1月24日(水) PM5:00 ―晴れ―
「提督!私も出撃させて下さい!」
皐月がその声を聞いたのは、出撃の報告書を司令官に渡すために執務室を訪れた時でした。ドアを開ける直前に聞こえたその声は甲高い...というより幼いと言った感じの声でした。ドアを開けるとそこには一人の少女が司令官と言い合いをしていました。
「いや...ほら適材適所ってやつでだな」
「私が役立たずだと!?」
「そうは言ってないだろ...」
「あれ?大鯨?」
「...ッ!」
潜水母艦大鯨―主に潜水艦の補給を行ったりする艦である。
「あ・・・!皐月...さん」
自分は鎮守府のエース(他称)なので、あまり仲良くない人とはどうもこんな感じのビミョーな距離感になってしまう。
「で、では私はこれで!提督お願いしますね!?」
と言って部屋から出ていってしまった。
「・・・ボクは嫌われてるのかな?」
少し悲しそうに目を伏せる皐月。
「そんなことないさ、怖がられてるだけさ」
と司令官がフォローします。
「それって、あんまり変わんない気がする...」
「そうか?嫌悪と畏怖ってのは似てるようで違うぞ?」
「・・・まぁ、いいや。はい。報告書。」
「ん...サンキュー。それと大鯨は演習場の前にいると思うぞ。いつも、あそこにいるし」
「やっぱり、よく見てるじゃないか...」
演習場の前に行くと本当にいた。芝生に座り込んで、駆逐艦達の演習風景をただ眺めている。
「よっと!」
皐月は大鯨の横に座った。
「ひゃっ!?...皐月さん?」
またそれだ。
「皐月でいいよ。さん付けとか慣れてないから」
「はぁ...。いえ、はい。ではそうさせて貰います。さ、皐月ちゃん」
「おっ!急にちゃん付けとは、攻めるね君!いいよ、いいよ!その姿勢好きだよ!」
「あ、あの...何しに来たのでしょうか?」
おっと、そうだった。
「大鯨はさ...出撃したいの?」
「それは...」
「正直に言ってみ」
しばらく逡巡してから
「私は...はい。したいです、出撃。もう鎮守府で皆さんの帰りを待ってるだけなんてイヤなんです。私だって役に立ちたいんです」
と言った。
「あなたは良いですよね?出撃して活躍できて...あっ!もちろん努力もしないで...なんて思ってるわけじゃないですよ?ただ...私には努力するチャンスすら与えられてないんです」
「ほんとにそうかな?」
言い終わったタイミングで皐月が話しだした。
「ボクは誰も待ってない鎮守府に帰るより、誰かが待ってくれてる鎮守府に帰る方がいいな」
「・・・え?」
一瞬何を言われてるのか分からない顔をする。
「それに前線で活躍するのも大事だけどさ、後方で支援してみんなを支えるのはもっと大事なことだと思うな。後方支援が無いと前線は戦うことすら出来ないんだからね」
「・・・それは...」
「ボクなんかさ、出撃から帰ってきた直後何かさ、お腹ペコペコでさ...でも、ここに帰ってくればいつも温かいご飯が用意されてるんだ。あれも君が作ってくれたんでしょ?」
「作っただなんて...鳳翔さんのことを手伝ってるだけです」
と謙遜するが...でも...
「それでも、だよ。ボクには料理なんて出来ないからね」
皐月は少し恥ずかしそうに言う。前に春雨に作ろうとして大失敗したことがある。
「君は充分に役に立ってるよ。ボクが保証する。それでもまだ出撃したい?」
暗に前線は向いてない。と厳しいことを言う皐月。しかし、大鯨は
「それでも...それでも私は出てみたいんです。前線に」
としっかりと言い切った。なるほど
「まぁ、それならボクが言うことは何もないよ」
ただ、と皐月は付け加える。
「ただ、勘違いしないで欲しいのは、司令官が言ってた適材適所って言うのは自分の立ち位置を自分で確定させるってことだと思うな」
「・・・自分で?」
大鯨は首を傾げます。
「つまりは、自分の出来ることと出来ないことをハッキリさせて、出来ないことは他人に任せても良いんじゃないかな?ってこと」
まぁ、最後のは私論だけどね。と付け加えました。大鯨はまだ首を傾げています。
まぁ、いつか分かるよ。と強引に話を切って、大きく伸びをする。
「久々に真面目な話をしたら疲れたよ。今日の夕飯はなんだい?」
と大鯨に聞くと、
「え?...あっ!やばっ!完全に遅刻!」
慌てて立ち上がって律儀にお尻についた芝生を払ってから「失礼します!」と言って走っていってしまった。その背中を見つめながら、
「フフッ、懐かしいな。まるで昔の自分を見てるみたいだ」
とつぶやきました。ちなみに夕飯はビーフシチューでした。
あとがき
どうも、駆逐艦信仰プロデューサーのハープです。頭文字は変わらずKSPでございます。今回はニューヒロインの大鯨(CV小倉唯)の登場です!もう少し、おぐ...大鯨編続きます。早ければ次の回で終わるはず...ハープが余計なことを思いつかなければ...
ハ「だ、だって思いついちゃったんだから仕方ないだろ!?」
さて、では急ですがここでサブタイトルの由来について語りたいと思います(ほんとに急だな)
一部察しのついてる読者さんもいると思いますが、
皐月=五月+春雨=春=桜→五月の桜=遅咲きの桜編でございます。安直だね。
これについては、ハープのセンスの無さが滲み出てますが、思いついた当時は「これは名案だ!」と思いました。はい。
さて、紙面もいい感じに埋まって来たので今回はここまで、また次回お会いしましょう。以上、ハープでした。
2019.1.24
とある舞鶴鎮守府提督・ハープ