Fate .irrationality defeat (フェイト イラショナリティ ディフィート) 作:谷崎 紫乃
「」は会話、『』は心の中で思ったこと、〈〉は電話や念話の内容に分けています。
評価や感想もいただけると幸いです。
それではどうぞ
霧香達は近くの公園のドーム型の遊具の中に身を潜めていた
「早速襲われたがどうするんじゃ、マスター?」
以蔵が霧香に問いかける
「そうね…1度家に戻るわよ、以蔵…」
霧香がそう答えると以蔵は深いため息をついた
「おまん…素人丸出しぜよ…」
「何故?」
「まず、わしの事を真名で呼んだやろ…普通ならマスターはサーヴァントをそのクラスで呼ぶもんぜよ。次に、待ち伏せされちょるかもしれん場所に戻るなんて、わし以上のアホか?」
以蔵は霧香を見ながら自分の頭を指でつついてみせた
「呼び方については謝るわ、でも財布から全て置いてきてしまっているのではこれからどうしようもない。それに待ち伏せされていても貴方がいるでしょう。」
霧香は表情一つ変えずに淡々と話す
「あんなぁ、そういうても…」
「出来ないというなら別の案を考えるわ」
以蔵の言葉を遮りそう言った霧香はその長い髪を耳にかけると、再び考え始めた。
すると、以蔵はその拳を堅く握る
「わしに…出来ないっちゅうたんか?いいぜよ…やったろうやないか!」
以蔵は意気込み、その拳を突き上げる
ゴンッ!
「ッ〜〜〜!!」
が…遊具の天井にぶつかり、その手をおさえながら悶絶した
「何してるの?早く行くわよ、アサシン」
いつの間にか外に出た霧香はアサシンにそう言って歩き出した
「おまん…絶対、友達とかおらんやろ…?」
その後ろ姿にアサシンがポツリと言った、その言葉に反応したように彼女の肩がピクリと動く
「そうよ…私は他人に共感出来ない、つまらない人間だから…」
彼女は振り向きもせずにそう言うとそのまま歩いて行った
・・・
「大丈夫だった!?」
アパートに付くと、大家の中年のおばさんが駆け寄ってくる
「びっくりしたわよ!さっき帰って来たら霧ちゃんの部屋のドアは開いてるし、窓は割れてるし、霧ちゃんは居ないしで」
大家は興奮気味に話し続ける
「霧ちゃん美人だから誘拐でも…」
パン!
霧香は大家の目の前でねこだましをする
「ヒャッ!」
大家は小さく悲鳴を上げる
「落ち着いて、私は平気です。家に居なかったのは窓からボールが入って来たので、そのボールの持ち主を探していただけですから」
霧香は淡々と語りながら理由をでっち上げた
「こんな夜中に?玄関も開けっ放しで?」
大家が霧香の目を覗き込む
「まあ…」
霧香は目をそらす
「ふーん、案外ドジな所もあるのね!」
大家はそう言うと霧香にカギを渡した
「あの…これは…?」
「この時期に外風の入る部屋なんて大変でしょ?今晩はこの部屋で寝なさい。必要なら自分の部屋から布団なりなんなり持って行きなさいな」
大家は明るい笑顔でそう答えた。
「あ…あり…がとう…ございます…」
霧香はぎこちなくお礼を言う、他人と関わりを持たない彼女にとって(ありがとう)とは、あまりに言い慣れていない言葉だった
・・・
霧香は自分の部屋から布団を持って渡されたカギの部屋へと入った
『そういえばアサシンは付いて来なかったみたいね…私みたいな素人にはついて来れないってことなのかしら…』
ベッドに腰掛ける
ギシッ…
静かな部屋に微かに軋む音が響いた
『私は…誰にも…』
「あんなお人好しが今の日本にもおるもんなんじゃなぁ?」
何も無い空間に突然アサシンが現れた
「アサシン…どうして?というか何処から?」
「おまん本当に素人じゃな、わしらサーヴァントは霊体化出来るんぜよ」
アサシンはやれやれといった表情で答えた
「そう、頭に入れたおくわ」
霧香は髪を耳にかけて考え込む
『これからどうしよう、今日みたいに突然襲われる事もあるかもしれない。まずは敵の正体を突き止めるのが先決ね。そうすると…』
「やめじゃ!やめ!」
しかしそれをアサシンが遮る
「初日からそんなんじゃあ身体じゃなく心がもたん。わしはアホじゃけぇ考えるんはマスターのおまんにまかせるっちゃが、今は休め。それに明日からは学校?があるんじゃろ?」
霧香はアサシンの言葉に一応納得した
「確かにそうかもしれない…なら明日からは、貴方はその霊体化で付いて来なさい。」
「おう、ドーンと任せい」
アサシンは自分の胸を叩いてみせる
「じゃあ私はもう寝るわね」
そう言うと霧香は布団に入り込む
「おやすみじゃ、マスター」
(おやすみ)…久しぶりに聞いた言葉、母親がこの世を去ってから聞くことがなかった言葉、彼女は聞こえないフリをして眠りへと落ちていく
・・・
「ーーー!ーーー…!」
真っ暗闇の中、知らない男が私に手を伸ばしながら何かを叫んでいる。何処かで聞いたような声、しかし何を言っているかは聞き取れない。
私はその手を取ろうとはしない、触れられない、触れてはいけないと、頭の中に強く響いた言葉に逆らうことが出来ないからだ。
そしてその男は背後から迫って来た暗闇に取り込まれていく。あとに残るのはどうしようもない悲しさ、虚しさ、寂しさ、そして怒り。
そこで私の視界は暗転する
・・・
『また…あの夢…今日もあの男の顔を覚えていない、夢でははっきりと見えたはずなのに』
霧香は目を覚ますと、自分の部屋へと向かい、学校の支度を済ませた
「アサシン…」
「なんじゃマスター?」
カバンを持ち、後は登校するだけという時点で霧香が呼ぶと、アサシンは実体化して答えた
「貴方は他のマスターを感じ取ったり出来るの?」
「いんや、サーヴァントの気配は感じられるんじゃが、マスターを直接感じる事はできん」
「そう…」
「わしはアサシンじゃからクラススキルの気配遮断で、ある程度他のサーヴァントには勘付かれんから安心せい」
アサシンは少し得意げに話す
『魔導書で、ある程度知識はあるけど、もう少し話を聞いてみる必要がありそうね』
そして霧香は玄関のドアノブに手をかける
「そろそろ行くわよ、アサシン」
「へいへい」
アサシンの姿が再び消えると、霧香は家の扉を開き学校へ向かった。
続く
お楽しみいただけたでしょうか?これからも頑張って書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。
次回もよろしくお願いします。