速さを追及したいのでゲーム内最速を目指します。 作:黒三葉サンダー
ノノがメイプルに抱きついてから少し後、二人はお互いの近況報告を行っていた。
と言っても二人とも始めたばかりなので報告するのはステータスや装備、取得スキルぐらいだが。
そしてそのスキル取得の話でノノは衝撃を受けていた。
「……防御スキル?」
(え?え?絶対防御?VITが倍?しかも大楯装備の補正値含めてVIT256?)
「うん!えへへ。これで攻撃も痛くないね!」
「……うん」
(レベル2での防御ステータスじゃないよねそれ。やっぱり楓ちゃんのプレイスタイルは予想できないよ)
ノノは心の中でそっと白兎に手を合わせた。白兎の活躍でメイプルはとんでもないレアスキルを掘り当ててしまったのだ。
今のノノ、というより下手するとこれからのノノでもメイプルにダメージを与えることが出来ないだろう。
それこそ毒でも盛らない限り。
しかしこの時ノノは知るよしも無かった。まさかメイプルがその毒すらも平然と耐えるようになってしまうということに。
それから数時間後、メイプルと別れたノノはただひたすらに走り続けていた。
あれから暫くの間はメイプルと共にレベリングをしていたノノだったが、ふとメイプルが取得した絶対防御のスキル取得条件を思いだし、もしかすると似たような解放条件を持ったスキルがあるのでは?と考え走り込むことにしたのだ。
しかしノノが別れる前にメイプルが少し大きなハチに襲われる瞬間を見たのがほんの少しだけ心配だったりする。
本人が平気と言っていたからそのままにしたが、果たしてどうなったのか。ノノは後日メイプルに聞くことにした。
そんな訳でノノは現在進行形で走り込みを行っており、その時間はそろそろ三時間を記録するところだ。
いくらゲームとはいえ、VRMMOでは現実での身体能力や体力はほぼ反映されるものであり、それに加え多大な集中力も要求されがちだ。
つまりノノの体力は平然と三時間の長距離走を乗り越えられる程であり、ぶっ続けで走り続けてもなお集中力を乱さないというアスリート顔負けの身体能力を誇っているのだ。
しかし残念なことに、ノノはその高い身体能力と引き換えに最早対人恐怖症とまで言える程のコミュ障を患っており、昔から運動会などではそのパフォーマンスを十全に発揮出来ずどの競技も基本的にビリを取ってしまうという悲しい歴を持っている。
「………」
(もうそろそろ三時間かぁ。この方法じゃ楓ちゃんのスキルみたいなのは取れないかな?)
ある意味メイプルの絶対防御の取得条件を達成することの方が遥かに難しいと言えるが、ノノにとっては別段気にするところではないらしい。
もうそろそろやめようか。そうノノは思い立って三時間きっかりに走り込みを止めた瞬間、この数時間ですっかり聞き慣れたシステムボイスがノノの耳に届いた。
『スキル【疾風踏破】を取得しました』
「………ん?」
(このタイミングで取れたんだ。どれどれ……)
スキル【疾風踏破】
AGIのステータスが倍になる。STR、INT、VITのステータスを上げる為のポイント消費が3倍になる。
取得条件
一定以上の速度で三時間以上止まることなく走り続ける。
「………」
(……ほんとに取れちゃった)
半ば諦め半分になってた分、その衝撃は大きいものであったと本人は後に語っていたのだった、