1月30日(水) PM5:30
「みなさ~ん!補給にまいりました!」
大鯨が力の限り叫ぶ。全員が振り返り、安堵や歓喜の声を上げる。
「まだ、弾が余ってるやつはレ級エリートを牽制!それ以外の者は3分で補給を済ませろ!」
長門がそう指示をだして、全員が了解!と答える。
全員が3分と言わず、1分や2分で補給を切り上げて大鯨に感謝を述べて戦線に復帰していく。
「どうだい?初出撃の感想は?」
補給に来た皐月が言った。彼女は大鯨が来るまでひたすらレ級エリートの注意を引き、砲撃を避け続けたのだ。彼女の服は所々破れ、血もかなりの量出ている。そんな痛々しい姿でなお皐月は不遜な笑みを崩さず大鯨にそう問いかけてきた。
「・・・そうですね。私はここに来るまで守られてばかりでした。改めて自分の無力さを思い知りました」
と悲しそうに目を伏せる。自分はやはり向いてないのだと
「・・・大鯨、前見てごらん」
「・・・え?」
皐月の言葉の意図を汲みかねていると、皐月はあっちあっちと指をさす。
「レ級のほうだよ。あそこでみんな戦ってる。ちゃんと砲を構えて撃ってる。でも君が来る前はそうじゃなかった。弾が無くなって攻撃も出来ずにただ逃げ回ってるだけだった。今の攻撃は君が運んできた弾...君が運んできたチャンスだよ。それに、他の人にも言われたでしょ?「ありがとう」って」
「あ...」
大鯨の中の"何か"が吹っ切れる。同時に涙が出てきた。
「私は...ずっと...悩んでいたんです。私なんかがここに居てもいいのかな?って出撃も出来ない私なんかが...」
と皐月にぶつけるように呟いた。それを皐月は笑って受け止める。
「ボクは最初から言っていたじゃないか。"君は役に立ってる"って」
「・・・そうですね。正直、あの時はお世辞なんだと思ってました」
ひどいなぁ...と皐月が呟く。
「さて、ボクはそろそろ戻らないと。ありがとう。君がいなかったらここで全滅してたよ。撤退だってムズカしかったしね。
さぁ!ここからはボクの出番だ!」
大鯨が気を付けて下さいね!と叫ぶと皐月は軽く手を振ってそれに答えた。
そのあとの皐月の活躍は凄まじかった。長門に「流石に雷鬼...正に"鬼"だな」と言わしめたほどだ。
レ級エリートが沈むと統率を失った深海棲艦はバラバラに散っていった。
鎮守府に戻ると、残っていたメンバーや遠征から帰ってきたメンバーに「酒盛り!祝杯!」と誘われたが、全員が「疲れた」と言って早々休んだため正式な祝杯は明日になった。
しかし、あくまで"正式"な祝杯は明日なのです。
「へ~い、提督から聞いたよ~。お前さんが今日のMVPなんだってなぁ。まぁまぁ飲め飲め!」
そう、お酒を勧めて来たのは酒豪で有名な隼鷹さんだ。
「いや、私はお酒飲まないので...」
とやんわりと断る大鯨。普段は準備をする側なので、参加者として座っているとなんだが不思議な気持ちになります。
目を横に移すと春雨たちも別の酒好きの艦娘に絡まれている。山風はすでに飲んでいる。駆逐艦は飲んじゃいけないと言うことはないが、元々駆逐艦は飲む子が少ないし、何より絵面的にどうなのだろう?
「お~、やってるな~。正式なのは明日やるって言ったのにな」
そこに入ってきたのは、提督―佐東竜也だ。竜也は大鯨を見つけると「いたいた」と呟いて、
「大鯨、ちょっと付き合ってくれるか?」
と言ってきた。
今、大鯨と竜也は執務室に来ていました。
「飲み会中に呼び出して悪かったな」
構いません、と首を横に振る大鯨。
「そうか、ありがとう。・・・お酒は飲んでないな?」
「飲んでません」
つまり、飲んでいたら話せない重要な用事なのだろう。
「そうか、夜も遅い。さっそく本題に入ろう。先週のことだ。君が抗議に来る三日ほど前だな。軍部から新しい設計図が届いた。名前は軽空母・龍鳳・・・お前だ大鯨」
「っ!・・・そ、それは」
「俺はやろうと思えばお前を軽空母にして戦場に出すことも出来たわけだ」
「じゃあ...」
「じゃあ、なぜ、あのときそれを言わなかったのかって?答えは簡単だ。お前自身に決めてほしかったからだ。あのときのお前なら飛び付いただろうが、今は違う。お前はその姿で戦場に出た。どう思った?」
「私は...」
言葉につまる大鯨にさらに追い討ちをかける竜也。
「自分の無力さを実感して、強くなろうと思ったか?なら、こいつをお前にやろう。だが、あそこで学んだことは本当にそれだけか?それだけなら俺は皐月をしばかにゃならん」
「・・・私は...強くなりたいです。強くなってみんなを守りたい」
大鯨は声をしぼりだした。それは紛れもない本音だ。
「・・・そうか...なら、お前にこれを...」
「でも...」
竜也の言葉を遮って言葉を続ける。
「でも...今は...今の私に出来ること...私にしか出来ないことをしたいんです。例えば料理とか...」
しばらく竜也は言葉を失っていたがやがて。
「・・・そうか。そうだな。んじゃこいつはもう要らないな」
と言って設計図を破り捨てた。
「潜水母艦・大鯨。お前のその選択に後悔はないな?言っておくが...後方でみんなの帰りを待つことほど辛いことはないぞ?」
「・・・はい。分かっています。いえ、今回、それを実感させられました。だから、私はどんなことがあっても皆さんを笑顔でお迎えします」
「・・・」
「・・・提督?」
「・・・あぁ、いや。ずいぶんの変わりようだなと思って」
「ふふっ、これも皐月ちゃんのおかげですね」
「・・・そうだな」
夜はこれ以上深くなることはない。あとは明けていくだけ。明日にはまた太陽が登りみんなを照らすだろう。
―潜水母艦の苦悩―end
あとがき
みんな!お待たせ!ハープだよ!いやはややっと、書けました。本当にお待たせしました。・・・誰だよ。前回のあとがきであと次回で終わると思います。なんて言ったやつ。終わってねぇじゃねぇか。前・中・後に分けて一つで終わったように見せてるだけじゃねぇか。実質あれだかんな?番号で言ったら8、9、10って二桁の大台乗ってんだぞ?反省しなさい。え?お前だろってそういやそうでした(*⌒∇⌒*)テヘ♪
・・・あおたまが吐いたので軌道修正しますね。今回で大鯨編終了でございます!ぶっちゃけ自分がこんなにも戦闘シーンがこんなにも苦手だとは思いませんでした。戦闘狂書いてる人が羨ましいです。僕にも少し分けて下さい。え?あげないですか。そうですか。
さて、そろそろお別れの時間でございます。次回は恐らく節分です。というか節分です。はい。ではでは、それまでしばし...さよなら!
あ「あ!おい。言い忘れてるぞ!・・・たくっ、えぇ、ここまで長々と付き合っていただきありがとうございます。まだ読んでくれてる人いたらコメント下さい!お話したい!とのことなのであいつのことをどうかお願いします。ではまたm(__)m」
2019.1.30
とある舞鶴鎮守府提督・ハープ