速さを追及したいのでゲーム内最速を目指します。 作:黒三葉サンダー
仄暗い森の木々を縫うように跳び移る姿が一つ。小さい狩人は大きな獲物を狩る為に気配を消しながら迫る。
「……」
(見つけた)
ノノの視線の先には白狼がおり、白狼は二度の逃走を許してしまった獲物を探すためにフンフンと鼻を鳴らしていた。ノノはそっと矢筒から矢をつがえ、素早く二本の矢を放った。
白狼が鼻を地面につけノノ達を追跡していた時、気配を察知した白狼が顔を上げると同時にノノの放った矢が白狼の両目に飛来する。白狼はそれを頭を振るだけで弾き跳ばし、木の上から狙撃したノノを落とすためにその巨体を大木へと叩きつた。
大木はあっさりとへし折れるが、ノノは巻き込まれる前に木から飛び降り白狼の背へと飛び乗った。
白狼が体を振るわせて落とそうとするが、それよりも速くノノは矢筒から一本の矢を取り出して逆手に持つと白狼の頭へと移動して左目に鏃を突き刺した。
今まで味わったことのない程の痛みが白狼の左目を犯し、怒りの声を上げながらノノをふるい落とすとその鋭い爪を振り下ろす。
着地の反動で反応が遅れたノノは何とか直撃を回避出来たものの、爪が体をかすっただけでHPが1まで削られてしまった。ノノ本人は知らないことだが、一撃もらっただけでもHPを全損しかねない白狼の攻撃は直撃さえしなければ必ず1残る仕様になっている為、ノノはギリギリ耐えることが出来たのだ。
「……!」
(うわっ!ギリギリセーフ!このまま退く!)
それでも次の攻撃を食らってしまえばその時点でゲームオーバーであり、白狼の攻撃を掻い潜りながら回復するのは不可能とノノは判断しているため、ノノは即座に逃走を開始した。
ノノが背を向け逃げ出したのと同時に白狼も獲物を逃すまいと駆け出す。白狼との距離を近すぎず、かといって離れすぎないようにスピードを加減しながら走っていくと、目標地点が見えてきた。
ノノがスピードを上げ目標地点を少し過ぎると、即座に体を反転させて弓を構えた。
「……決める!」
矢をつがえスキル発動の為にチャージを開始すると、白狼はその勢いのままノノに食らいつこうとしていた。何せ白狼には鋼鉄のような毛皮がある。先程は防御の薄い目を狙われたが故にダメージを受けたが、真っ正面からの攻撃であれば何もせずとも弾き返せる。そんな考えのもとでの攻撃なのだ。
ノノはスキルチャージ中により身動きは取れず、しかしその目には未だ強い光が宿っていた。
取った。白狼がそう確信したその時だった。
「土竜!」
木の上から赤頭巾の少女の声が聞こえると同時に白狼が踏み出そうとした足元の地面が窪み、落とし穴が出来る。咄嗟に止まることが出来なかった白狼がそのまま穴へと落ちるが、それほど深くはない。
「次!」
「はいっ!流水!流水!流水ぃぃ!」
白狼が穴から脱しようとした瞬間再び少女の声が聞こえ
、次は白狼の頭上から大量の水が流れ込んでくるのだ。
白狼は水を嫌がり急いで穴から出ようともがくが、水を吸った地面は脆くなっており中々外に出られない。
これこそがノノが思い付いた作戦。どうすれば弱点である筈の水を浴びせるかという問題に対しての回答だった。
ノノが何らかの方法で白狼の冷静さを無くし、怒らせることで動きを単調にし、穴へと落ちた白狼の上から水を浴びせるという作戦だったのだ。
水に濡れた白狼にはダメージそのものは入っていないようだが、あれほど堅くゴワゴワしていた毛は見る影もなくペッタリと皮膚に張り付いてしまっていた。
即ち、これこそが唯一大ダメージを与えられるかも知れないチャンス。
「……パワーショット!」
今までよりも強力な一撃が白狼の頭へと一直線に向かっていき、易々と毛皮を貫いて頭へと突き刺さった。
つまりダメージが入ったのだ。
白狼が今までにないくらいの大声を上げるが、ノノはすかさず攻撃を続ける。
「……ダブルショット!タブルショット!ダブルショット!!」
そのまま白狼が這い出す前にスキルを連発すると、全て吸い込まれるように白狼へと突き刺さり、白狼は弱々しく一鳴きすると光の粒子となって消えてしまった。
討伐報酬なのか、クエスト完了という文字と共に穴の手前に宝箱が現れた。
「討伐……完了……」
(終わったぁぁぁ!)
「ふわぁぁ!!すごい!すごいですお姉ちゃ──わわっ!」
ノノの勝利に大喜びする少女だったが、少女がいた場所は木の枝の上だ。そんな不安定な足場でピョンピョン跳ねればどうなるかは想像するに容易いだろう。
ふぎゅっ!と潰れたカエルのような声が聞こえ、真っ赤になった鼻を抑えて少し涙目になっていた。
「……大丈夫?」
「ふ、ふぁい……だいじょぶれす……」
ノノがパンパンと少女の服についた埃を払うと、少女はペコリとお辞儀した。
「お姉ちゃんのおかげで無事におばあちゃんのお家へ行けそうです!本当にありがとうございました!このご恩は一生忘れません!」
「……ん、助けられて、良かった」
(助けられて良かったよ!)
「あっ、そうだ!もし良ければこれを持っていってください!きっとお姉ちゃんのお役に立てると思います!」
そういって少女が取り出したのは一つの銀色の指輪だった。恐らくこれがこのクエストの報酬なのだろうとノノは考えた。残念ながら報酬の取得条件は判明出来なかったものの、これはこれで自分のみが所有するアイテムだと思うとノノのテンションが上がっていく。
「……ありがとう。大切に使う」
「っ!はいっ!ではまた何処かで!バイバイ!」
ノノの笑顔に少女も花が咲いたように笑うと、元気よく手を振って走り去っていった。
ノノも少女の姿が見えなくなるまで手を軽く振って見送ると、少女から渡された銀色の指輪のアイテムデータを確認した。
『白狼の指輪』
【AGI+10】
【白狼化】
ノノにとってAGI上昇に加えスキルもついてる装飾品を手に入れられたのは大きい。早速指に嵌めてみると、ノノの体が光に包まれ始め思わず目を閉じた。
「……?……?」
(あれ?なにか変わった?)
ノノは目を開けて自分の体を見下ろすが、特に変わった様子は見られない。
一応後ろも確認しようと顔を背に向けると、なにやらモフモフとした尻尾が見える。
なんぞこれとよく確認してみると、それはノノの腰辺りから生えていた。
「……!?」
(な、なにこれ!?)
慌てて穴に残った水溜まりの水面を覗き込むと、そこには犬のような白い耳と同じく白いモフモフの尻尾を生やしたノノの姿が写っていた。
「………!!?!?」
(嘘……これなにぃぃぃぃぃ!!?!?)
声こそ口に出ていなかったものの、心の中では大声で騒いでいたノノであった。
白い犬耳少女の完成だぁ!もう自由に書きます(前から)。
それじゃやることやったんで失踪します。