FE 新・紋章の謎異聞 漂流傭兵 ルオ・ルスペード   作:おかのん

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第3章 連れ去られた王女

かつてドルーアの一領地であったマケドニア。

 

ここにあった遺跡の発掘と、ドルーアの繁栄のための開墾、要塞作り。

そのために送られた奴隷達。

ろくな食事も与えられず、意識のあるうち中働かされ、日々死んでゆく仲間たち。

 

英雄アイオテが立ち上がり、アリティアの祖アンリと足並みを揃え、マケドニアは自分たちの国を勝ち取った。

 

竜を育てるに足る肥沃な森は、後に竜騎士と呼ばれる強力な騎士の存在を許し、マケドニアは、栄華を築いた。

 

しかし、今・・・・・・

 

 

「先の戦争で、ドルーアについたのが運の尽き。

まあ、大局を見れば間違いとは言えなかったけど、時に見放されたとでも言うのかしら。

我らがマルス王子にたった一年で版図をひっくり返され、あわや滅亡しかけた、というのが現在のマケドニアなわけよね」

 

「大まかには知ってるよ。で、今回のクーデター、と」

 

「そ。カチュアさんが自嘲気味に語ってたけど、まあ、ミシェイル王子という、『アイオテの再来』とまで言われたカリスマが姿を消し、今まで敵どうしだった身内で国づくり・・・・・・

まあ、元々無茶があるのよ。

で、言っちゃなんだけど、ミネルバ王女って、人にも自分にも厳しい上に脇が甘いのよね。

理想論の人、なわけ」

 

アイシャはちらりと自分の想いびとを見やる。

 

「・・・・・・何?」

「なんでもない」

 

話が合いそうだなあ。と思ってしまったアイシャである。

 

「まあだから、超優秀なミネルバ様信者ーが周りを固めてると、とってもいい国が作れそうなんだけど、悲しいかな、滅びかけの国じゃままならない。

ミシェイル殿下なら愚鈍な俗物も優秀な犬も清濁合わせて噛み砕くって感じでまとめあげるんだけど、ミネルバ様って、ようはお嬢様なの。嫌いなものは遠慮なく捨てる人って言えばわかりやすいかな。

 

『働かない奴はいらん』

 

正論なんだけど、働きたくないって思うのは、上に不満があるからよ。その場合、上に立つ者の取るべき手段は大きく二つ。

不満を聞いてやるか、押さえつけるか。

追放するって手段は、組織を運営する上でははっきり言って下の下なの。特に権力を持っている奴を扱う時は、ね。だって追放したら、その人が持ってる力まで手放すことになる。取り上げようとしたら命がけで抵抗するのは自明の理だしね。

 

彼女は、正しいわ。国という単位だけで見れば、私腹を肥やすだけの愚物は害悪よ。

でも、それじゃあ、『彼女のためなら全て捧げてもいい』っていう人しかついてこれないのよ。

 

同類で、逆パターンがマルス王子かな。

『力を貸して欲しい』って言い出す王族なんて、はっきり言ってセオリーの真逆よ。虚勢でも『黙ってついてきやがれ』で最低限ってとこ。

でも、王子はそのやり方で暗黒戦争を勝利し、アリティアを奪還した。これは驚異的なことなの」

 

組織を預かる立場にいるだけあって、こういう事には一家言あるアイシャの講義。

彼女も、マルス王子には一目置いてはいるらしい。

 

そして、彼女にしてみれば、このクーデターは起こるべくして起こったもののようだ。

 

「まあ、マルス王子の話は脱線だわ。マケドニアは今言ったとおり。けど・・・・・・」

「ん?」

「情勢を見る限り、うまくいきすぎなのよね。このクーデター。

親ミネルバ派だって大勢いたわけだし、彼らも無能じゃないはずでしょ? 何かもう一つ、別の要素があったと睨んでるのよ、私」

 

別の、要素。

 

「・・・反乱の手助けをした奴らがいるってこと?」

「多分、だけどね」

 

憶測に過ぎない。

しかし、ルオの脳裏には、グルニアの件で手を組んだ、クライネの顔が浮かんでいた。

 

 

 ・

 

 

「ウキキ。ご注文の品だ。ありがたく受け取らないとうちのお姫様がキレる」

「あたしは蝶よ花よのお姫様なんか似合わないでしょうが」

「間違えた。女王様だ。ウキ」

「そのへんはどちらでも構わんが、感謝はしよう」

 

リュッケ将軍はやっと届いたシューターを前に、最近はとみに見せなかった安堵の表情を浮かべた。

内陸にある島という地形上、この城は守るに易いが攻めるに難い。遠距離攻撃手段は是が非にでも欲しかった。

 

「ハーディン様にいっそうの忠誠を誓う。汝らも出来る限り歓待しよう」

 

偽りなくそのつもりだったのだが、しかし帰ってきたのはつれない返事であった。

 

「あたし達も暇じゃないのよ。ここの目処が付いたら、別の任務があるの。気持ちだけもらっておくわ」

「そ、そうか・・・・・・」

「ウキ。またな」

 

そう言って二人は消えてしまった。

 

「まあいい。これでマケドニアは我らのものだ。アカネイアという後ろ盾もあるのだ。これからは全てうまくいく。ふははははは・・・・・・」

 

リュッケ将軍の笑いは、低く低く響いた。

 

 

 ・

 

 

「ウキ。で、どう見る?」

「エサがいつまでも生きてる釣りなんて聞いたことないわ」

「ウキキキキキキ。うまいこと言う」

「それより、目星をつけたのはいるんでしょうね」

 

カクカクと仮面が揺れる。

 

「今回は上玉。しかも元マルスの仲間らしい。一石二鳥。ウキ」

「へえ。やったじゃない。エレミヤ様に良い報告ができる」

「暗黒司祭が準備をしている。善は急げ」

「ね」

 

ここにも暗殺団の影はあった。

しかも彼らの行動は、マルスやルオの歩む道に沿ってのもののようだった。

 

 

 ・

 

 

軍議である。

偵察はアイシャ、地形や伏兵、内情はカチュア。

いくつもの情報が提示されては、話し合われた。

 

「マケドニア本国ということもあり、かつての仲間も紛れている可能性がある。

村々も多く、盗賊の被害を避けないといけない。

航空戦力も多く、対処が必要だろう」

「つい先ほどの偵察で発見しましたが、シューターが配備されたようなのです。攻撃範囲を見定めぬことには、迂闊に動けません」

「村々にも早めに立ち寄りたいですな。しかし中央島の山地に陣取る竜騎士が厄介です。彼らから逃げる手段はありませぬ」

 

軍議にはルオも幾つか意見し、参加するメンバーにも様々な意見が出た。

 

「最近調子いいぜ!! 当然俺は出撃だよな? というか留守番なんて暴れるぞ俺は」

 

ルークは今や騎馬部隊のエースである。連れて行かない理由はない。

 

「臨機応変な対応が必要になると、航空戦力はあったほうがいいわ。内情も詳しい私がいかない道理はないはず」

 

北の村で待っているというパオラとの接触のこともある。言わずもがなだ。

 

「竜騎士が出てきている以上、弓使いはいて困ることはない筈です。僕や兄さんは勿論、ウォレンさんもいた方が・・・・・・」

 

輸送隊の護衛にも弓使いは欲しい。ウォレンはそちらにまわし、前線にはいなくてもいいだろうということになった。

 

「竜騎士やジェネラルの高い防御力をどうにかする手っ取り早い手段はやっぱり魔法よ。やれるわ。連れてって」

 

クーデターを起こした敵将リュッケは、ジェネラルであるという。ならばリンダの力は必要かと思えた。

 

「編成についてはこんなところかな。

ルオとマリーシアも来てくれ。僕の護衛は近衛でまとめる。ルオは竜騎士たちをおびき寄せる役を頼みたい。城を島ごと大回りする最中、戦闘が無いとは思えない。君の足なら差し引きで追いつくだろうし、挟撃を企む伏兵があれば発見できるだろう?」

 

ミネルバ救出の作戦はこうして開始された。

しかし、事態は二転三転することになる。

 

 

 ・

 

 

戦が始まるのに合わせて、レナとジュリアンを逃がすために、待ち合わせ場所についたパオラ。

しかし、その場にいたのはジュリアンのみ。

 

「ジュリアン? レナはどうしたの?」

「・・・・・・さらわれた」

「・・・・・・は!?」

「さらわれちまったんだ! 俺が準備のために、目を離した隙に・・・・・・ いや、おれは、それを見てた。真っ黒なローブの司祭と、変な仮面の野郎と、金髪の女の子・・・・・・

何も出来なかった。俺が出て行っても、ただ殺されるのがわかった。

レナさんも、何か魔法をかけられてるわけでもなさそうだったのに、悲鳴一つ上げずに・・・・・・!」

 

逆らっても意味の無い犠牲が出るだけなのがわかったということなのだろう。

 

「・・・・・・こちらも、クーデターの最中にマリア姫が行方不明になっているわ。

もしかして、そいつらシスターをさらっているのかしら・・・・・・

 

・・・待って。ジュリアン、あなたレナとはどうなの?」

「? どうなのって・・・・・・」

「事務的なことだと思って答えて。

レナはまだ清い体のまま?」

「・・・・・・!!

 

お、俺の知る限りは」

「・・・・・・高貴なシスターが狙われてる、そんな感じね。

あるいはクーデターはそれのついで、ううん、このことの隠れ蓑なのかも・・・・・・

 

とにかく、貴方は村に戻って待っていなさい。アリティア軍と合流するわ。

これからのことはその時に考えましょう」

「・・・・・・わかった」

 

すごすごと村に戻るジュリアン。

惚れた女一人守れなかったその背中は煤けて見えた。

 

 

 ・

 

 

竜騎士はまさにカトンボであった。

竜騎士の強さはその自在な攻撃範囲と一撃離脱。待ち伏せされて唯一の弱点である弓で責められれば、もうどうしようもなかった。

 

「やるなライアン。もう僕以上かもしれない」

 

ゴードンの出番がまるっきりない。

ライアンのことをおいても、リンダの方が積極的に前に出るため、彼の部隊はまるっきり余剰戦力になっている。

 

ただし、相変わらずライアンは速射ができない。

溜めて溜めて打つので、一撃の力は右に出る者がいないのだが、欠点は欠点である。

 

ともかく、竜騎士隊は片付けた。

 

「じゃあ僕はこれで。マルス様達と合流するよ。

おりを見て跳ね橋をかけてくれ」

 

ルオは合流しに走る。

 

その頃マルスは、村に来ていたサジと再会していた。

 

「シーダ様のイイヒトなら、タリスにとっちゃ命をかけるに足るお人よ。お守りしますぜ王子!!」

 

「ありがとう。心強いよ」

 

大所帯になってきているアリティア軍であった。

 

 

 ・

 

 

一方、パオラは窮地に立たされていた。

村の方に来る盗賊を迎え撃とうとしたのだが、それは囮だったらしく、パオラめがけて騎馬部隊が後から後から突っ込んでくるのだ。

 

「くっ・・・・・・ 山岳から見下ろす竜騎士たちが怖すぎる! 山を突っ切れないのは痛い・・・・・・!」

 

なんとか逃げ出した橋のたもとで、別の騎馬部隊に遭遇した時はもう終わりかと思ったが、その中に見慣れたペガサスを見つけたときは安堵した。

 

「カチュア!!」

「パオラ姉さん!! 良かった、無事で!!」

「あんまり無事でもないけれど、助かったわ。

じゃあ、この騎馬部隊はアリティア軍?」

「暁の聖騎士ルークだ! 俺が来たからには大船に乗った気でいてくれ癒し系の綺麗なお姉さん!!」

「おっつけシスターが来る。治療を受けていただきたい」

「お願いするわ」

 

パオラを追ってきた騎馬部隊も、危なげなく倒されてゆく。

この反乱も制圧されつつあった。

 

 

 ・

 

 

リュッケは戦況を苦々しく見ていた。

それぞれの部隊をそれぞれ最小限の部隊で叩かれてしまった。

跳ね橋が降りていれば、竜騎士の待ち伏せをしていた部隊だけでも騎馬で叩けたかもしれぬというのに。

 

「ぐぐ・・・・・・ こうなると、跳ね橋を上げてしまったのも下策だったということになる。

くそ。かくなる上は籠城か・・・・・・」

「阿呆か。籠城とは援軍の来る想定でやる戦法だ。裏からの手引きならまだしも、表向きはアカネイアはアリティアを差し向けた側だぞ」

「!? ば、馬鹿な。貴方は・・・・・・!?」

 

驚愕したのはその意見にではない。論理の正しさにでもない。

いきなり現れたその人物そのものにだ。

 

「ふん。貴様のような臆病な男が反乱とはな。ハーディンにそそのかされでもしたのか?」

「なぜ、そんなことまで。いや、それよりも・・・・・・」

「俺が死んだとでも思ったか? まあいい。俺はもうこんな国に未練はない。貴様らで勝手にやるがいい。だが、俺の大陸統一を邪魔した奴らは許せぬ。ミネルバをよこせ。あいつの始末だけは俺がする」

「し、しかし・・・・・・」

 

「さ っ さ と し ろ」

 

「は、はっ!!」

 

 

ミシェイル王子の眼光は、一層鋭くなっていた。

 

リュッケは、慌てて牢を開けに行かせた。

 

 

 

 

キィ

 

鉄の格子が擦れる音が牢に響く。

 

暗闇の中に浮かぶミネルバ王女が身にまとうものは、奴隷が着るようなボロ切れであった。

 

「無様だな。ミネルバ」

「・・・・・・!! ミ、ミシェイル!?」

「部下に見限られ、牢獄暮らしか。しかもやらかした者共は結局、アカネイアに尻尾を振ることしか考えていない。

マリアは攫われ、仲間は散り散り。反乱を抑えるのもアリティア頼み。

こんなものが、俺を殺そうとしてまで作りたかった理想の王国か」

 

いくらなじられても、事実なだけに言い返せない。

牢獄の中で思い出すのは、兄のカリスマへの憧憬だけだった。

一体どうやってこんな貴族どもを支配下に置けたのだ。なまじ力を持っているばかりにプライドだけは高く、好き勝手はしたがるくせに苦労も研鑽もバカがするものだと思っている輩ばかり。

刷新しようと計画を立てれば、どこから嗅ぎつけたか先手を打たれてクーデターだ。

 

「・・・・・・行くぞ。こんな国は捨てろ。お前がするべき事は、もうここにはない。

こうなっては、再建は出来んよ。一からやり直せ」

「・・・・・・」

「少し時間をやる。とりあえず・・・・・・

飛べ」

 

 

ミネルバは拘束されている姿のまま、ミシェイルに連れられて東の空に消えた。

 

 

 ・

 

 

「あれは・・・・・・」

「ウキ。竜騎士だな。なんだ?」

 

クライネは、その背に乗るのが誰なのかわかった。

しかし、解っただけだ。

 

「なんでもないわ」

 

ミネルバはあの『赤い竜騎士』と呼ばれた、大陸一の斧使いである。

ミシェイルと共に脱出したとなれば、それだけで一勢力に成り得るのだ。

本来なら、逃がすべきではない。

 

だが、兄弟姉妹の情というのには、クライネは弱かった。

どのみち、ここからでは遠すぎる。見逃すほかあるまい。

 

「『赤い竜騎士』の再起を見せてもらうとしましょうか」

 

今のアカネイアは強すぎる。その傘下で戦うことほどつまらないことはない。

 

どうせなら、かき回してくれ。

その方が、死ぬから。

大勢、死ぬから。

 

幸せそうなやつらは、みんな死ぬといい。

殺すのは、もっといい。

 

 

 ・

 

 

「この唐変木!!! 馬鹿兄貴!! レナさんがさらわれたっていうのに、こんなところで何やってんだ!!」

「おお!? 誰かと思えば妹の尻を追っかけまわしてた盗賊め!!

って、レナがさらわれた!?

お前、レナを守るって言ってたじゃないか!!お前こそ何やってんだ!!」

「返す言葉もねえけど、支離滅裂だろうが!!

俺に任したのか許さねえのかどっちなんだよそのセリフ!!!

とにかく、アリティア軍を頼るぞ。俺たちの力じゃどうにもならなそうだ」

「まったくもって他力本願で情けないな。

俺が苦労しなくて済みそうなのがとってもナイスだ」

「賛成なのか反対なのかどっちなんだよ!?」

 

村に入るなり助けを求めてきたジュリアン。

そのジュリアンに、敵軍の中から見つけ出してもらって、引き込んだマチス。

 

「どうみても漫才コンビね」

「あはは。ジュリアンはリカードっていう弟分もいるし、彼ともそんな感じだね」

 

輸送隊は半分以上アイシャが仕切ってる形なので、マルスとの会話が多く、アイシャは馴染んでしまっている。

 

「マルス様。山間に陣取っていた竜騎士は撃破しました」

「ご苦労さま」

 

ルオやパオラ、ライアンらでかたを付け、あとはリュッケを残すのみである。

 

跳ね橋を渡ってきたリンダのファイアーに焼かれて、シューターも消し炭となった。

 

「くっ・・・・・・ 貴様らぁ!!!」

「ミネルバ王女を、返してもらう」

 

ルオは槍を受け流し、2,3度切り結ぶ。

流石に将だけある。強い。

 

「うおおおおおおおっ!!」

 

なかなかその鎧を貫けない。

 

「どいて!!」

「!?」

 

振り向くと、光を束ねて練るリンダがいた。

 

「オーーーーーーーーーーーラッ!!!」

 

カッッ!!!!!!!!

 

重く硬い将軍の鎧が、氷細工のようにくだけ、リュッケは気を失った。

 

「す・・・・・・すごいね」

「ふふ。どうも。魔法は耐性をもっている人が少ないだけに、いざという時、役立ってみせるわ」

 

ともあれこれで、マケドニアの反乱を収めることができた。

 

 

しかし・・・・・・

 

 

「マルス様。城中を探しましたが、ミネルバ王女がいらっしゃいません」

「・・・・・・どういうことだ?」

「皆目見当も付きません」

 

そして、様子を伺ってでもいたかのように、この男が現れた。

 

「ほう、クーデター鎮圧に成功したか」

「!! ・・・・・・ラングッ!!」

「ご苦労であったな。マケドニアはこのままわしが預かろう。貴殿にはまたやってもらうことがある」

 

どう考えてもいいように使われている。

皆も限界に来ていた。

 

「わしの城に賊が入り込んで、グルニアの遺児どもをさらっていった。取り戻してくるがいい」

「なっ・・・・・・」

 

自分の不始末を押し付けておいてとる態度だろうか。

しかし、これはチャンスでもあった。

そして、やり口はわかっている。草(監視役)を放っておいて、保護した途端に出てくる気なのだろう。

 

ルオが、キレた。

 

「いいかげんにしろっ!!

マルス様はお前の家来じゃないぞ!!」

 

これには一堂固まった。

誰もが思っていたことで、言い出せなかったことだ。

 

「き、貴殿の抱える兵士は礼儀がなっておらんな」

 

お前がそれを言うのか。

 

そして。

 

「非礼は詫びよう。しかし改めさせるつもりはない。今後僕は貴方の要請を受け入れない」

「なんだとっ!? 貴様、わしに逆らうということはアカネイアに逆らうことだぞ!!」

「そんなわけがない。僕の知るハーディンはこんなことを許しはしない。僕たちの、暗黒戦争を戦い抜いた僕らの絆をなめるな」

「き、き、貴様・・・・・・  

そうか、そうなのだな。グルニアの遺児どもをさらったのはオグマの疑いがあるのだ。貴様がやらせたのだろう!!」

「!?」

 

寝耳に水である。

 

(アイシャ!?)

(初耳よ。あの人本当に単独行動なんだもん。結局連絡つかなかったのよ)

 

マルスは落ち着き払ったまま、言い返す。

 

「僕は知らない。だが、出来ればそうしたかった。後悔している。あの時あなたを切り捨ててでも、あの子達を守るべきだったと」

「マルス様・・・・・・」

 

顔色を何度も変えたあと、ラングは逃げ出した。ここまできっぱりと反抗されるとは思っていなかったのだろう。

 

「お、覚えておれぇっ!!!!

ハーディン皇帝にこの事は報告するからなっ!!」

 

お父さんに言いつけてやる、と言い出す子供とどこが違うのだろう。

 

「・・・・・・ジェイガン、すまない。

わかっている、下手をすればアリティアを巻き込むことになる。

けど、皇帝はハーディンだ。この件に違和感を感じているはずだ。

それに・・・・・・

 

間違えば取り返しのつかないことになるのは、あの子達の件だって同じだ。だからこそオグマは一人で動いたんだ。

 

なにより、僕はもう我慢がならなかった」

「いえ、よくご決断されました。

そして、問題はここからどうするかです」

「とにかく、オグマと合流しよう。グルニアの遺児たちを保護しなければ。

彼らの元々の保護者はウェンデル司祭だ。ちょうどマケドニアに住んでおられる。オグマも司祭を無視して事は進めないよ」

「確かに。ならば海岸線を北上いたします」

 

そしてマルスは、ルオに歩み寄り、

 

「ありがとう。君の一言で決心がついた」

「出過ぎたことを言いました」

 

二人の会話はそれで済んだ。しかし。

 

「全く出過ぎた事・・・・・・ね。

これで読めなくなったわ。情報が揃うまでのタイムラグに、何か起こらないといいけど」

「アイシャ・・・・・・」

 

そこまで言われるほどのことだろうか。

あの場面は怒って当然の場面だ。

 

「何かって、何さ」

「ラングみたいな男、まともな統治に使えるわけ無いでしょ。なのに送り込んでたのは、こういうことじゃないのかって思えたのよ、こうなってくるとね」

「??」

「非の打ち所のない国を反逆者にしたい時、とか」

 

ジェイガンの顔が視界の端でぴくりと引きつった。

ルオは笑い飛ばす。

 

「英雄ハーディンが、そんなことをする理由がどこにあるんだよ?」

「私もそう思う。でも、結果だけ見れば、目的がそれしか出てこないのよ」

「・・・・・・」

 

どのあたりが真実と食い違っているのだろうか。

 

まだ、見えては来ない。

 

 

第3章 連れ去られた王女 終

 

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