FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第2章 マケドニアの反乱

ミネルバ王女は無能ではない。

カリスマとてないわけではない。でなければ天馬白騎士団を率いる事など出来ない。

 

しかし、『男をたてる』ということを知らない。

 

生来からの王女であるミネルバは、男だろうが壮年だろうが家来は家来。

 

ミシェイルのように、連想させるスケールの大きさや垣間見える野心、そして徹底した恐怖政治を行う覚悟があればまた違ったろう。

しかし、妹マリアに見せる母性を見せられては、その威厳も崩れ去る。

 

励ましでなく、自助努力の要求。

 

『もっとしゃんとしなさい』

 

それは、『母』にいわれれば一番反発したくなる言葉だ。そして、母以外に言う者などいないだろう。

そんな言葉を小娘に言われて、カチンとこない者は少ない。絶対的権力を誇っている時ならともかく、再建の途中では、『俺たちがこんな目にあっているのはお前が勝てなかったからだろうが』と思われる事さえある。そいつらには、勝てなかった原因が自分達にもあるなどとは考えない。いや、その事実から目をそらす。

 

なにより政治の世界は、利益や計算よりも、むしろ恋愛、情愛による部分がバカにできない。

『こいつとは話が合わない』と思われた王ほど惨めなものはない。

悪気はないのに、彼女が頑張ろうとすればするほど、周りの貴族は離れていった。

 

マケドニアが再建の道を歩んで、まだ一年も経たないというのに、この国は早くもクーデターという最悪の形で崩壊したのである。

 

 

 ・

 

 

マケドニア国境。

 

今回も、情報提供はアイシャに頼む。

慣れぬ土地で無理をするより、専門家に任せたほうがいい。

 

グルニアでの事・・・ロレンスの願いである、双子の保護が出来なかった事は今だ皆の中でしこりとなっているが、こちらもアイシャに任せることにした。

 

「どうやら、強力な助っ人と連絡が取れそうなの」

「助っ人?」

「オグマさん」

「!?」

 

なぜオグマがグルニアに?

と思ったのが顔に出ていたのか、アイシャは解説を始めた。

 

「タリスって国は、まだ若いの。昔、島の部族同士で争いが耐えなかった時に、一人の冒険者を将として、今のタリス王がまとめ上げたんだって。

その時の冒険者というのが、若かりし頃のロレンス将軍だったんだって」

「ああ! それでタリスの傭兵団隊長が、グルニアのお家騒動に助けに出るのか」

 

数ヵ月前のアリティアでの叙勲式の後言っていた、次の仕事というのがグルニア絡みであったというわけである。

 

ならば。

グルニア問題は、アイシャとオグマに任せることとして、今はマケドニアだ。

今回のクーデターは、その後身柄をアカネイアに引き渡せと言われているとしても、まずは救出する任務であり、ラングに陥れられてではなく、ただの反乱らしい。

反乱軍の中には知った名もいないため、グルニアの時のような思いはしないで済むだろうということで、皆やる気を取り戻している。

 

そして、国境の森に差し掛かったとき。

 

「マルス様ーーーーーーっ!!!」

「あれは・・・・・・カチュア!?」

 

ペガサス三姉妹次女、カチュアが飛来した。

 

「よかった。お会い出来て」

「カチュア。反乱が起きたということだったけど、どういう事なんだ」

「ミネルバ様は急ぎすぎたのです。ドルーア側についていた貴族の多くは、ただでさえ『敗残国の立て直し』に、私財を投じることを嫌がり、与えられた任務もまともにこなしませんでした。

貴族はプライドだけは高いです。君主からの命でさえ、頭ごなしの『命令』ではへそを曲げます。

しまいには、『我々が財産を失ったのは、ミネルバ王女がアカネイア側について一度マケドニアを滅ぼしたからだ』と陰口を叩くものまで・・・・・・」

 

これには一同呆れた。

負けておいて、お情けで国に戻してもらっておいて出てくるセリフであろうか。

ミネルバが一度マケドニアから離れたのは、賛否あるのは仕方ない。しかし、負けた時点で、その場で首を落とされても文句は言えないはずだ。

 

「さすがにこれには腹を据えかねたミネルバ様は、そういう将軍や貴族を追放する準備を進めていたのです。しかしそれがどこからか露見し、やられる前にの論理か、クーデター・・・・・・」

 

ミネルバ王女は中途半端な優しさと厳しさを持っているだけに、小賢しい連中と本当にそりが合わない。しかも頑固で、自分のやり方を曲げない。

 

今思えばミシェイル王子の恐怖政治は、貴族どもの小賢しさを押さえつける方法としてとったのだろう。

周りを見て、今を見て動くという意味では、ミシェイルはミネルバより数段上であったということだ。

マルスがあれほどの力を持つようになるということ自体は、とても予測できるものではなかったのだし、ドル―アについたのも故なきことではない。

 

「とにかく、僕らはこの反乱をおさめるために来た。カチュア、案内してくれ」

「はい!」

「では、早速軍議をいたしましょう」

 

ジェイガンはそう言うと、天幕に主だったものを集めて地図を広げる。

 

「アイシャの報告もある。ちょうど良かったですな」

 

促され、地図のそこここをさしながらアイシャが発言する。

 

「まず、こちらは動きをとりにくい森の中だというのに、竜騎士が奥に控えてるというところが面倒ね。それから、このあたりの森に、盗賊が逃げ込んでる。それと・・・・・・

中腹あたりに、ハンターの傭兵たちがいるけど、どうもマケドニアの青年を無理やり引っ張ってきたらしいわ。クーデターは成功したものの、民心を安定させられていないのね。兵の数が足らないのよ」

「そうですね。全く足りない筈です」

 

今回は迅速さが物を言う。ミネルバ王女は一刻も早い救助の必要がある。

カチュアやライアンの勇ましい発言や、ドーガの特攻の意見など出たが、マルスはルオにも意見を聞いた。

 

「ルオ、君はどう思う?」

 

「ええと・・・・・・アイシャ、この中腹の傭兵団の参加者について、詳しい情報があるといいなと思うんだ。話し合いが出来るならそのほうがいい」

「相変わらずね。でもまあ、反対してる家族とか、いそうといえばいそうだわ」

 

そして、森の中でさらに動きを阻害されるアーチャーの数を減らす流れで、ゴードンが。アランの提案の調整を本人がするという形で、アランが輸送隊の護衛をする事になった。

 

 ・

 

ルオの思いつきは思わぬ方向を向く。

 

「ウォレンも、馬鹿なヤツさ。

金で雇われて反乱軍に入っちまうなんてよ。

ああ、確か天馬騎士のカチュアさんとは知り合いだったと思うけど…」

 

という情報があったのだ。

 

確認すると本当に知り合いらしい。

カチュアとルオは別働隊として、中腹の傭兵団と盗賊の迎撃に向かい、カチュアはさらにウォレンというハンターの説得にも当たることになる。

 

 

 ・

 

 

広い範囲をカバーする竜騎士を一体ずつ確実に倒すために、森を右から迂回する戦法を取る。

が、中腹のハンター部隊の動きを読みきれず、左翼からの攻撃を受けそうになる。

 

「僕が撹乱する。しんがりを務める!

皆は部隊を村方面に進めてくれ!」

 

ルオは囮をかって出て、攪乱に成功。そのうち盗賊を退治しレディソードを手に入れたカチュアが帰ってくる。

カチュアはその中に見知った顔を見つけた。

 

「ウォレン!どうしてあなたまで反乱軍に!」

「俺達は雇われたから命令を聞くまでさ。主義も主張も別にない」

 

カチュアはその言い草がカンに触った。

 

「・・・・・・ミネルバ様がやり方を間違えて、結果がこうなったのは認めるわ。でも、あなた達マケドニアの民がそういう言い方をしないで。

ミネルバ様はあくまでも民のために粛清を行おうとしたのに。

だいたい、このままクーデターが成功すれば、あなた達は、あの将軍たちの支配する土地で生きていくことになるのよ。そこに何か希望はあるの?」

 

「・・・・・・何も、ないな」

 

ウォレンのセリフは、良くも悪くも端的であった。

その場の金は欲しいは欲しいが、奴らが支配するマケドニアはさぞかし居心地が悪いとわかる。

 

「なら、私たちと共に来て」

「そうするか」

 

「・・・・・・」

 

はたで見ていたルオは言葉もない。

自分もアリティア騎士としての自覚は、他の元第七隊員に比べれば低いと思っていたが、マケドニアの傭兵のそれは低すぎる。

 

「それだけ切羽詰った現状もあるし、バカバカしい戦いでもあるってことよ」

「・・・・・・いつからいたんだアイシャ」

「ああそうそう。村にマルス王子の知り合いがいたんですって。あなただけ見てないから報告」

「マルス様の知り合い?」

 

まあ、世界中を戦いながら回っていたマルスのことであるから、どこにどんな知り合いがいてもおかしくないのだが。

 

 ・

 

「というわけで、マルス王子の力になりに来たってわけよ!!」

「ありがとう。心強いよ」

 

村にいたのは、オグマと共にいた傭兵隊のマジであった。新たな仲間をここでも迎え入れることとなり、アリティア軍の戦力は充実し始めていた。

 

 

 ・

 

警戒範囲の広い竜騎士は、強敵ではある。

しかし、弓兵にとってはただのカモだ。

 

「んん~・・・・・・」

 

ヒュガッ!!

 

「ぐるぎゃあああああああっ!!!」

 

飛竜のおたけびが響き、竜騎士が落下していく。

これで二体目である。

 

「は、はは。は・・・・・・」

 

自分の放った矢で、強敵が何も出来ずに落ちていく。

ライアンは『自分にも力がある』という感覚に高揚していた。

実際、力も技もある。対したものではあるのだ。

 

「やったね。手柄だ」

「は、はい!」

 

これで後は城を落とすのみだ。

 

そして、敵将ルーメルを相手取っている時には、ルークも経験を積む。

ルークはバランスよく成長を遂げ、ロディやセシルの上を行く力を身につけていた。

 

そして砦は落ち、ルーメルは拘束された。

苦い顔をしたカチュアが近付く。

 

「ルーメル殿。なぜ反乱など・・・・・・」

「ふん。追放されると知って手をこまねいていられるか。我らが己のことしか目になかったのは今更だが認めよう。しかし、それを今まで許した王としての甘さはかえりみぬというのか?

それでは臣下もついてこんよ。

先代は自らも戒める方であったし、ミシェイル王子は恐怖で引き締めた。

 

我らは負けた。好きにするがいい。

だが、王の資格などあの女にはない!!」

「貴様ぁっ・・・・・・!!」

 

カチュアは激昂するが、このこと自体はカチュアも言っていたことだ。

政治とは、組織とは、柔軟性も必要なのだ。

 

アランの視線に気づいたマルス。

 

「苦言であると思っておく」

 

そう言うとマルスは、制圧作業にかかった。

 

 

 ・

 

 

「王子様。牢に、知り合いが居たみたいよ」

 

アイシャが女性を連れてきていた。

 

「マルス様! ようやく巡り会えました」

「リンダ!?どうしてここに」

「マルス様に会おうとして旅をしていたら、クーデターに巻き込まれて・・・・・・これを、届けに来たのです」

 

五つの穴のある、竜の紋章の盾。

見覚えがあった。忘れるわけもないが。

 

「ファイアーエムブレム!?

どうしてこれを僕に・・・・・・

 

ニーナ様がそうされたということだよね。

でも、今アカネイアは、ハーディン皇帝のもと平和を保っているはず。なぜこんな・・・・・・」

 

「ニーナ様は・・・・・・何もおっしゃいませんでした。ただ、頼むと。

泣いてさえおられました」

 

「!!!!」

 

ただ事ではない。

そして、言えぬわけがあったのだろう。

 

「リンダ。僕たちと一緒にいた方がいい。いずれアカネイアにも行くことになるだろうし」

「私も微力ながら力添えを」

「・・・・・・わかった。頼むよ。ちょうど魔道士がいないんだ」

 

マルスはまた新しい仲間を加え、クーデターの本拠地を目指すこととなる。

 

「ねえアイシャ、リンダさんて・・・・・・」

「暗黒戦争の英雄の一人よ。ルオも知らなくはないでしょ?」

「うん。確認しただけ」

 

ルークが入ってくる。

 

「スリットの悩ましい年上美人・・・・・・いいなおい! 心なしかタレルオの鼻の下まで垂れてるぞふっふっふ」

「ばっ・・・・・・ルーク!!」

「ふーん」

「誤解だアイシャ!!!」

「何も言ってないわよ」

「最低ねこのスケベ隊長。よらないで」

「乗っからないでよセシル!?」

「どちらにしろこんな時に論じる話題とは思えないのだが」

「でも、暗くなっているだけでも良くないです」

 

元第七のメンバーは今日も騒がしかった。

 

 

第二章 マケドニアの反乱 終

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