「クソ提督!」
いきなりの暴言に室内の空気が凍りついた。
「と、とりあえず、今鎮守府にいる『艦娘』は私たち7人ですね。あ、起きてから何も食べてないですよねー?何か作りますね。それじゃあ、解散!」
漣が慌てて、他の少女たちを部屋から追い出した。
「ごめんなさい。ぼのたんも悪気があったわけじゃなくて。口は悪いけどいい子なんですよ」
べつにいいんだ。ボロクソに言われるの慣れているし。ハゲのオッサンより、かわいい美少女の方が遥かにイイ。
なんで、オレはハゲのオッサンにボロクソに言われ慣れているのだろうか?
コンコン
「司令官、大本営と連絡ついたから、来て欲しいって時雨が呼んでる」
ドアの向こうで望月がそう報告した。
『大本営』ってお偉いさんだよな?そんな人相手に話しをしなければならないなんて憂鬱だなぁ。しかし、断れる感じじゃなさそうだし、はやく済ませるか!
「わかった。すぐに向かう!」
そう答えてオレは覚悟を決めた。
30分後
ふぅ。緊張したぜ。とりあえず、この鎮守府で提督をすれば良いらしい。
自分の名前がわからないので聞いたら聞き覚えのない名前だった。多分別人だと思う。でもそれを指摘すると『ならおまえは何者だ?』ってなるし、この絶海の孤島で放り出されたら死ぬしかない。
コンコン
「ご主人様、うどんは食べられそうですか?」
漣が扉越しにたずねる。そういえば、腹減ったな。
「あぁ。食べるよ」
なんだかよくわからないが、元の世界に帰ることを精神が猛烈に拒否しているので、成り行きに任せるとしよう。なるようになるさ!
SIDE大本営
「よろしかったのですか?」
全ての鎮守府を統括する元帥に秘書艦である長門は訊ねた。
「仕方あるまい。貴重な軍事物資を横流しを行い、発覚後、懲罰人事的に絶海の孤島に島流しにしようとしたら、拒否して遁走。今なお行方不明だ。海軍始まって以来の不祥事を公にする気か?」
元帥は表情を変えないまま、
「後任を選ぼうにも、島流し同然の曰く付きの場所に着任したがる物好きはそうそうおらん。さりとて、シーレーン上の重要拠点故、無人という訳にもいかん」
「しかし、いくらなんでも記憶喪失の身元不明者を身代わりの提督に仕立て上げるなど!」
長門はつい声を荒げてしまう。元帥はチラリと長門を見ると、
「今回の不祥事の責任を取って私が彼の地に行かねばならないならキミも来るかね?」
長門は『ゲリラとは無関係な難民を機関銃で虐殺しろ』と命令されたような顔で、
「ご命令とあらば」
とかろうじて答えた。元帥は苦笑しながら、
「冗談だ。私はまだ日本に未練があるのでね。それに、後、1年か2年このイスを尻で磨き続けたら晴れて予備役だ。自宅で孫に囲まれて盆栽の世話をする老後を捨て去りたくはない。くだらない俗物なのだよ」
元帥は自虐しながら、
「軽蔑するかね?」
「いえ」
長門はそう答えざるを得ない。
「替え玉に気づいた時には私は予備役か墓の下さ。責任は後任にとってもらうさ」
権力はヒトを腐敗させる。かつての英雄さえも。
乙女理論とその周辺
navleから前年に発売された「月に寄り添う乙女の作法」のスピンオフ作品。つり乙はキャラクターの名前が銀行縛りなのだが、リーマンショックのドキュメンタリーを見ていて、本当に「メリルリンチ銀行」があることにびっくりした。妹が可愛い。ただ、PCゲームの主人公なのに性欲がないのは個人的にどうかと思う。
さて、これからは一話完結型のショートストーリーを考えています。
次回の主役は島風!速きことにこだわりすぎる彼女が秘書艦になったら提督はどうなる?
次回、
「ハイスピードゼカマシ」
そこんとこヨロシク