女神転生ⅣFINAL短編集   作:アズマケイ

28 / 33
過去は未来に復讐する④(チームエコー)

それは《大道寺》という古くから続く名家で有数の資産家である女たちの悲鳴だった。16歳になると気が狂い、未来の知識を得る代わりに頭がおかしくなり、男として振る舞い始めるという。代々この一族は、女が16歳になる前に殺害する風習がある。 なぜなら、16になると「鬼」が憑くらしい。大道寺家の者はこの事を「鬼憑き」と呼んでいた。

 

「でも1920年で終わってるね。へー。《葛葉ライドウ》って人が《鬼憑き》討伐したんだ」

 

《葛葉ライドウ》の言葉にニッカリは顔を上げた。

 

「どうしたの?」

 

「本当に?」

 

「はい」

 

手記を見せるとニッカリは目を丸くした。

 

「《葛葉》、聞いたことがある。悪魔討伐隊にいたやつがそうだ」

 

「それほんとに!?」

 

「マジっすか、ニッカリさん」

 

「......だがなぜ倒されたはずのタラスクがここにいる?」

 

誰もが沈黙した。

 

「《葛葉》ってなんなんすか?」

 

マナブの疑問にニッカリは口を開いた。

 

葛葉一族は「日の本の守護者」とも呼ぶべき存在である。かつての「鬼が闊歩していた」平安の世の頃に誕生し、 以来千年以上の永きに渡り「国家」を守護して来たらしい。組織に所属するのは「悪魔」を召喚し、使役 する「悪魔召喚師(デビルサマナー)」や、 彼らをサポートする強力な巫女や術師であり、その力は人間界でも最高レベル。 使用する術は「神道」や「陰陽道」「悪魔召喚プログラム」等、時代や流儀により違っている。 寧ろ、共通しているのは厳格な戒律や使命に支えられた「魂」である様である。宮廷で鬼祓いの「追儺の儀式」を行うなど宮廷に仕えた陰陽師集団が原型の国家を霊的に守護する悪魔召喚師の組織だ。

 

「だが悪魔討伐隊にいた葛葉はケンジと共にガイア教にくら替えしたはずだ。御業戦争のあとは《葛葉》一族もろとも消息不明だ」

 

「ここにこんな手記が残ってるってことは、昔大道寺家の土地だったのね。明らかに最近じゃないレベルで白骨化してる遺体があるし」

 

「ナナシと探してみたけど、ニッカリさんたちを呼んだ依頼人がいた様子はないよ?」

 

「なるほど、こうやって人外ハンターを餌食にして贄を得てタラスクが大人しくなった隙にスマホなんかを回収していたんだろうな。なんてことだ」

 

ニッカリは苦い顔をする。

 

「もし葛葉が生きているなら、人外ハンターの戦力をどさくさに紛れて削ごうとしているんだろう。スマホをたどればどう見ても同士討ちだ」

 

マナブは舌打ちをする。

 

「ニッカリさんを執拗に呼びつけるってことは当時を知ってる古参だからっすか、ふざけやがって」

 

「悪魔討伐隊のメンバーで残ってるのって幹部かベテランばかりでしょ?それは困るわね、ニッカリさん、本部に緊急連絡しても?」

 

「ああ、頼む。ついでにこのタラスクの、搬送を頼む。本部に応援を頼んだから暫くしたら来てくれるはずだ」

 

「わかりました」

 

「さて、俺たちはまずこの場所がどこに通じてるか調べる必要があるな。そしてわかり次第封鎖だ」

 

「了解っす。さあて、いくかナナシ、アサヒ」

 

頷くナナシはアサヒの手を取り歩き出す。イチャつくなよとマナブがにやにやしながら笑うものだから、もう大丈夫だよナナシとアサヒは顔をあからめるハメになった。

 

今回発見された全長800メートルほどに及ぶこの鍾乳洞は岩盤に覆われる前の東京にあったものがさらに広がってできたものらしい。一石山大権現(いっせきさんだいごんげん)と呼ばれていて、大自然を神と崇めて過酷な苦行を行う場だったらしく、名残が洞内のいたるところに残されていた。

 

 

奥に入るにつれて涼しい風が体に当たり、とても寒い。岩盤に覆われている東京も気温は年中低いがさらに低い。外の気温との寒暖差が激しすぎる。幸いナナシたちは軽装ではないがそれでもやや寒いため次来る時は羽織れる上着を持って行った方がいいかもしれない。ただ洞内は狭い道や急な階段などもあるので、進んでいくうちに体が暖かくなってきた。洞内は無風なのでそこまで寒さを感じない上に湿度は85%らしいから、それも影響しているのだろう。

 

 

ニッカリさん曰く鍾乳洞は石灰岩の中にできた洞穴のことで、雨水の中に含まれている炭酸ガスによって石灰岩が溶解されてできたそうだ。天井のいたるところは「氷柱」のようなものが伸びているが、これは鐘乳石と呼ばれるものらしい。1センチ伸びるのに、約60年かかるのだが、それも東京が岩盤に覆われて雨というものが降らなくなったことで測度が遅くなっているとのこと。洞内には「縁結び観音」という縁結びにご利益がありそうな観音像があったりなぜか三途の川があったりした。どうやら昔の名残のようだ。

 

「三途の川って死んじゃった時に渡る川じゃないの?」

 

「こんなに狭いなら渡るの楽だな」

 

「ちゃちな三途の川だなあ」

 

そして、洞穴の一番奥に「十二薬師」の像が安置されていた。ここからさらに鍾乳洞は続いていて、ようやく出口にたどり着く。

 

洞窟探検を終えて出口から外にでると、アサヒたちは空気が違いすぎて不思議な感覚になる。鍾乳洞の中がよっぽど澄んだ空気だったことに気付かされた。

 

「市ヶ谷駐屯地前か......なるほど、通り抜けられるわけだな」

 

今、ガイア教が本拠地をおく場所がある目と鼻の先にある。ニッカリは苦い顔をしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。