速さを追及したいのでゲーム内最速を目指します。 作:黒三葉サンダー
強すぎるって?気にすんな。どうせ運営に手直しされるから(震え)
皆もこんなのが良いんじゃないかってスキル発案があったら活動報告に載せてくれよな!
サンダーはあまりスキルを創作することは得意ではないのだ……(弱点露見)
赤頭巾の少女はノノが思った以上に軽かった。まるで羽毛でも抱えているのかと錯覚すると同時に、とある違和感にも襲われた。
森の出口が見つからないのだ。仄暗い森の木々達はそれだけでノノの方向感覚を惑わせ、明らかに元の道へと帰すつもりはないらしい。
ノノにとって幸いだったのは白狼よりもノノの方がAGIが勝っていた為に逃げきれたことだろう。
「……」
(これって、間違いなくイベント戦だよね。てことはあの狼を倒さない限り出られないってことかな)
「あ、あのぅ……」
静かに思考の海へと沈んでいたノノを引きずり出したのは少女の声だった。何事かと思いきや、良く見れば少女の手に杖が握られていることに気付く。
「わ、わたしも戦います!こう見えても魔法は使えるんです!」
「……例えば?」
「え、えーと……流水!」
少女がえいっと可愛らしい声を上げながらかざした杖の先端から、トポトポと水が流れ水溜まりを作り出した。
しかしそれ以降はなにも起こらず、結果としてただ水溜まりを作っただけである。
「……」
(た、確かに水は流れてるけど…)
「……あぅ。あっと!えと!そうだ!こっちも使えます!土竜!」
少女が唱えた魔法はそこそこ深い落とし穴を作り出した。しかし白狼の大きさを考えると数秒としないうちに脱出されてしまうだろう。
ノノはどうフォローするべきかを悩み、少女は何も言わないものの、自分の力量不足を感じてかどんどん赤面していく。
「……ん、すごい」
(私だってまだ魔法使えないし、そんなに落ち込むことじゃないよ)
「役立たずでごめんなさぁぁぁぁい!」
悩みに悩んで、精一杯の答えをノノは弾き出したが無情にもそれは少女への止めの一声になった。
そんな少女の半ベソと同時に、ピコンと軽い音とメッセージが表示された。
「……?」
(これって、クエスト?えーっと、赤頭巾の少女?)
ノノがその内容に目を通すと、その内容は少女を置いて森を出るか少女と共に白狼に立ち向かうかが選択出来るようだった。
恐らくこれで少女を置いていくと選べばクエストをキャンセルして森から出れるのだろうとノノは推測した。
現状の装備やレベルではあの白狼と戦うのは無謀と言える。しかしノノとしてはこのまま少女を置いていくことに抵抗がある。
「うぅ……大丈夫です。わたし隠れるのは昔から得意だったので……お姉ちゃんはこのまま逃げてください!わたしは大丈夫なので!」
「……ダメ」
NPCとは思えない程に強がりを見せる少女に、ノノは何を迷っていたのかと反省した。
例え相手がNPCだろうと、このまま置いて逃げるなどノノのゲーマーとしてのプライドが許さない。ましてやお世辞にも使えるとは言い難い魔法を見せて共に戦うと言ってくれた少女にカッコつけても良いではないか。
普段から臆病でコミュ障でどうしようもない自分が人を(NPCだが)助けることが出来るチャンスを逃せるものかと、ノノの闘志に火がついたのだ。
ノノは立ち向かうを選択すると、不器用ながらも少女へと笑いかけた。
余談だが、この光景を幼馴染みの理沙が見ていた場合、飛び上がって喜ぶことは間違いない。例えその相手がNPCであろうともだ。これでノノがどれ程のコミュ障を患っているかが知れるだろう。
「……一緒に、戦う」
(一緒に戦おう!)
「あぇ……う、うぅ……!あり、ありがとうございますぅ!本当は怖くて怖くて!うわぁぁぁん!」
「……っ、声。声、抑えて───」
ノノの言葉に安心した少女はとうとう泣きはじめてしまい、その声は森の中へとよく響いていく。
ノノは必死に少女の声を抑えようとするが、遠くの方から少女の泣き声に呼応するかのように遠吠えが聞こえてくる。
すなわち、白狼に捕捉されたのだ。
「っ!乗って!」
「うぇ!?ま、またわたしやっちゃった!?」
ノノは急いで少女を担ごうとするが、それよりも速く白狼がノノ達へ向かって駆けてくる。白狼は既に初速を越え凄まじいスピードで迫ってきている。今からノノが少女を担いで走り出しても追い付かれる可能性が高い。
やむ無くノノが弓矢をつがえてスキルを使おうとした瞬間、白狼はノノの近くに出来た水溜まりを発見するとそこを避けるように迂回して迫ってきた。
その行動にノノは疑問を覚えた。今のは明からに正面から飛びかかって来た方が確実だった。しかし白狼はそれをせず、わざわざ迂回して走ってきたのだ。
ノノはまさかと思い、少女へととある指示を出すことに決めた。
「狼!流水!」
(あの狼にさっきの流水を使って!)
「え!?は、はぃ!流水!」
一回目の時とは違い、水鉄砲くらいの勢いで水が白狼へと飛んでいく。その魔法は誰がどう見ても水鉄砲くらいの威力しか感じられないと分かるものだが、白狼だけは違った。
なんと飛んできた水を大袈裟に跳んで避けたのだ。
白狼はその鋭い牙を剥き出しにしながらも、少女に警戒心を向けたままチャンスを伺うように周りをぐるぐると回り始めた。
その行動にノノは確信を得た。
「……弱点」
(水が弱点!でもこの子の威力じゃダメージは与えられそうにない……)
「わ、わたしだってお姉ちゃんの役に立てるんだからぁ!流水!流水!流水ぃぃ!」
少女は懸命に白狼へと向かって水を放ち続けるが、ろくに戦闘したこともないであろう少女が当てられる訳もなく、その尽くが白狼に避けられる。
しかし徐々に距離は離れ、少女のお陰で再び逃走への道が開けたのは幸いだった。
「いく!」
「ふぇ!?あわわわ!」
ノノは少女を肩に担ぐと、二度目の逃走を開始した。今度はいくつも水溜まりが出来た為か白狼の足が少しだけ遅くなっていた。そうなればノノが白狼を振り切ることは造作もなかった。
走りながらも思考を続ける。
このままでは白狼へとダメージは与えられない。
スキルを使えばあるいは可能かも知れないが、ノノが使える一番強いスキルはチャージ時間が必要であり、白狼相手には厳しいものがある。
かといって一番使い勝手がいいスキルでは恐らくダメージは与えられないだろう。
あの白狼は倒せないことはない。イズいわく倒したという報告自体は上がっているのだ。ならば倒す手段が必ずある筈。
そのヒントは少女のお陰で手に入れた。白狼は水が弱点であるということ。
「……」
(でもこれだけじゃまだ足りない。水が弱点だとしても、水でダメージが入るのか、水が何らかの切っ掛けになるのか……)
ノノの頭は更に回転する。
浮かぶのは先程の白狼の行動。大袈裟に水を避けるのは水が白狼にダメージを与えるものだからなのか。それとも毒のようなものか。
だとしても、少女の魔法はあの鉄のような毛皮までダメージを与えられるような魔法ではない。
「……!」
(もしかして!もしそうなら試す価値はある!それが答えなら私の攻撃でもダメージを与えられる筈!)
「な、なんですか?どうしたんでしゅか?……ぅぅ」
ノノの様子に気付いた少女は怪訝な表情を浮かべながら質問するが、途中で噛んでしまい羞恥で悶えていた。
しかしノノは構わずそれを伝えた。
「……作戦。あなたが必要」
(作戦があるの!力を貸して!)
「っ!はい!わたしなんかが出来ることなら何でも言ってください!」
ノノは意気込む少女に頼もしさを感じなからも、思い付いた作戦を少女に伝えていく。
もしこの予想が当たっていたのなら、勝機はある。
ノノはようやく見えてきた勝ち筋に思わず口角が上がるのを感じていた。
察しの良い読者なら分かってしまう弱点。でもネタバレは無しだ。もしかしたら分からん人がいるやも知れんからな!
因みに赤頭巾ちゃんはれっきとしたNPCです。本作品のみのオリジナルなので他では多分出てきてない、はず?
ノノが赤頭巾ちゃんを担げているのはこのNPCが運ばれることを運営が想定していた為、重量設定が極度に軽くなっているからである。
こうやって徐々にノノのコミュ障を改善していくのだ……。
所で、言葉足らずな女の子って何か可愛いよね。え?俺だけ?そう……。