1月30日(水) PM5:00
「・・・何!?ちくしょう!分かった!」
最上からの報告を聞き、提督・佐東竜也は机を思い切り叩いた。しかし、今それを諌める秘書艦は戦場にいる。竜也は勢いよく無線機を取った。それは鎮守府内の全スピーカーに繋がっていた。
「緊急連絡だ。下記に読み上げるものは至急執務室に来い。えぇ...」
10分後に全員が、揃っていた。春雨、山風、巻雲、曙そして大鯨。
「呼び出してすまない。だが緊急だ。現在交戦中の深海棲艦がレ級ではなくレ級エリートであることが判明した。なのでお前らに出撃してもらいたい。目的は・・・洋上補給のためだ」
全員が無言で聞いている。
「恐らく、、、これまでの戦闘を含めると燃料、弾薬が足りなくなる。大鯨、出番だ」
「・・・はい」
大鯨が緊張気味に頷く。
「あの~」
静かに手を挙げたのは春雨だった。
「どうした?春雨?」
「大鯨さんは分かるんですが、何故私たちなのですか?」
「お前ら以外に駆逐艦がいないからだ。大鯨はかなりの速度で移動出来る。それに、一秒でも早く届けたい。悪いが引き受けてくれないか?」
それは構いませんが...と春雨。
「私たちで大丈夫でしょうか?」
「お前らだから信用出来る。何しろ皐月と羽黒の弟子だからな。さぁ!あまり時間が無い!5分で出撃だ!」
春雨たちを急かす竜也。春雨たちは慌てて準備にかかる。
海域は比較的に静かだった。全員がレ級エリートの支援に行ったのだろう。なので春雨たちには談笑をする余裕すらあった。もちろん全速力だが。
「へぇ~、先輩とそんなことがあったんですか」
大鯨の話を聞いて、春雨が相づちをうった。同時に先輩らしいとも思った。
「そうなんです!だから私今スゴく嬉しいんです!やっと出撃出来たんですから!」
曙が出撃なんてそんな良いもんじゃないわよ。と言った。それには春雨も賛成だが、皐月に連れられて初出撃したときはワクワクしていたなぁ、とも思った。
電探を覗いてた山風が、敵発見と言ったことにより部隊に緊張が走る。
「会敵まで5、4、3」
「大丈夫ですよ大鯨さん。私たちが必ず守ってみせますから」
「き、気を付けて下さいね」
「1、0、会敵!」
その声と同時に水平線から姿を表したのは重巡リ級が三体、イ級が三体の六体編制。恐らくハグレ艦隊だろう。
「みんなはここで援護射撃をお願い!」
級に春雨が飛び出した。
「「「え?」」」
三人の声が重なる中、春雨はリ級へと突っ込んでいく。リ級に砲を構えるヒマを与えずに砲頭をつかみ上と無理やりねじあげる。リ級も抵抗したため砲頭がひしゃげて折れてしまった。その折れた砲頭をやりのようにしてリ級の喉元に突き刺した。黒いオイルのような液体が筒の中を通ってあふれだしてきた。
苦しみながら命の灯火を消していくリ級。
さらに、別のリ級(以後、リ級2)が春雨に照準をあわせた。すぐさま、未だにもがいているリ級の後ろに回り込む。その直後に放たれた8inch砲弾はリ級へと直撃。悲鳴をあげながら沈んでいくリ級の艤装の破片を手に取りリ級2へと向き直る。
春雨のほうを向いているリ級2が突如横にスライドした。次いで、発砲音。混乱から立ち直ったらしい誰かの支援砲撃だ。
春雨は破片を捨てて、魚雷を発射。その魚雷はゆっくりとしたペースでまた別のリ級(以後、リ級3)に向かっている。一方、リ級3は自分が狙われるとは思わなかったのか、あわてて回避行動をとるが間に合わない。魚雷にあたりひるんだリ級3の首を折り一瞬で命を刈り取る。
最後に、リ級2に向けて砲を撃ちながら近付き、とどめに魚雷を1本。それだけで最後のリ級は沈んでいった。
春雨がさらにイ級たちに向き直るとイ級はビクッとして蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「あははは!あんたサイコーね!」
海の上を走りながら曙が叫んだ。
「そんな...大したことないって...」
赤面しながら小声で呟く春雨。それに全員が否定の言葉を重ねる。
「お姉様?あれが大したことないのなら私たちはどうなるのですか!?」
「・・・自動射撃BOT?」
「・・・あれはちょっと怖かったです」
「え...あれくらい普通じゃないの?」
一方の春雨からはこんな言葉。
「「「「・・・」」」」
みんなが驚愕しています。性行為について男子に訊ねる箱入り娘を見るような目です。
「・・・え?私、変なこと言いました?だって駆逐艦はみんなあぁやって接近して敵を倒していくんじゃないんですか?」
否、"ような"ではなく箱入り娘を見る目に変わりました。
「いや...あんな戦い方するのあんたと、あんたの師匠くらいだよ...」
曙が呟き、みんなが同意します。
「え!?うそ!?私てっきり、みんなこうやって習ってるのかと...」
そのあと、曙先生による駆逐艦の正しい戦い方講座を受けて、先程よりもさらに顔を真っ赤に染める春雨。それを生温かい目で見守る3人と1人。しばらく、ゆるやかな時間が流れ、
「・・・見えてきました」
と大鯨が呟いた。
To be continued