1月19日(土) AM10:00 ―晴れ―
「ふわぁ...」
皐月は大きな欠伸をした。まだ1月だと言うのにショートランドは暖かい。ここは年中暖かい。
「もぉ...皐月先輩、またゲームで徹夜してたんですか?」
「そうなんだよ~。でもそのおかげでバイオ2のハンクモードノーダメでクリア出来たんだよ!」
皐月はこう見えてレトロゲーマーだ。ちなみに、レトロゲームとは、PS2以前のゲームを表す。
「ダメですよ。皐月さん。夜はちゃんと寝てください」
そう言って来たのは羽黒だ。本日はこの3人で土曜の休日を謳歌するために商業施設―俗にショッピングモールやアウトレットと呼ばれる場所に来ている。―もっとも狭いショートランド島内ではここぐらいしか娯楽が無いのだが。
「寝るつもりだったんだよ?今日は昼まで寝てられるなって思ってたのに...」
皐月は恨めしげに春雨を見る。
「私は昨日ちゃんと言いましたよ?先輩はちゃんと「分かった」って答えましたよ?」
そうだったけか?何しろ昨日はバイオ2をレオン表、クレア裏さらにはハンクモードと豆腐モードを一夜でやってたから覚えてないや。ちなみに豆腐モードはまだクリア出来ていない。
「まぁまぁ、と、とにかくここまで来たんですし、とりあえず中に入りましょう!」
険悪な雰囲気になりかけていたのを羽黒がストップをかけるのだった。
「え?先輩、私服持ってないんですか?」
ショッピングモールの中にある服屋で春雨が聞いてきた。
「うん。別に必要なかったからね」
さらりと言ってのける。正直女子としてはどうなのだろう?
「・・・ダメです」
「え?」
春雨がボソッと呟いた。何がダメなのであろう?
「先輩、このままじゃダメです!ダメ人間になっちゃいます!」
「いや...そんな服ごときで...」
「服は心の鏡とも言います!ダメです。先輩には今ここで服を買ってもらいます!」
こうなった春雨は止められない。まだ一週間しか経っていないが、皐月は充分にそれを分かっていたので特段抵抗することはなかった。
・・・服が変わると気分が変わるとはどうやら本当のようだ。あの後、春雨の着せ替え人形と化した皐月だが最後にはそんな感想を持っていた。脱ぐのも勿体ないのでそのまま着て帰ることにしたくらいだ。
「先輩!とてもよく似合ってます!」
「本当...まさかこんなにも化けるなんて」
普段無頓着な分、二人(特に羽黒)が感嘆の声をあげている。確かに可愛い。上は白いシャツに紺色のパーカー、合わせるようにカーキ色のショートパンツ。また、服に合わせていつも後ろで結んでいる髪を下ろしたのも自分にとっては挑戦的だ。
「さぁ!次はあそこに行きましょう!」
「・・・マジか」
結局あの後服屋を4軒、普段は使わない化粧品まで買わされた。そして今はゲームセンターにてゲームを楽しんでいる。
「春雨。まずはこのゲームで遊ぼう。」
「?これですか?何ですかこれ?left4...」
「left 4 deadだよ。ただのFPSさ」
「うへぇ...FPSですか...私苦手何ですよね...」
「大丈夫だよ!これはボクと協力してクリアを目指すものだから!」
「そうなんですか?それでしたら...」
と始めたのだが...
「うひゃっ!?こ、これってゾンビが出るんですか!?」
「ん?そうだよ?言ってなかった?」
「き、聞いてないです!」
「そっか~。あっ、でももうお金入れちゃったし...ワンプレイだけ」
「・・・分かりました」
お金はムダに出来ない。お小遣い制の艦娘の悲しい性である。
その後、ゾンビの真ん中に置いてきぼりにしてみたりと春雨をさんざん弄り倒して、「着せ替え人形」の分をきっちり返さしてもらった皐月であった。
「グスン...先輩酷いです」
「いや、本当に悪かった。ごめんって」
春雨は本当にゾンビが苦手だったのか最終的に泣いてしまった。そういえばバイオ2のパッケージ見たときもビクッとしてたような...
「そ、そういえば羽黒さんは?」
未だにすすり泣く春雨に耐え兼ね、羽黒を探すがどこにもいない。
「?」
やっと見つけたと思ったら何かの筐体をいじっているようだ。何だろうと近づくとそれは音ゲーの筐体だった。それを一心不乱にやってる羽黒はちょっと怖い。普段の優しい感じとは正反対である。あとメチャクチャ上手い。
「・・・あっちに行こうか」
「・・・そうですね」
皐月たちはこの事実を見なかったことにした。
夕方にはショッピングモールのフードコートで食事を取ることにした。何だかんだで昼を抜いてしまったのだ。羽黒は、定食を。皐月と春雨はラーメンを持ってきた。しばらく無言で食べる。だが周りは騒がしいのでお互いの食べる音が聞こえたりはしなかった。
「そういえば、羽黒さん。山風たちは良かったんですか?」
今更ながら皐月が聞いた。
「うん...誘ったんだけどね~...断られちゃった...」
「・・・」
いたたまれない。なんかいたたまれない。
「あっ!別に嫌われてるとかそんなんじゃないよ!?「さっちゃんも来るけどどう?」って誘っても用事かあるって言ってきたから...きっと...うん...多分」
「・・・さっちゃん?」
そこで口を挟んできたのは春雨だ。どうやらさっちゃんに敏感に反応したらしい。
「・・・羽黒さん...」
一方の皐月は目が死んでいる。
「ねぇ、ねぇ。先輩。羽黒さん。さっちゃんって何ですか?昔の先輩のニックネームですか?」
恐らく悪気はない。悪気はないのだが春雨は間違いなく皐月のメンタルポイントにダメージを与えていた。
夜になり、ショッピングモールを後にして、歩いて鎮守府に帰る3人。春雨はずっと笑っている。
「あはははっ!先輩にもそんな純粋な時期があったんですね!」
「・・・」
ゾンビのお返しとばかりに言ってくる春雨。もうやめて、ボクのライフはもうゼロだよ。
「・・・でもでも、どうしてこうなっちゃったんですか?」
・・・おい、春雨?それは何か失礼だぞ。
「本当にどうしてなんでしょう・・・」
羽黒さんも賛同しないで!もう耐えられん!
「・・・春雨。月曜から指導教官を羽黒さんに変更ね」
「あっ!やめてください!やめてください!嘘です!昔も今もとっても可愛いです!特に今の方が!」
「うるさい!可愛いって言うなぁ~!」
やいのやいのと言い合いを始める二人を見て羽黒は
「・・・いいなぁ~、あの二人」
と呟くのだった。
あとがき(的なsomething)
ハープ・・・この小説を書いてる自称小説家。艦これ大好き。現在プレイしてるゲームは艦これとのびハザだけの艦これに忠誠を誓った男。と言えば聞こえは良いが要は艦これが大好きなただのオタクである。
あおたま・・・ハープのお目付け役兼つっこみ役。ハープの頭の中だけに存在する人。艦これはよく知らない、オタクでもない一般人。ちなみに美少女という設定。
ハ「おっはよ~!みんなぁ~!ハープだよぉ~!新年早々ボクの小説を見てくれるなんて君たち可愛いね!」
あ「おい、うるさいぞ」
ハ「おっと、ゴメンよ。皐月のマネをしたくなったのでな!」
あ「その・・・皐月?という子なんだがネットで調べるとお前のキャラと随分違うようだが?」
ハ「そうそう、今回の話題はまさにそれよ。」
あ「ほう、つまりあれだな。お前の小説定番のキャラブレだな」
ハ「うむ。その通りだ」
あ「死ね」
ハ「酷い!いつもは笑って許してくれるのに!」
あ「今回は状況が違う。お前の愛する艦これからキャラを借り受けているんだぞ」
ハ「うっ!?・・・それは悪いと思ってる。だが言い訳をさせてくれ!」
あ「・・・聞こうか」
ハ「まずだな、あんまりネタバレは出来ないんだが、今回の皐月は影のあるキャラクターにしようと思ったんだ」
あ「ほう...?」
ハ「それでスタートしたんだが皐月がな...予想外に暗くなりすぎてしまったんだよ。ほら俺ってキャラが頭の中で勝手に動くタイプの人なんだよ。それで気付いたらこうなってたんだ」
あ「そうか、そうか。・・・極刑」
ハ「覆しようのない事実!?」
あ「お前は作家だ。確かに頭の中でキャラが動くこともあるかもしれないが、そこを上手い具合に調整しなきゃいけない。それが出来ないからいつまでもドベのままなんだ」
ハ「・・・」
あ「何か反論は?」
ハ「特にありません」
あ「そうかなら反省は?」
ハ「特にありません」
あ「うん。死ね」
ご愛読ありがとうございます。
2019.1.19 とある舞鶴提督・ハープ