ここはショートランド泊地。つい最近までは最前線だったが前線が上がったことにより、とても平和である。だからといって完全に深海棲艦がいなくなったわけではないので、止まり木の鎮守府とも言えない中途半端な鎮守府である。
その鎮守府の波止場に一人の少女が立っていた。年は10代前半またはそれ以下かもしれない。長い髪を後ろで結わえている。時折吹く強い風が少女の鮮やかな金髪をなびかせている。一言で言えばとても絵になる光景だ。
「あの...」
そんな少女に話しかけたのは一人の少女だ。こっちは対照的に淡いピンク色の髪をしている。
金髪の少女は振り返り「あっ」声をあげた。
「ごめん。ごめん、春雨。ボーッとしてて気づかなかった」
行こうか、と言って歩きだす少女。「それって私は影が薄いってことですか?」と愚痴りながら春雨と呼ばれた少女はトコトコとそのあとをついていくのでした。
1月10日(木) PM3:00 ―晴れ―
「今日は艤装をつけて海に浮く練習をしよう。まずは海に慣れることが重要だ」
次の日、さっそく訓練を開始する。ちなみに春雨は午前中は座学だったらしい。今月着任した子に混じって艤装の仕組みやメンテナンス方法などを夕張先生に習ってきたらしい。
午後からはそれぞれの教育係りのもとで実践訓練をする。
「それじゃ、さっそくやってみよう」
「は、はい」
周りの子も同じことをやっているが基本は1対4だ。それに対して、春雨は1対1。つまりはじっくり教えられるということであって...。
「違うよ。そうじゃない、こうやるんだ」
「もっと力を均等に、スキーをやる感じで!」
「おっ、そうそう!良い感じだよ!」
時刻は5時を回ろうとしていた。太陽はすでに沈み始めている。春雨は地面に突っ伏している。夕焼けが彼女の汗をオレンジ色に輝かせている。
「お疲れ、春雨」
「も、もう無理です。一歩も動けません...」
「そうだね。今日はもう暗くなるから終わりにしよう」
春雨の手を引いて起こす。
「まずはお風呂にしよう」
鎮守府には大浴場がある。訓練、出撃終わり、夜戦前などが重なりこの時間は大体混んでいる。
今日もその例に漏れずに混んでいた。しかし、腐っても大浴場である。まだまだ余裕がありそうだ。
「ふぇ~。人がいっぱいいます...」
と春雨がびくびくしている。どうやらこの子は人見知りらしい。
「大丈夫だよ。こっちおいで」
春雨の手を引いてイスに座らせる。キョトンとする彼女に頭からシャワーを浴びせる。
「わっ!キャッ!」
と叫んで、こっちを睨み付ける。迫力は全然ない。むしろ可愛い。皐月はニカッと笑ってゴメン、ゴメン。と言った。
「お詫びに背中洗ってあげるから」
「自分で洗います」
「遠慮しないで!」
「キャッ!ちょっとぉ~!」
勝手に洗い始める皐月。しばらく抵抗したがムダだと気付いて止めた。
その後、皐月は春雨に背中を洗ってもらい、二人で湯船に浸かる。
「「ふぅ~」」
と二人して今日一日の疲れをとるように息をついた。
「今日の訓練だけどさ・・・」
しばらくしてから皐月が切り出す。
「・・・はい」
「だいぶ良かった。うん、スゴいよ。一日で走れるようになる子はなかなかいないよ」
結論から言えば、春雨の吸収力は相当のものだ。普通は3日かかる海上航行を1日で習得したのだ。ちなみに皐月は5日かかった。
「これなら明日からは砲撃訓練に入れるよ」
春雨はスゴく照れながら、
「い、いやぁ。先輩の教え方が上手かっただけですって...」
と言った。
「なぁ、昨日も言ったけど、その先輩っていうのなんとかならないかな?なんていうか、スゴくムズムズする...」
きっとあの人もこんな気持ちだったのだろう。対する春雨はいえっ、と言った。
「先輩は先輩ですから!」
よく分からないところで頑固な春雨であった。
あとがき
ようこそKSPへ。ハープです。第2話、場面的にはまだまだ序章ですが、しばらくこんな感じです。艦娘の誰もが通る道だと信じております。
用語解説
深海棲艦・・・敵です。ある日突然海からやって来た正体不明のやつら。現代武器は一切効かず、攻撃できるのは艦娘だけです。
止まり木の鎮守府・・・漫画。
今回はあとがき少なめです。さて、次回は第3話。明日に投稿出来るかな?
2019.1.10 とある舞鶴鎮守府提督・ハープ