Fate .irrationality defeat (フェイト イラショナリティ ディフィート) 作:谷崎 紫乃
part3
ガラガラガラッ
教室の扉が開き、長い黒髪で綺麗目に整った顔の少女が入ってくる。中に居た人々は1度は視線を向けるも、何事もなかったように、すぐ友人との話を再開する。少女は教室の端、窓側の1番前の自分の席へと座り、本を開いて読み始めた。
これが霧香のいつもの朝である
〈ひゃー…挨拶も無しっちゃ、今の若いのは、すさんどるのう〉
しかし、いつもと違うところがある。それは、彼女の頭にアサシンの声が響く事だ
〈黙ってて…集中出来ない〉
〈寂しい事を言いおるのう、マスターもあやつらに混ざってこればええじゃろ〉
そう言われて霧香は視線だけを、楽しそうに話すクラスメイト達へと向け、すぐに本へと戻す
〈無理…というか嫌、昨日も言ったけど、私はそういう人間じゃない…〉
〈まあ無理にとはいえんからのう…〉
〈それよりもアサシン、先に言っておくけど、トイレと着替えの時は私から離れていなさい。〉
〈わかっちょるわ!!〉
〈集中すれば私にも見えるのだから、嘘を付いても無駄よ…〉
〈だから!せえへんゆーとるじゃろうが!〉
そうして、いつもどおりの日常が過ぎていく。
・・・
その日の最後の授業は体育、種目はバスケットボール。運動が出来る霧香はコートを駆け回り次々と点を取っていく。他人と会話をしなくても、自然とボールは彼女に集まった。しかし今日は、彼女にも予想外の事が起きた
「えーい!」
ゴールに向かう彼女の前に相手チームの女子が突然飛び出して来た。あまりにも突然だったため霧香は避けることが出来ずにその勢いのまま衝突してしまう
ドンッ!バタバタン!
「ちょっと!大丈夫!?」
見ていた女教師が駆け寄ってきた
「大丈…痛っ!?」
霧香が立ち上がろうとした時、左足に鈍い痛みが走った、どうやら足首をひねったようだ
「ねえ!大丈夫!?ねえってば!」
しかしその横で周りの生徒が、倒れている茶髪のポニーテールの女子に話しかけている。
「先生!呼びかけても起きない!」
狼狽えた様子でその女子生徒が教師に訴える
「落ち着きなさい。呼吸は?」
「してる!」
「なら保健室へ運ぶわよ、貴女は手伝って」
そう言うと女教師は担架を持ち出し、ポニーテールの女子を乗せる
「貴女は霧香さんをお願い」
女教師は先程とは別の生徒にそう言うと担架でその女子を連れて行った
「えっと…天野…さん?」
教師に頼まれた生徒が霧香に話しかける
「さっきのは、しょうがなかったと思うよ…あんまり気にしないで?」
「…」
霧香は無言のまま、その生徒に肩を借してもらい、保健室へ向かった
・・・
「う…んー?」
保健室のベッドの上、その女子生徒はゆっくりと目を覚ます。すぐ横の窓から見える空は夕日によって紅く染まっている。
「気が付いた?」
唐突に話しかけられた女子生徒はその声に振り向く、するとそこには、黒い長髪の綺麗な女子が円い椅子に座っていた
「ごめんなさい、私の不注意で…」
霧香は心配そうな表情で女子生徒をみている
「あっ!えっ?全然!元々はアタシが危ない事したのが悪いんだし!」
ベッドの上で茶髪のポニーテールの女子は頭を横に振りながらそう言った
「霧香さん、だったよね?話すのは初めてだねー。私の事分かる?」
ポニーテールの女子は前に身を乗り出すような体勢で霧香の顔を覗き込む
「えっと…その…ごめんなさい。あまり人の名前を覚えるのは得意じゃないの…」
霧香は目を逸らしながら申し訳なさそうに沈んだ口調で言う
「そっか…じゃあ改めて!私は千和 春菜(ちわ はるな)、よろしく!」
「ええ、よろしく…」
「霧ちゃんって呼ぶね?ねえ?霧ちゃんの好きな食べ物って何?私はパンケーキが好きなんだぁ、駅前のお店はインスタ映えするのがあってね。駅前っていうと、新しく出来たドーナツ屋さんも美味しくってねー…」
「え?あの…ちょ…!?」
霧香は知らなかった、春菜が、気に入った相手に対しては、話すと止まらなくなる事を…
そうしてかなりの時間を過ごした
春菜の話すことを聞き取るだけで精一杯の霧香だったが、気づけば既に日は落ちている
「それでねー…ってありゃ?もう真っ暗だ。」
「きょ…今日はもう帰りましょうか…」
霧香は精神的に疲れた様子でカバンを持つ
「うん!じゃあ下駄箱まで一緒に行こうよ!」
その後、途中で春菜と別れた霧香は家へと辿り着き、部屋に入ると真っ先にベッドへ仰向けに倒れ込む
「疲れた…」
「ハハハハハッ!まさに怪我の功名っちゅうやつぜよ!ちと口は軽そうじゃが、良い友人になりそうじゃのう。」
アサシンが実体化するとその顔にはイタズラな笑顔を浮かべていた
「バカを言わないでアサシン、今日はたまたまこうなっただけ、明日からはいつも通りよ」
霧香は腕で目を隠すようにしながら答えた
「変に強がるやっちゃな…マスターがそんなんでは良くなるもんもならんぞ?」
そんな霧香の顔を覗き込むようにしながらアサシンが言う
「余計なお世話よ…シャワーを浴びて今日はもう寝るわ、後は好きにしてなさい」
霧香ベッドから立ち上がり、風呂場へと向かう
「了解ぜよ」
アサシンは霧香を見送ると、テレビをつけた
・・・
翌日
ガラガラガラッ
教室の扉が開き、長い黒髪で綺麗目に整った顔の少女が入ってくる。中に居た人々は1度は視線を向けるも、何事もなかったように、すぐ友人との話を再開する、ただ1人を除いて。
「霧ちゃん!おハロー!」
その女子はそう大きく挨拶をして、茶髪のポニーテールを揺らしながら、霧香に駆け寄って来た。
続く
これからもやって行くつもりなので、よろしくお願いします。