1月30日(水) PM4:00
目の前で少女が怪しく笑っている。フードを被った少女は右手をおでこに当てて敬礼のような形を作って、何かを探すようにキョロキョロしている。異常なほどに白い肌と背中から伸びるしっぽが彼女が人間では無いことを表している。
―彼女は深海棲艦・レ級。砲撃だけで航空戦、さらには魚雷までマルチにこなす艦である。唯一の難点は敵であること。
「全艦、砲撃用意」
長門が静かに言う。それに合わせて、全員が砲を構える。すると、レ級が何かを見つけた仕草をした。口角がさらにつり上がった。
彼女が両手を広げる。すると、後ろに大量の深海棲艦が出現した。
4時間前
「オーストラリア沖に深海棲艦「レ級」を中心とする中規模艦隊を発見した。我々はこれを撃滅する!」
提督―佐東竜也が壇上で叫んだ。長門を旗艦とする連合艦隊を一つ。空母支援部隊を一つ編制する。と言ってメンバーを発表した。皐月の名前は連合艦隊の第二艦隊にあった。また旗艦だよ。
「・・・先輩」
横で春雨が不安そうにしている。
「どうしたん?春雨...不安?」
「・・・はい。レ級といえば軍部の最優先破壊ターゲットになるほどの強敵なので・・・」
皐月は不敵に笑った。
「おいおい、ボクを誰だと思ってるんだい?駆逐艦皐月だよ?そう簡単に沈まないよ」
「・・・そうですが...」
なおも不安そうな春雨。
「・・・大丈夫。ボクは必ずし帰ってくる。君を一人にはしないよ」
最後にまだね、と付け加える皐月。
「・・・約束ですよ?」
「あぁ、約束だ」
「連合艦隊、出撃する!」
長門が大きな声で叫んだ。後ろで11人の艦娘がはい!と叫び返す。第一艦隊から、長門、金剛、最上、羽黒、陽炎、不知火。第二艦隊は皐月、神通、阿賀野、文月、黒潮、雪風の順。さらに、航空部隊は瑞鶴、翔鶴、加賀、響、雷、暁です。戦艦一隻を倒すだけにしてはかなり大規模なものだがそれだけ脅威であるということです。
最初は順調でした。多少は敵の妨害もありましたが、全て予想の範囲内でした。そして・・・
「全砲門放て!」
長門の号令とともに戦闘が始まりした。
先に仕掛けたのは艦娘側。当たるともわからない一斉射撃です。案の定、レ級には当たりませんでしたが随伴艦にはいくつか被弾しました。叫び声をあげて沈んでいく深海棲艦たち。しかし、レ級たちは気にしたようすもなく、撃ちかえしてきた。
「回避!」
しかし、撃ったさきには既に誰もいなかった。
ここで、後ろの支援部隊から艦載機が到着。艦攻と艦戦が入り交じって飛んでいる。その戦闘機たちがまさに攻撃しようとした瞬間、それが全て破壊された。
「なっ!」
上を見ていた陽炎が絶句する。空に残っていたのはたった数体の艦載機だけ、しかも全て深海棲艦側―レ級が放ったものだった。
「そんな!たったあれだけで数十機も落としたっていうの!?」
「・・・何かが違う。レ級の航空戦力はそこまで高くないはずだ・・・。ッ!提督にすぐに連絡だ!こいつは恐らくエリートだ!」
エリートとは、同じ級の普通の深海棲艦より性能がはるかに高い個体、艦娘で言うところの改と言ったところだろう。
「・・・くそっ!」
皐月が珍しく悪態をついた。レ級ですら脅威なのに、そのエリートともなればどれだけの戦闘力を持っているのか想像もつかない。
「・・・っ!来るぞ!油断するな」
彼女の言葉で回避行動を取り始める。だが、この砲撃により艦隊がバラバラに。指揮も乱れ始めてる。
「第二艦隊!ボクが近づいて直接叩く。援護を」
皐月は第二艦隊に指示を出して、一人でレ級エリートに走り出した。第二艦隊の面々は旗艦に従い、周りの雑魚を皐月に近づけないようにしている。
「私たちも応戦するネ―!」
金剛たちが砲撃をしてレ級エリートの行動をしばる。あと少し。・・・今!
レ級エリートがこちらに主砲を向けたタイミングで左に逸れる。レ級エリートが左に向けて主砲を放つがそこに居たのは皐月ではなく、仲間のロ級である。砲弾はロ級に直撃し悲鳴もあげられずに轟沈していった。しかし、レ級エリートは気にするようすはない。
皐月は主砲を前に撃ちながら突進していく。主砲の次弾装填を終えて、前につきだしたレ級エリートの手をひねりあげる。開いたスペースにゼロ距離からの砲撃と雷撃を繰り返す。余すことのない全弾照射である。ここで初めてレ級の顔が歪んだ。もう片方の腕に付いている主砲で皐月を撃とうとするが、すぐさま弾き飛ばされてしまう。羽黒の精密射撃である。
「・・・ゲームオーバーだよ!」
最後に時限信管の魚雷を海に落としてその場をはなれる。魚雷はレ級エリートの真下で爆発して、彼女の喫水線に穴を開けた。
「・・・やったのか?」
皐月が呟く。他の艦娘も全員爆発で出来た霧が晴れるのを静かに見ている。しかし、、、
「・・・っ!まだ生きてるのか!?」
そこにいたレ級のエリート様は艤装はぼろぼろで主砲も中程で折れている。だが、まだ生きている。そこに浮いている。その顔に笑みはなく、怒りだけを体現している。
「・・・くそっ!こっちはもう弾が無いっていうのに!」
皐月が悪態をつくが、それは他の艦娘も同じだ。皐月の護衛のためにほぼ全弾を使っていた。そのおかげで周りの随伴艦はほぼ全滅しているが、"最大脅威"のレ級エリートが残ってしまっている。その"最大脅威"が今こちらに副砲を構えた。
「・・・こちらには弾薬がない...倒す術がない。・・・どうすればいい?」
長門がそう呟いた。
To be continued