る梨子。
その時・・・
「天・・・?」
「え・・・?」
突然声をかけられ、振り向く俺。
そこに立っていたのは・・・
「あ、亜里姉!?」
「やっぱり天だああああああああああっ!」
「ごふっ!?」
「そ、天くんんんんんんんんんんっ!?」
亜里姉のとっしん!
急所に当たった!
「天っ!天っ!天っ!」
「ちょ、落ち着いて亜里姉!?」
亜里姉のほっぺすりすり!
天はまひして技がでにくくなった!
「落ち着けっつってんだろうがああああああああああっ!」
「ぐはっ!?」
天のインファイト!
急所に当たった!
亜里姉はたおれた!
「ふぅ・・・何とか倒したわ」
「何で倒してるのよ!?『亜里姉』ってことは天くんのお姉さんよねぇ!?」
「倒したっていいじゃないか。うざいんだもの」
「相田●つをの名言をパクらないのっ!」
「まぁ冗談はさておき・・・亜里姉はこれぐらいじゃビクともしないから大丈夫」
「いえーい!」
「嘘でしょ!?」
早くも復活している亜里姉。
まぁちゃんと加減もしたしな。
「天ああああああああああっ!」
「はいはい」
抱きついてくる亜里姉の頭を、苦笑しながら優しく撫でる。
やっぱりこのプラチナブロンドの髪、いつ見ても綺麗だよなぁ・・・
「もうっ!東京に来てるなら連絡してよ!?会いたかったんだよ!?」
「ゴメンゴメン。急に来ることになったもんだから」
「全くもう・・・んっ?」
梨子に気付く亜里姉。
次の瞬間、顔がパァッと輝く。
「もしかして、Aqoursの桜内梨子ちゃん!?」
「は、はい・・・」
「ハラショオオオオオッ!」
「キャッ!?」
梨子に勢いよく抱きつく亜里姉。
「こんな所で会えるなんて!サインもらって良い!?」
「サ、サイン!?私の!?」
「勿論!今ちょっと色紙を・・・」
「落ち着けや」
「ごふっ!?」
天のからてチョップ!
急所に当たった!
亜里姉はたおれた!
「やれやれ、手のかかる姉だな」
「こ、これが絢瀬家の日常なの・・・?」
ドン引きしている梨子。
いや、別に日常ではないんだけど・・・
「ほら亜里姉、早く起きて」
「ふっかーつ!」
「・・・私には理解できない」
頭を抱えている梨子。
まぁ梨子のことはさておき・・・
「ところで亜里姉、何でこんな所にいるの?」
「夕飯の買い出しに来たんだよ。まさか天に会えるとは思わなかったなぁ」
「・・・まさかとは思うけど、亜里姉が夕飯を作ってるわけじゃないよね?」
「え?最近は私が作ってるけど?」
「・・・絵里姉が体調を崩した原因は、亜里姉の料理だな」
「酷い!?」
ショックを受ける亜里姉。
亜里姉、料理苦手だもんなぁ・・・
「俺は忘れない。炭化した魚が食卓に出た日のことを」
「あ、あれはちょっと焼き過ぎちゃって・・・」
「俺は忘れない。甘いおにぎりを食べさせられた日のことを」
「さ、砂糖と塩を間違えちゃって・・・」
「俺は忘r・・・」
「もう勘弁してええええええええええっ!?」
泣きながら土下座する亜里姉。
やっと自分の非を認めたな・・・
「で?今度は何をやらかしたの?」
「何もやらかしてないの!お姉ちゃんが体調を崩してるのは、ちょっと夏風邪をひいちゃったからなの!」
「へー」
「信頼ゼロ!?」
まぁ、冗談はこれくらいにしておいて・・・
「花陽ちゃんから、『寝込んでる』って聞いたけど・・・そんなに体調悪いの?」
「・・・うん。横になってないとしんどいんだと思う」
暗い表情の亜里姉。
「仕事の方が忙しいみたいで、ここ最近は帰って来るのも遅かったんだよ。疲れが溜まって夏風邪をひいた挙句、それをこじらせちゃった感じかな」
「そっか・・・」
絵里姉のことだから、また必要以上に頑張ってしまったんだろう。
ホント、昔から変わらないな・・・
「後はまぁ・・・ストレスじゃないかな」
「ストレス?」
「・・・職場の方で、あまり上手くいってないみたい。家に帰って来てお酒呑んで酔いが回ると、ポロッとそういう愚痴を零すことがあって。ずっと我慢してきた反動が、今来てるんじゃないかと思う」
「・・・もしそうなら、俺にも責任があるかな」
溜め息をつく俺。
「自分の意見を押し通して、家を出たのは俺だから・・・それも絵里姉にとって、ストレスになったんだろうね」
「天・・・」
心配そうな表情の亜里姉。
すると・・・
「・・・行ってあげて」
「え・・・?」
今まで黙って話を聞いていた梨子が、俺を見てそう言った。
「お姉さんのことが心配なんでしょ?だったら行ってあげて」
「・・・さっきも言ったけど、俺に出来ることなんてないから。行っても意味無いよ」
「いいから行きなさいッ!」
「っ!?」
強い口調で叫ぶ梨子。
その剣幕に、俺はビックリしてしまった。
「り、梨子・・・?」
「天くんに今出来ることがあるとすれば、お姉さんの所へ行くことでしょうがッ!そんなこと、私に言われなくたって天くんなら分かるでしょ!?」
「いや、でも・・・」
「『でも』じゃないのッ!」
俺を睨みつける梨子。
「色々と理由をつけてはいるけど、本当はお姉さんと顔を合わせるのが怖いだけでしょ!?だからお姉さんの所に行きたくないんでしょ!?」
「っ・・・」
一番痛いところを突かれてしまった。
梨子には見抜かれてたか・・・
「いつまでも逃げてないで、いい加減向き合いなさいッ!今向き合わなかったら、絶対後悔するわよ!?」
梨子は怒っているわけじゃない。
俺の為を思って、あえて強い言葉で叱咤激励してくれている。
俺がどうすべきか迷っていると、亜里姉が手を差し出した。
「・・・はい、これ」
「これって・・・」
亜里姉が手に持っていたのは・・・絢瀬家の鍵だった。
「・・・これ、俺が家を出る時に置いていったやつだよね?」
「うん。いつか天に返そうと思って、ずっと持ってたんだ」
微笑む亜里姉。
「お姉ちゃんね、最近ずっと寝言で天の名前呼んでるの。身体が弱ってるから心も弱って、つい心の声が漏れちゃうんだろうね。だから・・・行ってあげて、天。お姉ちゃん、天のこと待ってるよ」
その言葉を聞いて、俺の心は決まった。
亜里姉から渡された鍵を、強く握り締める俺なのだった。
どうも〜、ムッティです。
μ'sの新曲を題材にした話を書きたい(唐突)
μ'sが現役でやっている頃の話というか、天との絡みを書きつつ新曲が生まれた時の物語を書いてみたいです。
アニメーションPVのフルバージョンを見ることが出来たら、勢いで書いちゃうかも(笑)
それはそれで面白いかもしれませんね。
さてさて、本編では遂に亜里沙ちゃんが登場しました!
タフ過ぎてヤバい(笑)
そして天は覚悟を決めた模様・・・
果たしてどうなるのか・・・
これからの展開をお楽しみに(・∀・)ノ
これからもこの作品をよろしくお願い致します!