孤島鎮守府の奮闘   作:画面の向こうに行きたい

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暑すぎて死にそうな画面です。

4連休は仕事の画面です。

拙作もとうとう30話。

これからもガンビアベイ


アカシノクロック

その日、定期便で妙な物が届いた。

おかしい。オレが本部に発注したのは爆雷のはずなのだが。

とりあえず、本部に連絡するか。

 

「いや〜、ないと思ったらそんなところにあったんですね」

 

電話の向こうの明石が暢気な声で話す。

 

「開発に夢中になって、徹夜明けで発送したから間違えてしまいました。爆雷は改めて送っておきます。その時計はそちらで処分してください」

 

「はぁ」

 

「使い方は説明書を同封してあるはずです。分からなかったらそのまま解体してください」

 

「そうですか」

 

「あ、いっけなーい。報告書を書かないと。という訳で失礼します」

 

ガチャ!

 

うーむ。まあ、先方がくれるというなら使ってみるか。

 

 

どうやら懐中時計のようだ。なんか海軍の将校って感じでカッコイイんじゃないか?

説明書があると明石は言ってたけど、ネジの巻き方とかかな?

オレが説明書を探していると、

 

コンコン

 

「失礼します。司令官、お茶が入りましたぁぁぁぁ!!!」

 

床と絨毯の僅かな段差に躓く朝潮。

宙を舞う湯呑み。飛び散るお茶。

オレは慌てて立ち上がるものの、間に合う訳もなく、むしろ立ち上がった拍子に懐中時計を落としてしまった。

 

「あ!」

 

時計は床に落ち、衝撃でバラバラに破損した。

はずだった。

 

「は?」

 

気づいたら、立ち上がったはずがイスに座っており、時計も壊れていなかった。

 

「ほう。お主がこの時計の持ち主か」

 

何故かオレの真横にヒゲを生やした艦娘?がいる。

 

「吾輩は利根仙人。時間がないので手短に話すぞい。この時計を壊したら5分ほど時間が巻き戻る。その時の記憶があるのは吾輩と時計の持ち主であるお主だけじゃ」

 

言っていることは分かるが理解できない。時間が巻き戻る時計?

 

「時間がないってどういう意味だ?」

 

「もうすぐあの娘が来るじゃろう?また床をお茶塗れにするつもりか?」

 

そうだった!

 

オレは急いでドアに向かうと、

 

コンコン

 

「失礼します。司令官、お茶が入りましたぁぁぁぁ!!!」

 

転びそうになる朝潮を抱きとめる。お茶も無事だ

 

「あの。ありがとうございます。司令官」

 

顔が真っ赤な朝潮が礼を言う。

 

「あのあの。し、失礼しました〜」

 

朝潮は顔を両手で覆いながら出て行った。

 

「マジか。本当に本物かよ」

 

「マジじゃ。お主が身をもって体験したじゃろ」

 

「なら、今まで怖くて出来なかったイタズラをあの娘達に出来るぞ!」

 

「何とくだらぬ使い方じゃ。他にないのか」

 

「何もないこの島で他に何が出来る!」

 

「まあよい。どのように使うかはお主次第じゃ」

 

こうしてオレは鎮守府のみんなにくだらないイタズラをすることにした。

 

 

 

「提督〜お話って何ですか?」

 

島風が部屋に入って来た。

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

今回のイタズラは「結婚詐欺ドッキリ」だ!

 

「ふ、ふーん。そうなんだ」

 

島風は目をめちゃくちゃ泳がせながらうなづく。

 

「そうだ。提督にいいものあげる」

 

島風は返事も聞かないで飛び出して行った。

 

「はい。提督」

 

すぐに戻った島風は何かの用紙をくれた。

 

「離婚届じゃねーか!!」

 

「さすが提督。離婚するのも早ーい!」

 

なんで役所もないこの島に離婚届があるんだよ!

 

「時雨の部屋に沢山ストックしてあるよ。悪いムシよけだって」

 

オレは思わず時計を壊した。

 

 

「何故、時雨は離婚届を持っておるのじゃ?」

 

利根仙人が不思議な表情でたずねる

 

「オレが聞きたいよ」

 

気を取り直して次!

 

 

「一体何の用さ。司令官」

 

望月が面倒くさそうな表情で入室する。

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

さて、どうでるか

 

「ふーん。そっか」

 

望月は興味なさ気にうなづく。

 

「ねぇ、司令官」

 

「結婚してもウンピース読みに行ってもいい?」

 

「あ、あぁ」

 

「なら、いい」

 

なんだこの小っ恥ずかしい気持ちは!

 

「そうだ!ねぇ司令官。家事手伝いの妹を1人養わない?」

 

「は?」

 

「日がな一日ゲームして、本読んで。まぁ週に1回くらいは家事をしてもいい。お小遣いもそんなにいらないし」

 

オレは頭を抱えながら時計を落とした。

 

 

「なんというか、お主の所の艦娘は変わった娘が多いのう」

 

せっかくの甘酸っぱい気持ちが台無しだ。頭痛がしてきた。

 

「そろそろまともなリアクションが欲しい」

 

次!

 

 

「失礼します。朝潮、参りました!」

 

真面目っ娘、朝潮なら変なリアクションをしないだろう。

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

「え?」

 

ポロポロ

 

「あれ?司令官の、グス。おめでたい、お話なのに。ふぇぇ。涙が、止まらないです。ぐすん」

 

すすり泣く朝潮。

 

オレは耐え切れず、時計を床に叩きつけた。

 

 

「コレがお主の言う、まともなリアクションか?クズじゃのう」

 

「やかましい」

 

オレだって罪悪感で胸が痛いわ!!

 

次だ次。

 

 

「司令官、雷に何か用かしら?私を頼ってくれて嬉しいわ」

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

雷は多少、目を泳がせた後、

 

「おめでとう。司令官」

 

お、意外とあっさりした対応

 

「ところで、龍田さんってお料理上手?」

 

龍田のことはそんなに知らないし

 

「人並みなんじゃないか?」

 

「お掃除は?お洗濯は?」

 

「人並みだと思うぞ」

 

「なら、雷が司令官のおうちの家事を手伝ってあげる」

 

満面の笑顔でとんでもないことをのたまう雷。

 

「ついでに司令官のことも雷が養ってあげる」

 

オレはいたたまれないので時計を落とした。

 

 

「幼女に世話される大の大人」

 

「やかましい!」

 

次!

 

 

「ご主人様〜。ご用事って何ですかー?こいこいの相手ですかー?」

 

漣がいつもみたいな軽いノリで入って来た。

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

その瞬間、漣がキレた!

 

「はぁ⁉︎ぼのたんはどうするんですか!!」

 

「何故、曙が出てくる?」

 

「それ、本気で言ってます?」

 

「お、おう」

 

「大体、ご主人様は鈍感過ぎます。あれだけ好き好きオーラ全開なのがなんでわかんないのですか?」

 

漣の説教は続く

 

「そこでタイミングを見て私も混ぜてもらう『らぶらぶさんぴー計画』はどうなるんですか」

 

知るか!

 

耐えきれず時計を落とした。

 

「モテてモテて困るのぅ」

 

何も言うな

 

 

「まったく、忙しいのに呼び出さないでよクソ提督」

 

何故か機嫌が良さそうな曙。

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

「え」

 

曙はそのまま後ろをむいて、

 

「へ、へぇ。そう。好きにすればいいじゃない」

 

「あ、あたし、用事があるから!!」

 

曙はそのまま部屋を出ていってしまった。

 

追いかけると、廊下の角にいた。

 

「うぇぇぇぇぇん。提督、他の娘と結婚したら、やだぁ」

 

号泣する曙。思わず時計を取り落としてしまった

 

 

「こうなるとわかっておったじゃろう」

 

「いや、曙に嫌われてるかなって」

 

「お主、脳ミソが腐っておるのか」

 

罪悪感を感じるし、次!!

 

 

「ぽい。提督さん。ご用事なーに?」

 

夕立がぴょんぴょん跳びながらやってきた。

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

「え?」

 

夕立は少し、沈んだ表情を見せた後、

 

「ねぇ提督さん。幸せな家庭にはワンちゃんが必要だと思うっぽい?」

 

「まぁ、言いたいコトはわかる」

 

小さいけど赤い屋根の庭付き。ペットに白くて大きな犬か。

 

夕立はハァハァ言いながら、

 

「ここに、おトイレの躾もできて、ヨソのイヌにも吠えない、ちょっとご主人様が大好きなワンちゃんがいるっぽい」

 

イヌミミっぽい髪をパタパタさせながら机にかじりつく夕立。

オレは頭を抱えながら時計を落とした。

 

 

「ニートの妹を養って、幼女に世話を焼かれながらペットと称して少女を飼う」

 

「やめろ!」

 

最低のクズ野郎じゃないか!!!

 

 

「何の用事かな?提督?」

 

いよいよラスボス、時雨だ。

一応、腹にシャンプを入れてある。念のためだ。

 

「オレ、今度、龍田と結婚するんだ」

 

その瞬間、時雨のハイライトさんがお仕事をやめて、漆黒の闇と化した。

 

「ねぇ提督」

 

地獄の底から響くような声で、

 

「独身生活で最後の火遊びって興味ない?」

 

制服からネクタイを外しながら呟く。

 

「大丈夫。責任とれって言わないからさ」

 

時雨がスカートを外そうとしたところで時計を叩き落した。

 

 

「あれはお主に絶対に責任を取らせる気だな。なんなら、そのことを結婚相手に伝えて修羅場を作るまであるぞい」

 

うーむ。やはり、恐ろしい。

腹からシャンプを取り出しながら思った。

 

コンコン

 

「何の用事かな?提督?」

 

時雨が入って来た。

 

「あー、昨日の資料ってドコにしまったっけ?」

 

「左の棚の上から2段目だよ。ところで」

 

あっさりと答える時雨。

 

「左手の指輪は何かな。ねぇ提督?」

 

ヤバ!シャンプを外すので、指輪外すの忘れてた

 

「ただのファッションだよ」

 

時雨はハイライトをお休みさせながら、

 

「それ、ぼくも欲しいなぁ。ねぇ提督?」

 

ぎゃ〜!!!

 

 

 

 

後日、時計は厳重に梱包して明石に送り返した

 

 

 




クロノクロック

パープルソフトウェアの作品

ウチのぼのたんよりデレなツンデレデレデレな後輩が可愛い


さて、次回は、

提督への願い事をかけて戦う乙女達。
与えられる武器は水鉄砲?

次回、「G.I.B〜ガールズ、イン、バトル」

そこんとこ、ヨロシク

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